無敵ロボ トライダーG7

◆メディア:TV ◆放映年月日:1980年2月~1981年1月
◆話数:全50話 ◆監督:佐々木勝利
◆キャラクターデザイン:佐々門信芳 ◆メカニカルデザイン:大河原邦男
あらすじ

 人類が宇宙に進出し、巨大ロボットの存在もめずらしくなくなった時代。しかし、そんな時代にあっても、人々の生活は劇的に変わるはずがなかった。ある日、光熱費の滞納に苦しむ零細企業、「宇宙のなんでも屋」をキャッチコピーに掲げる竹尾ゼネラルカンパニーに、宇宙防衛省の足立長官から、ギャランティ100万円という大口の仕事が舞いこんでくる。緑ヶ丘小学校に通う小学6年生にして、亡き父のあとを継いで竹尾ゼネラルカンパニーの社長となった竹尾ワッ太は、大門先生の静止を振り切り、授業を抜け出して仕事に向かう。足立長官からの依頼内容は、火星の宇宙ステーションを襲った謎のメカロボットを撃退すること。ワッ太は父の形見ともいうべき巨大ロボット、トライダーG7を駆り、今月の社員の給料をかけて、謎のメカロボットを撃破するのであった。
 宇宙ステーションを襲った謎のメカロボット。その正体は、ガバール星のロボット帝国が、地球侵略のために送り込んだ尖兵であった。帝王であるマザーコンピューター・シグマの命により銀河系侵略総司令官のザクロンは、地球侵略司令官としてオンドロンを派遣した。しかし、ワッ太とトライダーの活躍により、地球侵略は遅々として進まない。オンドロンにトライダーの危険性を説くも、受け入れられなかった彼の部下ズルチンは独断で出撃し、トライダーに決闘を申し込む。それに対してワッ太は、社員のみんなと協力してズルチンを撃破するのだった。

キャラクター

 社長で小学生」の主人公ワッ太が、この作品を象徴するキャラクターなのは先述のとおり。しかし、その脇を固めるキャラクターたちも個性豊かであった。常に会社の損益を気にかける専務こと柿小路梅麻呂、お調子者で、なんと第29話まで仕事をとってきたことがないという営業係長の木下藤八郎、毎週のおやつが定番化した経理の優しいお姉さん、砂原郁絵。ワッ太が通う小学校の熱血教師の大門先生や、エリートを鼻にかける友人の大山健一などなど、クセのあるキャラクターがそろっていたのである。しかも、彼らの誰もが悪人ではなく、ときにはワッ太の成長を優しく見守り、ときには一緒になってバカをする仲間たちであったところに注目したい。そうした温かみを持つからこそ、ホームドラマ的な展開が心地良いのだ。
 また、この作品ではワッ太たちが敵ロボット帝国の存在に、最後まで気づかない点も特筆すべきポイントで、ロボットアニメとしては前代未聞の、なんとも脳天気な話だが、地球侵略など些細なことであるかのようにはねのけてしまったワッ太たちのそのエネルギーは、この作品を牽引する原動力であった。

用語1

●竹尾ゼネラルカンパニー

 竹尾道太郎が創設した企業。梅本(ナバロン)から託されたトライダーG7を用いて、「宇宙のなんでも屋」として、暴れるロボットの退治や資材運びなど、さまざまな依頼を請け負う。道太郎の死後、解散の危機を経て息子のワッ太が後を継いで社長に就任したが、慢性的に当月の給料が払えるか否か、という経営危機に見舞われている。同様にワッ太のおこづかいも慢性的に危機的状況にある。一方、社員はわずかに5名だが、社員間の結束は固く、互いに家族のような存在だといえる。
 宇宙防衛庁の足立長官は、かつて道太郎と交友があり、その関係からいいお得意先となっている。

©創通・サンライズ


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ストーリー

 主人公のワッ太が、小学生にして竹尾ゼネラルカンパニーの社長、しかもトライダーG7のパイロットであるという立場が斬新なこの作品。常識的にはありえないことだが、アニメだからこそ違和感なく受け入れられるコミカルな設定である。これは、この作品のメインターゲットである小学生が、当時「一番なりたい職業」として社長をあげていたためである。不況の昨今では社長というと、気苦労ばかりが多くて大変そうなイメージがある。しかし、高度経済成長の香りがかすかに残る時代の当時の子どもたちの考え方はあっけらかんとしたもので、社長といえば権力とリッチさの象徴だったのである。
 ストーリーは基本的に1話完結となっている。ワッ太の学校での日常や、社員のみんなと過ごすホームドラマ的なエピソードがメインで、ロボットでの戦闘は、そうした何気ない出来事の積み重ねの結果として、ワッ太の成長を試すイベントのようなものであった。視聴者の小学生たちが親近感を覚えるような身近な行事も多数登場し、子どもたちから大きな支持を集めた。劇的な感動をもたらすストーリーこそないものの、見たあとにほんの少し心が温かくなる。そんなちょっとイイ話が、この作品の最大の魅力だといえる。
 なお、サンライズから1980年代後半から1990年代にかけて『絶対無敵ライジンオー』や『勇者エクスカイザー』、『GEAR戦士 電童』など、小学生を主人公としたロボットアニメが多数登場し、好評を博すこととなった。その土台には、新路線を開拓した『トライダーG7』の功績があったのである。

メカ

 主役ロボであるトライダーG7の名前は、「なんにでもトライするんだ」という意味の「トライダー」に、「グレート」「ガンバル」などの意味を持つ「G」、そして7つの形態をあらわす「7」が由来となっている。このことからもわかるとおり、主役ロボットのトライダーG7は、7つの形態に変形が可能だ。7つの形態はトライダーG7の頭部が分離したもの(トライダーホーク、トライダーモビル、トライダーマリン)も合わせたものだが、当時としては(現在の観点からもだが)非常に多彩な変形が可能なロボットであった。シャトルと合体してのトライダーフォートレスを含めると8形態、さらにシャトルは第27話で改造されて形状が変更となり、これと合体したトライダーフォートレスまで含めると、なんと9形態という驚異的な変形パターンが用意されていたのである。また、主役ロボットがストーリー中盤で新登場するサポートメカと合体してパワーアップするというギミックは、当時としては斬新なものであった。
 さらに、独特のメカニック観があった。トライダーG7は、普段は公園に格納されているのだが、発進の際には周囲の安全を守るため、公園内の人々に白線の内側まで下がるよう砂原郁絵によるアナウンスが放送されるなど、「もしも日常のなかにロボットが溶け込んでいたら」という、コミカルなリアリティが盛り込まれていた。また、ミサイルは経費がかかるので、別の武器を使うようワッ太が専務から頼まれたという、世知辛いエピソードも有名である。

用語2

●ガバール星

 銀河系の彼方に存在するロボットよる軍事国家。マザーコンピューター・シグマを皇帝とし、全宇宙の支配をもくろむ。彼らにとっての地球は、手の入れ方次第では利用価値があるBクラスの侵略対象に過ぎない。
 銀河系方面の侵略はザクロンによって統括されているが、地球の総司令官はザクロンの命を受けたオンドロンが務める。さらに実働指揮は、ヤール、ズルチン、ズール&ドンマ、ジャッカル、ジルバらの歴代隊長が行った。オンドロンが駐留する侵略のための本拠地は宇宙空間を航行する宇宙要塞だが、密かに月面にメカロボットの生産工場を建造していた。
 なお、ロボット帝国は設定上の名称が「ガバール帝国」となっているが、本編にその名前が登場することはない。