装甲騎兵ボトムズ

◆メディア:TV ◆放映年月日:1983年4月1日~1984年3月23日
◆話数:全52話 ◆監督:高橋良輔
◆キャラクターデザイン:塩山紀生 ◆メカニックデザイン:大河原邦男
あらすじ

 ギルガメス連合とバララント同盟。アストラギウス銀河では、この2つの勢力が、百年にも渡る戦争を続けていた。すでに原因すらさだかではなくなった、この「百年戦争」の休戦直前、詳細を知らされないまま、小惑星リドへの潜入作戦に投入された青年兵キリコ・キュービィーは、そこでカプセルの中に眠る女を発見。所属部隊の突然の裏切りにより、重傷を負ったキリコは、ギルガメス軍のジャン・ポール・ロッチナ大尉に拾われ、執拗な取り調べを受ける。女は軍が探し求める最強の兵士「パーフェクトソルジャー(PS)」だったのである。

キャラクター

 主人公であるキリコ・キュービィーは、ハードな世界観にふさわしく、非常に寡黙なキャラクターである。ロボットアニメといえば正義感の強い主人公がまだ主流だった当時において、無口で言葉よりも行動で態度を示し、生き延びるために手段を選ばないキリコは異彩を放っていたが、『ボトムズ』の主人公としてはこの上なく合致したものであった。ヒロインであるフィアナの悲劇性や、ロッチナやイプシロンたちライバルの執念も大きな見どころである。なお、クメン編に登場する、ひたすら憎らしい小悪党カン・ユーに奇妙な共感を覚えるファンが少なくないことにも言及しておこう。有能なキリコをねたみ、それゆえに暴走・失敗を重ねるその姿は、ある意味で非常にリアルであった。

用語1

●パーフェクトソルジャー

 ヨラン・ペールゼン元大佐と秘密結社によって生み出された最強の兵士。ATの操縦に超人的な能力を発揮し、肉体的な強化も施されている。しかし、ヂヂリウムと呼ばれる稀少な金属のシャワーを定期的に浴びなければ死んでしまう。さらにヂヂリウムの供給を受けてなお、その寿命はわずか2年と非常に短い。

©サンライズ



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ストーリー

 本作のストーリーは大きく分けて、「ウド編」「クメン編」「サンサ編」「クエント編」の4部からなる。それぞれに趣きが大きく異なり、「ウド編」では近未来アクション映画のような世界観が展開し、「クメン編」ではうっそうとしたジャングルの中でゲリラと戦う戦場映画のような雰囲気がかもしだされている。「サンサ編」はホラー的な要素を持ち、物語のラストを飾る「クエント編」は、神に敵対するという壮大なSFサーガを思わせる銀河規模のストーリーとなる。このようにバラエティ豊かながら、全編を通じて非常にハードな展開が特徴で、ハードボイルドなその世界観に魅了されるファンが後を絶たない。放送から20年あまりが経過した現在に至るも、OVAや派生作品が作られ続けていることが、その魅力の証左である。

メカ

 本作は時として「リアルロボットの極地」と呼ばれることもある作品だ。その所以は、本作に登場するロボット――アーマードトルーパー(AT)――が徹底的に兵器として描かれていることにある。ATは圧倒的な力を持つロボットではなく、あくまでも戦闘車両の延長線上にあるもので、ジャンクの寄せ集めから機体を作りあげることもできるかわりに、生身の人間に倒される可能性すらある。劇中では、塗料のスプレーを頭部ターレットスコープに吹き付けられただけで、前が見えなくなり、操作が不可能になるシーンも存在したほどだ。パイロットであるキリコも必要とあらば平然と乗機を乗り捨てている。ただし一方で、戦うことしか知らずに育ったキリコがATの中が最も落ち着く場所であると感じるシーンもある。どこにでもある兵器としてのATは、戦争の象徴でもあるのだ。

用語2

●ワイズマン

 かつて惑星クエントで極めて硬度な文明を築いていた古代クエント人のうちに発生した突然変異。異能者と呼ばれる彼らは極めてコンピュータへの適合能力が高く、肉体的にも非常に優れていた。彼らは反乱を起こし、鎮圧されたが、その生き残りが原形質保存装置に自分たちの記憶を保存した。これがワイズマンの正体である。強大な力を持ったワイズマンは、自ら神と名乗り、その力を使って銀河中の闘争を影から操り続けていた。