装甲騎兵ボトムズ
ザ・ラストレッドショルダー

◆メディア:OVA ◆放映年月日:1985年8月1日
◆話数:全1話 ◆監督:高橋良輔
◆キャラクターデザイン:塩山紀生 ◆メカニックデザイン:大河原邦男
あらすじ

 ウドの街が炎の中に沈んだ。フィアナと生き別れてしまったキリコは、ほどなくして、かつてレッドショルダーでともに戦ったグレゴルー・ガロッシュ、ムーザ・メリメ、バイマン・ハガードの3人から連絡を受ける。政敵によって虐殺行為が発覚し、失脚して軍を去ったレッドショルダーの創設者ヨラン・ペールゼンの居場所が判明したのだ。そして、ペールゼンによって激戦区に転属させられて地獄を見たグレゴルーたちは、復讐のためにペールゼンを殺そうと企んでいたのである。だが、キリコがグレゴルーたちの計画に加担したのは、フィアナの手がかりをつかむためであった。

キャラクター

 本作では、シリーズ全体を通してのキーマンのひとりであるペールゼンが初登場する。黒幕としての存在感をアピールしつつも終盤で死んでしまう彼の本当の活躍は『野望のルーツ』や『ペールゼン・ファイルズ』で詳しく描かれることになる。また、同じく新キャラクターであるグレゴルーたちにも注目したい。とくに悪態をつきながら、その実、互いに認め合うムーザとバイマンの口論のくだりは、ストレートな形で表現されることのない『ボトムズ』らしい友情の形と言えるだろう。もちろん、キリコの好敵手たるイプシロンの誕生秘話としても興味深い。

用語1

●ウド

 ギルガメス連合の主星である惑星メルキアにある街。かつては工業都市として栄えていたが、環境汚染が進み、酸性雨が降り注ぐようになってしまった。
 戦後、職にあぶれた軍人が結成した治安警察は腐敗しており、暴走族ブーンファミリーと結託。ブーンファミリーによる強制労働のための人間狩りも黙認されているありさまである。また「バトリング」と呼ばれるAT同士を戦い合わせる賭け試合が流行しており、キリコもPSの情報を求め選手として参加したことがある。

©サンライズ



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ストーリー

 本作は『ボトムズ』のOVAとしては初の作品である。とりわけ興味深いのは、TV版のウド編とクメン編の間に何が起きたのかを知ることができる点だろう。クメン編の冒頭において、キリコは「すべてを忘れるために」クメンにやってきた、と発言している。だがTV版ではその「すべて」が明らかにされていなかったため、その発言はいささか謎めいたものになっていた。しかし、本作のリリースによってその謎は解明され、『ボトムズ』の世界観はより深まったのである。なお、物語の間隙を縫うというこの方向性は、『野望のルーツ』や『ビッグバトル』など、後のOVAシリーズにも踏襲されている。

メカ

 新ATであるブラッドサッカーが登場し、イプシロンの乗機として驚異的な活躍を見せてくれる。漆黒のボディに血塗られた赤い肩を持つその不気味さは、強敵としてのイプシロンを強く印象づけるものであった。また、スコープドッグのカスタムバージョンであるスコープドッグターボカスタムがキリコたちの乗機として登場。ガラクタのような部品の中からを使えるものを探し出し、高性能機を組み上げてしまうシーンは、ATが約4メートルという小型の機種として設定された『ボトムズ』ならではのAFV(戦闘装甲車両)的なメカニック観を象徴するシーンのひとつといっても過言ではないだろう。

用語2

 惑星メルキアの赤道直下にある小国。首都はザイデン。内乱が勃発しており、近代化を推進する現体制と、これに反対する神聖クメン王国とが対立している。クメンはもともと農業国家であり、急激な近代化は農民の生活を圧迫することとなる。そのため、一部の農民たちは「ビーラー・ゲリラ」として、旧王族であるヒロラム・カンジェルマンが率いる神聖クメン王国に加担している。一方、現クメン政府は正規軍のほかに傭兵集団によるアッセンブル(集合体)を構築し、これに対抗している。