機動戦士Zガンダム

◆メディア:TV ◆放映年月日:1985年3月〜1986年2月
◆話数:全50話 ◆総監督:富野由悠季
◆キャラクターデザイン:安彦良和 ◆メカニカルデザイン:大河原邦男、藤田一己
あらすじ

 宇宙世紀0079、地球連邦政府に対し、スペースコロニー群サイド3のジオン公国が反旗を翻した。一年戦争と呼ばれるその戦いは、新型モビルスーツ(MS)ガンダムに乗るアムロ・レイらの活躍もあり、地球連邦軍の勝利によって幕を閉じた。
 宇宙世紀0083年に勃発したデラーズ紛争から4年を経た宇宙世紀0087年。連邦軍内にはジャミトフ・ハイマン率いる、アースノイド至上主義者たちによるエリート部隊ティターンズが発足し、権力をほしいままにしていた。一方、ティターンズのスペースノイド弾圧に対抗すべく、ブレックス・フォーラらは反地球連邦組織エゥーゴを結成し、反旗を翻したのであった。そして、その中核メンバーの中には、かつて一年戦争で「赤い彗星」の異名で呼ばれたジオンのエースパイロットであり、ニュータイプ論を説いたジオン公国の祖ジオン・ダイクンの遺児でもあるシャア・アズナブルが、クワトロ・バジーナと名を変えて所属していた。
 スペースコロニー、グリーン・ノアに住む少年カミーユ・ビダンは、ティターンズの将校ジェリド・メサといさかいを起こし、ティターンズに捕らわれてしまう。ちょうどそのとき、ティターンズの新型MSのガンダムMk-Ⅱを奪取すべく、クワトロがグリーン・ノアに潜入。その騒ぎに便乗してガンダムMk-Ⅱを奪ったカミーユは、クワトロに連れられてエゥーゴへと参加することになる。一方、ティターンズには木星帰りのニュータイプ、パプテマス・シロッコが参入し、争いは混迷の度合いを増していく。

キャラクター

 新主人公であるカミーユの登場が、キャラクター面における最大のみどころ。前作の主人公であるアムロが、内向的で比較的おとなしかったのに対し、カミーユは感情を激発させることが多いキャラクターとなっている。若者ならではの感覚から、大人であるクワトロたちに反抗心を抱くことも少なくなく、アムロとは異なる新たな主人公像を形成していた。
 一方、影の主人公ともいうべき、クワトロ(シャア)の行動にも注目したい。自らの意思に反し、表舞台に立たされていくそのさまからは、のちの『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』につながる、彼の行動原理を知ることができる。
 なお、キャラクター面のギミックとしての新たな試みとして強化人間(人工ニュータイプ)の登場があげられる。強化人間であるフォウとカミーユの悲恋は、ガンダムシリーズ屈指の人気を誇るエピソードである。TV版、劇場版ともにフォウが死んでしまうため、どちらの作品でも2人の恋は実らず、劇場版に限っては、キリマンジャロでの再会も叶わなかった。

用語1

●エゥーゴ

 反地球連邦組織「Anti Earth United Government」の略(諸説あり)。スペースノイドの弾圧を繰り返すティターンズの横行に対抗すべく、地球連邦軍のブレックス・フォーラ准将らが中心となって結成した。軍産複合体であるアナハイム・エレクトロニクスから出資を受けており、地球上における支援団体としてハヤト・コバヤシが中核人物として参加するカラバがある。
 エゥーゴの構成員は、既得権益をティターンズによって侵害され、反発関係にある地球連邦宇宙軍に所属していた将兵が多い。なお、創設に際してはクワトロ・バジーナことシャア・アズナブル(キャスバル・レム・ダイクン)も深く関与し、ジオン公国軍の残党も多く参加している。
 ちなみに、ブレックスはエゥーゴ創設後も依然として地球連邦軍准将の役職にあり、地球連邦議会への出席権を有している。

©創通・サンライズ


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ストーリー

 1979年に放映され、社会現象にまでなった『機動戦士ガンダム』。リアルロボットという概念を確立した立役者といっても過言ではないこの作品は、現在も新作が製作され続けており、その人気はとどまることを知らない。『機動戦士Zガンダム』は、その続編として1985年に製作された作品である。前作の特徴であった「戦争」を描くというテーマをさらに一歩進め、政治・思想的背景などをも盛りこみつつ、エゥーゴとティターンズ、そしてアクシズの三つ巴の戦いが展開する。より奥の深い、リアリティのある世界観が構築され、その後に続くシリーズ作品の方向性を決定づけた。
 ちなみに、TV版ではカミーユが精神崩壊するという、ラストが視聴者に大きな衝撃を与えたが、2006年に公開された劇場版『機動戦士ΖガンダムⅢ A New
Translation−星の鼓動は愛−』では、カミーユが無事に生還している。このように、TV版とは異なり悲劇的な結末に変更が施されており、いわゆるパラレルワールド的な内容になっている。

メカ

 『Zガンダム』から導入されたのが、主人公機のZガンダムをはじめとする可変MSである。これは、当時の変形玩具などのヒットなどを受けて取り入れられた要素だが、結果的にシリーズ全体の世界観を大きく拡充することとなった。
 また、前半の主役機ガンダムMk-Ⅱについても語るべき点は多い。前作において主役だったガンダムの後継機ながら、ダークブルーのカラーリングで複数が存在し、しかも当初はティターンズ側の機体として登場した。ガンダムといえば唯一無二の主人公機であるという先入観を抱いていた視聴者は、ド肝を抜かれた。現在ではさまざまな陣営が、それぞれ独自に複数のガンダムを有している展開は珍しくないが、その土壌を生み出したのはこの作品なのである。
 さらに、ティターンズの巨大可変MAであるサイコ・ガンダムは、上述の要素にさらに巨大さを兼ね備えており、その存在感は非常に強烈であった。

用語2

●ティターンズ

 宇宙世紀0083年に起きたデラーズ紛争のあと、ジーン・コリニー大将の腹心であった、ジャミトフ・ハイマン准将(当時)が結成した地球連邦軍の特務部隊。ジオン公国軍残党による破壊活動や、前大戦の戦犯摘発などを主目的とした部隊だが、実質的には地球至上主義に傾倒し、スペースノイドの徹底弾圧を行う、ジャミトフの私兵である。連邦軍内部では、ジオン公国軍やデラーズ・フリートなどの前例から、スペースノイドが反乱を起こす可能性に対する恐怖は根強く、そのことがティターンズの台頭に錦の御旗を与えてしまったのである。
 なお、ティターンズは、エリート部隊として認知されており、隊員は、通常の将兵より一階級上として扱われている。