新機動戦記ガンダムW

◆メディア:TV ◆放映年月日:1995年4月~1996年3月
◆話数:全49話 ◆監督:池田成
◆キャラクターデザイン:村瀬修功
◆メカニカルデザイン:大河原邦男、カトキハジメ、石垣純哉
あらすじ

 アフターコロニー(A.C.)195年、地球圏統一連合はコロニー国家から自治権を剥奪し、支配体制を確立していた。しかし、一部のコロニー居住者はこれに反発し、連合とその背後に潜む秘密結社OZの戦力を叩くべく、「オペレーション・メテオ」を発動。5機のガンダムとパイロットたちを地球へと送りこむのだった。
 地球に5機のガンダムが落下した日。ドーリアン外務次官の娘リリーナは、気絶して浜辺に打ち上げられていた少年に出会う。その場を逃げ去った少年─ウイングガンダムのパイロット、ヒイロ・ユイ─は、後日リリーナの通う学園に現れ、「お前を殺す」と彼女に宣言するのだった。一方、ヒイロ以外のガンダムパイロットたちも、独自に破壊活動を始めていた。
 そんななか、トレーズ・クシュリナーダの腹心レディ・アンは、親コロニー派のドーリアン外務次官を暗殺。ドーリアンは死ぬ間際に、リリーナに彼女がかつて完全平和主義を唱えて滅んだサンクキングダムの遺児リリーナ・ピースクラフトであることを伝える。レディに生命を狙われるリリーナだったが、ヒイロが衝動的に彼女を助け、また彼女がトレーズの親友ゼクス・マーキスの妹だったことから一命をとりとめるのであった。

キャラクター

 この作品のタイトルの『ガンダムW』という名前から真っ先に連想されるのが、「5人のガンダムパイロット」というファンは多いことだろう。この作品は、ヒイロやデュオなどの美少年キャラクターが、多くの女性ファンから人気を集めたことでも知られている。「お前を殺す」というセリフで視聴者に衝撃を与えた危険な魅力を持ったヒイロ、お調子者のデュオ、クールなトロワ、心優しいカトル、正義にひた走る五飛と、バラエティ豊かなキャラクターがとりそろえられていた。独特な美学を持って行動するトレーズやゼクスにほれ込んだファンも多かった。『機動戦士ガンダムSEED』シリーズや『機動戦士ガンダム00』シリーズなど、現在では女性ファンから強い支持を受けるガンダム作品は少なくないが、この作品はその最初であり、新境地を開拓したといえるだろう。
 また、5人のガンダムパイロットが、チームとしてではなく、それぞれ独自に活動しており、なかなか全員が集合することがなかったという点にも注目したい。これは、単純に5人それぞれの出番がいたずらに少ないということを意味しない。それぞれが主人公として活躍できるだけのキャラクター性とストーリー性を持っており、それらの運命が絡み合い、そして解けていくことを繰り返すことで、1つの物語が創出されていたのである。そうして5人の主人公の異なる視点から描き出された展開は予測不能なものであり、男女を問わず、ファンを牽引する原動力となっていた。

用語1

●OZ(オズ)

 A.C.193年に、地球圏統一連合内部に結成された秘密軍事結社。当初はコロニー建設に携わる、機械の搬入会社に過ぎなかったが、作業用の人型機械を戦闘用のMSに転換したことで、連合軍内での地位を確立した。ロームフェラ財団の出資によって成立した組織で、財団の私兵ともいうべき性質を持っており、総帥も財団の幹部であるトレーズ・クシュリナーダが兼任する。エリートによって組織されており、所属士官は最低でも中尉待遇となり、貴族の爵位が与えられる。なお、OZのうちMSを使用する戦闘部隊をとくに「スペシャルズ」と呼ぶ。

©創通・サンライズ


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ストーリー

 この作品の前番組にあたる『機動武闘伝Gガンダム』では、5機の主役級ガンダムを登場させたほか、物語背景を宇宙世紀から未来世紀へと変更するなど、ガンダムシリーズに対する既成概念を打ち砕いた作品であった。それを受けたこの作品では、主役級のガンダムが5機登場するという基本ラインを継承しつつも、シリーズの本懐である戦争、そして兵器としてのガンダムを描くという試みにチャレンジしている。マスクをかぶったライバル・ゼクスと、その妹であるリリーナが高貴な血筋の出身であるなど、キャラクター設定には『機動戦士ガンダム』を踏襲した設定が見られる。しかしながら、ストーリーはまったく独自の路線となり、1話ごとの情報密度が極めて高く、スピーディーな物語が展開された。ともすれば、少し気を抜くだけで置いていかれそうになるほどの超高速だが、独特の美学に彩られたキャラクターの魅力や、物語の緻密さ、セリフのカッコよさが相乗効果をあげ、見るものを決して飽きさせない作品に仕上がっている。
 また、余談ではあるが、オープニング(OP)主題歌を声優の高山みなみさんと、作詞家の永野椎菜氏によるユニットTWOMIXが担当し、大きな話題を呼んだ点にも言及しておきたい。TWO-MIXは本作の主題歌『JUST COMMUNICATION』でデビューするや、シングル40万枚を売り上げるという伝説を作ったユニットで、前期・後期のOP主題歌やOVAの主題歌を担当したほか、その後もアニメに限らず多方面で活躍することとなる。当時のアニメファンならば、誰もがその名を記憶に刻んでいるはずだ。

メカ

 前作『機動武闘伝Gガンダム』では、どちらかといえばスーパーロボットとしてガンダムが描かれていた。それに対し、この作品では従来のガンダムと同様、主役級にあたる5機のガンダムは兵器として描かれている。しかしながら、その仔細はそれまでのシリーズ作品とは大きく異なるものであった。この作品でのガンダムは、兵器でありながらも、一騎当千にしてほとんど無敵の力を持った存在となっている。単機で敵MSの大軍を蹴散らしていくその姿はまさに圧巻であった。
 一方で、あくまで兵器であることは大前提となっているため、やむを得ない場合にはガンダムを自爆させるという措置がとられていた。特に、第10話でのウイングガンダムの自爆は、直後の第11話でヒイロがいっさい登場しないという展開につながっており、「まさか主人公が死んだ!?」とすら思わせる、全編を通しても最大級のインパクトを視聴者に与えるシーンとなっている。また、常人ならGに耐えることができないという強大さを見せつけつつ、鳴り物入りで登場したライバル機・トールギスや、ウイングガンダムのプロト機であるウイングガンダムゼロに、当初はカトルが乗り、しかも敵として現れるなど、メカニック面でのみどころは多い。

用語2

●ゼロシステム

 Zoning and Emotional Range Omitted Systemの略で、ヒイロたちのガンダムを開発した5人の科学者たちが、最初に開発したMSであるトールギスを発展させて生み出した、ウイングガンダムゼロに搭載されているインターフェース。きわめて高度な未来予測により、勝利をもたらすための最適解をパイロットに与え、目的達成のため、機体性能を引き出すべく強制的にパイロットの能力を高めるという機能を持つ。この能力強化は脳内に直接作用するため、パイロットは感情を刺激され、幻覚を見ることもある。また、ゼロシステムはパイロットに勝利のための行動を強制することがあり、場合によっては最初にウイングガンダムゼロに乗ったカトルのように暴走してしまう危険性をはらんでいる。これらを克服し、ゼロシステムを使用するには強靭な精神力が必要とされる。
 なお、ゼロシステムはトレーズが開発させたガンダムエピオンにも搭載されている。単機で最大の戦果をあげようとするウイングガンダムゼロのそれにくらべ、ガンダムエピオンのゼロシステムは、全体の戦況を把握し、その中でとるべき最適な行動を導きだすように機能する。