機動新世紀ガンダムX

◆メディア:TV ◆放映年月日:1996年4月〜1996年12月
◆話数:全39話 ◆監督:高松信司
◆キャラクターデザイン:西村誠芳 ◆メカニカルデザイン:大河原邦男、石垣純哉
あらすじ

 かつて戦争があった。宇宙革命軍と、地球連邦政府との間に勃発したその大戦の末期、コロニー落としをほのめかす宇宙革命軍に対し、地球連邦軍はニュータイプ専用モビルスーツ(MS)のガンダムを投入し、次々とコロニーを破壊する。一方、これに焦りを覚えた宇宙革命軍はコロニー落としを実行に移す。その結果、地球環境は壊滅的なダメージを受け、総人口の約9割を失うという未曽有の被害をもって、戦いは勝者を見ぬままに終結したのである。
 A.W(.アフターウォー)0015年、第7次宇宙戦争終結から15年が経過した地球。ジャンク屋稼業を営む戦災孤児の少年ガロード・ランはアルタネイティヴ社により、ニュータイプの少女ティファ・アディールを、バルチャーのジャミル・ニートから奪還する依頼を受ける。ジャミルの地上戦艦フリーデンからティファを連れ出したガロードだったが、怯えるティファを見かねて引き渡しを拒んだため、追っ手をかけられてしまう。ティファのニュータイプ能力に導かれ、旧連邦の地下工場に逃げ込んだガロードは、そこでかつての大戦で用いられたMS、ガンダムXを発見。ティファの導きに従ってサテライトキャノンを放ち、追っ手を撃破するのであった。

キャラクター

 ティファを守ろうとする純粋なガロードの戦いが、この作品の1つの柱となっている。しかしここでは、もう一方の柱として、シャギアとオルバのフロスト兄弟による世界への復讐劇をあげておこう。ニュータイプではなく、カテゴリーFとして迫害を受けたフロスト兄弟は、最終的に全世界を争いの渦に巻き込むべく暗躍していた。その行動原理の根底にあるのは、ニュータイプに対する劣等感であり、自分たちを認めずに疎外した世界に対する怒りである。たしかに、ひどく子どもじみた理由ではある。しかし、フロスト兄弟が叫ぶほの暗い感情は、多くの人が心の奥底に一度は感じたことがあるものではないだろうか。きわめて生々しい彼らの主張は、決して賛同することはできないものの、強烈な感情移入の対象にもなるという、稀有な悪役像を確立したように思える。

用語1

●ニュータイプ

 人の革新と呼ばれる力をもつ者のこと。その力は、他人や死者の精神への感応や、予知能力として発現される。旧地球連邦軍は、フラッシュシステムというニュータイプの精神波を感知して作動するリモートコントロールシステムを開発し、決戦兵器であるガンダムに搭載した。このフラッシュシステムを使用できるかどうかが、ニュータイプであるか否かの境界であるといえる。このシステムにより、多数のビットMSを操ることができるようになっており、単機でも非常に強大な戦力となる。
 人類で最初にニュータイプとして目覚めたファーストニュータイプは、旧連邦によって遺伝子レベルまで解体され、月のD.O.M.Eと呼ばれる施設に保管されている。
 なお、オルバとシャギアは新地球連邦が設けたニュータイプ研究所の出身者であるが、フラッシュシステムを起動できないカテゴリーFと呼ばれる能力者であったため、ニュータイプを深く憎悪することとなった。

©創通・サンライズ


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ストーリー

 先行する『機動武闘伝Gガンダム』や『新機動戦記ガンダムW』の成功を受け、複数の主役級ガンダムが登場し、『機動戦士ガンダム』から続く宇宙世紀とは違う世界を舞台とする、などの特徴を継承した作品の『機動新世紀ガンダムX』。この作品では、前2作で扱われることがなかった、ニュータイプの概念を復活させたことが、もっとも重要なトピックとなっている。かつて『機動戦士ガンダム』で提示されたニュータイプという概念は、ガンダムシリーズを牽引する重要な要素だった。しかし、『機動戦士ガンダム』と同じ世界観である『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』や『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』ですら、扱われていないテーマであった。以上にあげた作品群は、原作者の富野由悠季監督により手がけられたものではなく、ニュータイプはその定義の難解さも相まって、一種聖域のような扱いとなっていたのである。そして、この遠大なテーマに対して真正面から挑み、1つの回答を導き出そうとしたのが『ガンダムX』だといえる。
 「二ュータイプは幻想である」というあまりにも大胆な決着。それは、この作品を見ていた視聴者、そしてこの作品を生み出した新世代のスタッフが、『機動戦士ガンダム』という偉大な父親から親離れするために必要な通過儀礼だったのかもしれない。このあとガンダムシリーズは、さらにバラエティ豊かに作品の幅を広げていくこととなる。

メカ

 この作品の主役メカであるガンダムX、およびガンダムDXは、ガンダムシリーズ全体を通しても屈指の威力を誇るサテライトキャノンを装備していることで知られる。コロニーをも一撃で破壊するこの武装は、物語上でも強力な切り札として用いられる一方、前大戦を悲劇的な結末に導いた忌まわしい兵器の象徴としても重要な役割をもっている。これは、ガンダムが単なる兵器から、物語の鍵を握る重要な要素へと変化したことを意味している。また、ガンダムXは前大戦の英雄であったジャミルがかつて乗って戦っていた機体であり、過去の呪縛もまた未来への希望とともに、新時代を生きるガロードへと手渡された形となる。これは、そのまま『機動戦士ガンダム』という大きな作品が後年に残したものの象徴ともいえる。
 また、この作品では『機動戦士ガンダム』に登場した支援兵器Gアーマーを思い起こさせる、Gファルコンや、MSの形状をしたビット兵器など、過去の作品に登場した概念をベースにしながらも、それを一歩推し進めた新たなメカが多数登場している点にも注目すると作品をもっと深く楽しめる。

用語2

●バルチャー

 ハゲタカの意味。第7次宇宙戦争により、荒廃したアフターウォーの地球において、軍事施設跡などから兵器や電子部品をとり、売りさばく人々のことである。ただし、現在ではもっと広義の意味合いで用いられており、ジャミルのようにまっとうにMSの修理・回収を行う者もいれば、山賊まがいの悪行を行う者もいる。有力なバルチャーは、陸上戦艦やMSなどの機動兵器を所有している場合もある。また、海上で活躍するバルチャーはシーバルチャーと呼ばれており、さらに海賊行為を行う者たちのことはオルクと称されている。