THEビッグオー

◆メディア:TV ◆放映年月日:1999年10月〜2000年1月
◆話数:全13話 ◆総監督:片山一良
◆キャラクターデザイン:さとうけいいち ◆メカニックデザイン:さとうけいいち
あらすじ

 40年前に起きた「何か」によって、すべての人々がそれ以前の記憶(メモリー)を失ってしまった街、パラダイムシティ。そこに住むロジャー・スミスは、この記憶喪失の街に必要な仕事をしていた。「ネゴシエイター(交渉人)」─それが彼の職業である。ある日、富裕な工場主であるソルダーノに、誘拐された孫娘と身代金の交換交渉を依頼されたロジャーは、犯人であるベックとの交渉の場におもむく。だが、ベックから解放された人質は、人間ではなくアンドロイドだった……。ネゴシエイションに失敗し、約束を反故にしたベックに憤りつつ帰宅したロジャーを待っていた、アンドロイドの少女であるR.ドロシー・ウェインライトは、自分の護衛をロジャーに依頼。軍警察のダン・ダストンから、ソルダーノに孫などいないと知らされたロジャーは、彼の工場へと向かう。だが、ソルダーノはすでに何者かによって殺されており、さらに謎のメガデウス(巨大ロボット)が出現し、ロジャーを襲うのだった。ロジャーは自らのメガデウス・ビッグオーを呼び出し、これを撃退するも、ドロシーは行方不明となってしまう。

キャラクター

 洋の東西を問わず、カートゥーンを意識したキャラクターデザインが好評を博したのは、先述のとおり。さらに、ロジャーをはじめとした登場キャラクターたちの洒脱なセリフも魅力的である。とくにロジャーとドロシーの、ときにシリアスに、ときにクスッと笑えるような駆け引きともいえるやりとりや、ロジャーとその執事ノーマンによる富豪ヒーローと執事という典型的なシーンはみどころ。また、ストーリー面ではロジャーやパラダイムシティの過去にまつわる謎が、視聴者を引きこんでいく。こちらの答え合わせは、『second season』に譲ることになるが、「物語の主人公とは」というテーマを描いたメタフィクション的な展開は、ロボットアニメの垣根を越えて、ある意味物語というものの本質に迫るものだったといえるだろう。なお、ネゴシエイターであるロジャーの交渉がほぼ毎回失敗するところも、この作品のみどころといえるだろう。

用語1

●メガデウス

 パラダイムシティに現れる巨大ロボットのこと。40年前の超テクノロジーによって開発されているらしく、新たに開発できるのは、その頃のメモリーを持った者だけである。
 ビッグオー、ビッグデュオ、『second season』に登場するビッグファウ、ビッグヴィヌスの4機はザ・ビッグと呼ばれる特殊なメガデウスである。ときとして意思を持っているかのごとく自律的に動くこともあり、メガデウス・ドミナスと呼ばれる真のパイロットの搭乗時には「CAST IN THE NAME OF GOD.YE NOT GUILTY」の文字がコクピットコンソールに浮かび上がるが、そうでない者が乗り込んだ時には「YE NOT」や「YE GUILTY」と表示され、制御不能となってしまう。また、パラダイムシティの地下には、ビッグオーのプロトタイプともいうべきアーキタイプが埋もれており、ドロシーのメモリーを求めて行動した。

©サンライズ


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ストーリー

 『ビッグオー』は数多ある日本のロボットアニメのなかでも異彩を放つ作品である。キャラクターは極力複雑な線を減らしたカートゥーン(海外の子ども向けアニメ)調でデザインされ、ストーリーも往年の海外ドラマを思わせるものになっているのである。放映は衛星放送局WOWOWのノンスクランブル(無料)枠にて行われたが、諸般の事情により本来全26話の構成だったものを、全13話まで制作・放映した。むろん国内でも一定の人気を獲得したが、制作側の意図どおりというべきか、海外ではさらに大きな反響を呼んだ。その結果、続編を希望する声が高まり、2000年の『first season』終了から約2年を経た2002年に、続編である『second season』が、アメリカのアニメ専門CS局カートゥン・ネットワークの出資を得て製作された。そして、2003年にこの作品は本来の予定であった全26話を放送し、完結を迎えたのだった。全編を通して展開されるハードボイルドで洒脱な世界観は、海の向こうの異国にとっても魅力的なものだった。

メカ

 この作品の主役メカたるビッグオーは、デザインや効果音などに日本の特撮テイストを取り入れており、重量感を感じさせるアクション演出や、肥大した一種異様な両腕のストライクパイルなどのデザインが、従来のメカが持ち得ない独特の魅力をかもし出していた。しかしながら、この作品はデザインを担当したさいとうけいいち氏によって、『ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日』とは違った試みで作られており、玩具展開を視野に入れて企画された作品であった。当時は、ハイターゲットユーザー向けの玩具が発売されはじめた時期であり、ビッグオーも超合金として発売されることを念頭においてデザインされている。残念ながら放映当時に合金トイが発売されることはなかったが、2009年にバンダイの超合金魂シリーズで発売されたほか、2011年には、マックスファクトリーのMAX合金シリーズで発売されることが決定している。なお、マックスファクトリーは放映当時に、『ビッグオー』制作スタッフのための作画参考用胸像を製作した会社で、この胸像は版権イラストなどにも用いられている。

用語2

●パラダイムシティ

 かつてマンハッタンと呼ばれた土地に作られたドーム都市。アレックス・ローズウォーターが社長を務めるコングロマリット、パラダイム・コーポレーションによって支配されている。人間とアンドロイドが共存して生活しているが、彼らのすべてが40年前に起きた「何か」によりメモリーを失っている。
 なお、ドーム都市は40年前の「何か」によって破壊された環境から逃れるためのものとされるが、ドーム内に住めるのは富裕層だけであり、多くの貧民はスラム化したドーム外(アウト・オブ・ドーム)での生活を余儀なくされている。
 また、ほとんどの人々はパラダイムシティ以外の世界はすでに滅び去っていると信じているが、のちに異国からメガデウスがやってきた。