オーバーマン キングゲイナー

◆メディア:TV ◆放映年月日:2002年9月〜2003年3月
◆話数:全26話 ◆監督:富野由悠季
◆キャラクターデザイン:中村嘉宏、西村キヌ(カプコン)、吉田健一
◆メカニカルデザイン:安田朗(カプコン)、山根公利、吉田健一
あらすじ

 大変動と呼ばれる天変地異が起き、壊滅的な被害を受けた地球。人々は環境の回復を待つため、ドームポリスと呼ばれる巨大な屋根付きの都市を建設し、自らその内部に引きこもった。シベリアにあるドームポリス、ウルグスクに住むゲームチャンプの少年ゲイナー・サンガは、ある日シベリア全域を実効支配するシベリア鉄道の警備隊、通称シベ鉄により逮捕、投獄されてしまう。いわれなきその容疑は、エクソダス─ドームポリスから脱出し、他地域を目指すこと─で、その罰は死刑であった。戸惑うゲイナーは、獄中でゲイン・ビジョウという不敵な男に出会い、彼とともに脱獄を果たす。そして、ゲインに導かれるまま、ウルグスクの領主メダイユ公の屋敷に忍び入って娘のアナ・メダイユを人質にとり、メダイユ公のコレクションであるオーバーマンを奪取する。オーバーマンをキングゲイナーと名づけ、シベ鉄のシルエットマシンと戦うゲイナー。そんななか、ゲインの手引きにより、ドームポリスを支える都市ユニットが動き出す。ウルグスクの人々による、理想郷ヤーパンへの大規模エクソダスが始まったのだ。

キャラクター

 みどころ①で言及してきたとおり、明るい作風が特徴的なこの作品。登場するキャラクターもまた、バイタリティに満ち溢れている。たとえば、主人公のゲイナーは、ひきこもりのゲームチャンプという、ともすれば内向的になりがちな設定である。しかし、第17話においては「伝心」のオーバースキルで周囲の人々に心の声が伝わるなか、サラヘ大々的な愛の告白をするなど、男としての株を急上昇させる暴挙に出たこともある。また、もう1人の主人公ともいうべき、ゲインの活躍や人間関係にも注目したい。ゲイナーのゲインに対する、尊敬と反発の混じり合った感情や、アスハムのゲインに対する執念など、見るべきところは多い。二枚目でありながら、女性関係にだらしなかったり、若白髪があったりと、欠点も少なくないゲインではあるが、全編を通じて見れば、そこには大人の男の、魅力的なあり方を感じることができるだろう。

用語1

●オーバーマン

 オーバースキルと呼ばれる特殊能力を使用可能なロボットのこと。この世界で広く普及している外装とエンジンが一体化したシルエット・エンジンを持つマシン(シルエット・エンジン、もしくはシルエット・マシンと呼ばれる)とは異なり、筋肉に酷似したメタル・マッスルに内蔵されたマッスル・エンジンによって駆動する。
 オーバースキルは、特定用途に限定すれば、ほぼ絶対的な力を持っており、キングゲイナーの「加速」をはじめ、時間を止める「時間停止」や、離れた場所から物を盗む「窃盗」、周囲の人の心が聞こえるようになる「伝心」など、さまざまな効果がある。
 オーバーマンは通常、オーバーコートと呼ばれる外装(服)を着用して運用されている。オーバーコート自体がオーバースキルを持っている場合があり、そうしたオーバーコートをオーバーマンに重ね着させることで複数のオーバースキルが使用可能となる。
 なお、初代ミイヤのエクソダスに深く関わるブリュンヒルデや、オーバーデビルもオーバーマンに分類されるが、すでに伝説上の存在となっており、アーリー・オーバーマンと呼ばれている。

©SUNRISE・BV・WOWOW


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ストーリー

 富野監督作品としては異例なほど、明るい作風が特徴的な『キングゲイナー』。富野監督作品においては、登場キャラクターの死亡が日常茶飯的なのだが、この作品に限っては死亡が明確な人物は数えるほどしかいない。さらに、戦闘のかたわら、エキデンと呼ばれる運動会が催されるエピソードもあり、これも旧来の富野作品では考えられないコミカルさであった。また、OPアニメーションにおいては、登場キャラクターに加え、メカであるオーバーマンまでもがモンキーダンスを踊っており、既存のロボットものとは異なる演出で放映当時非常に大きな話題を呼んだ。ちなみに、脚本家の大河内一楼氏は当初、人間爆弾をテーマにしたストーリーを提案したが、富野監督に諭され修正したという。

メカ

 コミカルな作風を体現するかのように、主役機であるキングゲイナーをはじめとしたオーバーマンは、メカでありながら「着ぐるみ」を意識したデザインとなっている。単にカッコイイというよりも、愛嬌のあるその風貌は、ほかのアニメでは決して見ることのできない新感覚のロボットである。 また、オーバーマンはそれぞれにオーバースキルと呼ばれる一種の超能力をもっており、それらは直接人を傷つけるものはなく、幻や盗みといったトリッキーなものが多い。これを打ち破るためのギミックもまた、大きなみどころとなっている。 ちなみに、『スーパーロボット大戦Z スペシャルディスク』では、キングゲイナーの過去の姿であるブラックオーバーマン「XAN−斬−」が登場している。これは、アニメ本編には登場しないオーバーマンで、「電撃ホビーマガジン(弊社刊)」の連載企画において、メカデザインを担当した安田朗(あきまん)が、新たに設定した機体であり、ファンにとっては非常にサプライズな参戦であった。

用語2

●シベリア鉄道公社

 世界最大の鉄道公社。鉄道王キッズ・ムントを総裁とし、リマン・メガロポリスに本社を置く。通称はシベ鉄で、実質的に全世界を統べる国際監視機構ロンドン・イマによって強大な権力を与えられており、シベリア全域を実効支配している。
 武力組織として、多数のシルエット・マシンやオーバーマンを所有するシベリア鉄道警備隊を持つ。その力の大きさから、横暴な態度をとることが多く、組織的にも賄賂をはじめとした汚職が横行しているため、人民からはあまり快く思われていない。
 違法行為であるエクスダスに対しては非常に厳しい措置をとるが、人的、物的資源の流出を阻止し、既得権益を保護するという側面もある。