マクロスF

◆メディア:TV ◆放映年月日:2008年4月〜9月
◆話数:全25話 ◆総監督・バルキリーデザイン:河森正治
◆監督:菊地康仁 ◆キャラクターデザイン:江端里沙、高橋裕一
◆メカニックデザイン:石垣純哉、高倉武史
あらすじ

 西暦2059年、銀河中心宙域を目指す移民船団マクロス・フロンティアに、近隣宙域を航行中のマクロス・ギャラクシーより、銀河の妖精の名をとどろかす大人気歌手シェリル・ノームが賓客として迎えられた。シェリルのライブでアクロバット飛行を行うことになった、美星学園パイロット養成コースの青年、早乙女アルトは、ひょんなことからシェリルに憧れる少女ランカ・リーと出会う。さらに彼は、ライブにおいて起こったアクシデントによってシェリルとも知り合い、そのプロ根性に舌を巻くのだった。だが、そんななか謎の生命体バジュラが、フロンティア船団に襲い来る。ランカを守るため、パイロットを失ったVF ー25メサイアに乗るアルト。なんとかランカを救い出したアルトは、ランカの兄オズマが小隊長を務める軍事プロバイダーS.M.Sに入隊することとなる。一方、ふとしたきっかけからシェリルと出会ったランカは、シェリルとアルトに励まされ、夢見ていた歌手への道を歩みはじめるのだった。そして、ランカは謎の小動物を拾い、あい君と名づける。

キャラクター

 この作品を語るうえで決してはずすことができないのが、ランカとシェリル、2人の歌姫の活躍である。内気ながらも、ひたむきに夢に向かって邁進するランカ。苛烈な性格の自信家でありながら、ふとしたときに意外なかわいらしさをのぞかせるシェリル。傾向が180度異なる彼女たちの魅力に、多くの視聴者がその虜となった。ランカはこの作品がデビューとなる声優の中島愛さんが、そのまま歌唱を担当。一方、シェリルは声優の遠藤綾さんが役を演じ、歌は歌手のMay'nが担当し、いずれも発売されたCDが次々と大ヒットとなった。
 2008年11月5日には、日本武道館でライブイベントが開催され、なんとその先行予約に23万件もの応募が殺到したという、アニメ史に残る一大事件となった。その人気は今もってとどまることを知らず、2010年12月にもライブイベントが行われ、大好評を博している。

用語1

●バジュラ

 マクロス・フロンティア船団を襲った超時空生命体。ビームを発したりミサイルと同等の機能を持つ生体ミサイルを生成するなど、人類の可変戦闘機に匹敵する強力な戦闘力を有するが、幼生体はかわいらしい小動物のような姿をしている。また、フォールド・クォーツという物質を体内に含有しており、フォールド断層を超えてのフォールドが可能となっている。
 脳は極めて小さく、ほぼないに等しいが、女王(バジュラ・クイーン)が統括するフォールド波を用いた思考ネットワークを通じ、群れ全体で思考している。これは腸内に共生するV型ウイルス(フォールド細菌)による作用で、V型ウイルスは人間など、他の生命体にも感染する。しかし、普通に人体に感染した場合は、ウイルスが脳内に定着し、その毒素によって罹患者が死に至ってしまう。例外的に、母親の胎内で感染した場合には腸内に定着して無害となる。
 なお、滅亡した先史人類プロトカルチャーは、太古の昔にバジュラと接触しており、その研究からフォールド技術を確立。文明を発展させたのだといわれている。

©2007 ビックウエスト/マクロスF製作委員会・MBS


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ストーリー

 初代『超時空要塞マクロス』から連綿と続く、マクロスシリーズ最新作である本作『マクロスF』。シリーズの基本テーマである、「歌」と「三角関係」、「3段変形する可変戦闘機」の3大要素を継承しつつも、初代『マクロス』の主要スタッフであり、『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』や『マクロス ゼロ』で監督、『マクロスプラス』では総監督を務めた河森正治氏が、新時代のマクロス像を追求した。異星生命体の襲来や、主人公がパイロットであるなど、大筋においては初代を踏襲して原点回帰を目指している。一方で、異星生命体が意思疎通のできない怪物であったり、主人公が女性のように美しい元女形であるなど、さまざまな形で従来の作品との差別化も図られているのだ。また、ランカがバジュラに狙われる理由や、シェリルの出生の秘密、グレイスの暗躍など、全編を通して数多くの謎が散りばめられており、ストーリーを牽引する大きな魅力の1つとなっている。

メカ

 ファイター、ガウォーク、バトロイドと、3段変形する可変戦闘機がキモの1つであるマクロスシリーズ。この作品では、シリーズの基本を押さえつつも、大胆な新要素が多数取り入れられている。従来の作品から最も進化したのは、メカが活躍するシーンのほとんどがCGで描かれている点だろう。すでにOVA『マクロス ゼロ』などで、CGによるバトルシーンは描かれていたが、TVシリーズとしての本格的なCG導入としては本作が初となる。CGを用いることにより、3段変形もさらに効果的に描かれることとなり、迫力の戦闘シーンが実現した。
 また、公募でペットネームを決定した新型可変戦闘機VF−25メサイアバルキリーもさることながら、初代マクロスと比べて1/4しかない中型艦であり、マクロスの名を冠するマクロス・クォーターにも注目したい。マクロス・クォーターは戦艦でありながらもガウォーク形態を有しており、そのスピーディな戦闘シーンは圧巻。戦艦なのだからそんなには動かないだろうという先入観を見事打ち砕いたのである。

用語2

●マクロス

 1999年7月に、地球に落下してきた巨大構造物のこと。その正体は、プロトカルチャーが生み出した戦闘用巨人種族ゼントラーディと交戦状態にあった、監察軍と呼ばれる勢力の戦艦であった。人類はマクロスを研究することで、フォールド技術をはじめとした当時の水準をはるかに上回る科学技術(OTM)を獲得した。
 当初はASS-1と呼ばれていたが、改修が完了した2009年には統合宇宙軍に所属する艦艇としてSDF-1の識別名が与えられた。しかし、進宙式当日月軌道に現れたゼントラーディの艦隊に対して、ブービートラップとして自動作動し砲撃を行った。この一件により、ゼントラーディは地球人類を敵として判断し、ここにのちにいう第一次星間大戦が幕を上げることとなる。
 本艦の大きな特徴として、要塞艦型から、人型の強攻型へのトランスフォーメーションが可能であることがあげられる。しかしながらこれは本来、主砲であるマクロスキャノンを発射するための応急措置によるものであった。また、本来はフォールド可能な艦となる予定だったが、ゼントラーディ襲来から逃れるためのフォールドに際して、フォールドシステムが消失してしまっている。