怖さと美しさが同居。フランス生まれの良質パズル『Tandem:影の物語』レビュー【電撃インディー#126】

まさん
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 電撃オンラインが注目するインディーゲームを紹介する電撃インディー。今回はMonochrome Parisが開発、Hatinh Interactiveがパブリッシャーとして配信しているフランス製のパズルゲーム『Tandem:影の物語』日本語版のレビューをお届けしていきます。

 『Tandem:影の物語』は、PC(Steam)で配信中のパズルアドベンチャー。家庭用ハードでも、Nintendo Switch版およびPS4版が11月25日に配信予定となっています。また、Xbox Oneでの発売も予定されています。

 内容は見下ろし型視点で探索する少女エマと、横スクロール風の視点になるテディベアのフェントンを切り替えながら謎を解いていく斬新なパズルゲーム。

 ティム・バートンやジュール・ヴェルヌ、コナン・ドイルやヴィクトリア時代の建築物からインスピレーションを得たと公式が言っているように、そうした作品の影響を感じる雰囲気バツグンの世界観と、それを彩る美麗なグラフィックに演出。そして、海外アニメのように描き込まれた3Dアニメーションが見どころです。

 なお、電撃オンラインは、尖っていてオリジナリティがあったり、作り手が作りたいゲームを形にしていたりと、インディースピリットを感じるゲームをインディーゲームと呼び、愛を持ってプッシュしていきます!

光と影の世界を切り替えるパズル部分が絶妙な難しさ!

 ゲームを起動すると、まずピクサーやディズニーの3Dアニメのようによく動くオープニングムービーが始まってビックリ。アニメーションのクオリティが高い……!

 ストーリーの合間に、このレベルのムービーが挟まってくるのにも驚きます。

 物語の主人公は10才の少女・エマと、なぜか自力で動く不思議なテディベア・フェントン。失踪してしまった資産家の息子トーマス・ケインの謎を解くため、エマたちは謎の邸宅を探索することになります。

 物語としては、とにかく謎だらけ。探索する邸宅は自分が小人にでもなったかのようなとてつもない巨大さです。不気味で怪しげな場所ですが、エマは強気。フェントンと一緒に謎を解きながら、邸宅の奥へと進んでいきます。

 ゲーム部分は、いわゆる3Dのパズルアドベンチャー。スイッチを押して扉を開けたり、ギミックを解いたりしながら道を切り開き、ゴールにあるクリスタルを入手するとステージクリアとなります。

 キャラクターを切り替えながら謎を解く……と書くと普通に聞こえますが、通常のパズルと大きく違うのはエマとフェントンの視点。見下ろし視点のエマと、その手前(天井)側に存在していて横スクロールアクションのような視点になるフェントン。まったく異なる2つの角度からパズルを解いていくゲームなのです。

  • ▲見下ろし視点で操作できるエマ。彼女が持っているランタンや物を動かして光の方向を変えることで、フェントン側に影響する影を作りだせます。
  • ▲エマよりも手前側で、横スクロールアクションの視点になるフェントン。彼は、エマ側が作り出した影の上を歩けます。クリスタルを取りに行けるのもフェントンのみ。

 そしてもちろん、お互いの協力が必要不可欠。エマ側はライトをつけたり、物を動かしたりして影の位置を変えることで、フェントン側に影の床を作りだせます。

 逆に、フェントンは影を足場にして移動し、スイッチを踏むことでエマの行く手を阻む扉が開放。2人の位置を調整しながらギミックを解いていくことが、ステージをクリアするためのカギとなります。

 と言うだけならカンタンなのですが、この難易度が絶妙。ミスリードのようにあと少しで成功しそうだと調整していたら、正解はその奥。別の物体で影を作るパターンや、よく見るとエマが移動できる隠し通路があるなど、わかってしまえばすんなり解けるのに騙されるのです。

 く、悔しい……! 理不尽ではないだけに悔しい!! パズルとしては難しい方ではなく、ひらめきが重要ですね。

 わかってしまうと本当にカンタンなのに、なぜ気が付かなかったのか。視点が違うからこそ心理的に死角になるのかもしれませんが、全体的には難し過ぎないパズルです。ちょっと悩むことはあると思いますが、何度か試行錯誤を重ねるうちに「あ、そうか!」と、すんなり解けた時の気持ち良さを味わえると思います。

不気味でこわ~いけど、どこか美しい世界とギミック

 本作は、なんとも言えない怖さや奇妙さを内包したホラーな雰囲気も魅力。あくまでも残虐な作品ではありませんが、巨大なピエロの首が飛び出すびっくり箱や、エマよりも巨大な包丁がスライムのような何かを裁断しているキッチンなど、オバケ屋敷のように不気味な場所が登場します。

 主人公のエマが強気で怖がらないのでドキドキする程度で遊べますが、そうは言っても気味が悪いのには変わりありません。

 動かし方を間違えるとエマが押しつぶされてしまったり、フェントンが串刺しになってしまったりすることも……!

 また、フェントンは影の上を歩けるものの、影の中で動くことはできません。うまく光を当てないと、身動きできなくなってしまいます。

 蜘蛛につかまったり、串刺しになったり、失敗の仕方によっては痛そうな場面もあって驚きますが、すぐにその場で復活するのでご安心を。

 このゲームでは、パズルを解くうえで“失敗になること”はありません。詰むような状況になっても少し手前から復活しますし、そういった意味ではストレスなく遊べます。

 おどろおどろしい怖さではなく、奇妙で怪しげな怖さのある邸宅を探索していくゲームプレイは、まるで海外の3Dアニメーションの世界に入り込んだような感覚。

 ステージの途中で美麗な演出のムービーが入り、値段分以上にリッチな作品です。移動する影の上に乗っていく場所など、ステージを進めると少しばかりのジャンプアクション要素も出てくるのですが、そこまで難しくないはず。世界観に惹かれた人やパズルが好きな人に、遊んで欲しいタイトルです。


Tandem: a tale of shadows is developed by Monochrome Paris and published by Hatinh Interactive. (C) 2020-2021 All rights reserved.

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