新規オンラインVRシューターまもなく登場!? Thirdverse北米スタジオインタビュー

Ak
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 VRマルチプレイ剣戟アクションゲーム『ソード・オブ・ガルガンチュア』の開発で知られる、新進気鋭のVRゲーム制作会社“Thirdverse”。

 今回は、取締役/CBO(チーフ・ビジネス・オフィサー)の大野木勝氏と、取締役/CTO(チーフ・テクノロジー・オフィサー)の藤川幸一氏に、VR業界やThirdverseの今後に関する両氏の見解のほか、北米スタジオで開発中の新規VRタイトルについてうかがっていきます。


 さらに、北米スタジオで制作を指揮するDax氏(スタジオディレクター)とBrandon氏(アートディレクター)に、より具体的な新規VRタイトルの姿についてインタビュー! 気になる情報を聞くことができたので、あわせてチェックしてください。

Thirdverseキーパーソンインタビュー

■取締役/CBO 大野木勝氏

 ウェブマネー、GCREST Americaなどに在籍。2012年にgumiに入社し、海外事業全般を担当し、アメリカ、欧州、韓国、シンガポールなどでの事業立ち上げに関わる。

 VR事業に関しては、2015年終わりに國光宏尚氏(代表取締役CEO/Founder)とともに東京・韓国・北欧にインキュベーション(※1)、米国に投資ファンドを立ち上げ、投資活動を主に行う。

 Thirdverseへは2020年10月から正式に入社。現地プラットフォーマーや他のVR関連企業と連携を取り、マーケティング、コンテンツクオリティなどの様々な側面から経営に参加している。

※1:起業に対して不足する資源を提供し、成長を促進するビジネスモデルのこと

■取締役/CTO 藤川幸一氏

 2000年にソフトウェアエンジニアとして最初期のYahoo!モバイルを開発。アジャイル開発コンサルティングやデリバティブ取引システム開発の経験を経て、2009年シリウステクノロジーズにテクニカルプロダクトマネージャとして入社する。

 2010年、シリウステクノロジーズがYahoo! JAPANに買収されたのを機に、データ統合を行い分析を行いやすくする事業としてFlyDataを創業し、CEOに就任。

 Thirdverseでは、主に日米のエンジニアリングチームのマネージメント業に携わる。

北米ではすでにVRはカジュアルなジャンルになっている

――北米のVR市場について、今どのような状況であるのか、また日本との違いや温度差などあるようであれば教えてください。

藤川氏(以下敬称略):
 VR市場は、圧倒的に北米がメインになっています。学校で友だちが普通にプレイしているという状況です。Oculus Quest 2発売以降普及のスピードが速く、カジュアルなジャンルになってきています。

 北米ではいかにカジュアルな層に遊んでもらえるかの勝負になっていますし、日本でもいつかはそうなると思っています。

大野木氏(以下敬称略):
 16歳の息子の友達の家にもOculus Quest 2がありました(笑)。かなりVRが一般的になってきていると感じますね。

 Meta(元Facebook)も北米市場で多大な広告費を投入していて、一例として『Beat Saber』では、ビリー・アイリッシュとコラボしてラスベガスに大きな看板を出すなどの宣伝を行っています。そうしたことからも、VR市場の盛り上がりを感じることができますね。

 一方日本では、VRゲームに日本のIPが少なく、まだまだ洋ゲー好きのためのものという印象が持たれているように感じます。

 10月に発売されたばかりのOculus Quest 2版『バイオハザード 4』などのタイトルが火付け役になって今後VRの大作タイトルが増えてくれば、もっとVR市場全体が盛り上がるかなと思います。

――お二人が考えるVRならではの魅力と、今後VRが拡大していくために必要な課題について教えてください。

藤川:
 VRの魅力を知ってもらうためには、やはりキラータイトルやキラーアプリの登場が重要になってくると思います。

 「これをやるために、VRが必要なんだ」という明確な目的があれば、より普及できるのではないかと。

 VRゲームの開発にはどうしても時間がかかってしまうので、それも大作タイトルの不足につながっているのかもしれません。

大野木:
 Oculus Quest 2の登場など、VR機器の進化でVRゲームを楽しむ土壌は作られつつあるので、あとはやはりキラータイトルの登場が待たれるところかと思います。

 あとは、北米スタジオの会議で使用しているビジネス会議用VRアプリ『Horizon Workrooms』のようなゲーム以外のVRコンテンツの普及も重要ですね。

 アバターで会議するとリアルに話せて、モニター越しよりも理解度が深まる……ミーティングに関わらず、こういったVRならではの体験が広まると、VRの魅力も伝わるものかと思います。

 いかにVRヘッドセットを被るという障壁を突破するかが重要なのではないかと思います。

北米スタジオで開発中のタイトルは、ヒーローベースのVRシューター?

――Thirdverseの北米スタジオで手掛けているプロジェクトはどのようなものでしょうか? Thirdverseの代表作ともいえる『ソード・オブ・ガルガンチュア』を踏まえての作品になりますか? それとも全く違うものになるのでしょうか?

藤川:
 まだ詳細は言えませんが、PvPのVRシュータータイトルになります。ヒーローベース(様々な主人公クラスのキャラクターが登場する)のもので、VRならではの体験や駆け引きができるタイトルになる予定です。

 『ソード・オブ・ガルガンチュア』開発の経験が生かされた部分もありますが、ジャンルとしては別のタイトルになります。

――日本と北米のスタジオで、ノウハウの共有などはしているのでしょうか?

大野木:
 両チームで得たお互いのノウハウを共有しています。

 将来的にメタバース(※2)を作るため、多岐にわたるジャンルのVR作品を作ろうというのが、Thirdverseのビジョンです。わかりやすくいうと、『ソードアート・オンライン』のような世界を作ろうということですね。

 そういったメタバースの世界を作るうえでは、剣と魔法のファンタジー世界のほかに、シューター系も必要だということで、両軸での開発を進めています。

※2:メタ(超越)+ユニバース(宇宙・空間)の合成語。インターネット上の大規模な仮想世界のこと

――Thirdverseの日本でのプロジェクトを北米スタジオはどのように見ていますか? 日本のタイトルとの差別化などは気にしていますか?

藤川:
 競争意識よりは協力意識が強いですね。張り合うよりは、フィードバックをお互いの開発に生かす形にしています。

――VRは現状主にOculus Quest 2がメインプラットフォームだと思いますが、コンシューマやスマホなど、そのほかのプラットフォームでのVRの今後はどのようになっていくとお考えでしょうか?

大野木:
 コンシューマー市場としてはPlayStation VRの後継機にもちろん期待していいます。

 TiktokがVR企業Pico Technology(ピコテクノロジー)を買収したこともあり、今後は中国市場に関しても注目すべきでしょう。

 「世界ナンバーワンのVRゲーム開発会社になる」というのはThirdverseの設立目的のひとつではあるので、今後も多方面にわたるチャレンジを続けていこうと思っています。

藤川:
 やはりスマホにも使われているAndroidベースのもののほうが速く広く普及できるメリットがあるので、メインの市場にはなるのかと思います。

 もちろん、コンシューマーは最先端の体験ができるという点で住み分けができるので、Thirdverseとしてはそちらの開発も進めていきたいですね。

Thirdverse北米スタジオインタビュー

■Dax氏(スタジオディレクター)

■Brandon氏(アートディレクター)

――スタッフは各地に居てのリモートワークとのことですが、コミュニケーションで開発が手こずっている部分などはありますか? 

Brandon氏(以下、敬称略):
 日頃のコミュニケーションは、メール、Slack、ビデオ会議など必要に応じてツール使い分けています。

 私たちはCOVID-19流行の前から、北米だけでなく様々な国のスタッフと一緒にリモートでプロジェクトを進めてきたので、全世界的なリモートワークにも全く問題なく開発チームを対応させることができました。

 一番苦労しているのは各国の時差ですね。コミュニケーションは問題なくとも、働く時間が真逆のスタッフもいるので連携が大変な時もあります。

――今回、新規VRタイトルにかかわる8キャラのシルエットが公開されましたが、VRシューター&個性が感じられる8キャラ……非常に気になりますが、少しだけタイトルについて教えてください。

Dax氏(以下、敬称略):
 まだ正式なタイトル名は決まっていませんが、ジャンルは“VRマルチプレイオンラインシューター”です。

 全てのヒーロー(プレイヤーキャラクター)が、銃器だけでなくそれぞれもつユニークな特殊スキルを駆使してVR空間内で戦います。

Brandon:
 Daxが素晴らしい世界観設定を考えてくれた後、私たち開発チームは時間をかけて各ヒーローのバックストーリーを設定しました。

 各ヒーロー固有のストーリーは、全て大きな世界観の中で統一されており、それらをどのようにSNS等を通して伝えていくかも意識しています。

――銃を持ちつつ、もう片方には何かしらのオブジェ? また銃ではなく武器を持ったキャラもいるようですが? カスタマイズ性や武器種のバリエーションがあるということでしょうか?

Dax:
 各ヒーローは、特殊スキルに応じたアイテムを持っています。他の武器とは異なり、装備を変更したり他のプレイヤーから奪ったりすることはできません。

 ヒーロー固有のアイテムの他には、様々な武器を選んで装備することができます。追加のカスタマイズも検討中です。

――新作はVRシューターとのことですが、本作で重視している点はどこでしょうか?

Dax:
 VR空間ならではのUXを重視しています。たとえば、スキルを発動するときにコマンドで選ぶ等ではなく、手のジェスチャーなどを使うことです。

 もちろん、各ヒーローごとにスキル発動のジェスチャーも違います。これにより一般的な2Dのシューターゲームよりも、よりインタラクティブで没入感のあるゲームプレイが可能になります。

――シューターということで、激しい動きでの“酔い”が気になるところですが? ほか本作で苦労している点などがあれば教えてください。

Brandon:
 誰もが快適にプレイできるようにするためには、移動手段をはじめ、VR空間内での様々なオプション設定が必要です。

 これまで制作してきたVRゲームでも、プレイヤーが酔いを最小限に抑えられるような設定を実装してきました。もちろん今作でも実現していきます。

――新作を楽しみにしている北米のユーザー、そして日本のユーザーへのアピール&メッセージをお願いします。

Brandon:
 これまでのFPSというジャンルと歴史に敬意を払いつつ、VRならではのユニークな体験と遊び方を持った、新しいFPSを提案していきたいと思います。

Dax:
 VRシューターというジャンルには、まだ多くの新しいインタラクションや発見があります。

 私たちの目標は、シューティングゲームというジャンルを、VR空間内でさらに進化させることです。

 今はまだプロトタイプの段階ですが、現時点の状態でもとてもエキサイティングなものに仕上がっています。どうかご期待ください!

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©Thirdverse, Co., Ltd.

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