台湾に実在した義賊・廖添丁(りょうてんてい)を描く『添丁の伝説』レビュー。アクションゲームとして出来がいい!【電撃インディー#122】

紅葉つかさ
公開日時

 電撃オンラインが注目するインディーゲームを紹介する電撃インディー。今回はCGCGとNeon Doctrineから11月2日に発売されたNintendo Switch/PC用ソフト『添丁の伝説』のレビューをお届けします。

 なお、電撃オンラインは、尖っていてオリジナリティがあったり、作り手が作りたいゲームを形にしていたりと、インディースピリットを感じるゲームをインディーゲームと呼び、愛を持ってプッシュしていきます!

実在した義賊を描く物語

 本作は、20世紀初頭の台湾に実在した廖添丁(りょうてんてい)という人物を主人公にしたアクションゲームです。

 廖添丁は、いわゆる義賊で悪人から盗んだものを貧しいものに分け与える活動をしています。

  • ▲作中では、“リャオ・ティエンディン”と台湾での読み方になっていました。

 本作の舞台は台北市大稲埕というエリア。レトロな建物が建ち並ぶ街並みがいかにも実際に廖添丁がいた時代を思わせるような作りになっています。


 ゲーム開始時点では、廖添丁の行方が分からなくなっており、長らく姿を見せていなかったようでしたが、王文長が街で悪行を働いているときにその姿を現すことで物語が始まります。

  • ▲この王文長という人物は人のものは勝手に持っていくし、自身が経営する会社の茶葉を偽装したりもするかなりの悪人でした。


 第1章は、過去に一度懲らしめたことがある王文長が相手となります。この後はこういった悪人だけではなく、警察なども相手にします。

 悪人であれば、どんな相手だろうと標的にするというのが本作の廖添丁という人物なのですね。

 そんな、廖添丁が悪人を相手にする物語は、マンガのようなコマ割りで進行するのも特徴で、このときにはボイス付きで進行します。

 本作では、日本語を含むいくつかの言語でプレイできます。日本語字幕が表示されるだけで遊びやすくなると思うのでかなりありがたいですね!


素早い身のこなしで悪人を翻弄

 物語が進むと次は、廖添丁を操作するアクションパートが始まります。アクションパートでは、短剣を使った素早いアクションを楽しむことができます。

 基本的にボタンを連打するだけで攻撃が自動でつながるので、かなりプレイしやすいんじゃないかと。

 ただ、短剣以外に腰帯やカンフーを使った攻撃もでき、これらを組み合わせることでさらに長く攻撃をつなげられるようになります。

 その分、操作が少し複雑になってしまいますが、一方的に敵を攻撃して何もさせず倒すことも可能です。うまく攻撃をつなげられたときには、やっぱり嬉しいし、気持ちいいですね。


 なお、腰帯はほかの攻撃方法とは違って少し特殊でいつでも使えるわけではありません。敵に攻撃を加えていき、敵の体が黄色く光った状態で初めて使用できるようになります。

 腰帯を使った攻撃は、敵にダメージを与えるというより、離れた敵を自身のそばに引き戻したり、敵を上空に飛ばしたりといった効果になります。そして、もっとも大きい効果として、腰帯を使った敵から武器を奪うことができます。

  • ▲奪える武器は警棒や斧といった近接武器から拳銃やロケットランチャーなどさまざま。

 奪った武器は、武器ごとに決められた回数だけ攻撃すれば使用できなくなってしまいますが、武器を持っている敵からなら何度でも奪えるので、どんどん使っても問題ありません。

 武器を奪っていると、短剣での攻撃ができず、新しく武器を奪うとすでに持っている武器は自動で捨てられてしまいますが、武器を奪われた敵は素手で戦うことになり、敵の弱体も図れるのでむしろ使わない手はないといった感じですね。

  • ▲廖添丁は遠距離を攻撃できないので、そういった武器を奪えると戦闘が楽になります。

  • ▲遠距離攻撃は回避するほか、タイミングよく攻撃することで跳ね返すこともできます。

 そうはいっても、戦いを続けていると敵の攻撃を受けて自身のHPが減ってしまうこともあります。そんなときには、アイテムを使えば回復できる他、ゲームデータのセーブとHPを回復できるチェックポイントもあるので、回復で困ることはそこまでないと思います。


  • ▲回復アイテムをストックしていれば、いつでも使用できます。もし上限まで持っていればその場で使用できるので無駄にもなりにくいです。

  • ▲1ステージに用意されているチェックポイントはかなり多い印象を受けました。ちなみにここで回復するとお茶を飲むアクションが見れます。

 ステージの最後には、いわゆるボス戦が待っていますが、ボスなだけだって豊富な攻撃手段を持っている強敵になっています。



 ステージ自体にギミックが用意されていて、ボスのHPが減るとそこからも攻撃されます。ボスの攻撃だけではなく、ギミックでの攻撃も激しいのでボスだけに気を配っていられないのもボス戦の特徴ですね。

  • ▲金色の銅像が爆弾を投げたり、銃を撃って攻撃してきます。正直、ボスより攻撃範囲が広いときもあるので、かなり邪魔です。

お守りや収集アイテムを集めて廖添丁は強くなる

 ステージに挑戦しているときや、街を歩いているとさまざまなアイテムを入手することがあります。



  • ▲街にいる乞食にお金を渡すことでアイテムが貰えます。

 これらのアイテムのうち、お守りは装着することで、それ以外は入手するだけで廖添丁の能力が強化されます。

 お守りは装備できるものに制限があったり、収集アイテムでの強化も上限があったりと無制限に強化できるわけではありません。基本的に強化方法はここが中心になるので、できるだけお守りは集めておくといいです。



  • ▲能力の強化だけではなく、説明からその時代のことを知ることができるのもいいですね。

  • ▲“キッコーマン醤油”はいまでも売っているものですよね。

 入手できるものは、アイテムだけではなく、お金を払うことで新しい短剣を買うこともできます。

 アクションで武器を奪うことができるとはいえ、自身が持つ短剣で攻撃することが多いので、武器の強化もできるだけやっておきたいですね。

  • ▲乞食にお金を渡す時が3円なので、武器の強化はかなり高額。ちなみに、100年前の1円は現在の2万円相当だそうです。


 他にも、物語を進めていくと、新しいアクションが追加されていきます。カンフーのアクションなら、敵に攻撃できることはもちろん、ステージのギミックを壊すことも可能になります。

 壊せるギミックなどでは、隠されているルートを発見できることがあります。その奥ではアイテムを入手することもできるので、壊せるギミックを発見したらカンフーのアクションを使っていきたいですね。



  • ▲アイテムがあるルートには、宝箱の絵が描かれているので一目瞭然。

 習得できるのは、攻撃以外のアクションもあり、ステージの進行にも必要になってくる場合もあります。“壁跳び”なんかは、何度でも連続で使用できるので、ステージの攻略でかなり便利です。



 また、ステージにはどうやっても進めなさそうなルートもありますが、そういったところも新しいアクションを覚えることで進めるようにもなります。

 一度クリアしたステージも再度挑戦することができるので、新しいアクションを使用しながら、今までは進めなかったり、見つけられなかったりするルートを探してみるのもいいかもしれませんね。

 こういうやり込み要素的な部分は個人的に好きなので、ついついすみずみまで探索してしまうところ。

 本作は、約100年前に実在した人物をモチーフにしたアクションゲームです。そこまで複雑な操作はありませんが、操作次第で攻撃をつなげて敵を簡単に倒したり、アクションを駆使して絶対に進めなさそうなルートを見つけて進んだりと、自分次第でやれることが増えていきます。

 アクション面以外でもアイテム収集などもあり、アイテムの説明ひとつとってもこの時代のことがわかるようになっており、ゲームを楽しみながら100年前の台湾のことを知る絶好のチャンスだと思います!

 ステージ中のチェックポイントの数や敵の強さなどのバランスもいい感じなので、アクションゲームが得意、不得意にかかわらず、楽しめる作品なのではないでしょうか。


©Neon Doctrine all rights reserved

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

関連する記事一覧はこちら