MAGES.の浅田誠さんを直撃。『ANONYMOUS;CODE』や『ミステリート』の現状、新機軸のタイトルの経緯とは!?

sexy隊長
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 MAGES.の取締役であり、ゲーム事業部本部長である浅田誠さんへのインタビューを掲載します。

 浅田さんには、『ANONYMOUS;CODE』やアニメ版権タイトルを始めとするタイトルの開発状況に加えて、同社ゲーム事業の今後、さらに昨今のゲーム事情についてお話を伺いました。

外部との開発が増えたこの8年

ーーMAGES.入社から8年が経ちます。8年前と今を比べて変わった部分はありますか?

 まず、「もう8年経っているんだな」ということに改めてビックリしました(笑)。

 前職だった株式会社ケイブでもゲーム事業の管掌役員として現在と同じような立ち位置だったので、環境的な部分での変化はあまりないですね。

 ただユーザーのターゲット層がだいぶ変わったことを感じています。ケイブもMAGES.も基本的にはユーザーの年齢層が高いのですが、MAGES.はアニメ系の作品も作っていることもあって中高生の人も結構多いですね。

 そのため、PCタイトルの移植やシューティング作品を作っていたころと比べると、ユーザーが若くなったという印象があります。

ーーターゲット層が変わったことに際して、変わったことはあるのでしょうか?

 それはありますね。例えばアドベンチャーゲームは、昔でいうとシナリオ量2MBがスタンダードで、プレイ時間でいうと20~30時間位になります。ただ、昔からゲームをプレイしている40~50代の世代からすると、「シナリオが長いのはちょっと……」や「長すぎて最後までプレイできない」という声があります。

 「じゃあ、ちょっと短くしようか!」と短くすると、今度は若いユーザーから「シナリオが短い」や「もの足りない!」という声があがるので、バランスがすごく難しいところです。

 そのため、同じファンでも若いユーザーと昔からのユーザーで、だいぶ違うと感じます。

ーー他に、MAGES.に入って変化したと感じる要素はありましたか?

 ケイブ時代は、内製の開発多かったんですけど、MAGES.の場合は同時に動いてる案件数が多いので内製の開発よりも、外部の開発メーカーにお願いすることの方が多いんです。そのため、内製主体の開発から外注主体の開発に変わったことが1番大きな違いだと思っています。

 また、外注主体に変わったこととも関係するのですが、ケイブ時代は自社の中だけで完結することが多かったんですけど、MAGES.に入ってからは他社様と組んで制作することが増えています。

 先日、任天堂様から発売された『ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者・うしろに立つ少女』はちょっと特殊な例ですがスタートは1人で空いた時間に作業してみたいな感じでした。

ーー企画が成立する前からテスト版を制作されていたとお聞きして、驚きました。

 企画書だけだと伝わりづらいので、どうせなら作ってしまえと思ったのが功を奏したのか、無事発売され皆様に遊んでいただけたと思います。

テレワークで変わったことを質問

ーーここ1年半ほど、世間的にも激動でしたが、ゲーム制作で大変だったことはありましたか?

 ちょうど『ファミコン探偵倶楽部』制作中のことですが、新型コロナウィルスが猛威を振るうようになって、途中からテレワークになってしまったことが大変でした。テレワークでの仕事の仕方がまだ浸透していなかったため、対応に時間がかかってしまい、結果的に発売が遅れてしまったと思っています。

 対面で打ち合わせをするのと、画面越しで打ち合わせするのでは、だいぶ違うなという戸惑いがありました。

 なんと言いますか、発言からその人の熱量が感じられなかったり、タイミングを見計らっていたら流れをつかめずに喋れなかったり、打ち合わせが終わったあとに反省することが結構ありました。

 会社で3週間ぶりに集まった際に久々に対面で打ち合わせをしたら、「打ち合わせの熱量が全然違うな! 会話の情報量も違うな!」と感じて、テレワークはなかなか難敵だと思いました。

ーー先ほどの話ですが、オンライン打ち合わせではタイミングを見計らうことや、テレワークの際にテキスト入力する不便さなどはありますね。

 そうですね。例えば、「ここをちょっと直して」という軽い修正なら、目の前の画面で指示すれば10秒、20秒で済む内容が、キャプチャーを撮って、赤入れをして、送信をして返事を待つみたいにしていると30分ぐらいかかるんですよね。「この時間の長さはなんなんだ!」と(笑)。

 そんな状態がずっと続いていくと、「あ、こうやってゲームは遅れていくんだな」と思いました。

 本当に、対面で人とやり取りを行うありがたみを感じました。

ーー逆にテレワークでよかったことはありましたか?

 通勤時間を気にせず、仕事時間も気にせずに作業できちゃう部分は、作り込むという意味ではかなりよかったですね。

 ただ誰かが止めてくれないと、一生やり続けるなとも思いました(笑)。

 「今日はご飯を食べて終わりにしよう!」と思っていても、ご飯を食べながら「あぁ、こうすればよかったのか」と思いつくと、また仕事に戻ってしまう。そのため、メリハリをつけるのには苦労しました。

ーーここ最近では、コロプラの傘下に入ることが話題になりました。そこから1年半が経とうとしていますが、新たに感じたことや変化したことはありますか?

 コロプラ様と一緒になって大きく変わったってことは実はあまりなくて、基本的には今まで通りにやっています。

 唯一変わった部分と言えば、コロプラ様はアプリメインでやっているので、アプリゲームの開発時に、分からないことを聞けるというのが新たにできるようになった部分ですね。

ーー今後、その環境の変化によって産まれてくるものがあるというイメージでしょうか?

 協力できるところは協力しているので、今後、影響が出てくるだろうと思っています。ただ、コロプラ様のグループの中で、コンシューマでパブリッシャーまでやっているのはMAGES.しかいないので、どのようなシナジーが生まれてくるのかは、まだ未知数です。

『ANONYMOUS;CODE』に大きな動きが!

ーーアドベンチャーゲームといえば、『ANONYMOUS;CODE』のPV公開から1年が経ち、続報が出ていないですが……今どのようなステータスになっているのでしょうか? 言える範囲で結構ですので、お願いします。

 志倉(企画・原作の志倉千代丸氏)の作品に対するこだわりがかなりあるため、ブラッシュアップやクオリティアップを行っている最中です。

 発売日などは志倉の方から発表されると思います。すごくお待たせしてしまい申し訳ないのですが、ここは続報をお待ちいただければと思います。……今度は、しっかりとした情報とあわせて出ると思っていただければ!

ーーついに情報が出てくるわけですね!

 もともとの発売予定が2021年秋になっていたのですが、もう秋になっているので(汗)。発売は2022年にはなりますが、正式な発表に向けて準備を進めています。

ーー2015年に開発が発表されて以来、ここまで時間がかかってしまったことの理由はどちらにあるのでしょうか?

 やはり、科学アドベンチャーシリーズへのこだわりでいろいろ試行錯誤していたと思います。

 ただ遅れた分、すごくいい作品に仕上がっています! これ以上お待たせすることはないはずなので、ご期待ください。

ーー科学アドベンチャーシリーズに関して、他にも新しい動きはありますか?

 現行機種ではプレイする環境が乏しかった『CHAOS;HEAD NOAH』と、その続編の『CHAOS;CHILD』の2作をパッケージングして発売します。

 『CHAOS;CHILD』は現在でもPS4でプレイできるんですが、『CHAOS;HEAD NOAH』はPS Vitaまで戻らないとプレイできないんですよね。また『CHAOS;CHILD』はSteamでも販売しているのですが、『CHAOS;HEAD NOAH』は販売していないので、プレイしたくてもできません。

 未プレイの方はもちろん、既プレイのファンからも「『CHAOS;HEAD NOAH』をプレイしたい!」という声が大きかったので移植を決めました。発売は来年の2月を予定しています!

  • ▲『CHAOS;HEAD NOAH』
  • ▲『CHAOS;CHILD』

ーー移植するにあたり、新シナリオや追加要素はあるのでしょうか?

 現在、そこをどうするかを話し合っているのですが、お求めやすい価格で発売できるように、中身をいじらずに、そのまま移植することになると思います。

 決まり次第発表いたしますので、こちらも楽しみにしていてください。

ーー科学アドベンチャーシリーズの新企画始動が発表されていますが、どんな展開を考えているのでしょうか?

 ここで何か新しいものを発表してしまうと、「そのまえに『ANONYMOUS;CODE』をちゃんと発売しろよ!」と言われてしまいそうなので、まずは『ANONYMOUS;CODE』をしっかり発売したいと思います。その後、志倉の方から新しいシリーズの発表がされると思います。

 志倉の企画は実はたくさんあって、薄く動いている状況。発表できる状態がきたら、順次発表されていきます。

アニメ版権タイトルで意識していることとは?

ーー現状、御社内で動いている企画はどのくらいあるのでしょうか?

 細かいタイトルから大きめのタイトルまであって、おおよそ7から8ぐらいが同時進行で動いています。

 それこそ『ANONYMOUS;CODE』とか『ファミコン探偵倶楽部』は、それなりの時間をかけて制作してますね。長いものは本当に長いですが、短い開発期間のタイトルは1年未満で終わるのも特徴です。

ーーアニメ版権のタイトルは短いスパンで作られている印象があります。

 そうですね。アニメ版権タイトルに関しては、放送が終わる前や終わってから2~3カ月以内に発売できないと旬を逃してしまいます。そのため、プロセスを分けてスピード重視で作っています。

 放送前から手掛けることが多いのですが、たまに方向性のすりあわせがうまくいかず、タイミングをあわせらないこともありながらも、基本的には放送終了から3カ月以内で発売したいと思ってます。

ーーアニメ版権のタイトルで重視していることは?

 版権タイトルは、その原作者やアニメの委員会が持っているイメージから外れないように作っていくのが、まずは大前提になります。

 そのため、「こんな感じで制作すればいいのかな?」という勘所をつかむまでが苦労します。それを把握できてしまえば、そのあとはスムーズに進んでいくので、作品のイメージをどこまで深く理解できるのかが重要ですね。

ーーアニメ版権のタイトルで特に苦労されたものは?

 以前に『ご注文はうさぎですか?』をゲーム化させていただいたのですが、その時に……ちょっと軽いネタバレになってしまいますが、メインキャラの女の子が風邪を引くシーンがあったんです。

 アニメを見ていたファンからは、風邪を引くシーンで「鬱展開だ……」と反応されていました。そんな騒ぎになると思ってなかったので、ビックリして匙加減が難しいと感じました。

 アニメを見ていた視聴者がプレイして喜ぶ展開をうまく汲み取って、それをゲーム内で展開していけるのがアニメ版権タイトルの正解かなと思っています。

ーー逆に、アニメ版権タイトルのいいところは?

 アニメ版権のいいところは、やはり知名度が最初からついているところです。

 その反面、難しさもあって、その旬が過ぎた瞬間にユーザーが別のコンテンツに移ってしまいます。そこの波がものすごい作品もあるので、旬のタイミングで出さないといけないわけです。

 ただ最近だと、アニメ一期が終わった時点で、劇場版の発表があったり、人気が落ちなかったりするパターンもあります。以前よりもスパンを長く見ているのかと感じます。

 我々としてはゲームがアニメ人気の後押しになったり、逆にアニメに後押しされたりと、持ちつ持たれつ的なところがあると感じています。

▲画像は、11月11日に発売となる『ゆるキャン△ Have a nice day!』。

ーー先ほどもあったように、タイミングは大事ですが、息の長いコンテンツもあると。

 我々が子どものころは、アニメはリアルタイムで見るか、ビデオを撮り逃したら見ることができない時代でしたが、今は動画配信サービスがいろいろとあるので、いつでも見ることができます。

 一方で、さまざまなものがある“コンテンツ天国”なので、次から次へと移っていける状況にあります。みんなが興味を示している、食いついているタイミングにうまく情報を出していかないと、すぐに他のコンテンツに気持ちを持っていかれてしまうわけです。

 そのため、最終話が放送された3カ月以内に出すことを心掛けています。

 また、人気があるアニメをゲーム化すれば売れるという時代は終わってしまったと感じます。それもあって、ゲームを作る側は工夫が必要ですね。

ーーそんなコンテンツ天国である昨今、おもしろいと感じた作品はなんでしょう?

 最近だと『東京卍リベンジャーズ』がおもしろかったですね。

 未だに話題性がありますし、お話も魅力的。うまく世界観を構築していると思いつつ、内容は我々が得意とするループものなので、「いろいろな分岐を作ったらおもしろそうだなぁ」とか個人的に考えながら作品を見させてもらっていました。

 最近は忙しかったので、アニメをあまり観られていないのでそれぐらいですね。手掛ける作品のアニメは、設定やキャラクターを学ぶために絶対に観るようにしているので時間は足りないです。

これまでにないソフトを展開する意図は?

ーー2020年にリリースされた『OGRETALE -鬼譚-』(オウガテイル)は、ドット絵ながらオリジナリティを感じる作品でした。本作の開発経緯やリリース後の評判をお話いただけますか。

 本作は、盛(盛正樹氏)がプロデューサーで制作しているタイトルです。彼はMAGES.にいながら、アドベンチャー以外を制作している珍しいプロデューサーで、シューティングゲームの『バレットソウル -弾魂-』や、格闘ゲームの『ファントムブレイカー』シリーズなどを担当しています。

 以前に横スクロールベルトアクション系の『ファントムブレイカー:バトルグラウンド』を制作した経験があり、もう一回ベルトアクションを作りたいということで『オウガテイル』を制作することになりました。

 現時点ではSteamでしか販売されていないのですが、今後Switchへの移植を予定しています。それによって、より多くの人にプレイしていただけるようになるかと。

ーーSwitch版はSteam版をそのままプレイできるのでしょうか?

 Steam版をプレイしたユーザーから、改善点や意見などをいただいているので、いろいろと反映しつつ、移植作業をしているようです。

ーー今後も、このような配信限定作品のリリースは続いていくのでしょうか?

 我々もデジタルオンリータイトルを作ってもいいのかなと思って、そちらにも力を入れている状態です。

 昔から家庭用ゲーム機をやっていた人間なので、昨今のようにデジタルでゲームを買うことは少し前では考えられない話でした。特に自分は「パッケージ版を買うよ!」というタイプで、うちのタイトルの購入層もそのような感じでした。

 ただ、コロナの影響が大きいように思うのですが、デジタルで買うことが浸透してきていると感じます。うちのタイトル購入層はコアなファンでコレクターが多いので、以前はパッケージ版95:デジタル版5ぐらいの割合でしたが、数字に如実に表れていて最近では70:30ぐらいの割合になっています。

ーーデジタル版の伸び率がかなりすごいですね!

 5%が30%まで伸びてきているのはかなりインパクトがありました。自分自身も、コロナ禍で外に出られないこともあって、ちょっと気になったタイトルをオンラインストアでダウンロード購入して遊んでみたのですけど、案外慣れてしまうのだな思いました。

 もちろん、タイトル別の強弱はあるにしても伸びてきているのは確かです。しかも、ストアを見ていると1,000円、2,000円でも楽しめるゲームがたくさんあることにも改めて驚きましたね。

 デジタル配信は、新しいユーザーを獲得するいい機会ですし、チャレンジできることなので、我々も配信タイトルに力を入れようとなってきた感じです。

ーーチャレンジという意味では、先日発売された『宮本算数教室 賢くなるパズル 大全』は、これまでの御社タイトルとは路線が大きく異なるタイトルだと感じました。リリースの経緯などをお話いただけますか。

 うちのプロデューサーの1人から、「教育系のソフトってどうですか?」という話が出てきました。そこから教育の一環でこういうタイトルを出してみてもいいだろうという流れとなり、試してみる形でリリースさせていただきました。

 ただ、せっかく出したわけですし、1作品だけで終わるのは少し淋しいので、いくつかシリーズ化して、この後も出していく予定です。

ーー教育系ゲームは、地味に昔からあるジャンルになりますね。

 自分らも子どものころ、母親にやりたくもない計算ゲームとかやらされました。「なぜ親は計算ゲームを買ってくれたんだろう。なぜゲームしてまで勉強をしなきゃいけねーんだよ!」と感じていたわけですが、「ゲームでもいいから勉強してほしい! ゲームだったら勉強してくれるのでは!?」という願望みたいなものだったことが分かりましたね(笑)。

 『宮本算数教室 賢くなるパズル 大全』は、そんな“The勉強!”のような堅苦しいゲームではなく、ゲーム感覚で学べることがコンセプトになっていて、価格も抑えめにしているので、いろいろな人に気軽に遊んでもらいたい作品です。

ーー新しい路線のタイトルという意味では、リズムゲーム『たいみんぐぅ〜』がリリースされるとのことですが、どんな経緯で制作されたのでしょうか?

 先ほど話をした、配信販売できて手軽に遊べるゲームを考えた時に、「リズムゲームであれば子どもから大人まで遊べるな」と思ったことに加えて、これまで幅広い層に向けたゲームタイトルをあまり作っていなかったので、そのようなゲームを一回作ってみたいと思ったのがきっかけです。

 お求めやすい価格になっているため、遊んでもらえれば新しいイメージの形をお見せできると思っています。

ーー開発チームもコンパクトだったんでしょうか?

 そうですね。かなりコンパクトにまとめて制作しました。最初は落書きのようなアイデア出しから始まり、「こんな感じでどう?」と思いつきを混ぜつつ進んでいった開発でした。むしろコンパクトな開発チームだったのがよかったのかもしれません。

 これまでMAGES.にはなかったゲームになっているので、アドベンチャー好きのユーザーや、アニメ好きのユーザーが買うタイトルというよりも、これまでとは異なるユーザー層に向けたタイトルになっているのではないかと思っています。

ーー『宮本算数教室 賢くなるパズル 大全』、『たいみんぐぅ〜』と“MAGES.らしくない作品”が続きますね。

 この後もこのような“MAGES.らしくない作品”が続いていくと思います。

 割合的には、7割ぐらいは今まで同様のアドベンチャーゲームで、3割ぐらいは新しい試みのお手軽なライト向けゲームをデジタル配信で……というバランスです。

 PC-98や88時代にいろいろな人が、作りたい作品を低予算で制作していました。感覚的にはそんなノリで、気軽に楽しめる作品を制作していきたいと思っています。開発費を抑えることで、お求めやすい価格で遊んでもらえるようにしていきます!

音沙汰のない『ミステリート』に迫る。リメイクしたい作品も質問

ーー久しく情報が出ていない『ミステリート』について、お聞きしてもよろしいでしょうか?

 『ミステリート』は、かなり前に発表してから開発していた会社様との縁が途切れてしまったり、お願いしていた会社様と継続していくことが難しくなったりと、いろいろな問題がありました。そのため、我々の方ですべて引き取って社内で制作を進めることになりました。

 そこで『ミステリート』のシナリオをすべて洗いざらい読んで、発表していた続編を作り始めようとしたのですが……『ミステリート』は派生作品がすごく多くて、全部の辻褄を合わせると、結果として整合性がとれないなーと「これ……辻褄をどうあわせよう」となったんですよ。

 続編にむけて残っていたプロットと派生作品のシナリオを重ね合わせると、これは自身の能力不足も大きいと思いますがうまくかみ合わせられないとなり、初代『ミステリート』の作品でも明かされていない謎が結構残っているので、その初代の謎を中心にした続編のシナリオを制作することになりました。

 シナリオはある程度完成していて、収録も2~30%ぐらい終わっていたんですけど、辻褄があっていないですし、違和感が残ってしまうということで、ある程度完成していたシナリオをやめて、書き直すことを決めました。

ーーそんな状態だったんですね。その後、シナリオはどうなったのでしょうか?

 それからしばらくいろいろなライターさんが、「こうした方がいいのでは?」といった感じでこねくり回したんですけど、いい解決策が見つからず……。

 『ミステリートF ~探偵たちのカーテンコール~』として発表しましたが、実は何回も「開発をやめにするか……」という話が出ていました。

 けれども、自分としても思い入れのあるタイトルなので、このまま終わらせたくないと思い、待ってもらっている状況でした。ちょっと忙しい時期と重なってしまい、『ミスリート』に携われず、長らくお待たせしてしまいました。申し訳ありません。

ーーこれまで音沙汰がなかったのには、そのような事情があったんですね。

 最近になって一旦区切りをつけようと考えました。

 発表したまま引っ張り続けるのも申し訳ないので発表している『ミステリートF ~探偵たちのカーテンコール~』については、開発を一旦中止にして、改めて初代『ミステリート』の移植作を先行して発売します。

 『ミステリート』の続編を出すかどうかはいったん仕切り直して……派生作品と本作の切り離しが自身の中で納得がいったら制作すると思います。気持ち的にはやりたいのでなにかいい手法を考えたいと思います。

ーー具体的に特にどこがつまっている要因になるのでしょうか?

 整理した結果、広げてある風呂敷をうまく畳めないというのが理由ですね。

 原作者の菅野ひろゆきさんがお亡くなりになられていて、その状態で我々の解釈で辻褄合わせをすることや、我々の考え方で変えてしまっていいものなのかというところをすごく悩んでいます。

 割り切って、辻褄あわせなどもなかったことにして完結編を作るべきという意見も出ているのですけど、自分の中で引っ掛かってしまって、悩んでいる状態ですね。

ーー先ほど移植の話が出ましたが、移植はどのようなの進行具合でしょうか?

 初代『ミステリート』の移植は、開発も声優の収録もとっくに終わっています。そのため、調整しつつタイミングを図っている状態です。

 すごくお待ちいただいているファンの方には本当に申し訳ないのですが、やはり中途半端な気持ちで完結編を作りたくないという気持ちが強いのです。

ーーリメイクへ対する愛が伝わってきました。リメイク作品を制作するうえで大事にしていることはなんでしょうか?

 『ファミコン探偵倶楽部』をリリースした後に、幸な事に完成度を見ていただきいろいろな会社様から「このタイトルもフルリメイクしてもらえませんか?」という依頼が結構来たんですよね。それこそファミコンの名作なども来ていたんですけど、すべて断らせていただきました。

 大前提として自分が好きで思い入れがあるタイトル以外は基本的に私はやらないことにはしています。

 「リメイクは、もともとあるものを綺麗にすればいいだけだから楽だ」と思われている方が結構いるのですが、実は新規タイトルを作ることと同じぐらい大変な作業。リメイクはその作品がよっぽど好きで愛情がないと、ただ綺麗にしただけの中途半端な作品ができあがってしまうと思います。

 そう思うと『ミステリート』は、やっぱり自分の好きなタイトルで、思い入れが強い分、適当には続編を作れないタイトル。それが、ここまで開発を引っ張ってしまった原因なのだと思います。

ーー『ファミコン探偵倶楽部』のリメイクはすごい内容でしたが、あれもやはり愛でしょうか?

  • ▲『ファミコン探偵倶楽部』

 『ファミコン探偵倶楽部』は、子どものころから大好きな作品だったので、リメイクが決まった時に「自分が老後リッチな環境で遊べるように作るぞ!」と思っていました。中途半端でやるつもりはそもそもなかったのですが(笑)。そこに最後まで付き合ってもらった現場のスタッフには感謝です。

 シナリオを絵コンテに全部落としてこんでから、動きを作っていくというアニメと同じような作業工程で制作したんですが、絵コンテだけですごい分厚くなってしまって(笑)。途中で「自分はアニメを作っているのかな?」と感じるぐらい、絵コンテは書き込みました。

 全力で取り組みましたが、まだまだできることは残っていると思います。もし同じチームで次のタイトルを制作するとしたら、1.5倍ぐらいの量とクオリティのものを作ると思いますね。

ーーそれが実現できたら、すごいタイトルができそうですね。

 最終的な理想は2Dなんだけど、オープンワールド的なアドベンチャーを作りたいと思っています。普通のアドベンチャーなんですが、みんなが世界を生きているというのが理想ですね。

 でもこの理想は、『ファミコン探偵倶楽部』を制作するうえで念頭にあったこと。そのため、背景は止まらないことや、つねに時間が動いていることを意識してもらいながら制作しました。

ーー今後やってみたいことや展望などはありますか?

 先ほどの話と重複してしまうのですが、もともとアドベンチャーゲームを作りたいと思って、MAGES.に入りました。結果として、理想の70%ぐらいに達するアドベンチャーを作ることができました。あと30%ぐらいの努力を重ねれば、自分の理想とした100%のアドベンチャーができるかなと思っています。

 理想を実現するタイトルを制作するとなると、それなりに売れないと利益が出ないという悩みがありますが、『ファミコン探偵倶楽部』のような大きな規模感で作ってもしっかり売れるジャンルであることが分かったので、今後もチャンスがあると感じています。

ーーゲーム業界はつねに変動しています。コンシューマゲーム、特にアドベンチャーゲームなどにおける現状をどうとらえていますか。

 個人的にアドベンチャーゲームについては、20年前、30年前と比べて、あまり変わってないととらえています。

 グラフィックなどの表現の幅が広がったのですが、実は進化はあまりしていない。そのため、あっと言わせるようなアドベンチャーゲームをそろそろ発明したいと思っています。ただ、昔の形が好きという人もいるので難しいところですね。

 コマンドカーソル型のアドベンチャーゲームも、自分からすると探索感があっていいと思うわけです。ただ、苦手な人からすると、「いろいろな場所を探すのが大変!」となるので、ここのバランスをうまくとるのが新しいアドベンチャーゲームの形だと思っています。

 しかし、そのバランスが本当に難しくて、完全に簡略化して選択肢だけにしてしまうと、一本道なゲームになってしまうわけです。

 突き詰めていくとアドベンチャーゲームは、ある意味で選択肢だけのゲームではあるのですが、それでもアドベンチャーゲームには魅力があると思っています。

 子どものころから好きで、ディスクシステムの『ファミコン探偵倶楽部』はもちろん、ファミコンの『ポートピア連続殺人事件』、『さんまの名探偵』、さらにはPCのちょっとエッチなゲームに手を出したりと、アドベンチャーゲームは昔から変わらない古きよきジャンルだと感じているわけです。

 大きくは変わっていないけど、グラフィックはもちろん、細かいUIや表現方法など、見せ方は進化しているので、新しい体験をユーザーに届けたいと思っています。

ーーグラフィックやUIの進化によって、よりゲームへ没入できるようになったと感じます。

 それこそ、『ANONYMOUS;CODE』は志倉が力を入れて作っている作品だけあって、とにかく演出面にもこだわっています。それこそ、ある意味で新しい形のアドベンチャーになるんじゃないかなと。近々、志倉がドヤ顔で説明すると思うのでご期待ください(笑)。

ーー浅田さんがリメイクしたい作品を聞いてもよろしいでしょうか?

 今後リメイクしたいと思うタイトルは野望として5本くらいはあるかな? 動機が自分が老後遊びたいタイトルなのですが(笑)。

 まずは『定吉七番(さだきちセブン) 秀吉の黄金』。『定吉七番』は、今リメイクをしたらいろいろな人が楽しめると思うんですよ。当時の評価は知らないですけど、個人的にはすごいおもしろかった作品。PCエンジンでしか出ていないのがもったいない!

 あとは『消えたプリンセス』と『ふぁみこんむかし話 遊遊記』。この辺りも機会があれば挑戦したいですねってより自分用に制作しておきたいですね(笑)。

ーー実現できるかは別として、企画はまだあるということですね。

 そうですね。やっぱり自分がやりたいタイトル以外をリメイクするのは大変なので、「好きじゃなきゃやらない」というのは変わらないと思います。

 なので、『定吉七番』の版権を持っている方がこの記事を見ていたら話を持ってきてくれないかなと願っています。『定吉七番』への愛ならもっと話せますので!

ーー御社タイトルを楽しみにされている読者にメッセージをお願いします。

 アドベンチャーゲームは、なかなか進化しないジャンルではあると思うのですが、新しい体験を提供できるようなゲーム作りをしていきたいと思っています。

 他には、近々久しぶりに手掛けるジャンルの作品も発表したいと思っていますので。また、フルプライスではないようなお気軽アドベンチャーゲームを配信限定で制作したいなと思っているので、いろいろと楽しみにしていてください。よろしくお願いします。

ーー最後にお話いただいたゲームも楽しみにしています。本日はありがとうございました。

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