電撃オンライン

裏設定やエンディングの意味も。『溶鉄のマルフーシャ』クリア後に読みたい開発者インタビュー【電撃インディー#140】

カワチ
公開日時

 電撃オンラインが注目するインディーゲームを紹介する電撃インディー。今回はhinyari9氏からPC(Steam)で配信中の簡単操作ハイテンポSTG『溶鉄のマルフーシャ』のインタビューをお届けします。

 『溶鉄のマルフーシャ』は2.5Dのドット絵で描かれたディストピア世界を舞台に、国境の門を守る衛兵の少女マルフーシャとなって、迫りくる敵から門を防衛するSTG。

 本インタビューでは、『溶鉄のマルフーシャ』の開発者であるhinyari9氏にお話を伺いました。

 なお、電撃オンラインは、尖っていてオリジナリティがあったり、作り手が作りたいゲームを形にしていたりと、インディースピリットを感じるゲームをインディーゲームと呼び、愛を持ってプッシュしていきます!

hinyari9氏インタビュー

――『溶鉄のマルフーシャ』の注目点を教えてください。

 1回の戦闘が短く、非常に速いテンポでゲームが進行する点です。大作ゲームの合間に遊んでいただけるコンパクトなゲームを目指して制作したため、このゲームの為に新しく操作やルールを覚えなくてもプレイできるようになっております。基本的にキーボードで左右移動、マウスで狙って撃つだけです。

 …というセールスポイントはあるのですが、何よりも私がこんな世界観のゲームがもっと世の中に欲しい! という想いを込めて作った世界観とキャラクターが一番の注目いただきたい点です。

――開発で苦労していたところを教えてください。

 Unityの勉強を兼ねて3か月程度でできるミニゲームを作ってみようという考えから作り始めたのでそこからあれも作りたい、これも作りたいと要素が膨れ続けていき、どこで完成とすべきか悩み続けたことが一番辛かったです。

 Unityの知識が浅かった頃に作った整理できていないデータのせいで、1つ作れば良いデータを40個つくることになり、超初心者の状態から作ったからならではの苦労もありました。

――開発をするうえで、特に気を付けている点などを教えてください。

 戦闘シーンだけでなく全体のテンポ感について特に気を付けて開発を行いました。1か所で棒立ちしながら撃ち続けるというディフェンスシューティングの性質上、画面に変化が無く非常に飽きやすいジャンルです。

 少しでもテンポ感を誤るとただのつまらない作業になってしまうので、新しい税金の通知や、ゲームルールの追加タイミング、新規敵キャラの投入、キャラクターの会話シーン、高速戦闘の合間に挟まる宿舎でのゆったりとした休憩シーンなど、すべての要素を使ってテンポに緩急をつけています。

 1時間のゲーム体験とはいえ、現代で多忙な方々の貴重な時間をこのゲームの為に割いていただくからには、退屈に感じる時間を可能な限り入れないようにしたいという考えで制作しています。

――ゲームタイトルにこめた想いを教えてください。

 ゲーム内のとあるエンディングを見た後に“溶鉄のマルフーシャ“がどういった意味なのかが分かるようになっています。

 遊ぶ前はただのタイトルだったこの言葉がエンディングを見た後に、主人公が背負ってしまうたくさんの責任と、その後について考えたくなるような仕組みとしてこの名前としております。

 マーケティング的な視点ではマルフーシャのような世界観のゲームが好きな方がどんなタイトルなら興味を持っていただけるのかを考えた結果、重苦しいワードを考えてこのタイトルにしております。

――個性的な少女たちが魅力ですが、とくに注目して欲しいキャラクターはいますか? また、明かされていないキャラクターの裏設定などがあれば教えて下さい。

 キャラクターについては本当に、すべてのキャラクターを気に入っているので裏設定の方をお話させていただきます。

 ビオンは恋愛小説好きという設定があるのですが初等学校を中退しているので、難しい言葉はよく分からず挿絵付きの小説を好んで読んでいます。悲惨な環境から、ある日突然王子様が救ってくれるシンデレラのような恋愛小説がお気に入りです。

 フェリセットはゲーム内では常に眠っているようなキャラクターに見えるのですが、とある経験がトラウマで不眠症を患っており昼眠たそうにしているのも、夜にはまったく眠れていないからという設定があります。

 開発中は過去の行いについて泣きながら謝っている寝言のセリフが低確率で出現する仕様があったのですが、ゲーム内ではエンディング以外はコミカルな表現にしたかったので削除しています。

 世界観やキャラクターについてはゲーム内で語り切れなかった設定がたくさんあるのでどこかで形にしたいですね。

――ゲーム部分のテンポの良さに惹かれました。爽快感を出すためにどのような点にこだわりましたか?

 爽快感については銃火器の発砲音とパラメータ設定について特にこだわって制作しています。いろいろな銃を扱って撃っているという楽しさが出るように銃毎に個性のある音を付けております。

 SMGは空き缶のカラカラ音で軽いけど撃っていて楽しくなるような音LMGは列車が走るような重たく威力のありそうな音など、SEの制作は全く経験が無く、やり方を調べながら試行錯誤を繰り返したのですが、過去プレイしたゲームで聞いていて好きだった銃の発砲音やヒット音を思い出しながら納得いく音を目指しました。

 パラメータ設定については1時間の短い期間で主人公が強くなったとはっきり実感できるように成長前と成長後のパラメータを細かく設定しています。

 また通常プレイしていると気が付かないようにこっそりと、意図的に敵の体力を特定のステージだけ低く設定したりすることで、より短期間で強くなったとプレイヤーに錯覚させるなど工夫しています。

――エンディングに関して、手放しで喜べるようなハッピーエンドを入れなかった意図を教えて下さい。


 救いを求めて別のエンディングを見たくなるという周回プレイへの動機付けと、たとえ傷跡でもよいので遊んでいただいた方に強く記憶に残る内容にしたかったという2つの意図があります。

 私にとっては全力で制作したゲームだとしても、遊んでいただく方々にとっては、数ある暇つぶしのゲームの一つでしかないので、「楽しかった!」とあっさり終わって記憶に残らないくらいなら、傷後でもよいので遊んだ人の記憶に忘れたくても忘れられないように強く深く絶対に、残してやると考えてこの内容にしています。

――今後、実現したい野望などありますでしょうか?

 無機質な質感や退廃的な空気感が好きで、創作ではそういった世界観のイラストを制作しています。このゲームを遊んでいただく事で、マルフーシャのような世界観のコンテンツを作っていただける方が少しでも増えて世の中に私の欲しい、遊びたいコンテンツを増やしていく事が野望です。需要はあるはずなのに、今のところ数が少なく自分で作るしかないのですが……。

――ゲームの開発に携わることになったきっかけについて教えてください。

 これまで体験してきた中でも強く影響を受けた作品はゲームが多かったので、いつか私も人の心に刺さるような世界観のゲームを作りたいという想いがずっとありました。何度か挑戦したのですが、プログラミングの知識が足りず挫折していました。

 去年から外出が出来ない状況になり、自宅のPC前から逃げ場が無くなったので、これなら完成させられるかもと思い、本格的にゲーム開発を始めました。

――ここ数年でもっとも感銘を受けた、おすすめのインディーゲームについて教えてください。(インディーゲームでなくても構いません)

 インディーゲームで感銘を受けた作品はたくさんありすぎて絞るのが難しいのですが、その中でもさえばし様の制作している、“常世ノ塔”というゲームに非常に感銘を受けました。

 スマートフォンのゲーム程カジュアルすぎず、大作ゲーム程力を入れてプレイしなくても良いような空き時間にちょっと遊んでみたい、いろいろなゲームを気軽に遊びたいという多忙なゲームファンの方に理想的なバランスのゲーム性です。

 要求される操作も移動、ジャンプ、必殺技ボタンだけで新しく覚える負荷も少ないです。ですが、たくさんのプレイアブルキャラクターと、毎日0時にステージが変わる為リプレイ性も高く非常に満足感が高いです。

――最後にユーザーに一言お願いします。

 皆様はじめまして、イラストレーター・個人ゲーム制作者のhinyari9です。ごく一部の方の心に深く突き刺さるような内容で制作したつもりが、予想を超えて多くの方々に遊んでいただけて大変嬉しく思っております。

 これからもこういった世界観のコンテンツを制作したいと思っておりますので、よろしくお願い致します。また、決して楽ではありませんがイラストレーターである私一人でもマルフーシャ程度のゲームは作ることが出来たので、インディーゲーム制作にご興味のある方は是非挑戦してみてください。


© 2021 hinyari9

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

関連する記事一覧はこちら