『サキュバスとニート』は最初は書く気がなかった!? 有象利路先生の本音に迫るインタビュー

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 電撃文庫で活躍する作家陣のメールインタビューをお届けする“Spot the 電撃文庫”。今回は、『サキュバスとニート ~やらないふたり~』を執筆した有象利路先生のインタビューを掲載します。

  • ▲本作の表紙イラスト(イラスト:猫屋敷ぷしお先生)

 童貞かつニートの青年“和友”が召喚したのは、スケベなことに興味がない駄淫魔のイン子! 淫魔にエロいことをしてほしい和友と、食う・寝る・遊ぶだけのイン子との奇妙な共同生活が始まる、というのが本作のお話です。

 “元々書く気はありませんでした”“続刊いらねえわスタイル”など、驚きの発言が飛び出す有象利路先生のインタビューを最後までお楽しみください。

──この作品を書いたキッカケを教えてください。

 いきなりこんなことを言うとアレですが、元々書く気はありませんでした。

 本来は別にやりたい作品が複数あり、打ち合わせでそれらを纏めた企画案を阿南編集と土屋編集と私で検討していたのですが、そこで「この企画案の他に何かやりたいのある?」と訊ねられたので、口頭で「ラブやん(※田丸浩史先生の名作ギャグ漫画)みたいな作品を漫画でも小説でもいいから読みたい」と答えたところ、「自分で書け」と言われました。

 一応自分の中に『サキュバスとニートが暮らすギャグ作品』という案はあったので、それの概要を口頭で伝え、「面白そうだからそれでプロット書いて」となり、その後プロットを送ったら一発でOKが出たので本作を書くことになりました。

 そういう意味では自分が読みたい作品を自分で書くことになったのかもしれません。

 ただ一生懸命考えた企画案達が己の適当な口頭説明に敗北したので、一抹の虚しさというか悲しさというか、そんな感情が当初はありました。(今はもうないです)

──作品の特徴やセールスポイントを教えてください。

 ギャグコメディ作品であることです。

 昨今、ギャグライトノベルというものが非常に少なくなっており、最近の電撃文庫からだと本当に私ぐらいしか出してないレベルなので、このジャンルで出版した時点である程度の希少性は確保されるのではないかと愚考しています。

 もっと電撃文庫編集部はギャグコメディ系の作品を出して下さいお願いします読みたいんですもう私が頑張って書くのは嫌なんですお願いします……。

 個人的なコンセプトとしては、本作はギャグコメディ型ライト文芸と定めて書いたので、きちんと伏線やら何やらを敷いた上で一冊の完成度と読後感の良さを高めました。

 単なる野放図なギャグコメディの連作短編ではなく、終盤は物語性やテーマ性に沿ったシリアスな話を入れ込んだ上で纏めています。

 これやると担当は怒るんですけど、いわゆる『続刊いらねえわスタイル』ですね。

 笑えて泣けて読みやすい小説、というのが当初の制作目標かつ最終的な着地点です。

──作品を書くうえで悩んだところは?

 拙作『賢勇者』シリーズとの差別化です。

 あちらは純粋なギャグ作品で、今作はギャグコメディなので完全にジャンルが被っているわけではないのですが、まずは読者を笑わせるということが共通しているので、そのやり方を変える必要があると真っ先に考えました。

 自分で言うのも妙な話ですが、同じやり方で書いても『賢勇者』にギャグとして勝つことが無理であり、始める前から劣化作品になることが目に見えていたので……。

 なので本作『サキュバスとニート』では過剰なパロディや過激な下ネタは抑え、メタネタも排除し、風刺や皮肉などの毒も極力使わないように配慮しました。

 純粋にシチュエーションやキャラクター同士の掛け合いで笑いを取ろうと心掛けています。

──執筆にかかった期間はどれくらいですか?

 初稿の制作開始から〆切までは大体二ヶ月弱ぐらいですかね……?

 いつもそんな感じのスケジュールなので、特に過不足はありませんでした。

──執筆中のエピソードはありますか?

 あんまりないですね……。

 執筆中というか初稿完成後の話になりますが、作中で実在するモノや歌詞を使ったネタがあり、その許諾を得るために担当氏が頑張ってくれました。

 (まあこれもいつものことではあるのですが)

 最終的には権利関係でボツになったネタもあるものの、通したい部分は通すことが出来たので満足しています。この場を借りて担当両名にお礼を申し上げます……。

──本作の主人公やヒロインについて、生まれた経緯や思うところをお聞かせください。

 作者としてイン子にはギャグ作品として理想的なヒロインであって欲しい、という願望を込めました。

 『賢勇者』のヒロイン(爆笑)であるサヨナは落ち目でヨゴレのグラビアアイドルみたいなイメージで書いているのですが、イン子は自ら身体を張って笑いを取るヨゴレOKな女お笑い芸人というイメージで作った、ということですね。

 その結果としてイン子はヒロインとしてあまりにも異質になり、打ち合わせで「こんな可愛くないヒロイン見たことない」とまで言われ、最終的にそれをどうするか考えた果てに「絵師の方にめっちゃ可愛く描いてもらおう」で解決しました。

 なのでそこを見事に救って頂いた本作担当絵師の猫屋敷先生には作者・担当共々非常に感謝しております。この場を借りて猫屋敷先生にお礼を申し上げます……。

 和友については、スタイルや容姿は「イケメンで」と猫屋敷先生にお願いしています。

 後はラノベの主人公にしては年齢が高めで、そして主人公としては活躍する場面がかなり少ないので、従ってこれ以上言うことが特にありません……。

──特にお気に入りのシーンはどこですか?

 シーンというか話そのものになりますが、第七話(作中表記だと第七淫)全部です。

 主人公はほぼ出ず、ヒロインがおつかいのついでに謎の老婆と遭遇し一緒にパチンコ屋でパチンコを打つだけという、ラノベの一巻……というかラノベにあるまじきストーリーなのですが、個人的にはギャグとしての完成度は一巻で一番高いと思います。

 また、単にパチンコを打った、みたいな描写だけで済ますとつまらないので、実在する『とある台』をページが許す限り詳細に描写しました。

 つきましては許諾を下さった版権関係者様及びメーカーの藤商事様にはこの場を借りてお礼申し上げます……。

──今後の予定について簡単に教えてください。

 ないです(涙)

 いえ、嘘です。ないことはないです。

 まず本記事で度々名前を挙げている『賢勇者』シリーズの外伝短編集が、今冬~来春には電子版限定で配信される予定です。

 再録分も多い短編集にはなりますが、中身の半分ぐらいは新規書き下ろしであり、そして『サキュバスとニート』では使わなかった“牙”を全開にして剥いているので、そういうのを楽しみにしている方は是非お買い求め頂ければと思います。

 また、言って良いのかどうか分かりませんが、本作の第二巻も現在制作中です。

 現時点で一文字も書いていないので何も言えることはありませんし、本当は一巻だけで終わるつもりだったのですけども、色々あって急遽二巻を出すことになったので頑張って書こうと思います。

 あ、もしこれ言っちゃダメならこの部分全部消しといて下さい……。

──小説を書く時に、特にこだわっているところは?

 本一冊あたりにおける完成度と満足感です。

 自分としては続刊のこととかを考えず、常に全力でその時の一冊を作るようにしています。

 ……まあ実情的なことを言うと、そもそも続刊出来るかどうかなんて分からないし、次の新シリーズを出せるかどうかすら不明瞭なので、余力を残して果てるよりは全力を尽くして果てた方が後悔がない、という己のエゴに基づいていますね……。

 『新作は常に遺作』という個人的スローガンを常々忘れないようにしています。

 あ、それとギャグにも当然こだわっています!!

──アイデアを出したり、集中力を高めたりするためにやっていることは?

 無理にアイデアを出したり、集中力を高めようとしないことです。

 焦っても良いことないので……。

──学生時代に影響を受けた人物・作品は?

 元々好きな作家は司馬遼太郎先生と田辺聖子先生です。

 ギャグ漫画方面限定だと『ボボボーボ・ボーボボ』の澤井啓夫先生、前述の通り『ラブやん』の田丸浩史先生、『でんじゃらすじーさん』の曽山一寿先生などでしょうか。

 アニメは『スクライド』『ガン×ソード』『コードギアス』などを作られた谷口悟朗監督作品、『パプリカ』『東京ゴッドファーザーズ』などの今敏監督作品が個人的な教科書です。

──今現在注目している作家・作品は?

 常日頃からお世話になっている榎宮祐先生の『ノーゲーム・ノーライフ』最新刊第11巻が11月25日に発売!!!

 最近好みの作品だと葉月文先生の『ホヅミ先生と茉莉くんと。』です。

 注目、というか「うまいなぁ」と思う作家は『嘘と詐欺と異能学園』の野宮有先生です。

 『こわれたせかいのむこうがわ』の陸道烈夏先生も応援しています。

 いずれの作品も好評発売中!!!!!

──その他に今熱中しているものはありますか?

 熱中とまでいきませんが、料理の練習を最近始めました。

──最近熱中しているゲームはありますか?

 十八禁ゲームを挙げたいのですがやめておきます。

 コンシューマーゲームだとパワプロ2020の『栄冠ナイン』を狂ったようにやっています。

 『Among Us』も好きなのですが、友人達と都合が合わず最近は全然出来ていません……。

──それでは最後に、電撃オンライン読者へメッセージをお願いします。

 他の方のインタビュー記事を見てもここまで長々喋っている方がいませんでした……。

 お前どんだけ喋んだよって話ですが、それだけ想いを込めて作った作品ということにしておいて下さい!!

 一風変わった作品であることは間違いなく、その上で面白いものが出来たという自信はありますので、興味が出た方は『サキュバスとニート』を是非よろしくお願いします!

 長々と失礼致しました!!

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