ネタバレありでも伝えたい物語の魅力5:全てを極めし者は絶望感も極めた存在、当時は勝てる気がしなかった!?【電撃オクトラ日記#351】

タダツグ
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 10月28日、スクウェア・エニックスのiOS/Android用RPG『OCTOPATH TRAVELER(オクトパストラベラー) 大陸の覇者』が配信1周年を迎えました。キャラの覚醒要素や強力な固有必殺技の追加、メインストーリーの更新など、大規模なアップデートが行われて話題を呼んでいます。

 今回は記念すべき節目を迎えた本作について、ますます盛り上がること請け合いなストーリーのおさらいも兼ねた、緊急座談会を決行! 編集部のスタッフが一堂に会して、“富を極めし者編”、“権力を極めし者編”、“名声を極めし者編”、そして“全てを極めし者編”の物語について語り合います。

 5回目は、最後となる“全てを極めし者編”(前編)をお届け。企画の構成上、ネタバレを多分に含む内容となっておりますので(今回は特に)、まだ未クリアの状態でお読みになる方はご注意ください。

《座談会参加者の紹介》

タダツグ:ガチ勢とエンジョイ勢の中間くらいをウロウロしているゲームライター。『オクトラ』に関してはおもにインタビューやプレイレポートなどの記事を担当している。電撃オンライン以外では、シシララTVというWEB動画媒体でも本作の実況プレイ放送を配信中。

KK:レトロゲーム好きライター。2Dグラフィックの良き雰囲気を残しつつ、最新のシステムに対応した『オクトラ』シリーズは特に大好物。

ことめぐ(ことぶきめぐみ):『オクトラ』シリーズが大好きで、ゲームはもちろん、グッズなどを集めることも好き。キャラクターを愛でたり、ストーリーを楽しむ派。トラベラーストーリー記事や、直近ではコラボカフェのレポートとイラストを担当しているライター兼イラストレーター。

リリース直後から遊べちゃっていいの? “全てを極めし者編”のボリュームに驚愕

KK:“富を極めし者編”、“権力を極めし者編”、“名声を極めし者編”をすべてクリアし、短い“終章”を経てプレイ可能となる“全てを極めし者編”ですが、皆さんは当時プレイしていかがでしたか?

タダツグ:メインのなかでもトップクラスで好きなシナリオですね。見どころは色々ありますし。ただ、何より最初に言いたいのは「ボリュームすげえ!」ってところ。

ことめぐ:これまでが三章構成でしたけど、“全てを極めし者編”だけは八章構成でしたもんね。たぶん“富”、“権力”、“名声”すべてを足した以上のボリュームなんじゃないですか?

KK:めちゃくちゃ濃密でしたね。

タダツグ:個人的に、リリース時点でこの“全てを極めし者編”まで実装していたことがこのゲームのヤバイところだと思うんですよ。普通のアプリゲームであれば、たぶんリリース時は“富”、“権力”、“名声”、そして終章でストーリーが一旦ストップしてると思います。そのうえで、二週間に一章くらいのスパンで追加実装していくレベル。

KK:たしかにそうかも。リリース時にあそこまで遊ばせてくれるアプリゲームって相当めずらしいですよね。歴史に残るレベルの驚きでした。

ことめぐ:“全て”までクリアした時点でどれくらいの時間でした? 人によってまちまちでしょうけど、私は80時間くらいいってた気がします。レベルも60を超えてたように思いますし、コンシューマゲーム並みのボリュームだなって思いました。

タダツグ:ちょっとうろ覚えですけど、僕はキャットリン狩りで色々なキャラをレベリングしたりもしてましたし、下手すりゃ100時間くらい遊べていたような。

KK:以前の開発者インタビューによると、リリース時からあそこまで遊べるようにするというのはスタッフ側のこだわりだったんですよね。実際、あのボリュームのおかげで「これは普通のアプリゲームじゃないな」って思いましたし。

ことめぐ:インタビューでは“全てを極めし者編”が最初に書かれたシナリオで、本来は“権力を極めし者編”となる予定だったともおっしゃってましたよね。

タダツグ:そうでした! でも、パーディス三世は“全てを極めし者”でしたよ。“権力”だけにとどまらず、ラスボスとしての風格はバッチリ備えていたように思います。強さと不気味さって意味でね。ただ、最初からこれだけのボリュームを盛り込んだがゆえに、その後のストーリー更新速度にプレイヤーサイドから不満が出てしまった側面はあったような。

KK:そうですねぇ……。コラボなどの時期を除けば、ほぼ月一章ペースで更新されていると考えたら、めちゃくちゃ頑張ってるほうだと思いますけど、プレイヤー視点でいえば「もっと早くメインシナリオを更新してくれぇ~」ってなりますよね(苦笑)。

タダツグ:実際、コンスタントにほぼ一か月で一章追加って“普通のアプリゲーム”であれば決して遅くはないと思うんですよ。ただ、このゲームは最初のボリュームが膨大でしたから、プレイヤーのハードルが上がりまくってましたよね。

ことめぐ:みんなメインシナリオに魅せられているぶん、どうしても「更新はよッ!」ってなっちゃうのはわかります。私もそうですし(笑)。

KK:あれだけのドット芸にボス戦のバトルバランス調整、ダンジョンのギミックやデザインを考慮すると、頻繁に更新するのは難しいでしょう。合間に闘技大会や名もなき町の更新なんかも入るわけで、リソース的にいっぱいいっぱいですよね。……わかってはいる、わかってはいるんだけど!(笑)

タダツグ:僕は最近この更新速度に慣れてきたというか「そりゃあ時間かかるよなあ」ってしっくりきた部分はありますけどね。やっぱり、このゲームだけが持つプレイ体験を維持する方向で注力してほしい。ドット芸がなくなってしまったり、ボスが一捻りで倒せるようなバランスになっちゃうのはもったいない。

KK:プレイボリュームとしては、むしろマシマシですよ。私は闘技大会だってまだ全部クリアできていませんし、試煉の塔もすべてを制覇するのは一筋縄ではいかないでしょう。

ことめぐ:装備集めやキャラのレベリングなどを考えると、毎日のんびりプレイしていたらあっという間にメインシナリオが更新されていくかもしれませんね。“シングルプレイRPG”ということで、マイペースに遊んでいくのが一番なのかなって思います。

パーディス、エル、アラウネ……様々な人物たちの思惑が入り混じる群像劇

KK:では、そろそろ“全てを極めし者編”の中身について語っていきますか。

タダツグ:先ほども言いましたが、僕はこの“全てを極めし者編”は大好きですね。相変わらず随所で人間の心の闇が描かれていますけど、少年マンガの王道的な展開も盛り込まれていて、熱くなれる場面がいっぱい。そして何より、剣士エル。彼女の存在が大きいです。

ことめぐ:エル……王女エリカの存在は大きいですよね。彼女のことが嫌いなプレイヤーなんて、ほとんどいないんじゃないかと。みんな大好きじゃないですか。公式生放送で発表されたキャラランキングでも、エルと王女エリカの得票数を合わせたらトップになるわけですし。

KK:実際我々も大好きですしね。“全てを極めし者編”は長いだけあって、登場人物がたくさん活躍するのも群像劇っぽくて気に入っています。リシャールやソロンもいい味出してますし、何よりエリカの妹であるアラウネがあそこまでの成長を見せてくれるとは思ってもみませんでした。

タダツグ:アラウネはめちゃくちゃ成長しましたよね。最初はあそこまで前に出てくるキャラクターではなかったのに。

KK:お姉さんのあんな結末を見せられちゃったらね……。普通は心が折れても仕方がないと思うんですけど、彼女はそこから立ち上がってきますから。あれは応援したくなりますよ。

タダツグ:エリカの結末は……。まさかあそこで本当に処分されるとは思いませんでしたよね。開発スタッフとしては、あそこで「ああ、この世界は容赦がないんだ」ってことを伝えたかったようですけど、実際かなりのプレイヤーがショックを受けたと思います。

ことめぐ:イベント戦闘ではありましたけど、エリカはあんなに強いのにそれでも勝てないのか……って絶望感が浮き彫りになりましたよね。

タダツグ:“全てを極めし者編”の物語は、最初エリカの結婚式から始まりますよね。だから「ああ、このエリカとマフレズの2人がストーリーを引っ張っていくのか」と思っていた時期が僕にもありました。ミスリードというか、2人ともボスにやられてしまうというのは完全に想定外。おのれパーディス……。

KK:マフレズはあまりにもあっけなさ過ぎましたよね。もう少し頑張ってほしかったというか、パーディスのことを疑ってかかるべきだった。戦乱のオルステラで生き残るには、ちょっとイイヤツ過ぎたんだろうなって(苦笑)。

タダツグ:だからこそ、あのエリカが惚れたんだろうなとも思いますが。

KK:個人的には好きなキャラクターなので、導きで仲間に出来るようになるのなら頑張りたいところです。

ことめぐ:公式生放送でのお話を聞いたかぎりでは、メインシナリオのキャラクターもなんらかの形で実装してもらえそうな気はするんですけどね……。ものすごく期待しちゃってるんですけど。

タダツグ:僕もエリカが実装されたら頑張るなぁ。あとはアイラ。

ことめぐ:いいですね。アイラはお導きしたい!

KK:アイラは……出ますかね? たしかにメインキャラと言えなくもないけど。ただ、メインキャラの実装は言うほど簡単でもない気がします。本編と矛盾が出ないよう整合性をとるのはなかなかたいへんだと思う。

ことめぐ:過去の話にするとか、やりようはあるとも思いつつ。難しそうだということはわかります。それでもなんとか実装してほしい!

タダツグ:聖火神エルフリックの指輪がなんとか解決してくれることを祈りましょう。ちなみに、エリカに関してはどっちで実装してほしいですか? 剣士エル? それとも王女エリカ?

ことめぐ:微妙に違いますもんね。

KK:個人的には名前というより、パーディスとバトルしていたときの姿で仲間になってほしいなぁ。あの性能を自分の旅団で使ってみたいですよ。光5連撃とか、あれから1年経ってなお破格。

タダツグ:あの性能で実装されたらぶっ壊れ過ぎですね(笑)。でも、思い入れを考えるとあの時の姿で導きたいというのはわかります。ゲームバランスを考えて、性能はマイルドになっていていいので。

ことめぐ:聖火神エルフリックの指輪がなんとかしてくれることを祈りましょう。

何を考えているのかわからないのが不気味……パーディスの真意とは?

ことめぐ:それにつけても、パーディスは悪いヤツでしたね。なかなか底を見せないところとか、とても不気味でした。

タダツグ:結局、彼は何がしたかったんでしょう? 王として絶対的な力を欲しているようにも見えて、エリカやマフレズをあっけなく手にかけるあたり家族や後継者に執着しているようには思えない。自分一代のことしか考えてないとなると、王としての資質はないですよね。彼の父親は、そこらへんの本質を見抜いていたのかなって思います。

KK:コンプレックスに突き動かされてたんじゃないですか? 自分を認めてくれない父親と、優秀であった兄へのコンプレックス。それをこじらせて、自分さえよければいいという極端な性格に成長していったのかもしれない。

ことめぐ:そうでもないと、自分の後継者でもあり、血を分けた肉親であるエリカやアラウネをあそこまで邪険にはできませんよね。

タダツグ:納得です。ただ、そうなるとパーディスもやっぱり人間としての器は小さいってことですよね。指輪で得た強さも手伝って、王者としての風格はあるように見えますけど、本質的に人の上に立つ資質はなかったんだろうなぁ。

KK:一方で、奥さんや娘たちに対して情のようなものを見せる瞬間もありましたよね。家族への想いが皆無だったわけでもなさそうなところが、なんとも複雑なキャラなんですよ。暴君ではあるけど、自我はあるんだなって。

タダツグ:どうなんだろう。指輪の力でマイナスの感情ばかりが拡大して、どんどん自分でも制御できなくなっていったのかも。パーディスだけは複数の指輪を所持していたわけですし、抱える闇がより深くなるのは必然な気がします。

ことめぐ:実際、エリカを処分したあとからどんどん他国への侵略が苛烈になっていった感もありますし、娘がいなくなったことで歯止めが利かなくなったという解釈はできるかもしれませんね。それは彼の弱いところではあるかもしれませんけど、ちょっと人間味を感じます。

タダツグ:パーディスに限りませんけど、指輪所持者の行動が己の意志によるものなのか、指輪によって負の感情が歪められてしまった末のものなのかは、明確じゃないですからね。旅団を泳がせて、聖火神の指輪を闇落ちさせようなんて企んだりもしてましたけど、あれはどう考えても悪手だと思うし。

KK:聖火神の指輪を闇落ちさせることで、何をしようとしていたのかまではっきりとはわからなかったのが不気味なんですよね。もしかすると、強大な何者かを召喚できるようになるとか、なんらかの設定はあるのかなって。

ことめぐ:闇の導き的なものですか……それは怖いですね。エリカがああなったのって六章でしたっけ? 実際、あのへんの絶望感ってものすごくて、闇落ちしてもおかしくないレベルで追い詰められていたような。

タダツグ:それを言うなら、今更新されている“権力を授けし者編”の絶望感も相当なものですよね。あのボスにはパーディス以上に勝てる気がしないというか、マジで心が折れそうなレベル。やはり、指輪を求める悪者というのは、旅団というか聖火神の指輪を所有する人間を絶望させようって意図があるのかもしれませんね。

ことめぐ:たしかに……。

KK:ちなみに、マフレズへの仕打ちもかなり衝動的でしたが、以前から計算していたものだとすると相当怖いなって、たった今思いました。マフレズをああすることでエリカに国からの出奔を促し、聖火神の指輪所持者と出会うよう仕向ける。エリカと指輪所持者が絆を深め合ったところで彼女を処分し、指輪所持者を絶望に至らしめる。あの時点でもしそこまで計算済みだったとしたら……。

ことめぐ:見え方が完全に変わってきますね、それ。パーディス怖すぎです。

KK:回りくどいといえば回りくどいですが、聖火神の指輪を闇落ちさせるシナリオとしては悪くない気がします。いや、本当に怖いですけどね。

タダツグ:その解釈は面白い。でもまぁ、僕は行き当たりばったり説を推しますけど(笑)。

KK:私もそうだと思いつつ。パーディスという人間についての考証は面白いですね。

重厚な物語を彩るサブキャラたちも魅力的

タダツグ:ちなみに、エリカは剣士としても並び立つ者がいないレベルで強かったわけですが、アラウネってどうなんでしょうね? どう見ても武人として強いイメージはないですけど。

KK:王族として最低限の護身術くらいは嗜んでるかもしれませんが、ポジション的には神官とか学者とか、インテリ系の性能じゃないですか? 仲間をサポートしてくれるバッファー的なポジションで来てほしいです。

ことめぐ:アラウネが武器をブンブン振り回して戦う姿とか想像したくないですね(苦笑)。斧とか槍とか似合わない気がします。

KK:武器をブンブン振り回すといえば、クラウザーの部下として登場した鉄腕のゴンザレスが地味に好きなんですよ。彼が鉄球をブンブン振り回すシーン、結構お気に入りです。

ことめぐ:ゴンザレスのドット芸はすごかったですよね。クラウザーにあっけなくやられちゃうのがもったいない。

KK:あの頃のクラウザーは武功を立てようと躍起になってますし、精神的に張り詰めまくってたのでは。彼もなかなかに複雑なキャラですよ。

タダツグ:ちなみに、僕はクラウザーさん好きです。“権力を授けし者編”までプレイした人は、きっとわかってくれるんじゃないかな。

ことめぐ:ですね! マフレズへの劣等感とか、権力欲や虚栄心みたいなものに突き動かされていた時期もありましたけど、それを経て強くなったクラウザーはすごくいいキャラになったと思います。

タダツグ:マフレズとクラウザーの関係って、原作のオルベリクとエアハルトにも通じる熱さがあるんですよね。互いに思う所はあるけど、高め合うためには必要な存在ってところがちょっと似ている気がします。ライバルキャラってこうあるべきですよね。

KK:クラウザーはこれからどうなっていくのか、ドキドキしながら見ています。

タダツグ:ちなみにクラウザー経由で“授けし者編”のお話になったから、少し脱線しちゃうんですけど。現在の“授けし者編”って“富を授けし者”、“権力を授けし者”、“名声を授けし者”の三編で構成され、それぞれにボスが登場するわけですが。このなかで“権力を授けし者編”だけ、ボスの立ち位置が異質だと思いません? 強さも破格すぎるというか、僕は全然勝てるビジョンがないんですけど……。

ことめぐ:そうなんですよね! あのボス、ちょっと強すぎてどうなるんだろうって思ってます。本当に勝てる気がしない(笑)。

タダツグ:個人的に、このボスとは決着がつかないまま“権力を授けし者編”は終わって、“名声を授けし者編”の配信が終わったあと、改めて“全てを授けし者編”が始まってもおかしくないと思ってますよ。

ことめぐ:そこで改めて、彼女と対峙することになるってことですか? ありえそう……。

タダツグ:もちろん、これは完全に個人的な考えというか。予想ですね、予想。

KK:私も勝てる気はいっさいしてないです。ボコボコにされるイメージしかない(汗)。この記事が掲載されるタイミングだと“権力を極めし者編”の第三章は配信されている予定ですからね……。その予想が当たっているかどうか、ちょっと楽しみにしておきます。

【全てを極めし者編:後編に続く】

『オクトラ』ネタバレあり座談会


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OCTOPATH TRAVELER 大陸の覇者

  • メーカー: スクウェア・エニックス
  • 対応端末: iOS
  • ジャンル: RPG
  • 配信日: 2020年10月28日
  • 価格: 基本無料/アイテム課金

OCTOPATH TRAVELER 大陸の覇者

  • メーカー: スクウェア・エニックス
  • 対応端末: Android
  • ジャンル: RPG
  • 配信日: 2020年10月28日
  • 価格: 基本無料/アイテム課金

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