【おすすめDLゲーム】『リーガルダンジョン』はシナリオもゲーム性も心に残る刑事ADV。地味さに騙されたら損

キャナ☆メン
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 ダウンロード用ゲームから佳作・良作を紹介する“おすすめDLゲーム”連載。今回は、Steamで配信されているPC用ソフト『Legal Dungeon(リーガルダンジョン)』のプレイレポートをお届けします。

『リーガルダンジョン』とは

 『リーガルダンジョン』は、韓国のゲーム開発者であるSomi氏が手がけた刑事アドベンチャーゲームです。

 最大の特徴はそのゲーム性で、一般的な推理アドベンチャーのように聞き込みや証拠集めを行って事件を推理するのではなく、警察の調査書類とひたすら向き合って、事件と関連するキーワードを拾いながら、被疑者の有罪・無罪に大きく影響する“意見書”を作成していきます。

  • ▲プレイヤーが作成した意見書は、検察が起訴か不起訴かの判断を行うための材料として用いられます。
  • ▲最終的には、RPGのダンジョン攻略に見立てた尋問バトルで被疑者と議論を戦わせ、意見書を完成させます。

 しかも、被疑者を起訴することが必ずしも目的ではなく、成果主義や登場人物らの暗い思惑が渦巻く伏魔殿(警察署)にあって、明らかな犯罪者を不起訴にしたり、“点数稼ぎ”のために実際よりも重い犯罪を仕立て上げたり、状況に応じて道徳に反する選択を求められることもあります。

  • ▲「有罪です!」と主人公が被疑者に告げるその言葉は、本当にプレイヤーの納得いく判断になるのかは……。

 そのジレンマと戦いながらゲームを進め、さまざまな分岐の結果が、物語に秘められた謎のヴェールを1枚1枚剥がしていく……重たい選択とシナリオが自己の胸中に何かを問いかけてくる、単純に“楽しい”以上のものを与えてくれるゲームだと思います。ちなみにエンディング数は14とのこと。

腐敗する警察組織を舞台にした大人の物語

 プレイヤーは、いわゆるキャリア組の若手警官・清崎蒼となって、舞台となる警察署の刑事二課に新しい課長として着任します。

 クセのあるベテラン刑事や出世を狙う中年刑事、熱血派の若手刑事などを従え、窃盗や自殺の幇(ほう)助、暴行、殺人など、合計で8つの事件について意見書を作成することになります。

  • ▲酸いも甘いも知り尽くしたかのようなベテラン刑事の原田准一。なお、会話画面に顔グラフィックは存在せず、文字だけで物語を追うことになります。

 世界観やストーリーにも大きく影響してくるのが、「善行の美談は0.5点、窃盗は2点、殺人は15点」という言葉で端的に表されている警察組織内の行き過ぎた成果主義です。

  • ▲過度な成果主義を如実に表すこの言葉は、エンディングの余韻としてよく用いられています。

 法と人道に即した正義を求められる警官と、犯罪に点数をつけて評価される成果主義の結合が何を生むのか。それは想像に難くないと思いますが、つまりは警察組織の腐敗と利己主義の塊のような権力者たちに囲まれた状態で、中間管理職をやることになるわけです。

 そんな状況では綺麗事も虚しく響くだけで、最初の会話で余韻として用いられる「無垢は周囲の者にとって罪である」という言葉がそれを暗示しています。果たして物語はどんな方向へ進むのか……その展開にハラハラして、ゲームを進めるほどシナリオに引き込まれました。

 引き込まれ方の感覚は、小劇場でテーマ性の強いインディー映画を観ている時のそれに近いですが、本作は“ゲーム”ですから、マルチエンディングにつながる分岐、つまり複数の物語を自分の手で見つけ出していくおもしろさがあります。

  • ▲どこで分岐が発生するかは、フローチャートで表示されています。

分岐のポイントになる“ダンジョン”

 シナリオの分岐は、本作の特徴である“意見書を作成する”というゲーム性のおもしろさを強く感じられるところです。

 意見書の作成は、調査書類に記されている文章をもとにして、被疑者のプロフィールを埋めたり、いつどこで何が起きたかの“犯罪事実”を埋めたり、何の罪で起訴するかの“適用法条”を決めたりしますが、メインは被疑者に架空の尋問を行う“ダンジョン”での対決になります。

  • ▲意見書の作成にはCISというシステムを使い、AI“あおい”のサポートを受けながら行っていきます。
  • ▲キーワードをドラッグして必要項目を埋めたら、結論となる意見を作成するためにダンジョンへ入場します。
  • ▲ダンジョンでのバトルは、書類の上で行われるロールプレイという位置づけ。法律や論理性を武器にして、起訴を目指すなら相手を攻め、逆なら相手を守ります。

 ダンジョンでの対決は、RPGのバトルを模したグラフィックデザインになっていますが、実際のプレイ的には、調査書類からキーワードを拾って被疑者に反論・尋問し、議論を進めていきます。

 前述の通り、被疑者を有罪にすることが必須目的ではないので、有罪にしたいなら相手のHPを0に、無罪にしたいならHPを残すように、被疑者を攻める、もしくは守るためのキーワードを選ぶ流れです。

  • ▲ダンジョン入場までの流れは同じでも、相手を起訴したいのか不起訴にしたいのかで、選ぶべきキーワードが変わります。

 なお、主人公が作成するのはあくまで意見書なので、それが検察の行動や裁判の最終結果にそのまま反映されるとは限りません。ただ、シナリオの分岐自体はどんな意見書を作成したかによるので、主にダンジョンが分岐のポイントとなります。

 論点に沿ったキーワード探しが人によって難しく感じるでしょうし、場合によってキーワードが白字で埋もれていることもあるので、すべての分岐を見るのは頭や観察力を使うと思います。

 そのぶん、テキストアドベンチャーのような選択と違って分岐自体のゲーム性が強いので、新鮮なおもしろさを感じられるはずです。

  • ▲ダンジョンでは次々と論点が変わるので、意見書作成パートになったら、まずは調査書類の内容を頭に入れるのがよいでしょう。

 ちなみに、フローチャートのシナリオ分岐で見られるエンディングは13個。14番目のエンディングについては、別の難解な謎解きが求められます。かく言う筆者自身、必要と思われるキーワードを見つけられず、執筆時点で最後のエンディングを見ることができていません。ただ、そうした謎解きの変化も、一般のアドベンチャーと異なるユニークなところでしょう。

ゲーム・物語ともに作家性を感じられるタイトル

 『リーガルダンジョン』は、謎が深くてジレンマを突きつけられるストーリーと、少しずつ物語の新たな一面が見えてくるシナリオデザイン、ユニークなゲーム性を持つダンジョン(意見書作成)がよく組み合わさって、本作ならでは、かつゲームならではのストーリー体験を楽しめる作品だと思います。

 一方で、ゲーム画面が文字だらけで地味なこと、謎が多いためにストーリーが難解なこと、最後のエンディングを見るのが難しいことは、人によって欠点になり得るかもしれません。逆に想像力や読解力を働かせて物語を楽しみたい人は、向いていると感じます。

 また、ダンジョンの遊びがユニークなので、筆者が過去に本連載で紹介した『VA-11 Hall-A』『WILL -素晴らしき世界-』のように、単純な選択肢ではない、分岐にゲーム性があるタイトルを楽しめた人は、本作のシステムも楽しめるかもしれません。

 別の書き方をするなら、物語にもゲームデザインにも作家性が感じられるタイトルで、社会に対する警鐘とも受け取れる世界観・シナリオは考えさせられる部分があり、それぞれの解釈を持てる作品です。プレイを振り返った時、消費する娯楽でなく、自分の中に何かを残してくれるゲームだと感じました。

  • ▲特定のエンディング後に流れるスタッフロールで見られる開発者のメッセージ。同じ内容の文章は、公式サイトにも掲載されています。ゲームを理解する助けになれば。

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Legal Dungeon(リーガルダンジョン)

  • メーカー: Somi
  • 対応端末: PC
  • ジャンル: ADV
  • 配信日: 2019年5月7日
  • 価格: 720円(税込)