物語を深読みしがちな人や、廃墟好きにオススメしたい『ミクと水没都市』レビュー【電撃インディー#181】

江波戸るく
公開日時

 電撃オンラインが注目するインディーゲームを紹介する電撃インディー。今回は、Uppercut Gamesが開発・レイニーフロッグから配信されている『ミクと水没都市』をレビューしていきます。

 なお、電撃オンラインは、尖っていてオリジナリティがあったり、作り手が作りたいゲームを形にしていたりと、インディースピリットを感じるゲームをインディーゲームと呼び、愛を持ってプッシュしていきます!

海に消えかけている都市を、簡単操作でじっくり探索できる

 何らかの理由で建物などが放棄され、朽ちていったり自然に浸食されることでできる“廃墟”。私はそんな廃墟が好きなのですが、あちこちにあるそれは気軽には見に行けないものです(不法侵入になってしまいますので……)。観光地として公開されている場所なら行けるんですけどね。

 そこで、廃墟を自由に探索できるゲームはないのかと思い、インターネットで“廃墟 ゲーム”と検索。いくつも作品が出てきた中で、目に留まったのがこの『ミクと水没都市』でした。タイトル通り都市が水没しており、現実と非現実のあいだにあるような紹介画像を見て「これだ!」と感じた時には、購入ボタンを押していました。

 病気の弟(タク)と共に小舟で水没都市を訪れた主人公・ミクは、彼を助けるために、物資を求めて謎に満ちたこの場所を探索することになります。

 この都市には巨大な像のほか、高層ビルや鉄橋、観覧車、図書館など、現代にもある建物が多くあります。ミクの目の前に広がっている静かな都市からは、賑わっていた過去を想像させます。


  • ▲繁栄を失い、物言わぬ都市。過去に取り残された廃墟たちは、緩やかに滅びを待っているかのようです。

 本作は戦闘を行うことがなく(都市の状態を見ていると、敵のようなものが居てもおかしくはありませんが……)、それに伴ってゲームオーバーも存在しません。都市を探索するのに必要な操作もかなりシンプルで、探索しつつ周囲の景色をじっくりと観察することができます。

 ミクが狭い足場を飛び移る、といったアクションゲームのような動きをすることはあります。が、Lスティックで移動すれば自動的にジャンプしてくれるので、タイミングよく押さないと失敗する、ということはありません。

 何かと“登る”ことが多い本作ですが、その動作で消費するゲージも特にないので、気になったところはどんどん探索を進められました。

  • ▲こんな風に、ずっとぶら下がっていても落下することはありません。

 蔦が絡み、苔が覆い、海に浸食され、崩壊へと向かっている廃墟。そこに、時間経過がもたらす光と影が合わさった風景には寂しさを感じますが、同時に綺麗だとも感じられました。BGMがこの都市の物悲しさと美しさが入り混じった雰囲気を更に引き立てており、この空間に惹かれてしまいます。

 廃墟は“怖い”と感じる時もありますが、本作の廃墟に対して、そのように感じることはありませんでした。「上はどうなっているのだろう?」「あの廃墟の反対には何があるのだろう?」「さっき上から見えた建造物は何だろう?」といった好奇心が掻き立てられたのは、どこかアート的な魅力があるその風景に惹かれたからなのだと思います。

  • ▲むしろ、怖かったのは高所から下を見た時でした。落ちない仕様でよかった!

委ねられた解釈。断片的なものから伝わるのは……

 探索を進めて物資を回収していくにつれて、ミクとタクがなぜ二人きりで小舟に乗ってここを訪れたのか、という部分を表している“絵”が、記憶として回想のような形で現れます。



  • ▲母親が亡くなったことで、一家は崩れてしまったのでしょうか?

 また、そちらとは別で、この都市の過去を描いたものも廃墟の中から見つけることができます。記憶同様、言葉らしきものは書かれていますが、本作固有の文字のようで、すぐにその意味を理解するのは難しそうです。形状からするに、アルファベットがもとだとは思うのですが……。時間がある時に読み解いてみるのも面白そうですね。


 こちらを踏まえて、海を泳いでいるイルカやクジラたち、そして進めていくと見かけるとある存在たちを見ていると、都市全体が海とは異なる“何か”に侵食されている印象があります。

 何よりミク自身にも変化が生じており、探索を進めると彼女も、そのイルカたちと似たような体になっていきます。タクは少しずつ回復しているようにも見えますが、彼のために駆け回っているミクは……。


 暗い結末を想像してしまい、思わず探索を進める手を止めて絶景ポイント(と、表現していいものか迷いますが)を探すという寄り道をしてしまいましたが、その先でも何かしらの発見があることが多かったです。

  • ▲ポストカードを作る、というコマンドも。ビジュアルを活かした機能ですね。

 クリアまでの時間は2時間~3時間ほどでしたが、映画を1本見終えたような感覚でした。さくっと気軽にプレイするのにちょうどいい長さと操作性です。

 Steam版などでは本作のタイトルは『Submerged(サブマージド)』となっており、『ミクと水没都市』というタイトルとはまた違った印象を受けます。“水没”があらゆるもののキーワードとなっていることには間違いなさそうです。


 物語を深読みしがちな人や、廃墟好きにオススメしたい『ミクと水没都市』。訪れたプレイヤーを惹き込んで魅了してくれる、現実と非現実が合わさった水没都市に、ぜひ行ってみてください。


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