『恋は夜空をわたって』文庫と脚本執筆の両方を手掛けた岬鷺宮先生にインタビュー

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 電撃文庫で活躍する作家陣のメールインタビューをお届けする“Spot the 電撃文庫”。今回は、『恋は夜空をわたって』を執筆した岬鷺宮先生のインタビューを掲載します。

  • ▲本作の表紙イラスト(イラスト:しゅがお先生)

 本作は、ある日、偶然クール系後輩“御簾納咲”のラジオ配信を偶然聞いてしまった主人公が、ラジオから流れる彼女の本音を聞いて、少しずつ距離を縮めていく、配信青春ラブコメディ。

 この秋始動となった聴くanimeレーベル・STUDIO koemeeの第1弾でもある、本作の誕生から執筆中のエピソードまで詳しくお話しいただきました。

──この作品を書いたキッカケを教えてください。

 STUDIO koemeeから、『聴くanime』第一弾作品の執筆依頼をいただいたのがきっかけでした。

 当時はまだ『聴くanime』という呼称もなく、STUDIO koemeeという制作チーム名もなかったなあ……。

 まずはお話を、ということで顔合わせがてら色々と打ち合わせたのですが、スタッフさんの熱意や考えにとても共感が出来たので、是非やらせてください! とお願いしました。

 とはいえネットコンテンツを作るのは初めてで、どうしようかなあなんて悩んでいたある日、唐突に「……配信してる女の子がヒロインだ!」と思い付いた感じですね。

──作品の特徴やセールスポイントを教えてください。

 珍しく、岬が楽しい恋愛ものを書きました!

 ……いやまあ、以前は結構書いていたんですけどね。

 最近はちょっと真面目だったり切なかったりなものが多かったので、そちらで僕を知ってくださった方には新鮮に見えるかなと……。

──作品を書くうえで悩んだところは?

 実はあんまり悩まなかったんです、今回。

 というのも、『恋わた』はチーム戦にしたいな、と個人的に(勝手に)思っていたところがあって、ビジュアルを担当して下さったしゅがおさん、主題歌を担当して下さったNeko Hackerさん、をとはさん、そして演じて下さった花守さん、伊藤さん、岡咲さんからイメージを膨らませたところ、どんどん話が生まれてあっという間に完成したんです。

 本当に楽しかった……。

──執筆にかかった期間はどれくらいですか?

 脚本は多分第一稿ができるまで2週間くらい。小説版も同じくらいですかね……。

 ただ、脚本については初めて書いたということもあってその後も変更を加えまくり、最終的には収録当日に「ここを変えたいです!」と演者さんにお願いしたりもしました。

──執筆中のエピソードはありますか?

 上で書いた「チーム戦」というところにも関わってくるんですが……。

 もともと企画を作った当初は、御簾納ってクラシックな雰囲気の文学少女だったんです。

 古風で古い文学ばっかり読んでて、深窓の令嬢的な……。

 ただ執筆中、「イラストをしゅがおさんにお願いする」というアイデアを思い付いた瞬間に、「……あ! だったらもうちょい今風の子にしたい!!」とインスピレーションが湧きまして。

 もう完全に、僕の頭の中で「しゅがおさんビジュアル」の御簾納が見えてしまったんですね。

 ので、しゅがおさんに依頼をさせていただくのと同時に、一気にキャラ設定と原稿を書き換えました。

 まだお返事もいただけてなかったんですけどね……。その後、OKしてもらえて本当によかったです……。

──本作の主人公やヒロインについて、生まれた経緯や思うところをお聞かせください。

 御簾納については上でも話したので、ちょっとメイン二人の関係性について……。

 実は今作のメイン二人は、岬のデビュー作でもある「失恋探偵ももせ」の百瀬と九十九に近い関係なんです。

 キャラもちょっと似たところがある。

 なので、書きながらも「原点に帰ってきたな……」感があって嬉しかったですね。

 あとは、やはり声優の皆さんが演じて下さったことで、ぐっとキャラが立体的になったかなと。

 御簾納の「難しいけどかわいいところ」、長谷川の「ちょっとおバカでいいやつなところ」を、グンと強調していただけたように思います。
ちなみに長谷川の妹の二胡も、「キュートで鋭い妹」を完璧に演じていただけて、収録当日に非常にびっくりしました。

──特にお気に入りのシーンはどこですか?

 それはもう第5話のラスト付近ですね。

 ある理由で長谷川が部屋で大暴れするのですが、原稿として書いていて楽しかった上声優さんのお芝居も最高。

 さらには、ここでNeko Hackerさんにとある音を入れていただいたのですが、素晴らしすぎて爆笑してしまいました。

 ここは是非、書籍版、『聴くanime』版もどちらも楽しんでいただきたいです!

──今後の予定について簡単に教えてください。

 ライトノベル、聴くanime、どちらも精力的に書いていきたいと思っています。

 前者は『三角の距離は限りないゼロ』『日和ちゃんのお願いは絶対』の2シリーズを刊行中ですが、どちらも大詰め。是非最後まで見届けていって欲しいです!

 後者も脚本のみならず、色々な形で製作に関わっていく予定ですので、応援していただければ幸いです!

──小説を書く時に、特にこだわっているところは?

 たくさんあるのですが、最近は「自分が楽しめるかどうか」にこだわりを置きたいなと思い始めました。

──アイデアを出したり、集中力を高めたりするためにやっていることは?

 割と僕、作家作業に関してはセルフスパルタなところがあり、どちらも、「とにかくやる。やりまくる」でカバーしてる感があります。

 アイデアはもうひたすら24時間考えまくる。

 理詰めで順番に考えていくこともあれば、ひらめきを求めて延々思考をめぐらせることもあります。

 寝てる最中にアイデアを思い付いて、飛び起きてスマホでメモしたりするなんてことも時々ありますね。

 集中力も「作業すれば出る」みたいに思っているところがあり、とにかくまずパソコンに向かって仕事を始めてみる感じです。

──学生時代に影響を受けた人物・作品は?

 たくさんありますね。大学の頃は舞城王太郎、寺山修司、南Q太、大島弓子。

 高校の頃はよしもとばなな、GRAPEVINEなど……。

 まあでも……何よりも大きいのはセカイ系でしょうか。

──今現在注目している作家・作品は?

 小説家でいえば、宇佐見りんさんに非常に注目しています。

 「かか」を読んだ時の衝撃がすごかった……。

 デビュー作であのレベルって、これから一体どうなっていってしまうんだ……。

──その他に今熱中しているものはありますか?

 これがないのが悩みなんですよねー。

 趣味とかあった方がいい気がするんです、創作にとっても。

 なので、色々面白いものを探している最中です。

──最近熱中しているゲームはありますか?

 ファイナルファンタジーシリーズの坂口博信さんがプロデュース、植松伸夫さんが音楽を担当した「FANTASIAN」ですね。

 FF9に近い雰囲気、という評判を聞いて、プレイしはじめました。

 確かに大作RPG感がありつつもしっかり現代的にブラッシュアップされていて、

 戦闘も「エイミング」のシステムが面白い……。

 さらに、街やダンジョンのフィールドがなんと「ジオラマ」で作られているあたりに、作り手のつよいこだわりが感じられて非常に好きです。

──それでは最後に、電撃オンライン読者へメッセージをお願いします。

 まだまだ気を抜けないところもある昨今の情勢ですが、こんなときこそ自分の好きなもの、楽しめるものを大事にしたいなと僕自身強く思います。

 これからも、新しくて面白いものをどんどん作り出そうと思っているので、一緒に楽しんでもらえればうれしいです!

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