『スパロボ』寺田貴信氏インタビュー後編。ターニングポイントはあの作品【スパロボ30周年記念連載:4】

まさん
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 今年で生誕30周年を迎え、今もなお新たな展開を続けているバンダイナムコエンターテインメントの人気タイトル『スーパーロボット大戦(スパロボ)』シリーズ。シリーズの生誕30周年を記念するインタビュー連載もいよいよ今回が最後! シリーズを長年支え続けた寺田貴信さんのインタビュー後編をお届けします。

  • ▲『スーパーロボット大戦』シリーズスーパーバイザーの寺田貴信さん。前編に引き続き、後編でも様々な質問に答えてくださいました!

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 インタビュー前編では、寺田さんがゲーム業界に入った直後のお話から、試行錯誤しながら『スパロボ』シリーズを広げていった経緯を話してくださいました。後編は『スーパーロボット大戦オリジナルジェネレーション(OG)』の話から。どうぞご覧ください。

シリーズ初の“オリジナルスパロボ”という挑戦が受け入れられた

──『OG』は、シリーズ初のオリジナル作品だけを集めた『スパロボ』でしたね。当時はビックリしました。

寺田さん:『魔装機神』シリーズの展開が途中で止まっていたので、オリジナルのコンテンツを作ろうという話になり、それなら『スパロボ』のオリジナルメカとキャラクターだけを集めた作品はどうでしょうという話を会社にしたんですよ。ところが、当時は「それだけで売れるのか」と言われ、とりあえずゲームボーイアドバンス(GBA)で1本やってみろということになりました。その前に原案となったドラマCDもやってましたし、ある程度手応えはあるのではないかと思ってました。ただ、会社側が望む結果を出せるかどうか、そこは賭けでした。

──『OG』シリーズは版権ものと違ってオリジナルということもあり、版権ものの『スパロボ』に出ていた時とは立ち位置や性格違っているなど、大胆な改変も特徴ですね。

寺田さん:初出の、つまり『スパロボ』で主人公として出している時は、後からオリジナル同士でまとまることなんて考えずに作っていました。なので、設定を改変して、整合性もつけなければならないところもありました。オリジナルとはいえ、手間がかかる部分はありますね。

──ちなみに、『OG』シリーズは最初から『α』のようなシリーズものとして考えておられたのでしょうか? 単発で作る予定はなかったのですか?

寺田さん:最初からざっくりとした構想は考えていました。ですが、もちろん結果を出さないと続きません。だから、初期で明確にプロットを作っていたのはGBAの『スーパーロボット大戦ORIGINAL GENERATION2(OG2)』までですね。1作目の時点でキョウスケとエクセレンがいるのに、初出の作品で彼らの敵だったアインストは出ていませんが、構想はありました。

 その後、OGのアニメ化やPS2の『スーパーロボット大戦OG ORIGINAL GENERATIONS(OGs)』が決まったので完結編までの大まかなストーリー構想を考えました。もっとも、『OG』シリーズ最終の敵は初期段階で決めています。

──『OG』は武器の持ち替えシステムなど、版権のほうでは難しそうなシステムにも挑戦されていましたね。

寺田さん:“ウェポンセレクトシステム”は、従来のスパロボより少しでも自由度を上げたくて入れました。“乗り換え”も自由度が高めですね。換装武器はサイバスターやグルンガストなどが持てる大型武器も考えていたんですが、作業量との兼ね合いでオミットしました。『OG』はオリジナルロボットだけなので、まずはそれらが本来持っている武器の戦闘アニメーションのクオリティを上げてアピールしなければならないということで。

 GBA版では版権作品が登場する『スパロボ』に追いつきはしていても追い越しはしていなかったのですが、PS2の『スーパーロボット大戦OG ORIGINAL GENERATIONS(OGs)』をリブートしてからは『スーパーロボット大戦MX』のスタッフに作ってもらいました。

 私は『α』シリーズや『スーパーロボット大戦Z』シリーズもやっていたので、あちらとは路線わけをしていたのですが、『OG』シリーズは勢いで作っていたところがあります。有名IPを使っている作品ではないので、“見た目で頑張らないと、誰も買ってくれない”点についてはスタッフ一同意識していましたね。自分たちのIPなので、当然ながら自分たちで自由にできますから“ウェポンセレクトシステム”などの挑戦もできました。それから、ゲシュペンストやヒュッケバイン。グルンガストを出すことで、昔からのファンの方にも訴求できるのではないかと思っていました。

 ただし、基本的には版権作品が登場する『スパロボ』の合間に作っているものなので、いろいろと時間がかかるんですよ。コンスタントに出せない弱みはありました。戦闘アニメのクオリティを上げていくと、作業量も増えていくので。

 戦闘アニメだけで売っている作品ではないのですが、優先順位としては版権作品が登場する『スパロボ』が上ですし、そちらがある以上はコンスタントに作っていくのが難しいですね。

──大感謝祭でも、寺田さんご自身で今の『OG』に関する状況を語られていましたね。『OG』自体は『スパロボ30』のDLCでも出演していますし、いつか完結するのを楽しみにしています。

寺田さん:『OG』完結編のストーリー構想はあります。『スーパーロボット大戦X』ではサイバスターとマサキを、『スーパーロボット大戦T』ではゲシュペンストだけゲスト出演させたのですが、ありがたいことにご好評をいただいたので、『スパロボ30』でも同様のことをしました。ただ、機体とキャラクターが多いので、『OG』のストーリーに繋げるのは難しく、『α』シリーズやそれぞれの作品から来ていることにしました。ですから、『スパロボ30』に出ているオリジナルのキャラクターは『OG』シリーズと同一人物ではありません。

──確かに会話を読んでいくと『α』の参戦作品を知っているなど、各作品のキャラクターだとわかる表現がありました。

寺田さん:そのほうが、『OG』シリーズを知らない人に取っても馴染みがあると思ったので、そうしています。逆に『クロスオメガ』や『DD』では、『スーパーロボット大戦OG ムーン・デュエラーズ(OGMD)』の番外編的ストーリーを書いています。

──オリジナル作品と言えば、いろいろあって途中で止まっていた『魔装機神』シリーズが復活し、『スーパーロボット大戦OGサーガ 魔装機神II REVELATION OF EVIL GOD』『スーパーロボット大戦OGサーガ 魔装機神III PRIDE OF JUSTICE』『スーパーロボット大戦OGサーガ 魔装機神F COFFIN OF THE END』とシリーズ自体をしっかり完結させてくれたのは、個人的にもうれしかったです。とくに『魔装機神III』はシリーズのなかでもかなり難しくて燃えたのですが、あの作品についてはどういう制作意図があったのでしょうか?

寺田さん:難しい『スパロボ』を求めている方向きに調整していますね。ただ、ユーザーさんから「難し過ぎる」と言われたこともあって、『魔装機神F』では難度を下げています。SRPGとして見た時には『魔装機神III』のバランスでもおもしろいのではないかと思うのですが……。

──難しい『スパロボ』と言えば、一時期GBA系で採用されていた“ツメスパロボ(ツメスパ)”が好きでした。あれは、どうしてなくなってしまったのでしょうか?

寺田さん:気軽に楽しめるエンドコンテンツの1つとして“ツメスパロボ”を作ったんですが、ただ、作っていくうちにある程度パターン化してしまうこともわかりました。そこで「1回なくしてみて、お客様の反応を見てみよう」思ったら、アンケート結果で「なくなったのは残念だ」という意見があまりありませんでした。

 “ツメスパロボ”に似たような意図で作られたエンドコンテンツは、今だと『DD』の制圧戦や迎撃戦が近いですね。

イベントはそのままで、テキストをガラッと変えた『MX』

──この流れで、ゲームボーイアドバンスの『スパロボ』シリーズについてお聞きしてもよろしいでしょうか? 『機動戦艦ナデシコ』が初参戦した『スーパーロボット大戦A』に関しては驚かされたユーザーも多いと思います。私も、当時大きな話題になっていたような記憶がありました。

寺田さん:『機動戦艦ナデシコ』については、原作の独特のノリを『スパロボ』でどう扱うかということに注意を払いました。そこは『A』のシナリオを書いた森住惣一郎さんが頑張ってくれたおかげで何とかなったのではないかと思います。実際、かなりの反響がありましたし、後で『機動戦艦 ナデシコ The prince of darkness』も参戦していますから。

──『A』以降の携帯『スパロボ』には、寺田さんはどれくらい関わられているのでしょうか?

寺田さん:携帯機の『スパロボ』は若手プロデューサーの登竜門的な扱いだったので、私は企画などには関わって監修はするものの、実際の開発業務は任せていました。ガッツリやったのは、GB『第2次G』とGBAの『OG1』、『OG2』ぐらいですね。

──では、どちらかと言えば据え置きのほうにガッツリ関わられていた感じですか?

寺田さん:それは『α』から『第3次α』ぐらいまでですね。『OG』はシナリオ執筆やパラメータ調整などガッツリやっていますが、初期の『スパロボ』はプロデュース業に専念、『Z』以降は企画に関わりつつ、プロデュース業や監修、社外での交渉や作業が主となっています。『第3次α』以降はパラメータにもタッチしていませんので、自分でパラメータを決めた『スパロボ』のほうが少ないです。ディレクターに任せて「ここを調整してくれ。あそこを直してくれ」と話すくらいですね。

──なるほど。ガッツリというわけではありませんが、以前に“スパロボ夜話”で『スーパーロボット大戦MX』のシナリオが大変だったという話をされていましたよね。当時の思い出で、ほかにも覚えていることはありますか?

寺田さん:『MX』のシナリオは、試行錯誤しまして。何人かのライターさんに書いてもらったんですが、最終的には私が力技で修正しました。ただ、ゲーム内のイベントを変える手間も時間もあまりなかったので、基本的にはテキストのみの修正で。それでも2、3カ所、どうしても整合性が取れないところはありました。ストーリーの大枠は私が作って、他の人に任せたんですが、上手くまとまらなかったので自分で直しました。これはプロットをまとめきれなかった私が悪いので、自分で何とか収拾したということです。以降、版権作品が登場する家庭用『スパロボ』のシナリオを書いたことは『OG』シリーズを除いてほとんどなく、『スーパーロボット大戦Z』シリーズ以降は他のライターに任せています。もっとも、世界感の設定やストーリーの方向性、オリジナルメカやキャラの設定などで指示を出していることもあります。

──その代わりというわけではないですが、スマートフォンの『DD』ではシナリオを書いていらっしゃるとお聞きしています。

寺田さん:『DD』の世界観、オリジナルメカやキャラは主に私が考えました。序章は何本かシナリオを書きましたが、第1章の中盤ぐらいまでは人に任せて修正を入れてました。第1章の終盤ぐらいから自分でシナリオプロットを作って、シナリオを書くこともありました。フリーになってからはシナリオ関連の作業が増えましたね。あくまで自分の中で「『DD』で『α』のストーリーのノリをある程度回帰させよう」と思っていて、先日配信された『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』のヤシマ作戦のシナリオはそういう感じにしています。ただ、話数が決まっている家庭用『スパロボ』と違って、運営との兼ね合いがあるのでいろいろと大変ですね。もっともそれは『スパロボ』だけの話ではないと思いますが。

──配信当初は、各ワールドがこれまでに発売された据え置き型『スパロボ』をイメージさせるような作品わけになっていましたね。

寺田さん:世代別『スパロボ』を作ってみたいとも思っていたので、そうしました。『DD』が続く限りストーリーを続けていくことになるでしょうし、途中から参戦作品が増えていくので、家庭用『スパロボ』のように登場キャラクターが全員揃って行動する話を作るのが難しい場合もあります。そこを逆手に取って「あるワールドに行った特定のキャラ達のストーリー」をやったりします。ただ、先程も言った通り、運営側から「○月に○○○○という機体を出したい」という要望があると予定していたストーリーを変えなければなりません。逆にこちらから「シナリオでこういう話をやりたいから、○月に○○○○という機体を出したい」と言うこともあるので、お互い調整に苦心していますね。『スパロボ30』ではヒュッケバイン30やドライストレーガーの設定を作りましたが、他の設定やシナリオは名倉正博さんに任せているので、私は『DD』のシナリオ関連の面倒を見てました。

──『30』はスタッフロールを見ても、このボリュームを名倉さんお1人で書かれているのかと驚愕しました。DLC作品も最初はいるだけ参戦になると予想していたのですが、DLCを導入してから仲間にするとストーリー上でも会話に参加してくるじゃないですか。差分がすごいことになっていますよね。

寺田さん:そうですね。横で見ていて「大変だなあ」とは思ったのですが、名倉さんが「やる」と言ったのでやってもらいました。

──『30』の“タクティカル・エリア・セレクト”ならではの驚きではありますが、この形式が今後のスタンダードになると考えてもよろしいのですか?

寺田さん:今後どうなるかは、まだ決めていないのでわかりません。今は、お客様の反応を見て“タクティカル・エリア・セレクト”のいいところも悪いところもわかってきたところです。

小隊システムを模索した難着点がタッグバトルシステム

──『スーパーロボット大戦Z』シリーズはかなりの長期シリーズとなり、ハードもPS2、PSP、PS3と大きくまたぎました。当時の話をお聞きしてもよろしいですか?

寺田さん:ハード自体は、初期の『スパロボ』からまたいでいるので、そこでの苦労はありませんでした。最初の『スパロボ』は、1作目がゲームボーイ。2作目がファミリーコンピュータ。3作目がスーパーファミコン。そこから時間をあまり置かずにPSやセガサターンにも移行して、ゲームボーイアドバンスでもワンダースワンでもPS2でも、ドリームキャストでも出しています。私たちとしては、ハードが変わることへの意識はそこまでしていなかったですね。

 ただ、大変だったのはユーザーさんのほうだったと思います。『Z』シリーズはPS2からPSPに移行して、さらにPS3へ行ったので、シリーズを統一ハードで遊べないことは申し訳なく思っています。

──ハードの移行で言えば、『スーパーロボット大戦Z』シリーズでは、地上と空中で技のアニメ―ションが変わる凝った仕様がありました。あれは、ハードが携帯機に移行してからは受け継がれませんでしたね。

寺田さん:『第2次スーパーロボット大戦Z 破界篇』でPSPに移行したため、ハードのスペックの関係でそこまでできず、いったんなくしてそのままという感じです。

──『Z』シリーズでは小隊制のシステムを取り入れていましたが、あれも参戦作品が多いシリーズものだからこそ投入されたシステムなのでしょうか?

寺田さん:そうですね。作品数に対して出せる機体数が少ないですし、全部出せるのがベストかも知れませんが、そうなるとシミュレーションRPGではなく、シミュレーションゲームなってしまうので、いろいろと試行錯誤した結果、“2機1組”が落としどころだったのではないかと思っています。

──『スーパーロボット大戦K』以降の携帯機版権作品や、『OG』シリーズで採用されていたタッグシステムですね。

寺田さん:最終的に『K』以降の携帯機や『OG』でタッグシステムに落ち着いた理由としては、4機だと多すぎる。3機でもまだ面倒。でも、2機1組なら何とか……という結論ですね。それでも、タッグを組むのが面倒くさいと言う意見や、イベントで機体がバラバラになるのがイヤという意見は多かったですね。

──『30』では、部隊わけによって機体が使えなくなるルート分岐がありません。これも、「ルート分岐で部隊がバラバラになるのはイヤだ」という意見を反映させた結果ということですか?

寺田さん:そうですね。ルート分岐による部隊わけは、登場キャラクターが減るのでシナリオ作成は楽なんですが、他が大変なんです。『DD』は、プレイヤーが手に入れた機体とキャラクターがストーリーの中でいなくなっても、ユーザーの手持ちからいなくなるわけではなく、出撃できるシステムにしています。ストーリーにいないキャラが出撃するわけですから変なんですが、スマホアプリだと運営に影響してしまうので、割り切りました。

 『タクティカル・エリア・セレクト』に関しては、ユーザーさんがこちらで意図していたストーリー展開とは違う順番でミッションを進めていくことがありますから、人によっては「なんかあっさりしてるな」と思われるかも知れません。自由度を高めてドラマ性を捨てるか、その両方を成立させるか、はたまた従来のシナリオ進行スタイルに戻しつつ自由に遊べるサブミッションをたくさん用意するか、『30』をプレイされたユーザーさんのご意見を聞いて考えたいですね。

──自分としても気になるところですね。また、話を『Z』シリーズに戻しますが、『Z』シリーズで一番印象に残っていることを教えてください。

寺田さん:『Z』シリーズでは反省点があって、ああもハードが変わるなら、『第2次Z』でシリーズを完結させた方が良かったと思っています。『第3次Z』ではなく、単発の作品で仕切り直しをするべきでした。ユーザーさん達が1本のゲームに費やしてくれる時間はどんどん短くなっていますからね。コアなユーザーさんは『スパロボ』をじっくり遊んでくれますが、忙しい方や他の趣味を持っておられる方は時間がかかるゲームを敬遠しがちではないかと思い、『30』にはスマホアプリを意識して限定的なオートプレイ機能を入れました。

『スーパーロボット大戦Operation Extend』などの少し時代が早すぎた挑戦作

──『スパロボ』シリーズ自体も、今ではスマホアプリを展開していますよね。その先駆けとなった『スーパーロボット大戦モバイル』や『スーパーロボット大戦 Card Chronicle』には、どの程度関わっておられたのでしょうか。

寺田さん:『スーパーロボット大戦モバイル』や『スーパーロボット大戦Card Chronicle』にはほぼ関わってません。スーパーロボット大戦X-Ω(クロスオメガ)』はスーパーバイザーとして関わってました。運営の内容を決めることより、戦闘アニメーションやシナリオの監修というリソース寄りの仕事がメインです。

──運営型の『スパロボ』に近い形としては、定期的にシナリオが配信されていた『スーパーロボット大戦Operation Extend(OE)』がPSPで出ていました。あれは今から見ると当たり前のような仕組みですが、当時としてはかなり早いものでしたね。

寺田さん:運営型のタイトルが流行る時代が来るとわかっていたので、配信していくタイプの『スパロボ』としてPSPで『OE』を出したのですが、今から考えると早すぎました。システムも変えたりとか、いろいろと挑戦はしたんですが当時は運営のノウハウはそれほどなく、試行錯誤だったので。ただ、後々の『スパロボ』に影響を与えていると思います。

──当時は挑戦的で早すぎた『スパロボ』でも、今から見ると感想が変わりますね。たとえば、ニンテンドウ64の時代には『スーパーロボット大戦リンクバトラー』という挑戦的なタイトルがありました。あれも、かなり早すぎたタイトルかもしれません。

寺田さん:そうかも知れないですね。低年齢層を意識しつつ、『スパロボ』に対戦の要素を持ち込もうといろいろやっていた時期でした。

──その後の挑戦としては、『スパロボ学園』というかなり変わったタイトルもありましたね。カードゲーム風の対戦型スパロボは斬新でした。

寺田さん:『スパロボ学園』は「低年齢層にアピールしつつ、スパロボに興味がない人も遊べるカードゲームにしよう」というコンセプトでした。ただ、『スパロボ』は『ガンダム』ゲームのような多角的展開を早期からあまりしていなかったので、あの路線を継続することはできませんでしたね。

──よく、ほかのゲーム会社さんでもユーザーの世代交代に関しては悩まれている印象があります。今の『スパロボ』は世代交代できているのでしょうか?

寺田さん:若い人が増えてはいますが、これは世代交代とは違うものだと捉えています。これは悪いことではなく、例えるなら『スパロボ』は時代劇なんですよ。『ガンダム』はどんどん新しい作品が出てきますし、その都度新しいファンをつかまえていくわけです。ただ、『スパロボ』は昔の作品と今の作品の住みわけ自体が常に悩みどころです。

 たとえば、私が『スパロボ』を作っていた初期の頃は「新しい作品を入れるのはどうかと思う」という意見すらありました。『スパロボ』初期は、『機動戦士Zガンダム』ですらも「懐かしいね」と言われていたような時代でした。昔の作品をリブートするということがあまりなかったんですね。

 ただ、『スパロボ』初期にバンダイさんの“超合金魂”シリーズとガンプラのマスターグレードがヒットしたので、我々も運よくその流れに乗れました。

 たとえば、『ドラゴンボール』もアニメの放送や漫画の連載が終わっても動き続けていて、今でも大きなIPになっていますよね。まさに“継続は力なり”なんですよ。『ウルトラマン』、『仮面ライダー』、『スーパー戦隊』も長く続いていて、新作が出ながらも昔の作品の要素も入っている。いろいろな世代が思い入れを持つウルトラマンやライダー、スーパー戦隊がいる。それがさらにシリーズを継続させる力になっているんですね。

 『スパロボ』というIPも継続しているほうだと思っています。とはいえ、ずっと継続している“だけ”ではよくないですし、新しいことにチャレンジするのも企業の精神ではあるので、その流れ次第で変わっていくのかな、と思うところもありますね。

アンケートを送ってくれたお客様や海外の意見を重視した今の『スパロボ』

──寺田さんは、たまに“生スパロボチャンネル”などでシニア向けの『スパロボ』についても話されていますよね。昭和作品だけの『スパロボ』を考えたけど、没になったとか……。

寺田さん:昭和作品だけの『スパロボ』を作って今の価格で出しても、利益が出ないと思います。買っていただける層が限られているので。ただ、過去にやっていたけど現状ではオミットしている要素を入れ、「満足度を上げた価格が5万円の『スパロボ』」なら少数の売れ行きで成立するかも知れません。最近の高額合金トイ、たとえば豪華仕様の超合金魂のような売り方ですね。

 現実的な話をすれば、昭和作品だけの『スパロボ』を作るとすれば、メインターゲットになるのは確実に50代以上。ビジネスで考えたら、20代から50代までが幅広く買う『スパロボ』と、50代以上限定の『スパロボ』だったら、普通の会社は前者を作れと言うんじゃないかと思います。ただ、今後の『スパロボ』でニッチ層を撃ち抜くやり方はありではないかと個人的には考えてます。

 『スパロボ』の参戦作品全てが好きなユーザーさんは少数派ではないかと思います。いい意味でも悪い意味でも最大公約数がまとまりきっていないシリーズなんです。たとえば、『Gジェネ』で宇宙世紀のガンダムを最新作まで入れた時に、その中にあまり見ていなかった作品があったとしても、トータルで『ガンダム』シリーズかつ『Gジェネ』が好きな人は買ってくださるんじゃないでしょうか。でも、『スパロボ』の場合は違うんです。「今回は、〇〇が参戦していない」という当たりはずれがあって、しかもそれがユーザーさんによって違います。

 だから、たとえば『スパロボ30』のラインナップがドンピシャな人もいれば、まったく引っ掛からなかった人もいらっしゃると思います。ありがたいことに「『スパロボ』だったらなんでも買います!」と言ってくださる人もいるのですが、シリーズが続けば続くほど最大公約数を見出すのが難しくなっていきますね。かと言って、すべてのロボットアニメを参戦させることは不可能ですし。

──すべての参戦作品を出して需要をさらい切るのは、物理的にも現実的にも不可能ですね。

寺田さん:昔よりもユーザーアンケートの結果は重視していますし、海外の要望も積極的に聞いています。社会現象になるほどヒットするロボットアニメが出てくると『スパロボ』の注目度も上がるのですが、これはもう、その都度その都度で最適解を見つけていく戦いでしかないと思っています。

 『α』や『Z』シリーズの頃から海外でも人気があるのは知っていたのですが、当時はローカライズ版を出していなかったので、海外のユーザーさんの要望を積極的に入れることはなかったのですが、今は違いますね。30年前とはデータの集め方も大きく変わっていますし。

──アンケートや海外の意見を反映する作り方になったとのことですが、ネットの反応も拾っているのでしょうか?

寺田さん:ある程度は見ていますが、匿名の書き込みなどですと正式なデータとしては残らないですね。商品を買っていただいて、アンケートに答えてくださるユーザーさんのご意見がデータとして蓄積・分析されます。

 とくに『スーパーロボット大戦30』は30周年記念作品だったので、アンケートやお客様の意見を重視して作りましょうと話をしていました。とは言え、アンケートとは関係なしに「これを出そう」と決めた参戦作品もあり、それが好評だったので、長年ロボットアニメとその関連商品に触れてきたことによって培った勘みたいなものも、ある程度は必要ではないかと思います。

──『スパロボ』の場合は、購入者アンケートも熱心に送られてくる感じですか?

寺田さん:そうですね。『30』は久々に『スパロボ』を遊んだという方も多いです。プロモの効果がかなりあったのではないかと思います。

 また、昔の『スパロボ』に比べていい環境になったと思えるのは、今だと公式の動画配信サイトで原作が見やすくなっていることですね。昔だと本放送や再放送をビデオに録画しているか、原作のビデオテープやレーザーディスクのボックスが発売されていないと原作を見ることができなかったので。本当にいい時代になりました。

──自分も予習したくてレンタルビデオ店に行ったりしたのですが、そもそも見られない作品がいっぱいありました。

寺田さん:たとえば、昔の『スパロボ』だと、四角いアイコンの中に収まる顔グラフィックしかなかったんです。だから『機動戦士ガンダム0083』のアナベル・ガトーを知らない人は、彼がスキンヘッドだと思っていたとか、『無敵鋼人 ダイターン3』の破嵐万丈の髪型を原作で見て初めて知ったというユーザーさんがいらっしゃいました。今はキャラカットインで上半身が出てきたりしますし、原作も公式の動画配信サイトで見られるようになったので、そういう誤解が少ないのではないかと思います。

──30年近く『スパロボ』が続けば、本当にいろいろと変わりますよね。寺田さんが30年続けてこられて、もっとも印象深いことを聞いてもいいですか?

寺田さん:印象深いことは……いろいろなことがありすぎて決められませんね。もっとも嬉しかったことは、先ほど(※インタビュー前編)も話した『α』ですね。会社からは「このままなら開発中止だ」と言われたのですが、社長さんが東京ゲームショウ(TGS)の反応を見て、お客様の反応がよければ開発を続けようと言ってくれたときの出来事です。

 TGS前日はホテルに泊まり込み、あまりにもしんどくて初日のビジネスデーに寝坊してしまったのですが、会場に着いたら『スパロボ』の映像に人だかりができている。そこで社長さんから「これは行けるよ。『α』の開発を続けよう」という話が出て、それがすごく嬉しかったですね。

 『スパロボ』自体のターニングポイントが『α』だったので、いろいろと思い入れがありますね。発売日にも印象深い話があって、ほかの人気タイトルと発売が被っていたんです。秋葉原の量販店に人が並んでいると聞いて見に行ったら、違うゲームでした(笑)。でも、そこに営業のスタッフが走ってきて「追加受注がたくさんきました」と報告してくれました。みんなその場で喜んだ覚えがあります。

──本当に『スパロボ』自体のターニングポイントだったんですね。シリーズ自体の存続に関わっていた重要な立ち位置の作品なんだと、あらためて思いました。

寺田さん:でも、それは別に私たちが頑張ったからでも、社長さんが判断を下したからでもありません。結果的にはお客様がいい反応をしてくれたからです。それは、社長さんにも当時こう言われました。「私の決断でもなければ、君たちの結果でもない。これは、お客様がくだした決断だ」と。

 その後も『α』の開発は難航したんですが、『スパロボ』が首の皮一枚で繋がりました。あの時やイベントなどでのお客様の反応が原動力となって、私は今も物を作り続けています。

 『スパロボ』シリーズは、これまでにも絶対絶命のピンチが何度もありましたが、そのたびにロボットが好きなお客様が支えてくださいました。お客様から厳しいお言葉をいただくことも多いですが、ありがたいことだとあらためて思いますね。励みになっています。

 ここまでなんだかんだとやってくることができました。昔に教えられた「継続は力なり」が事実だったと実感しますね。ただ、「継続は力なり」の裏側にはマンネリになるという弱点もあったりするので、引き続き考えていかねばならない課題だと思っています。

──いろいろと楽しいお話が聞けて個人的にもうれしかったです。最後に、あらためて30周年を迎えたユーザーの方々に向けて寺田さんからのメッセージをお願いします。

寺田さん:『スパロボ』は、ロボットアニメが好きな方に向けて作っている作品です。『スパロボ』を好きになる以前に、まずロボットアニメとその関連商品をずっと好きでいてくれるとありがたいですね。いろいろなロボットアニメがあってこその『スパロボ』ですし、ロボットアニメがないと生まれなかった作品です。

 ロボットアニメを作られてきた方々が最大の功績であり、私たちはその力を部分的にお借りしているだけに過ぎません。さまざまなロボットコンテンツをこれからも好きでいていただけると、きっと『スパロボ』にもさまざまな形で現れてくると思います。ロボットと言ってもさまざまなものがありますが、日本が世界に誇れるコンテンツの1つだと思っているので、そこを追いかけていっていただけるとありがたいです。

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