『FORSPOKEN』開発インタビュー! “ルミナスエンジン”で目指す次世代オープンワールドとは!?

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 スクウェア・エニックスのルミナプロダクションが贈るPS5/PC用ソフト『FORSPOKEN(フォースポークン)』『ファイナルファンタジーXV』で採用された“ルミナスエンジン”で目指す新たな体験を、本作のクリエイティブプロデューサー光野雷生氏、Co-ディレクターの寺田武史氏へのインタビューで探ります。なお、作品の基本情報はコチラをご覧ください。

  • ▲クリエイティブプロデューサー:光野雷生氏
  • ▲Co-ディレクター:寺田武史氏

“ルミナスプロダクション”の強みである“ルミナスエンジン”を最大限に活かす作品に!

――『ファイナルファンタジーXV(以下FFXV)』で使用した“ルミナスエンジン”を進化させた形がこの『FORSPOKEN』になりますが、どのような理由でこのエンジンを引き継いだのでしょうか?

寺田武文氏(以下、敬称略):“ルミナスエンジン”自体は『FFXV』の時点で一旦完成はしていました。もちろん「これはスゴイよね」という部分もあり、逆に「これは改善しないといけないよね」という部分もあったのも事実です。

 そのなかで、自分たちが次世代に向かって新たな作品を作るという話になったときに、やはり自分たちの持ち味は自前のエンジンがある点だろうとなり、「ならば“ルミナスエンジン”を発展させて、もう1本作っていこう」となったのが今回の経緯です。

――実際に“ルミナスエンジン”を使うことが決まってからは、どのように開発が進められたのでしょうか?

寺田:このエンジンがグラフィックに強いことはわかっていたので、そこは当たり前のように力を入れて進めました。それにプラスして、次に作る作品では“オープンワールドを作りたい”という想いがありました。

 『FFXV』もオープンワールドでしたが、大変だったのがデザイナーがひとつひとつ手作業で、フィールドに木を植えたり草を生やしたりという配置作業を行ったことでした。その作業を今回はAIを使い、自動生成して作れるようにしようと作業を進めたんです。

 ですので、『FFXV』と比べるとAIを使っての制作という部分が“ルミナスエンジン”で一番パワーアップしたポイントになります。

――AIによる自動生成と聞くと、プレイ時にマップに入ると毎回形が変わるという印象を受けますが?

寺田:そちらの自動生成という意味ではなく、制作時に例えば「こういう部分には草が生えます」「ここには影ができます」といったプログラムを入力することで、AIがマップを自動生成するシステムになります。

 人が絶対にやらなくてはならない作業をAIが担当できるようになり、自分たちはそのぶんリソースをできる限りクリエイティブなところに特化させ、新しい世界を作ることにパワーを注げました。

――そうなると、思ったよりも開発期間は長くなかった形ですか?

寺田:ルミナスプロダクションが立ち上がったのが3年ちょっと前くらいなので、手前の準備期間を含めると長くても4年くらいでしょうか。ですので、そこまで長く開発をしているのかと聞かれると、そんなことはないと思います。

――先ほどAIを採用したことで、クリエイティブなところに特化できたというお話がありましたが、例えばどのようなことが進化したなど、手応えがあればぜひ教えてください。

寺田:単純に配置物という観点で言えば、たとえば畑を耕すだけでななく宝箱を置いてみるとか、ユーザーが入手できる草などの素材を置くとか、モンスターを配置するなどの部分ですね。こちらはゲームのレベルデザインの根幹になるので、すべてをAIにまかせるというのはなかなか難しいんです。もちろん、これらについてもいずれはAIにまかせることができるであろうという未来も感じました。

ワールドワイドに響く作り方で主人公や物語を決めていった!

――キャラクターのデザインは海外を主軸にした印象を受けます。キャラクター、物語などで日本のユーザーに刺さりそうなポイントがあれば教えてください。

光野雷生氏(以下、敬称略):もともとプロジェクトを立ち上げたときに、我々のチームの強みや弱みを全部見返したんです。『FF』シリーズというファンタジーを作るDNAは活かしつつ、次の作品は全世界のユーザーに響いてほしいという想いがありまして、それをベストにやる方法を考えたときに、海外のライターさんたちにご協力いただこうとなりました。

 彼らが作るアイデアと、我々が作るファンタジー世界を融合させたものが、一番全世界に響くものになるだろうと考えました。ですので、とくに日本のユーザーだけでなく、全世界のユーザーが楽しめるストーリーや世界観で、人間らしい現代を象徴した主人公たちになったと考えています。

――となると、そのようにフラットに考えつつ、いまのユーザーのニーズに合わせたキャラクターや物語ができたということでしょうか?

光野:ユーザーに寄り添ったというよりは、私たちが一番語りたい要素をどのようなストーリー、どのようなキャラクターならば届けられるかという観点から考えた結果、フレイという主人公が生まれ、その周りが固まっていった流れです。

――シナリオよりもキャラクターを先に固めていったのでしょうか?

光野:今回はコンセプトとして“まったく新しいファンタジー”“魔法が豊かな世界”がありまして、さらにそこに“二面性”というテーマがあるんです。現代の要素とファンタジーの要素の両面を取り入れたいという狙いがあり、そこから現代の女性を今回の主人公に選びました。

 我々と同じ感覚、感性を持ったフレイがこの世界でいろろな経験することで、「そうだよね、そう思うよね」など共感できることを大事にしたかったんです。そのようにまず大枠の設定から考えた結果、キャラクターの設定が決まり、絵という意味でのデザインが固まっていった形です。

――そうなると、魔法を題材にながらも単なるファンタジーではなく、フレイが異世界に来た理由や、魔法を使用できるようになることにも綿密な設定があるのでしょうか?

光野:そうですね。舞台のコンセプトがファンタジーということもありますが、ゲームデザインの視点からも最初の段階から魔法を軸にしたいと決めていました。現代の人間が異世界に行って、突然魔法を使えるようになったことを中心に、ストーリーやゲームデザインを描いている感じです。

――ちなみに、最近は女性を主人公にしたゲームも多く見られますが、フレイを主人公に選んだのには何か理由があるのでしょうか?

光野:そうですね。最近は女性の主人公も多くなってきている印象です。ただ、我々が今回やりたかったことは、強い女性の“タンタ”という存在が統治する社会が形成されている“アーシア”という世界で、そこにフレイが放り込まれるというストーリーです。

 なかでも描きたかったポイントのひとつが、フレイという等身大の女性の成長になります。ニューヨークの生い立ちのところから始まり、この異世界に突然放り出され、そこでの試練などいろいろなものを乗り越えて、人間としてどういう風に成長をしていくのか。そしてもちろんゲームなので、キャラクターとしてどうパワーアップしていくのかという部分をぜひ体験してほしいです。

――フレイは単身“アーシア”に放り出されますが、例えば物語中で同行者と一緒に戦うようなシチュエーションはあるのでしょうか?

光野:フレイは右腕にカフという魔法のブレスレットをつけていますが、カフ自身がよくしゃべるキャラクターのひとりとして設計されています。物語はフレイを中心にした形ですが、バトルも掛け合いながら戦ったり冒険中に会話をしたりと、ふたり一緒に旅をしていく形です。

――キャラクターに関連した質問ですが、ゲーム中では例えばどこかの拠点にNPCたちが暮らしていて、彼らからクエストを受注するようなスタイルになるのでしょうか?

寺田:この“アーシア”という世界は“ブレイク”と呼ばれる、触れてしまうと死んでしまう瘴気に侵された世界で、一部の都市を除いてほとんどの人類が滅亡しているという設定になっています。ですので、物語は街を中心に進んでいきますが、そのなかでNPCとの会話や出会いは用意されています。

――そのNPCたちとの出会いは、フレイがいた現実世界での人間関係や抱えていた問題とリンクする内容になると思いますが、物語全体の方向性としては明るいものになるのでしょうか?

光野:そうですね。暗いか明るいかで語るのはちょっと難しいですね(苦笑)。物語は我々が共感できる現代のリアルな女性を主人公にしていますので、彼女の葛藤や悩み、そして異世界で出会う人々との出会いを通じて、結果的にフレイの成長を感じられる物語になっています。

 そういう部分では“少し大人寄りな物語”になっているとは思いますが、ひと言で暗い、明るいと定義するのは難しい内容になっているとしかいまはお伝えできないですね。

魔法パルクールを全開で楽しめるボリューム感のオープンワールド設計!

――システム面では魔法パルクールによるアクションが大きなウリとなりますが、そこでの体験にはどのような魅力がありますか?

寺田:『FORSPOKEN』の一番のポイントは魔法になります。魔法を使ったバトルアクション、そして移動アクションという、魔法を使ったコンテンツを作ろうというコンセプトで開発を進めました。ですので、バトルアクションならば近接や遠距離、支援やトラップなど、多彩な魔法を使った攻撃手段を豊富に用意しています。

 魔法パルクールの場合は単純に走って移動するのではなく、魔法を使ってスゴイ距離を跳ぶなどが可能です。そしてフレイが成長することで、これらのアクションも進化していく形になります。なので、魔法を攻撃や移動などさまざまな局面で体験していただけるのが、最大の魅力だと考えています。

――魔法パルクールの種類はどれくらいあるのでしょうか? また使用する場合はスタミナ消費などの要素はあるのでしょうか?

寺田:詳細はまだ語れませんが、例えば「ここで魔法パルクールを使おう」といったような、リソースの管理というものは当然必要なので、ゲームシステムのなかには存在します。どのようなアクションが増えていくのかは、今後の情報を楽しみにお待ちください。

――魔法パルクールでのアクションは爽快だからこそ、用意されたフィールドの端まですぐにたどり着いてしまうのではないかと思ってしまうのですが、広さなどのボリューム感などはいかがでしょうか?

寺田:具体的に何キロ四方であるなどは言えませんが、やはり魔法パルクールが活きるには広大なフィールドや、すごく激しい高低差が必要になってきます。ですので、基本的にオープンワールドは魔法パルクールを軸に設計していますので、それを十分に楽しめる広さは担保できていると考えています。

 実際、自分たちが遊んでいても魔法パルクールを使って狭いな、という感触はありませんのでしたので、そういう感想をいただく心配はないと思います。

――お話を聞くとかなり広大なフィールドになりそうですが、一般的なオープンワールドにあるファストトラベルは用意されていますか?

寺田:はい、こちらはあります。一番遊んでほしいのは魔法パルクールですが、かといってそれだけを強要してしまうとストレスがたまってしまいますので、当然ファストトラベル機能は用意しています。

――本作はジャンルがアクションRPGになりますが、公開動画を見るとけっこう激しめのアクションという印象を受けます。とはいえ、成長要素があるということなので、苦手な人は成長させればその部分はカバーできるようなバランスになりますか?

寺田:オープンワールドを探索するほどに魔法の要素が手に入ったり、魔法や装備品のカスタマイズができるという“RPGとしての成長要素”はしっかり用意されています。もともと我々はそういった成長要素のあるRPGを作っていたチームですので、そこはとても大切にしている要素です。

 そして難易度ですが、これは『FFXV』の制作から学んだ部分で、どんなユーザーさんもシンプルに触れて楽しさを理解できることは非常に大事であると考えています。ですので、シンプルな操作方法で気軽に触って楽しんでいただけることは、本作で実現できているのではないでしょうか。

――公開された映像では荒野が中心になりますが、例えば雪が降るエリアや水中などは登場するのでしょうか?

寺田:“アーシア”という世界はひとつの小さい世界ではありません。具体的にどのようなエリアがあり、ギミックが用意されているのかは続報をお待ちください。

――オープンワールドでの探索の楽しみには、天候や時間の変化で見え方が変わるフィールドの美しさがあると思います。これらの要素は本作にはあるのでしょうか?

寺田:時間については世界のシステムと密接に絡むので、今回はちょっとお答えが難しいです。ただ、“ブレイクストーム”と呼ばれるような激しい環境変化も用意していますので、きっと期待に応えられると思います。

――“ブレイクストーム”のなかではボスと戦うことになりますが、戦闘はいわゆる“ソウルライク”のようなスタイルになるのでしょうか? また、デザイン面での多様性なども気になります。

寺田:どんなボスが登場するのかは今後公開していく予定です。ただ、やはりオープンワールドで戦うザコ敵と、一対一で戦うボス敵は遊び方がけっこう異なりますよね。ですので、両方の側面で満足できるデザインに仕上げていければと考えています。

――動画ではプレイ中に体力ゲージなどのUIが表示されていませんでした。こちらはあえてマスクしているのか、それとも極力情報は文字でなく、例えばフレイがうずくまるなど視覚で判断するのでしょうか?

寺田:当然ゲームをプレイするうえで必要なUIは入っています。例えばダメージ表現などもこだわってはいますが、だからといってUIをおろそかにしているというわけではありません。製品版では快適に遊べるのではないかと考えています。UIはゲームのデザインに紐づくものになりますので、このように遊んで成長させるという情報とあわせて、詳細を公開する予定です。

――例えば魔法を使って盾を作って攻撃をしのぐような手段はありますか?

寺田:魔法パルクールはどちらかといえば高速移動手段なので、それを使って敵の攻撃を回避することが主になります。私たちは“パルクール回避”と呼んでいますが、種類も豊富に用意してあります。また、ガードアクションもアクションゲームには必要な要素なので、ガードは可能です。

――となると、戦闘のゲームデザインはプレイヤーが積極的に攻撃をしかけていく、いわゆる“前のめりな姿勢”のスタイルになるのでしょうか?

寺田:前のめりというか、やはりアクションゲームは“自分が操作してカッコよく敵を倒す”というカタルシスが大事だと思います。そこを感じられて、さらにアクションゲームがうまい人が神プレイの動画を出せるようなバトルデザインになっています。

――『FORSPOKEN』はPS5、Steamなどのハードで発売を予定していて、いわゆる縦マルチでないタイトルになります。技術的な部分などで次世代ハードオンリーだからこその体験を教えてください。

寺田:やはりグラフィックスの部分はPS5だからこそできる部分がありますね。そこは今後公開する動画などの情報をご確認いただければと思います。それにプラスしてやはり読み込みの速さですね。読み込みが速いことによって、昔ならばこの仕様は実現できなかったことが可能になった部分も存在します。

――やはりオープンワールドを実現するには、PS5というハードは欠かせなかったと?

寺田:そうですね。PS4で作った『FFXV』ではできなかった問題に、今回は直面することはありませんでした。どちらかといえば作りづらかったということよりも、PS5だから助かったという要素のほうが多いと個人的には思っています。

――PS5のコントローラの特徴であるハプティックフィードバック、アダプティブトリガーなどを取り入れる予定はありますか?

寺田:やはりPS5のタイトルですので、そこは大事にしているポイントです。とくに振動周りは、魔法ひとつひとつがビジュアルも違いますし、ユーザーさんにどのようなフィードバックを与えれば新しい体験になるのかという点を丁寧に作っています。

 やはり魔法というのはユーザーさんが感じたことがないアクションですので、それをちゃんとユーザーさんに届けるという意味では、振動は非常にいいツールだと感じています。

――本作ではオンラインプレイに対応はしているのでしょうか?

光野:『FORSPOKEN』はストーリーを重視しているタイプのゲームなので、オフラインのスタイルになっています。ストーリーの追加DLCについては続報をお待ちください。

――2022年5月24日に発売日が決まったことで、やはり気になるのは体験版が配信されるのかですが、こちらは予定などはありますか?

光野:現時点では言えることはなにもないので……すみません。

――あとはストーリートレーラーに登場した猫がとても気になるのですが?

光野:猫のホーマーはいろいろご指摘をいただいていますが、いまはまだ秘密にさせてください。

――発売を待つ方々にメッセージをお願い致します。

光野:『FORSPOKEN』はルミナスプロダクションの第一作目ということで、我々が持っていたファンタジーゲームの作り方とRPGという強みと、海外の優れたタレントさんやクリエイターたちとのタッグを組むという、いままでにない作り方で制作しています。

 これがルミナスプロダクションの作品なんだと感じていただけるように、スタッフ一同日々がんばっていますので、発売までの残り5カ月期待してお待ちいただければ幸いです。今後ともよろしくお願いいたします。

寺田:発売日も発表されて、スタッフ一同テンションが上がっているのを感じています。と同時に、身が引き締まる思いです。ちょうど開発は繁忙期の真っただ中で「これだけは直そう、このバグは絶対に取らなくてはいけない」など、最後の局面でみんなが踏ん張っています。

 無事に発売できるように、開発一同全力で制作していきますので、みなさん楽しみにお待ちいただければ幸いです。

(C) Luminous Productions Co., Ltd. All Rights Reserved.
※画面はすべて開発中のものです。

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