【ウマ娘が1.8倍楽しくなるお話 17】年末総決算、有馬記念と『ウマ娘』のお話
- 文
- 柿ヶ瀬
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いよいよ年末ですね、柿ヶ瀬です。今年から馬券を買うようになってしまった皆さん、回収率はいかがでしたか? 筆者はしっかりと計算はしてませんが、大体70~80%くらいです。
今年1年を振り返ると、1月からアニメ2期が始まり、2月にはついにゲームがリリースされ、そこからの『ウマ娘』はまるで夢を見ているかのような時間でした。そんな奇跡のような2021年も、いよいよ終わりを迎えます。来年は『ウマ娘』にとってどんな年になるのか。楽しみですね。
さて年末と言えば? そうです、有馬記念です。ちょっと前からホープフルステークスがGI昇格したことで1年の最後のGIではなくなりましたが、それでもファン投票のある年末グランプリ、1年の総決算となるレースであることは間違いありません。
『ウマ娘』においても目標レースとして最終戦になることも多いこの有馬記念、今回は『ウマ娘』絡みで印象に残るレースの話をしていきたいと思います。
総決算だった有馬記念
かつて有馬記念は総決算のレースでした。『ウマ娘』でもシナリオにおける最終レースになることが多いこのレース。長年の間、一年の最後のGIでありましたので、自然と引退レースが多くなりました。現在は有馬記念で引退する馬も以前より少し減ったのと、有馬記念のあとに2歳GIホープフルステークスが開催されるようにもなり、昔ほどの総決算感はないかもしれません。
そもそも引退レース以前に有馬記念を走らない有力馬も増えました。近年レース間隔を空けることが多くなったために、例えば秋三冠と言われる天皇賞(秋)、ジャパンカップ、有馬記念をすべて使う一流馬は減り、同じ東京競馬場である天皇賞(秋)とジャパンカップを使ったほうが適性的にもいいとか、そもそも今の日本競馬のトレンド自体が東京競馬場にあることが影響して、中山での有馬記念を選ばなくなるなど……。
とは言えやはりファンとしては有馬記念は特別。『ウマ娘』でも当然たくさんのモデルとなった馬たちが有馬記念で様々なドラマを生み出しました。
もはや説明不要。『ウマ娘』でも描かれしあの有馬記念
1993年の有馬記念は、アニメ2期でも描かれた通り、前年の有馬記念以来1年ぶりの出走となったトウカイテイオーが奇跡の復活勝利を遂げたレースでした。アニメ『ウマ娘 Season2』は、有馬記念を終えてハッピーエンドで締めくくった形になっています。
現実だと、戦績としては最後のレースなので引退レースのような感じがしますが、テイオーはその後も現役だったんですよね……。また怪我して引退してしまったので、結果的に最後に走ったレースがあの有馬記念になってしまっただけで……。
とは言え、思い出は綺麗なものになりがちなので、それはそれ、なのかもしれません。
同じように復活の、そしてこちらは本当に引退レースだったのは、1990年の有馬記念。こちらは『ウマ娘』のメインストーリー最初の最初、第1章の1話で描かれる、オグリキャップの復活勝利です。
同年の春、安田記念を勝ち、宝塚記念は2着で終えた後、オグリは体調を崩したと言われ、不調に陥りました。天皇賞秋は6着、そしてジャパンカップはまさかの11着。オグリは終わったのか……と言われた中での復活のラストラン。子どものころの筆者もテレビで見ていましたが、中山競馬場が万雷のオグリコールで包まれていたのを思い出します。
ウマ娘を代表する有馬記念勝利を演じたこの2頭、偶然にも同じ4番人気でした。ちなみにグラスワンダーが最初に勝ったときも4番人気。今年『ウマ娘』がここまで大きく躍進を遂げていることを考えると、4番人気が気になってしまうところ、ありますね……。
それでも有馬記念はお祭りなのは
ホープフルステークスがGIになったのは2017年のこと。冒頭にもお話した通り、この年、厳密な意味では有馬記念は1年の総決算ではなくなりました。「もしかしたら今年の有馬記念はそういう意味で特別なレースじゃなくなるのかなあ……」なんて当時の筆者は考えていましたが、すべては杞憂に終わりました。なぜならばその年の有馬記念は、オグリやテイオーの有馬とはまったく別のお祭りになったからです。
主役は当時競馬を知らずとも、名前を聞く機会が多かったであろうキタサンブラックでした。断然1番人気のキタサンブラックがスタートからゴールまで先頭を走り続け圧勝。ゴールの後には観客の多くが振り返り、馬主席にいたサブちゃんこと北島三郎オーナーに拍手したり手を振ったりして祝福をする珍しい光景もあったと言います。
そして全レース終了後には、キタサンブラックお別れセレモニー(引退式は別で後日行いました)が行われ、北島三郎オーナーが引退によせて作った新曲『ありがとうキタサンブラック』の映像を流し、さらに代表曲の『まつり』を高々と歌い上げたるGIを勝った時に恒例だったパフォーマンスも当然あったりと、もうやりたい放題やないか! というお祭り騒ぎ。
今も有馬記念が年末総決算のお祭りというイメージがしっかり残っているのなら、それはもしかしたらキタサンブラックとサブちゃんのおかげだったりすると言っても過言では……いや、さすがに過言かもしれませんが、筆者個人はそうなっているところがあります。
1年の総決算じゃなくなるなあと思っていたのはどこへやら、すっかり「今年も1年競馬お疲れさまでした!」というような満足感に浸った筆者の2017年有馬記念だったのでした。もちろんその後に行われたホープフルステークスも、なんならその後大井競馬場で行われた東京大賞典もしっかり楽しんだわけですが……。
黄昏の有馬記念
しかし、有終の美を飾る馬ばかりではありません。むしろ多くの馬はピークを越えて、結果が出せなくなりターフを去ります。かつてのスターが衰え、新世代のスターに敗れ、消えゆく姿は寂しくもありますが、しかしどこか美しさを感じてしまうことがあります。
筆者にとってはゴールドシップの有馬記念がまさにそんなラストレースでした。3連覇の掛かった宝塚記念での出遅れ大敗の後、ゴールドシップは休養をはさみ、ジャパンカップに臨みますが、10着の惨敗。ですがそこはゴールドシップです。2年前のジャパンカップでも大敗しているし。そういうこともあるさ、ということでラストランとなった有馬記念では混戦模様ながらも1番人気に推されます。
相変わらず序盤は最後方でしたが、2周目向こう正面で『ウマ娘』でもおなじみのロングスパートを開始、大外をまくって3、4コーナーで前に取り付きます。かつて菊花賞や天皇賞春で見せた大まくり、引退レースであの豪快な勝利をまた見せてくれるのか!
……しかし、そこまででした。直線に入るとかつてのような伸びは見られず、着差こそ大きくなかったものの8着。かつて栄華を誇った王者の黄昏でした。衰えたのか、いつもの気の悪さが続いたのか、本当のところはわかりませんが、筆者は寂寥感とともに、ゴールドシップへの感謝、尊敬を抱きました。人間の世界にも存在する、アスリートが限界まで戦い続け、そして去りゆく姿へのリスペクトを、ゴールドシップの堂々とした競馬をした上での負け方に重ねてしまったのです。
『ウマ娘』での有馬記念も、ストーリー上のラストランとなることが多いですが、アオハル杯やURAファイナルズが残っていることもあったり、引退の花道……という趣きは当然薄れます。 とは言えまもなく行われる有馬記念、引退レースとなるクロノジェネシスやキセキをはじめとする古馬たちと、今年のクラシックで活躍してきたエフフォーリアやタイトルホルダー、ステラヴェローチェなどの3歳勢か、はたまたまだまだ現役を続ける古馬たちか。今年はラストランで有終の美を飾ってきた馬も多く、果たして有馬記念でもその流れは続くのかどうか、皆さんも気になっているところではないでしょうか。
今年『ウマ娘』で競馬を知った方々も、2021年の総決算を是非楽しんでいただきたいと思います。もちろんその後にはホープフルステークスも、東京大賞典もありますよ!
また次回もこういった“楽しみ方”を提示していければと思いますのでお時間ありましたらぜひご一読いただきたければ幸いです!
それではまた!
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