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関羽の青龍偃月刀と張飛の蛇矛の原点とは?【三国志 英傑群像出張版#2-1】

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 三国志に造詣の深い“KOBE鉄人三国志ギャラリー”館長・岡本伸也氏による、三国志コラム。数多くの書籍が存在するなか、“民間伝承”にスポットを当てて紹介しています。



 前回・前々回と物語である『三国志演義(以後、演義)』の主役、劉備・関羽・張飛らについての、「桃園の誓い」あたりの彼らがまだ若いころに関する民間伝承を紹介しました。

 今回は、彼らや諸葛亮(しょかつりょう)や趙雲(ちょううん)など、演義の主要人物の武器などについてのテーマでご紹介したいと思います。

 三国志の魅力はやはり「キャラクターが立っているところ!」かと思います。ゲームなどにするにしても、主要キャストの特徴が明確なところがキャラ分けしやすいというのも多分にあるかと思われます。

 その特徴の1つが、身体的特徴。そしてそれ以外としては武器や持ち物といえるかと思います。個人的には演義でもっともっとキャラ分けしてくれていたら、もっとグッズなども作り易かったと思うこともしばしばありますが……。

関羽【青龍偃月刀】、張飛【蛇矛】、劉備【双剣】の原点

 さて彼らの特徴的アイテムは歴史書『正史三国志(以後、正史)』には、私の知る限りほぼ登場していないので、演義になる過程でそれぞれのアイテムが付け加えられていったといえるかと思われます。

 演義の前身といわれる『三国志平話』(200年ほど古い)という本には(岡本調べでは)、劉備の双剣&的盧、関羽の長槍(長刀)、張飛の丈八矛(槍)、呂布の方天戟&赤兎馬、趙雲の槍(涯角槍という名がつく)などが登場しています。

 関羽の武器【青龍偃月刀】という表記はまだ出て来ず、張飛の武器【蛇矛】という表記もまだないのですが、“大蛇の絡み合うごとく”という表記があるので、そこから蛇と結びついたのかもしれません。

 ちなみにこの三国志平話では諸葛亮の特徴的な綸巾(帽子)、鶴氅(服)、羽扇(扇子)、四輪車は登場しませんが木牛流馬は登場します。(四輪車はないが、四頭立ての馬車には乗ります。ここから変化していったのかも)

 孔明の格好は『裴子語林』という書に記されたものが元になっているようです。正史にも木牛流馬は出てきます。

 そういうわけで、彼らの特徴的武器やアイテムが民間伝承や演劇などから更に付け加えられ、演義の今のスタイルに落ち着いていったようです。

 ここで特徴的な武器やアイテムについての逸話をいくつか紹介します。

関羽の武器【青龍偃月刀】誕生秘話

 関羽が頼んだ鍛冶屋の腕前はすばらしく、大変有名であった。上等な鉄を選び抜き刀を作った。

 関羽はさっそく試し切りをしてみるとすぐ切れなくなってしまった。2度目もやはり丸くなり切れなくなってしまった。

 鍛冶屋は困って三日三晩、天に誓いを立てて神に助けを求め祈った。

 三本目の刀を製鉄し終え、炉から取り出したとき、突然大風が吹き天が暗くなり、【一匹の青い龍】が製鉄の高炉の中に飛びこんだ。

 二人は驚いて、刀を取り出してみると、その青い龍は、刀の上にはりついていて動いている。

 その刀を関羽が手に取ってみるるとすばらしい切れ味の刀となっていた。

張飛の武器【蛇矛】誕生秘話

 安喜県に派遣された劉備。その山では大蛇がいていつも山を下りては人を恐がらせているという。

 劉備は大蛇が被害を及ぼしていることを聞き、大蛇を退治しようと思い、関羽、張飛に相談した。張飛は「俺が豚を殺すように蛇も真っ二つに切って殺しましょう(張飛は民間伝承では元肉屋)」と言う。

 劉備は「大蛇は恐ろしい。やはり関羽が青龍偃月刀を持っていくべきだ。お前の豚殺しの刀では役に立たない」と言った。張飛は怒り「兄者、俺を見くびるな。刀を持たず素手でその大蛇を退治して来てやろうじゃないか。」という。

 関羽も張飛が無鉄砲に見えたので説得しますが、張飛は聞かずその日の夜中一人で山に登り大蛇を探しに行ってしまいます。

 張飛は山間にうごめく黒い影を見つけます。大蛇でした。彼はすばやく飛びこむと大蛇の尾をつかまえ身を翻して走りだしました。彼は大蛇がかみつこうとするのを避けながら懸命に山のふもとへ蛇をぶつけながら走り続けました。

 一時間走り続けた頃、振り返り大蛇が死んだかどうか確かめると、なんと大蛇は、曲がりくねったとても鋭い長い矛に変わっていた。

 張飛はよろこんで、長い矛を持ち上げふり回した。

 この時、劉備と関羽は、蛇退治の助けにちょうど山に登って来ところだった。

 張飛は二人に向かって今までの経過を話した。劉備は長い矛を持ち上げながら言った。「お前は人々のために害を取り除いたので、天がお前にこの蛇の矛を授けたのだ。」と。

 それを聞いた民衆は「民のために1丈八尺の蛇矛を手に入れた」と刻まれた楯を張飛に贈りました。


 個人的には関羽が幽霊で現れたり龍や仙人もあらわれたりする『三国志演義』に、こういう話も入れ込んで欲しかったなと、改めて思ってしまいました。

 残念ながら劉備の双剣についての直接的な民間伝承については、持っている民間伝承の資料の中にはありませんでした。今後も探していきたいと思います。

 次回も他の人物の武器についても紹介していきます。


岡本伸也:英傑群像代表。「KOBE鉄人三国志ギャラリー」館長。元「KOBE三国志ガーデン」館長。三国志や古代中華系のお仕事で20年以上活動中。三国志雑誌・コラム等執筆。三国志エンタメサイトや三国志グッズを取り扱うサイトを運営。「三国志祭」などイベント企画。漫画家「横山光輝」氏の故郷&関帝廟(関羽を祀る)のある神戸で町おこし活動中!



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