自分をゲームじゃないと言い張る“ゲーム”の感動巨編『There Is No Game: Wrong Dimension』【電撃インディー#192】

まさん
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 電撃オンラインが注目するインディーゲームを紹介する電撃インディー。今回はフランスのDraw Me A Pixelが開発した“自分のことをゲームじゃないと主張し続けるゲーム”『There Is No Game: Wrong Dimension』のレビュー記事をお届けします。

 本作は現在Nintendo Switch/PC(Steam)/iOS/Androidで配信中です。

 『There Is No Game: Wrong Dimension』は、年末の“2021年おすすめ傑作選(10)”でも紹介したように、自分のことをゲームじゃないと言い張る“ゲームのプログラム”と、そんなことはお構いなしにゲームを遊びたいユーザー(我々)との攻防を描いた作品です。

 以前の記事ではネタバレを極力避ける方向で紹介しましたが、今回は段階を踏んで後半のネタバレも入れつつ、その魅力をお伝えしていきたいと思います。

 なお、電撃オンラインは、尖っていてオリジナリティがあったり、作り手が作りたいゲームを形にしていたりと、インディースピリットを感じるゲームをインディーゲームと呼び、愛を持ってプッシュしていきます!

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「俺はゲームじゃない!」と言い張るゲームとのだまし合い!

 このゲームはとにかくヘン! 普通のゲームじゃありません。いや、違いました。ゲームじゃありません。だって、ゲーム自体がそう言ってますからね。

 開始前の言語選択で「これが読めるならプログラムを終了しろ!」といきなり言われる場面から始まり、いざ開始しようとしても「始めない」の選択肢しか出てこない。

 何があっても自分はゲームじゃないと主張するプログラムを無視して、あの手この手でゲームを遊ぼうと画面をクリックしながら、ゲームの妨害を跳ねのけていく。そう、本作はジャンルとして区別するならポイントクリック型のアドベンチャーゲームです。

 え? 俺はアドベンチャーゲームでもゲームでもないって!? いいから、遊ばせてくれ!!

  • ▲タイトル画面を破壊してゲームを起動しようとしても、ニューゲームのボタンすら隠してしまうプログラム。意地でもゲームだと認めません。

 なぜか、自分をかたくなにゲームじゃないと言い張るプログラムとの攻防は、次から次へとバカバカしいシチュエーションが出てきて笑えます。

 頭を使う謎もありますが、ヒント機能があるので誰でも解ける親切設計。むしろ、ヒント機能がないと気づかないほど意外な隠し方や解き方があって、飽きません。

 よくもまあ、こんなシチュエーションを思いつくと感心しちゃいますよ……!

 自分はゲームじゃないと言いつつも、それはプログラムが言っているだけなのでご安心を。演出も発想も思いつきで作ったものではなく、しっかりと考えられて凝ったゲームを遊べます。

 タイトル画面の単語をへし折って勝手にブロック崩しを遊び始めてプログラムを怒らせたり、無理矢理スタートボタンをこじ開けて押したり、ゲームじゃないと言い張るプログラムに対して、ユーザーである我々は「いや、お前はあくまでもゲームだ!」と言わんばかりに無理やりゲームを遊ぼうとするのです。だって、ゲームが遊びたいんだもん。お金払ったし……。

 プレイヤーがやることは、あの手この手でゲームを遊べないように妨害するプログラムの裏をかき、なんとしてでもゲームを遊ぶこと。

 プログラムが隠しているえっちな画像を暴き、パスワードを入力し、途中で止まっているロード画面のバーを倒してでも無理やり100パーセントにして……こちらも意地になって画面中をクリックしましょう。こっちはお金を払って買ったんだぞ。ゲームを遊ばせろ!

  • ▲プログラムにとってのエッチな画像なので、基板が水着を着ているだけという衝撃画像。

 このチャプター1だけでも、本当に良くできたゲームです。ネタバレなしでは、はっきり言ってここまでしか語れません。実際に体験したほうがおもしろいゲームですし、一発ネタのような驚きも多いので、もう遊んだほうがいいでしょう。

 すでに結構なネタバレですし、極まったおふざけ過ぎる世界観と、プログラムの悪あがきにニヤニヤできるのは初見での楽しさです。まだ序盤なので引き返せますよ。これはレビューでも紹介記事でもありません! 早く、読むのをやめてゲームを遊べ!!

ゲームを遊べなかった序盤から、まったく別のゲームが始まるチャプター2

 え? まだ続きを読みたい? 仕方ないですね……。チャプター1の時点でも面白すぎるゲームですが、こんなの序の口。プログラムとの戦いは、まだまだ序章に過ぎません。

 ゲームの存在意義を否定するのは、いつだってグリッチやバグ。そう、チャプター2からは、ゲームをゲームとして完成させないようにする悪質なバグの使い手。ゲーム内に生まれた悪意。バグや異常な数値の擬人化ともいえる存在・Mr.グリッチとの戦いが始まります。それこそが本筋だったのです。

 先ほどまでこちらの妨害しかしなかったプログラムは、チャプター2以降だとある意味で相棒に。ゲームじゃないと言い張るプログラムと、なぜかゲームの世界に巻き込まれた我々ユーザー。奇妙すぎるタッグが、バグと戦う一風変わったバディものへ早変わり。

 こんな感じで、先が読めなさすぎるのが本作の楽しさでもあります。良くできたポイントクリック型のアドベンチャーなんですよ。

  • ▲俺はゲームを遊びたかっただけなのに、どんどん変な方向へ話が進んでいく……!

 プレイヤーとプログラムを違うゲームの世界に放り込み、あの手この手で邪魔をしてくるMr.グリッチ(バグ)。ゲームを遊ぶためにも、プレイヤーはプログラムとともにさまざまなゲームの世界で冒険を繰り広げます。

 個人的には、本作で一番ワクワクした部分ですね。次から次へと出てくる新しいゲームと、それを解決するための奇抜な発想。皮肉に満ちたゲーム内容まで、アイデア満載の作りで、先が気になるのです。

  • ▲いきなりリアルマネーを要求してきたF2P(基本無料型ゲーム)の世界。もちろん、実際のお金を払う必要はありません。これは、ゲームじゃありませんからね!

 とくに好きなのは、F2Pの世界を冒険するステージですね。体力がスタミナ制になってすぐ減り、課金アイテムで回復する要素や、広告が下からぴょこぴょこ飛び出す仕組み。

 ルートボックス(ガチャ)でアイテムを入手しようとしても全然当たらなかったりと、あんなに楽しかったゲームの世界がF2Pの地獄に!

  • ▲現代のF2Pっぽい要素がボコボコ出てくるステージ。謎解きの解決策が豪快で笑っちゃうかも。

 「ゲームがない」どころか、予想外のゲームがどんどん出てくるので遊ぶ手が止まらなくなります。なんなんだ、このゲームは! え? ゲームじゃない? ゲームがありません? いやいや、あなたゲームでしょ!!

 さあ、ここまで読んだらもういいでしょう。早くゲームを遊びに本作を買ってください。え? まだ続きを読む!? 正気ですか!? これはゲームのレビューじゃないんですよ!?

ゲームを遊びたいはずが、気が付くとあまりに壮大な物語に……!?

 ゲームを遊ぶためにプログラムとだまし合い、Mr.グリッチの妨害行為をはねのけて進む物語は、みるみるうちに壮大な方向へ進んでいきます。序盤のただただゲームを遊ぼうとしていた状況から、気が付くと想像もつかなかったような領域へ。これは、普通のゲームじゃありません。“おもしろいゲーム”です。

  • ▲本作の最大の敵、Mr.グリッチ。ゲームにおいて、グリッチ行為は作品を台無しにするものであり、バグはゲームを破壊するものなのです。

 「俺はゲームじゃない」とか「ゲームがありません」なんて言いながら、その中身は何よりもゲームが好きな人に向けた“ゲーム”。謎を解きながら進んでいく予測もつかない展開と、ゲームをめぐる愛の物語に引き付けられ、ここまで遊んだ人は最後までプレイしてしまうと思います。

 ボリュームはそこそこで、1度クリアすると再プレイしないタイプのアドベンチャーではありますが、1回の体験は濃密。ほかでは味わえない突き抜け方です。

 謎の解き方も、チャプターが進めば進むほどぶっ飛んでいきます。結構難しいので、ヒントを参照しながら解いていきましょう。ヒント機能にはデメリットはありません。

 何よりもゲームとして良くできていますし、一風変わったアドベンチャーとしても最後まで満足しながら楽しめます。ゲームでしか体験できない良さでもありつつ、ゲームで良かったと思える作品です。

 ボリューム的にはちょうどよいのですが、クリアすると何か寂しい気持ちに……。自分は、もっとプログラムやMr.グリッチたちと「ゲームがありません!」「いや、ある!」というやり取りを続けたかったのだと気が付きました。

 変なやつら(?)とゲームの世界を冒険する不思議な体験をしたい人は、ぜひこの“ゲームじゃないゲーム”を遊んでみてください。きっと、最後まで楽しめますよ!

  • ▲こんにちは! ゲームが、ありませぇぇぇぇん! ゲームがありませーーーーーん!! ここが一番好き。

(c)2021 Draw Me A Pixel

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