『CARRION』は異形の怪物が戦うアクション。色モノに見えて作り込まれたマップ構成に【海外ゲーム名作案内】

柏又
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 海外ゲーム大好きな担当ライターが実際にプレイして気に入ったタイトルを紹介する“海外ゲーム名作案内”コーナー。今回は、Devolver Digitalより好評発売中のPS4/Switch/Xbox One/Windowsソフト『CARRION』をとり上げます。

 本作は、上のイラストのような、異形の化け物を操作するアクションゲームです。プレイヤーの目的は、主人公の怪物を閉じ込めていたと思われる研究所を脱出すること。主人公の体は体力ゲージとリンクしていて、ダメージを受けるたびに体が小さくなり最後には消滅してしまいます。

 たいていのゲームであれば、敵役として主人公と戦う存在である化け物を操作して戦うというユニークな本作。今回はその魅力をPS4版をもとに解説していきます。

●プロモーション映像

異形の化け物を操作して人間に襲いかかるゲームデザインが爽快

 主人公は、建物のすき間を通り抜けて研究所内を移動し、触手を使ってドアや通気口のフタを引きはがして振り回します。主人公の不気味な姿を見た人間は叫び声をあげて逃げまどい、武器を持つものは射撃しますが捕まってしまえば他の人と同様です。

 見た目はちょっと異なりますが、映画『エイリアン』でエイリアンが通気口を利用して神出鬼没の行動を見せたのに近い感じで、敵である人間の意表を突いた行動で相手をほんろうし、恐怖のどん底におとしいれるのは一種の爽快感があります。

 また、本作で敵を倒す際は、触手でつかんで周りの壁にたたきつけるか、引きずり込んで捕食するなど、なかなかエグイアクションをとることになります。生身の人間を食べると体力が回復するあたりも怪物っぽい感じでいいですね。

 ぬるっとした感じの独独の操作性もあり、不器用かつ傍若無人ないかにも怪物らしいフィーリングのゲームプレイができるあたりも背徳感があってたまらないです。

正面突破はほぼ通用しない、ステルス重視のバランスが楽しい

 舞台となる研究所には、研究員以外にも多数の武装した警備員が配置されています。それも、ただ銃を持っているだけのものは少数で、たいていは防護服を着て前方に触るとダメージを受けるシールドを展開して戦う重装兵がほとんどです。

 ただ銃を持っている相手でもやっかいですが、重装兵は正面から攻撃を仕掛けて倒すことはかなり難しいでしょう。プレイヤーには、人が立ち入れないすき間でも潜り込める主人公の特性を生かしてずるがしこく死角へ回り込み、相手のスキを突いて触手で捕まえるステルス行動が要求されます。

 この、物陰から一瞬のスキをついて相手を捕まえて倒す感覚が、いかにもホラー作品の怪物らしくていい感じなのです。相手に恐怖を与える作品のことを“リバースホラー”とよぶそうですが、その名の通り本作にはプレイヤー自身の手で恐怖を演出し、実行するおもしろさがあります。

 画面上では血が飛び散ったりあれこれ千切れたりしますけど、ドット絵のおかげでそこまでのグロテスクさは感じないですね。

 なお、そこまでシビアなステルスは要求されるわけではありません。敵に見つかって分が悪そうなら、手近なすき間に潜り込んで視界をさえぎれば倒されない限り仕切りなおせますし、セーブポイントも多めに配置されているのでゲームに不慣れな人でも適度な難易度で遊べると思います。

主人公の体すらもギミックに組み込むマップ構成が素晴らしい

 本作は、謎の研究所から異形の怪物が脱出するアクションゲームですが、メトロイドヴァニア風とも言えるマップ構造もかなり素晴らしい出来栄えです。

 マップ上には怪物の触手で引きはがしたりスイッチを触手で引っ張ることで開くドアの他、さまざまな仕掛けが用意されています。仕掛けそのものは動かすところさえわかれば、試行錯誤でなんとかなるくらいの難易度ですが、複雑なマップ構造のため適度に頭を悩ませてくれます。

 もちろん、主人公の能力を利用した謎解きも豊富に用意されています。ここで筆者が感心したのは、主人公の能力は体の大きさによって使える能力がことなること。現在より小さいサイズのときの能力を使いたい場合は、白く濁った液体で体を切り離さなくてはなりません。

 先に挙げたとおり体の大きさは体力ゲージとリンクしているので、プレイヤーは特定の謎を解く際は体力が低い状態で行動することを要求されるのです。切り離した体は、もとの場所に戻って捕食すれば回復するのですが、一方通行の通路に阻まれてなかなか戻れないケースもあり、緊張感のあるプレイが楽しめます。

 ゲームをクリア後は、最後のセーブポイントから各マップを自由に移動可能で、取り残しのアップグレードアイテムなどを探すことも可能です。

 ぜいたくを言えばマップ同士のつながりが分かるシステムが欲しかったところですが、慣れてしまえばそこまで迷う構造ではないと筆者は感じました。

ホラー作品のずるがしこい怪物として戦える文字通りの怪作アクション

 『CARRION』“腐肉”とか“死肉”という意味をもつ言葉ですが、その通りのグチョグチョな姿の怪物を操れる、非常にユニークでゲームとしてもよくできた良作だと筆者は思いました。ゲームのなかでも特にマップ構造がよくできていて、遊んでいて適度に頭を使わせながらもサクサク進む気持ちよさを感じますね。

 アクションとしても、怪物が驚異的な力を使って豪快に進むのではなく、人目から隠れて背後からズバッと決めるステルス風味のバランスにしているところも気に入りました。体が大きくなると小回りが利かなくなり、触手がどこから出るのかわかりづらくなる点もありますが、そこは不定形の怪物ならではの味だと思います。

 なお、ゲームの本編はわりと短い時間でエンディングを迎えてしまうのですが、価格的には充分なボリュームだと思いますし、今は能力をすべて習得した怪物で新規マップに挑戦するDLC『Greatest Time of Year』があるのでクリアした後ももう少しゲームを楽しめるはずです。

 ホラーゲーム好きな人はもちろん、メトロイドヴァニア的な横視点アクションが好きな人のほか、ゲームに詳しくなくてもホラー映画に出てくるずるがしこい怪物が好きな人にもおススメできます。

 家庭用機版が発売されてから数か月経ちましたが、筆者的には絶対おもしろいゲームだと思うのでぜひプレイしてほしいですね。

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