『太閤立志伝VDX』インタビュー! ユーザーと開発の熱量が生んだ悲願のHD化。越後谷Pに聞くリリース裏話
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- うどん
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2021年に40周年を迎えたコーエーテクモゲームスの「シブサワ・コウブランド」。『信長の野望』シリーズ最新作『新生』の発表や『大航海時代ⅣHD』の発売が歴史SLGファンを喜ばせたばかりですが、さらに不朽の名作『太閤立志伝Ⅴ』が装いも新たにHD化。
『太閤立志伝ⅤDX』として、5月19日にSteamとNintendo Switchでリリースされることになりました。
こいつは一大事だ!!!
というわけでコーエーテクモゲームスの歴史SLGオールドファンが、さっそく本作のプロデューサー・越後谷和広氏にお話しを聞きにいってきました!
『太閤立志伝V』とは
2004年にPC版が発売された、「太閤」こと豊臣秀吉の立身出世の人生をモチーフとしたリコエイションゲーム(SLG+RPG)のこと。武将だけではない、忍者、商人、海賊、医者、茶人など、多彩な人生を歩めることが大きな魅力。プレイヤーの思うように戦国時代を生きられることで、多くのファンを得た。
『太閤立志伝』の魅力とHD化による変化
――18年ぶりとなる『太閤立志伝Ⅴ』のHD化は正直驚きましたが、名前は聞いたことがあるけどさわったことはない、という方も多いのではないかと思います。まずは改めて『太閤立志伝Ⅴ』の魅力を教えてください。
『太閤立志伝』は戦国時代を舞台にした個人武将プレイのゲームで、自分の好きな武将で好きなように生きることができます。『信長の野望』のような国盗りだけじゃなくて、剣豪や茶人といった生き方を楽しんでみたり、他の大名家に仕えてその勢力の家臣として働いてみたりといった、その行動の自由さが一番の魅力となります。とにかく一人の人物として好きなように人生を送れるので、ユーザーのみなさんの想像力次第でいくらでも遊び方の見つけられる作品というわけです。
――『DX』になって変わった部分は?
今回のHD化にあたって、リソースの大幅な追加と遊びやすさの改善が2つの柱になっています。新武将で言うと100人、イベントやエンディング、そして信長死後のシナリオを1本追加。また、ほかの追加要素もあります。
――もともと武将数もイベント数もけっこう多かった作品ですよね……。新武将100人はどんな武将が増えているんでしょうか?
まだ具体的な名前は挙げられませんが、あまりメジャーな武将ではないです(笑)。ニッチな方向の人選で、有名か無名かというよりもどちらかというと人手の少ない地方、大名家で「もうちょっと人を増やした方がいいよね」というところに追加しました。
歴史イベントも、地方を中心にややマニアックなネタの追加になっています。もともと『太閤立志伝Ⅴ』の時点でイベントは600ぐらいあったのですが……やっぱりみなさん郷土の武将を遊ぶことが多いと思います。その地方武将にイベントが無いと残念ですよね。なので、なるべく全国万遍なく遊べるように新武将や新イベントを追加しました。
――遊びやすさの部分というと?
これはインターフェイス周りの改善ですね。当時はよかったモノでも、今遊ぶとちょっと……という部分に手を入れています。それと昨年『大航海時代ⅣHD』を出したときに要望の多かったオートセーブも追加しました。「今どきオートセーブないんだ?」とみなさんから指摘されまして「そりゃそうだよね……」と(笑)。
――『太閤立志伝Ⅴ』というと技能育成のミニゲームも魅力でした。こちらに変更はないんでしょうか?
ミニゲームもそうなのですが、基本的なゲームのベース、バランスは意識して変えていません。HD化の主眼はあくまでリソース追加と遊びやすさの改善であって、ゲームそのものの根本はいじらない方向です。むしろHD化でゲームバランスをいじるのはよくないと思っていまして、オールドファンに「やっぱりこうだよね」と楽しんでいただきたいです。
――足利義氏から村雨を奪ったりも、またできちゃうわけですね!(※ゲーム序盤からかなり強力な武器を奪い取ることができた攻略テク)
そこはそうじゃなくなっていたら、ガッカリされちゃいますよね(笑)。
――自作イベントを作れるイベントコンバーターは、『DX』にも実装されるんでしょうか?
PC版のみになりますが、まったく同じ形で用意しています。こちらは当社でイベントを作る際に使ったものとほぼ同じもので、作るにはある程度のプログラム能力が求められるはずです。逆にゲーム内に実装されているイベントと同等のものを作れるということでもありますので、みなさんの工夫次第でさらに『DX』を遊び尽くせると思います。
『DX』の開発にいたるまでの経緯
――『太閤立志伝Ⅴ』が発売されたのは18年前。今や「知る人ぞ知る」昔の作品となりつつあります。多くのファンがリメイクやリマスターを期待しつつも、シリーズが途絶えて久しいですし、半ば諦めていた方もまた多いと思います。今回はどんな経緯でリリースできることになったんでしょうか?
一番の大きな理由は『太閤立志伝』シリーズの30周年と、シブサワ・コウの40周年が重なったことですね。その2つが後ろ盾になって、今回プロジェクトを進められることになりました。また、昨年は『大航海時代』の30周年に『大航海時代ⅣHD』を出させていただき、好評を得ることができました。その流れで「じゃあ『太閤立志伝』はどうなんだ?」という感じですね。
――去年の『大航海時代ⅣHD』も越後谷さんがプロデューサーを務められていたのですよね。非常に人気のある作品のHD化で、界隈が盛り上がった記憶があります。
『大航海時代』は国内だけではなく海外にも通じるテーマなのですが、『太閤立志伝』はどうしても国内ニーズ中心で、企画提案の段階で「グローバルじゃないよね」と言われがちだったんですよね。グローバルでの販売力は、『太閤』は『大航海』にさすがに匹敵はしないだろうと当社では考えておりました。それでも今回『DX』を出せたのは先ほどの30周年と40周年の後ろ盾、それと実売以上にその後の話題になり続けて、熱量をずっと感じられていたことがあります。
――確かにHD化というと「次は『太閤立志伝Ⅴ』を」という意見をよく耳にした気がします。
『三國志14』のプロモーションで海外に行っていたとき、中国や韓国のユーザーから『太閤立志伝』の新作は出ないのか、と言われたこともあります。優先度高く問われることが多く、規模はともかく熱烈なファンが日本にも海外にもいらっしゃるんだなと認識していました。そういうこともあり『DX』は中国語にも対応していて、これはアジア圏での『太閤立志伝』のパワーを測ってみようかなという考えもあります。
――去年、『太閤立志伝』のTシャツ(※シブサワ・コウ40周年記念ゲームパッケージ入りTシャツ:Type.太閤立志伝V)が出ましたよね。あれはこのHD化の試金石だったんでしょうか?
いえそんなことはないです(笑)。あれは本当に普通に選ばれただけですね。
――HD作品はこれで『信長の野望・天翔記』『大航海時代Ⅳ』に続いて3本目となります。これは今後も過去の名作歴史SLGのHD化を期待してもいいのでしょうか?
盛り上がり次第ですね。今回の30周年のような、なんらかの後押しがあればさらに出しやすいのですが……。
――例えば今年の大河が源平ということで『源平合戦』HDとかですか!
『源平合戦』は、うーんどうでしょうね(笑)。ただそれに限らず、候補自体は幾らでもあります。じつは『大航海時代ⅣHD』を出すとき、『太閤立志伝Ⅴ』とどちらにするかの議論はありました。そのときは『大航海時代Ⅳ』が選ばれたのですが、今回はことさら私が推しました。最初に『太閤立志伝』のHD版を出そうと言い出してからもう4年くらい経っているのですが、今回ようやくという形です(笑)。
――越後谷さんにとっても思い入れのあるタイトルだったんですね。
じつは私は『太閤立志伝Ⅳ』でメインプランナーを務めていました。開発中はみんなでイベントを作っていたのが思い出深くて、関ヶ原の戦いのような歴史ものをがっちり作る人もいれば、武蔵と小次郎の対決のようなローカルな、ロールプレイングゲームのようなイベントを作る人もいて。それぞれの個性と味わいのあるイベントになっていたと思っています。
私も山中鹿之介の七難八苦イベントを作ったりしていましたが、その『Ⅳ』をベースに進化させた完成形が『Ⅴ』なので、長く人気が続いていて「よかったね」という気持ちはずっとありました。
――よくコーエーテクモファン同士の会話で「あれのHD出ないかな」という話が上がりますが、思えば開発の中にこそそういう人たちがたくさんいる気がするんですがどうでしょうか?
昔の作品のHD化を言い出すのは最近だと私の役目になっていますね(笑)。もう私も開発のなかではかなり古株になっていて、私より古いのは小笠原(『信長の野望・新生』プロデューサー、小笠原賢一氏)くらいじゃないかな……。
でも開発の立場からすれば、本当は続編を作りたいんですよ。しかし続編を作りたくても、コンテンツとしてどれくらい売れるかわからない。今どれくらい力があるか知りたい。そのなかで、まずはHD版を出してみるという流れが生まれたのはあります。
――HD版が売れれば正式続編もあり得るというわけですね。期待しています! では最後に、『太閤立志伝VDX』に期待しているオールドユーザーと新規ユーザーに一言お願いします。
数多くの熱烈な声をいただいて、『太閤立志伝』がようやく復活できることになりました。5月の発売にぜひ期待いただいて……先に予約もしていただけるとこちらも大変助かります(笑)。
もうずいぶん昔の作品で遊んだことのない方も多くいらっしゃると思いますが、『太閤立志伝』は決して小難しいゲームではなく、気楽に楽しく遊べるゲームになっています。一度手に取って遊んでいただければ、長く噂になり続けている理由もわかっていただけるのではないかと思います。
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