黄月英は美女だった? 不細工だった?【三国志 英傑群像出張版#3-1】

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 三国志に造詣の深い“KOBE鉄人三国志ギャラリー”館長・岡本伸也氏による、三国志コラム。数多くの書籍が存在するなか、“民間伝承”にスポットを当てて紹介しています。



 今回は、諸葛亮(しょかつりょう)とその夫人の話に注目してご紹介していきましょう。

黄月英は美女だった? 不細工だった?

 昨年ヒットして賛否両論あった映画『新解釈・三国志』。その映画に登場し大活躍だった?! 諸葛亮(孔明)の奥さん【黄月英(こうげつえい)】。史書では名前は記載されていませんが、いまはその名前は広く知られています。

 そんな彼女、三国志の物語「三国志演義」ではほぼ登場せず、曹操が襄陽を取った時に、孔明の妻子を探したが既に逃げていたという程度の記述と孔明の死後、”黄氏”という表記で孔明の息子・諸葛瞻(しょかつせん)が登場する後半に「不細工であるが、ずば抜けた才能で天文、地理、書に通じ、孔明はそれを聞いて妻にした。彼の学問は彼女の助けによるところが大きかった」と出ています。

 もう三国志の終わる頃に孔明の知略のワケについて今頃種明かし? って思ってしまうシーンでもありますね。

 そういうわけで孔明より賢い役として登場する映画「新解釈・三國志」の黄月英もある意味合っているなあと思うわけです。

 歴史書『襄陽記』にも「身有醜女,黄頭黒面,才堪相配。」(不細工で金髪色黒だが才知あり)とあります。不細工で才知がある点は一緒ですね。中国の京劇の題材にも彼女は登場して人気者です。

 じゃあ、なぜ不細工設定のはずなのに映画で美女の橋本環奈さんが演じたのか? その元になりそうな民間伝承があるのでご紹介します。

孔明、妻をめとる

 ここでは「黄婉貞(こうえんてい)」と呼ばれます。

 孔明は縁談があったが相手が「赤毛で色黒、あばた顔」と聞いていたが会うことになり家を訪れると犬や虎が襲ってきて驚いた。
 よく見ると木製カラクリであった。お茶を出す人もカラクリ人形。それが彼女が作ったものだと知った孔明はその才能に感服し結婚を決意した。
 婚礼当日、あってみた彼女はなんとたいへんな美女であった。見た目でなく才能を評価した人を夫にしたいとおもい嘘の情報を流していたのだ。

孔明、妻に弟子入りする

 孔明は妻の能力をそれほどかっていなかった。(上記逸話とは連動していません)
 劉備、関羽、張飛と作戦会議を自宅でしていた時、孔明は妻に蕎麦をつくるようにお願いする。麦からつくるとかなり時間がかかることを承知で孔明はいたずら心で頼んだのだ。
 しかしすぐに蕎麦が出てきて孔明は驚く。別の機会にそれを作るところをこっそりのぞいて見ると木像人間が小麦粉をひき、粉をねり蕎麦をうっていた。
 妻はそれを悠然とゆでているだけだった。驚いた孔明は、妻に跪き弟子にしてくれるように頼んだ。
 魏への北伐で活躍する木牛流馬(もくぎゅうりゅうば)も彼女の助けがあってこその発明である。

木牛流馬を発明する

 木牛流馬といえば1輪車と4輪車の2種類とする説もありますがここでは1輪車です。

 孔明と黄家の娘との縁談がきまり、嫁入りに際して彼女から条件が出された。
 「嫁入り時には、輿にも、馬にも、船にも、徒歩でもいかない。それができないなら縁談は破談ということにしてほしい。」と孔明を試してきた。
 孔明が思案していると、あばれ牛が走るところを見かける。粉ひきの臼の台を引きずっていた。孔明はひらめく。ころの上に台を置けば人が座れないだろうかと。
 その後、図面を考え大工に作ってもらっては何度も作り直した。そして、頭が馬、胴が牛の車が出来上がった。これを「諸葛亮車」と名付けた。
 それは輿ほど力がいらず、馬より揺れず、船とも違って、細い道も行けた。それに満足した娘はそれにのって嫁いだ。


 嫁入りに際して、条件を付けるなんてすごくプライドの高い女性なんだろうなと感じました。映画『新解釈・三国志』の黄月英とかぶりますね。監督はこれらの話を知って作っているとしたらなかなか凄い!

 今回これを書いていて孔明のいた隆中や、孔明ゆかりの場所に行った時に黄夫人も像として飾ってあることがあって、そんなに出てこないのに地元の人に愛されているんだなあと思ったことを思い出しました。

 次回も諸葛孔明に関するものを紹介したいと思います。

“春の三国志会”開催のお知らせ

 KOBE鉄人三国志ギャラリー恒例の「春の三国志会」を3/27(日)に開催します!

 開催時間は11~17時で、講座、講演、朗読、三国志テスト、造形教室などを実施予定です。

 ぜひ会いにいらしてください!

場所:KOBE鉄人三国志ギャラリー(神戸市)
開催日時:3月27日(日)11時~17時
備考:マスク必須、検温実施
詳細:春の三国志会HP


岡本伸也:英傑群像代表。「KOBE鉄人三国志ギャラリー」館長。元「KOBE三国志ガーデン」館長。三国志や古代中華系のお仕事で20年以上活動中。三国志雑誌・コラム等執筆。三国志エンタメサイトや三国志グッズを取り扱うサイトを運営。「三国志祭」などイベント企画。漫画家「横山光輝」氏の故郷&関帝廟(関羽を祀る)のある神戸で町おこし活動中!



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