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孔明、張飛に一本取られる!?【三国志 英傑群像出張版#3-2】

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 三国志に造詣の深い“KOBE鉄人三国志ギャラリー”館長・岡本伸也氏による、三国志コラム。数多くの書籍が存在するなか、“民間伝承”にスポットを当てて紹介しています。



 物語の三国志演義はやっぱり諸葛亮(孔明)の奇策が楽しいですよね。今回から2回に渡り、孔明の奇策を中心とした三国志民間伝承のお話をご紹介します。

若き孔明の策

 諸葛孔明は、水鏡先生(司馬徽)の弟子だった。水鏡の講義は、鶏が正午になると3回鳴くので、その音を聞くとおわる。

 孔明は、天文学や地理学、兵法などの講義に魅了され、その鳴き声を聞くたびに不快な思いをした。そこで鶏が鳴きそうになると、窓から静かに一握りの米を撒き、食べ終わる頃にまた一握りの米を撒いた。それで1時間程度授業の時間を稼いだ。

 しばらくして、水鏡の妻は「あなたは食事もとらず本当に不死身になったのね、」と嫌味を言う。水鏡は、「鶏の鳴き声が聞こえなかったのだ」と言い疑問に感じた。

 翌日、昼近くにそっと中庭に出ると、鶏が鳴き出しそうなところで、誰かが書斎の窓から一握りの米を投げていた。水鏡は怒ってその犯人の諸葛亮を退学させた。

 諸葛亮が去って数日後、孔明の母から「孔明は学問のために鶏に餌をやったのだ」と懇願されたが戻る事を許さない。

 水鏡は、諸葛亮が非常に聡明で成績優秀で、数年勉強すれば優秀な人材になることを知っていたが、優秀な人物は国の統治者になることもあれば、国民に災いをもたらす裏切り者にもなりうる。

 性格は最も大事だとおもっていたので再び戻ることを許さなかったのだ。そんなとき水鏡は孔明の話を人伝えに聞いた。

①孔明は母に冬の寒さを和らげるため、山草をとり寝床に敷いてあげている親孝行ものである。
②孔明の家は井戸から近いが、水桶が塀に触れて壊すのを恐れ、余計に歩いて遠回りし水くみをする配慮のできる人間だ。
③近所のある青年に相談するとき「先生」と呼び教えを乞い、朝早くからその家に行き中庭を掃除した。
 孔明の才能が青年を超えてからは、青年は時間があると孔明に相談に来るが、今でも「先生」と呼び、毎日、中庭の掃除を続けている立派な青年だ。

 それを聞いて水鏡先生は、「孔明は将来、偉大な人物になるかもしれん!」と再入塾を許した。

 しかし水鏡は彼の心を自分で試したいと思い、台所で料理を作らせながら諸葛亮に勉強させ観察した。

 ある日、彼は孔明に鯉を煮るように頼み、魚が焼けた後、水を汲んできてくれと頼んだ。孔明が水を汲んで戻ってくると、水鏡や弟子たちが一緒に騒いでいた。魚の半分が盗まれたのだ。

 弟子たちの中で、魚を盗んだことを認めた者はいない。孔明は慌てたふりをし、桶を投げ捨て大声でこういった。

 「誰かが死ぬ! その鯉の料理は私が野良猫に使っている毒草を入れて煮込んだものだ。」そう言うと、弟子の一人が急に青ざめ、ひざまづいて叫んだ。「先生、助けてください! 魚を盗んで食べてしまいました!」と。

 水鏡は、人が死ぬものを作った孔明を責めようとしたが、孔明は笑っている。そしてそれが犯人をあぶり出す策略であることがわかったのだ。

孔明、張飛に一本取られる

 劉備、関羽、張飛の3人が孔明に会いに行った有名な「三顧の礼」でのお話。

 その日、大雪で道も滑りやすく歩きにくい。張飛は、“孔明め本当に憎たらしい。いつも隠れて出て来やしない。いつも無駄足ばかりさせやがって。今日は何とかやつに思い知らせてやる。”、そう思い歩いている時、遠くの粗末な家が火事になっているのが見て張飛はひらめいた。

 3人が孔明の家に着くと、召し使いの少年が「だんな様はいらっしゃらないのです。」と言う。

 張飛は劉備の言うことを聞かず、部屋の奥まで盗み見に行くと孔明は眠っているではないか。張飛は非常に怒り声をあげて「家が火事だ! はやく、火を消してくれ!」と叫んだ。

 孔明はまだぼーっとしていたが、誰かが「火事だ!」と叫んでいるのを聞くと、あわてて起きあがり外へ走って出た。ちょうどその時、劉備とぶつかってしまう。

 雪が降っていて、どこにも火の煙が出てない。そこに張飛が怒りながらやって来る。そして孔明に、「孔明先生、あなたは家で眠っているのに、我ら兄弟は外で寒さに凍えいた。どう思われます?」という。

 孔明はようやく張飛の策略に、はまったことを知った。


 1話めは、孔明の知的探求心から起きた事件を描いた伝承でした。孔明が策を練ってまで聞きたがった水鏡先生の講義、気になりますね。

 2話目の張飛が孔明の家が火事だという話は、ドラマ『三国志 Three Kingdoms』では、実際に張飛が火をつけて孔明が煙たがります。三国志演義では「火をつけてやる」と言うだけで関羽に止められて未遂に終わります。

 しかし、それより以前の演義の元祖ともいわれる「三国志平話」ではそういった記述は見られず、この民間伝承と演義のつながりを感じさせる話となっています。

 今回はここまで。次回も引き続き、孔明の伝承を紹介していくのでお楽しみに!

“春の三国志会”開催のお知らせ

 KOBE鉄人三国志ギャラリー恒例の「春の三国志会」を3/27(日)に開催します!

 開催時間は11~17時で、講座、講演、朗読、三国志テスト、造形教室などを実施予定です。

 ぜひ会いにいらしてください!

場所:KOBE鉄人三国志ギャラリー(神戸市)
開催日時:3月27日(日)11時~17時
備考:マスク必須、検温実施
詳細:春の三国志会HP


岡本伸也:英傑群像代表。「KOBE鉄人三国志ギャラリー」館長。元「KOBE三国志ガーデン」館長。三国志や古代中華系のお仕事で20年以上活動中。三国志雑誌・コラム等執筆。三国志エンタメサイトや三国志グッズを取り扱うサイトを運営。「三国志祭」などイベント企画。漫画家「横山光輝」氏の故郷&関帝廟(関羽を祀る)のある神戸で町おこし活動中!



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