【ウマ娘が1.8倍楽しくなるお話 21】この1年、現実でも『ウマ娘』でも色々ありましたねって話

柿ヶ瀬
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 柿ヶ瀬です。ラヴズオンリーユーのアメリカ競馬の年度代表表彰であるエクリプス賞芝牝馬部門の受賞には感動しましたね。

 マルシュロレーヌは残念ながら受賞となりませんでしたが、矢作調教師からのマルシュロレーヌはラヴズオンリーユーのベストパートナーであり、2頭でBC挑戦出来たからこの結果になったと言うお話が嬉しかったです。

 なんでもこの2頭、生産牧場で離乳したあとくらいからの幼馴染だったらしいですね……そんな2頭が同じ厩舎に入り、まったく別の路線を歩みながら、アメリカへ2頭で乗り込み、ともにブリーダーズカップ優勝という快挙を成し遂げる……なんて出来すぎな話なのでしょう。いつか、いつかウマ娘になった2頭を見たいと思うのは、きっと筆者だけではないでしょう。

 さて、『ウマ娘』がリリースしてからまもなく1年になろうとしています。

 ゲームやアニメ、ライブなど、この1年『ウマ娘』ではさまざまなことがありました。しかし『ウマ娘』はそのモチーフとなった現実の競馬においてもさまざまな形で影響を及ぼしています。今回はそんな話をしていこうと思います。

競馬関係者と『ウマ娘』

 競馬関係者としては武豊騎手や細江純子さん(元騎手なんですよ!)が関わっていただいていますが、名馬の美少女化コンテンツである『ウマ娘』が受け入れられるかどうかというのは筆者でなくても不安になるのはやむを得ないところだったでしょう。

 そんな中でいち早く『ウマ娘』に反応を示していた関係者と言えばゴールドシップの担当厩務員であった今浪隆利さん。ゲーム『ウマ娘』を始めた、ゴルシ育てるの難しい、皐月賞勝った……などなど、『ウマ娘』に関するツイートをしてくださいました(アニメに今浪さんっぽい方が出たことも?)。それから先日、ファミリーマートのコラボ商品であるゴルシの焼きそばを食べる姿がツイッターに上がっていましたね。

 その後もカレンチャン実装時に安田翔伍調教師が「カレンチャンが『ウマ娘』に実装されたようですね!」と担当調教助手だった当時のカレンチャンとのツーショット画像とともにツイートしたりしました。多分 #ウマ娘 のハッシュタグを一番最初に使った競馬界の著名人だと思われます。

 『ウマ娘』の印象を変えたのかな? と思えた出来事は、春頃に実施された引退馬支援クラウドファンディング“ナイスネイチャバースデードネーション”でしょうか。御年33歳という超高齢馬である『ウマ娘』でもお馴染みのナイスネイチャ。現在は引退馬協会さんのフォスターホースとして、引退馬支援の旗頭となっていますが、今年の支援者は昨年比で約4倍。支援額は昨年比約20倍と大きな話題となりました。

 他の競馬に関する影響がどうかはなんともわかりませんが、少なくともこのことに関しては、『ウマ娘』が大きく影響を及ぼしたのだろうなと断言していい出来事だったと思います。ぜひ今後も継続していただきたいと思います。

 ゲームのプレイ人口がどんどん大きくなるにつれて、競馬好き芸人や安藤勝己元騎手が『ウマ娘』の画像を見てどの馬がモデルかを当てるクイズの動画をアップしたり、スポーツ新聞やテレビ局でも『ウマ娘』風の記事やロゴなどを作ったりなど、有名人やメディアが『ウマ娘』を意識することが多くなりました。

 他にも、日本最大の競走馬セリであるセレクトセール後に行われる社台ファームの吉田照哉代表のインタビューで言及したことも競馬好きの『ウマ娘』ファンを驚かせました。もちろんサイバーエージェントの藤田社長が爆買いしたのもあるでしょうが、こういったところにまで『ウマ娘』の影響が出てきているのかと唸ったもので、今後の『ウマ娘』の展開も楽しみになったりもしました。

 他にも現役馬メイケイエールのオーナーさんが「ウマ娘にしてもらえたら」と言ったり、生産牧場のメイタイファームが往年の名馬タイテエムをウマ娘にしたいと言ったりなど、ウマ娘化へ立候補する関係者もちらほら現れたり。

 個人的に一番『ウマ娘』が受け入れられているのかな、と思ったのは、9月頃にあったJRA(日本中央競馬会)による67thアニバーサリー対談記事というのがあります。スポーツ新聞各社に全面広告として載っていたのですが、そこで何度も『ウマ娘』に言及があったのです。

 もちろん言及されていたことにも驚きでしたが、それ以上に驚いたことがありました。それは「『ウマ娘』についての注釈が一切なかった」ということです。つまりどういうことかというと「『ウマ娘』が何度も話題に上るがそれを削る必要はなく、しかも『ウマ娘』というものについて注釈をつけなくてよい程度には広く知れ渡っている」とJRAが判断した、とわかるからなんです。

 このあたりで筆者は「『ウマ娘』はいよいよ大変になってきたかもしれん」と思ったのです。そして昨年の有馬記念の日、中山競馬場のお昼休みで陸上自衛隊音楽隊が吹奏楽で演奏したのが『うまぴょい伝説』。さらに年明けの競馬雑誌でのJRA理事長のインタビューでも『ウマ娘』の競馬界への影響を好意的に言及するなど、もはや『ウマ娘』の存在を無視出来ないと競馬界は考えているようなのです(もちろん藤田社長が影響しているところはあるかもしれませんが)。

今は第三次競馬ブームか否か?

 さて、ここ数年「今は第三次競馬ブームなのではないか?」と言われることがあります。第一次競馬ブームは1970年代、大井出身の名馬ハイセイコーの活躍をキッカケとして起こりました(筆者は当時生まれてもいないので、どのくらいのものだったかはわかりませんが……)。

 第二次競馬ブームは1980年代後半から90年代前半くらいにかけて『ウマ娘』でもお馴染みオグリキャップが牽引しました。第二次競馬ブームの特徴として、オグリなどの名馬たち以外にも、競馬ゲームや競馬をモチーフにした漫画、それから映画なんかもあり、そして何より我らが『ウマ娘』のプロモーター、若き天才ジョッキー武豊が登場したことで第一次に輪をかけて競馬人気が盛り上がったと言われます。

 翻って現在の競馬界はどうかというと、アーモンドアイやコントレイル、ラヴズオンリーユーやマルシュロレーヌなど、快挙を成し遂げた馬も多く、またコロナ禍においてもネットでの馬券購入などに力を入れていたこともあり、観客動員自体は減っていても馬券の売上は上がっているようです。その好調に、『ウマ娘』の影響もあるのではないか? なんて言われることも。我々オタクとしては恐縮ではあるのですが、ここまでに挙げてきた関係者の反応、感触を見るに、実際のところはともかく、多少なりともそう思われているところはあるのだろうな……と感じます。実際に今が競馬ブームなのかどうか。そもそも競馬ブームの定義とは何か。色々考え方はあると思いますが、筆者は馬券の売上や名馬の存在だけではなく「競馬に興味がなかった人たちが競馬に触れること」だと思います。

 筆者の周りでは驚くほど競馬を見る、馬券を買う人が増えました。あくまで筆者の周りというせまい世界での観測ではありますが、こういったことは結構なところで起こっているのではないかと思います。競馬ブームがどうか、そこに『ウマ娘』が貢献しているかどうかというのはともかく、一競馬ファンとして、『ウマ娘』ファンとして、『ウマ娘』から競馬を見てくれる人が増えるのは、筆者としてはとても嬉しいことです。沼へようこそ。

今年デビューする競走馬にも影響あり?

 競走馬の馬名は色々な形がありますが、例えば有名映画のタイトルを模してたりする競走馬なんかに覚えがありますよね。

 特に近年は何かしらの流行りに乗って名付けを行うことが珍しくありません。例えば昨年デビューの馬にはタンジロウやネズコ、アカザとかも含めて名前が馬名についていたり、ミズノコキュウあたりの用語なども馬名となっていたりと、『鬼滅の刃』の大ブームに乗った名前の競走馬がたくさん誕生しました。

 そして今年、『ウマ娘』に関連した馬名がたくさんデビューする見込みが立っているのです。ここまで発覚しているだけでも“ハッピーミーク”“リトルココン”“ビターグラッセ”といったライバル馬、さらに“ウマピョイ”“ガールズレジェンド”“ユメヲカケル”など、歌から連想される馬名。他にもこれからもまた増えていくかもしれません。

 このように『ウマ娘』関連の馬名がつくことについて、いろいろな感想があったりするかもしれません。しかし長く競馬を見ていると、馬名というのは時代を映す鏡という側面もあることがわかってきます。かつては某大先輩競馬ゲームに登場したスーパーホースが何頭も現実の馬名になったこともあり、その馬が活躍してしまいその後のシリーズで登場しなくなってしまった……なんてこともあったりしましたが、ともかく馬名を見ると世間で何が流行っているのかの指標として見ることも出来たりするのです。

 つまりこういうところでも『ウマ娘』の大ヒット、そして『ウマ娘』が競馬界で大きな存在感を見せているという実感できるという例になるのです。

 といったところで今回は、今年1年で『ウマ娘』が大きくなり、現実の競馬にもさまざまな影響を与えてきたという話をしてきました。ここで少し話を戻します。はたして本当に『ウマ娘』で競馬の新規ファンは増えたのか? 実際のところはわかりません。しかし……競馬に関わっている人たちは、『ウマ娘』で新規ファンが増えていると考えているのではないか? と思えるような1年だったのではないかと思いました。

 今回はアニバーサリー間近ということで、『ウマ娘』の話、というよりは現実の競馬と『ウマ娘』、という形で1年を振り返りました。正直言えばもっともっとたくさんこの1年のお話をしたかったですが、今回は“現実の競馬への影響力”という部分に絞ってお話してみました。

 現実の競馬に『ウマ娘』が影響を及ぼすことがいいことなのかどうかというのはわかりません。『ウマ娘』の影響が大きく広がることに心配する気持ちもないわけではありません。しかし『ウマ娘』がこれほどに大きくなってしまった今、その流れを止めることも無理な話でもあると思います。上手いことWin-Winの関係を積み重ねて行くことを期待していきたいですね。

 また先程競馬ブームか否かの話もしましたが、“ブーム”という言葉にはやはり“一過性”という言葉がつきまといます。競馬にしろ『ウマ娘』にしろブームで終わらず、しっかりとファンが根付いてくれることを願ってやみません。皆様もよき競馬ライフ、そして『ウマ娘』ライフを長くお楽しみいただければと思います。

 また次回もこういった“楽しみ方”を提示していければと思いますのでお時間ありましたらぜひご一読いただきたければ幸いです!

 それではまた!


“まとめページ”でこのコラムをチェック!

 連載コラム“ウマ娘が1.8倍楽しくなるお話”のまとめページはこちらです。過去に掲載してきたコラムをここで一気に読むことができます。いろいろな驚きや発見があると思いますので、ぜひチェックしてくださいね!!


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