毒は強いけどゲームとして良質。動画配信モチーフの問題作『NEEDY GIRL OVERDOSE』レビュー【電撃インディー#194】
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- まさん
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電撃オンラインが注目するインディーゲームを紹介する電撃インディー。今回は、ちょっぴり(?)変わったゲームを紹介したいと思います。
開発したのは、オタク系のライターとして活動するシナリオ&企画の“にゃるら”氏を中心としたメンバー。パブリッシュを、ワイソーシリアスのインディーゲームブランド・WSS playgroundが担当し、1月にリリースされるやいなやゲーマーの間で大ヒット。
現在25万本を売り上げたインディーゲームの歴史に残る1作……なのですが! 日本の家庭用ハードではおそらく出せないであろうと思われる表現も満載の危険なタイトルでもあります。
そんな令和の大問題作にして、インターネットが大好きな人たちの間でも話題が尽きない人気作。今回紹介するのは、かわいいけれど毒も強くて楽しい『NEEDY GIRL OVERDOSE』です!
『NEEDY GIRL OVERDOSE』は、PC(Steam)で配信中のマルチエンディングアドベンチャー。人気配信者(インターネットエンジェル)を目指す承認欲求強めな女の子・あめちゃんのピ(相棒や彼氏やパートナーのような存在)となり、彼女と一緒に30日間を過ごしながら配信のお手伝いをしていきます。
ゲームシステムとしては、あめちゃんのパラメータを調整していく育成シミュレーションとなっており、複雑な操作は皆無。誰でも遊べる優しいゲームです。
とはいえ、誰にでもオススメできるわけではありません。操作は優しくて誰でも遊べますが、作品としてはキツイ描写もあります。自傷描写や薬物的な表現。トラウマを刺激する過激な描写も存在しているのでご注意を。とくに、感受性が豊かな人は心が痛んだり、影響を受けたりしかねない作品でもあるので、遊ぶときには気を付けてください。
なお、電撃オンラインは、尖っていてオリジナリティがあったり、作り手が作りたいゲームを形にしていたりと、インディースピリットを感じるゲームをインディーゲームと呼び、愛を持ってプッシュしていきます!
表でキラキラ、裏垢では毒を吐く。今どきの配信者・あめちゃん
自分の取り柄は顔面が最強なことだと自覚しつつ、インターネットでしか生きられない女の子・あめちゃん。そんな彼女は、大好きなピと一緒にインターネットエンジェル(最強配信者)を目指すため、超てんちゃん(超絶最かわてんしちゃん)へと変身。オタクに向けた配信を行うことにしました。
10日以内に収益化を果たさないと家賃も払えない。チヤホヤされたいけど、オタクに媚びるのはストレスが溜まるし病んでいく。えっちなことやおくすりでストレスを解消しながら、彼女は無事に30日間を乗り切り、100万人のフォロワーを抱える配信者になれるのでしょうか。
彼女の理想を叶えられるかどうかは、プレイヤーの行動にかかっています。
といった感じで、このゲームは普通の育成シミュレーションではありません。
ちょっぴりワガママで心が傷つきやすい女の子と過ごす30日間の物語は、今時のインターネット感が詰め込まれたゴリッゴリに尖りまくりの表現が飛び交う毎日。心を病めばびょういんに行くか薬に頼り、えっちなことでストレスを解消。
裏垢(アカウント)のあめちゃんは毒を吐きながら、表のアカウントでは超てんちゃんとしてオタクに媚びる。インディーゲームでしかできない、インディーゲームだからこそできる作風です。ただ配信を行うだけのゲームだけではありません。
プレイヤーはあめちゃんのピとなり、彼女のスケジュールを管理しながら配信を重ねてフォロワー数をアップ。30日間を終えて彼女を100万フォロワーの最強配信者にしてあげることが目的となります。
フォロワーを目指すためには夜に行う配信が重要。昼間や夕方の行動で見つけた配信ネタを使って、フォロワーが増える配信を重ねていきましょう。ゲームの配信よりもえっちな配信や陰謀論のほうがフォロワーが増えやすかったりするのが、なんだかやけにリアル。
配信中には、アンチコメントや心無いコメントが書かれることもあります。そんな時は、超てんちゃんの代わりに消してあげましょう。コメントを消すのが大変な人は配信速度も変えられますし、スキップもできます。
慣れてくれば配信をスキップしても問題なくクリア可能。とはいえ、配信の描写自体が見ていて楽しいので、ひと通り見ることをオススメします。超てんちゃんのトーク力が高い!
毎日配信して人気者になりたいところですが、彼女のストレス、好感度、やみ度という3つのパラメータをうまく調整しないと思わぬ結末に至ることも。ストレスが溜まって爆発すれば配信でやらかしてしまい、インターネットの闇を見ることになるかもしれません。
好感度が高すぎても、ピのことが好きすぎて配信なんてできなくなってしまうかも。やみ度が減り過ぎて健全になっても、それが良いこととは限りません。生きることは難しいのです。
超てんちゃんのパラメータを維持しつつ、フォロワーが増える配信をしながら30日間を乗り切り、彼女を人気者にすることが一応の最終目標……ではあるのですが、本作はマルチエンディング。
途中までにとった行動や、パラメータの状態。配信などによって、あめちゃんとピの生活はさまざまな結論を迎えます。それが良い結末なのか、悪い結末なのか。すべてのエンディングを見届けてから、考えてみてください。
行動次第で訪れる破滅と幸せ。何が良いのかを決めるのはあなた
本作は、いわゆる1つの真エンディングを目指すゲームではなく、用意されているすべてのエンディングを見るために周回するタイプの作品になっています。
1つの周回は短めながらも、プレイヤーの行動次第で強烈なイベントやインパクトのある結末が用意されており、新しいエンディングを見たくなって何度も遊んでしまうでしょう。
破滅的で今のインターネットに対する残酷さが詰まったような展開もあり、人によってはショックを受けてしまうかもしれません。それでも、あめちゃんの新たな可能性を見たくて何度もプレイしたくなる魅力があります。
陰謀論にハマってしまったり、危ない方向の配信に手を出してしまったり、明らかに良くない方向に向かいそうな選択でも、取るかどうかはプレイヤーしだい。少しばかりややこしい条件もあるので、自力ですべてのエンディングを見るのは難しいかもしれません。
しかしながら、すべての結末を見届けることに意義がある作品でもあります。Steamは公式のストアから有志の攻略ガイドに飛べるので、攻略を参考にしてでも最後までプレイしてみてください。
このゲームにハマる人なら、おそらく後悔はさせません。すべてのエンディングを見ることにも意義がある作品なので。
毒は強いけどゲームとして良質。今遊んでおくべき作品
Youtuberや配信者を育てる育成シミュレーションは、ある意味で今の時代のブーム。
海外でもスマホでも、さまざまな作品が存在しています。自分もいくつか触れたことがあるのですが、本作はかなり独特。こんなに毒が強く、日本のオタク文化が色濃く出ている配信者系シミュレーションは、ほかにないものです。
逆に言えば、オタク的なインターネットに触れていない人や今の配信文化が理解できない人など、本作が表現しているものがまったく刺さらない人もいるタイトルでしょう。
インディ―ゲームらしくバリバリに尖っているのですが、このレビューに載っている画像を見て、少しでもおもしろそうだなと感じた人は遊ぶ価値のある作品です。おそらく、刺さると思います。
もちろん、このゲームが表現しようとしているあめちゃんや超てんちゃんの行動に、必ずしも納得がいくとは限りません。それでも、何かしらクリアしたあとに考えられる。そんな余地や考察の要素がある作品です。
精神的にも強烈な部分が多いのでPC以外でリリースされる可能性は低いと思いますが、ゲームという媒体を通してしか表現できないものが詰まった良作でした。心に余裕がある時に遊んでみることをオススメします。
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