『FF14』吉田直樹P/D合同インタビュー。今後の10年に向け、さらに間口を3倍にも4倍にも広げたい
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昨年12月に発売された最新拡張パッケージ『暁月のフィナーレ』が大きな話題となり、プレイヤー層を広げ続けているスクウェア・エニックスのオンラインRPG『ファイナルファンタジーXIV(以下FFXIV)』。 2月19日に配信された第68回プロデューサーレターLIVE(PLL)にて、“『FFXIV』次の10年”に向けた新たな施策が発表。
“ひとり”でも“みんな”でも遊べるRPGへの更なる進化、第一次“グラフィックスアップデート”、パッチ6.xシリーズのロードマップなど、さまざまな計画が明らかになった(関連記事はこちら)。さらには、混雑回避のため一時停止となっていたフリートライアルも、2月22日から新規登録が順次再開されることに。それを受ける形で、2月21日に吉田直樹プロデューサー兼ディレクターへのメディア合同インタビューが実施されたので、ここではその言葉を余すことなくお伝えしよう。
新たな“冒険“が今後展開されるストーリーのコンセプトに
――『暁月のフィナーレ』では、約10年という年月をかけてひとつの物語“ハイデリン・ゾディアーク編”が完結しました。パッチ6.1以降は新たな冒険がプレイヤーを待ち受けていると思いますが、新たに展開するストーリーのコンセプトをお聞かせください。
吉田直樹氏(以下敬称略):コンセプトは“冒険”です。プレイヤーには“英雄”や“光の戦士”という肩書がありますが、パッチ2.0(『新生エオルゼア』)がスタートしたときのように、改めてひとりの冒険者として、いろいろな謎に立ち向かう冒険をお届けしていきたいなと考えています。
――新たなストーリーも、“ハイデリン・ゾディアーク編”と同じようなスパンで展開されていくのでしょうか?
吉田:パッチ2.0や3.0の開発をしているときに、この物語が“ハイデリン・ゾディアーク編”だと思って作っていたかというと、そうではないんですよ。ですので、この先、同じようなスパンでサーガを描くかどうかは、正直わからないです。
まずはひとつひとつの物語で、プレイヤーの皆さんがワクワクできるような冒険を描いていければなと。それらを描いていく過程で、ひとつの大きな流れにしても大丈夫だなと思えばそうしますし、もっと大きなものに立ち向かっていきたいという雰囲気だったらそっちに舵を切っていくと思います。ひとまずは、ひとつひとつの物語を皆さんに全力でお届けするというコンセプトに立ち戻る感じのつもりです。
『漆黒のヴィランズ』や『暁月のフィナーレ』は、長年積み重ねてきた物語の解き明かしを、ものすごくコストをかけて作ったからこそ、あの衝撃をお届けできたと思っています。じゃあ7.0でいきなりあれと同じぐらいの衝撃がお届けできるかというとそうではなく、また新たな積み上げが必要になるでしょう。
とはいえ新たなストーリーでも“ゲームとして満足いく内容にする”という目標は、これまでと変わりありません。それを達成できるように、またプレイヤーの皆さんといっしょに積み上げていって、いっしょに作り上げていければなという気持ちです。
――これからの物語の方向性も気になります。6.xシリーズをプレイしていくうえで「この流れだと7.0ではこうなりそう」といったものが見えてくるのか、それとも6.xシリーズと7.0では違う物語が描かれるのか……そのあたりはいかがでしょう?
吉田:どうでしょうね(苦笑)。当然ながら、つぎの展開を匂わせないと(物語として)つながらないですが、一方で4.xから5.0(『漆黒のヴィランズ』)に向かうときは、匂わせすらしなかったので……。そのときの展開しだいですかね。
ここはライブタイトルのいいところだと思っていて、皆さんの反応を見つつ、ダイレクトに脚本を調整していこうと思います。ちなみに僕の中では7.0のトレーラーの画が動き始めているのですが……現状ではなんとも言えませんね。まあ、僕の表情を見ていただければ、「また楽しそうに作っているな」というのがわかるかと思います(笑)。
――その笑顔を拝見すると、「7.0で何か楽しそうなことを仕掛けてくるんだろうな」ということが伝わってきます(笑)。
吉田:もちろん「本当にこれで大丈夫なんだろうか」という不安も、もちろんあります。これは『漆黒のヴィランズ』や『暁月のフィナーレ』のときもそうでした。だからとにかく、僕たちは全力で作ったものを出すしかない。これはいままでも、これからも変わりませんので、思い切ってやっていこうと思っています。
ちょっとだけヒントをお話しすると……6.1のメインストーリーの途中からは「は?」といった展開になり、ますます7.0のイメージがわからなくなると思います。ぜひ楽しみにしていてください。
『FFXIV』が約11年かけて作り上げてきたものを信じたい
――ここ数年でゲームを取り巻く状況が大きく変わった点として、ストリーマーの存在があると思います。プレイヤーが配信をするときに使えるようなオプションを『FFXIV』で用意される予定はありますか?
吉田:いまのところ、配信用のオプション設定モードなどは考えていません。たとえば他人を表示しないオプションを用意したら、“人がいないMMORPG”を放送できてしまう。一般の大多数の人がその配信を見て、配信モード中かどうかはパッと見てわからないと思うんですよ。だから、ネガキャンに使われてしまうことがある。だから正直に言うと、そういったオプションに関してはポジティブではないです。
ただ、大人気なストリーマーが配信をすることで、大勢のプレイヤーが押し掛けることが多いのも把握しています。そういった案件をご報告いただいたときには、我々から改めて注意点をお伝えして、できるだけサポートすることを強化していけたらなと考えています。
――なるほど。配信に特化したモードを用意される予定はないと。
吉田:例えばプレイヤーの名前が表示されることによって、自制心が働くこともあると思います。駅前でテレビカメラがあると、それに映り込もうとする人をよく見かけますが、頭の上に名前が表示されていたら、やらないと思うんですよね。
既存のオプションでイニシャル表記にすることはできるので、そういう部分を啓蒙していったり、配信する場合はここを注意してくださいといったガイドラインを作ったりと、そういったことが大事なのかなと思います。
実際、『漆黒のヴィランズ』から『暁月のフィナーレ』に至るまで、海外の有名なストリーマーの方々が『FFXIV』をプレイし始めて、配信をしてくださっています。その配信中に、その人のジャマをするという人はあまりいなくて。どちらかというと、コンテンツをクリアーする場所で待っていてクラッカーでお祝いしたり、イシュガルドの前で整列して「ようこそ『蒼天のイシュガルド』に」と歓迎したりしていますね。
――有名ストリーマーの配信での一幕が話題になっていましたよね。
吉田:こういった雰囲気が、『FFXIV』が約11年かけて作り上げてきたものだと思うので、僕はそこを信じたい。もちろん、僕自身、オンラインゲームに育てられて、いろいろな人に優しくしてもらって“いま”があるので、『FFXIV』がここまで大きくなったからこそやらなくてはいけない部分があるというのはわかっています。
ただ、システムで制限したり、ルールでがんじがらめにしたりすると、それを守らなかった人を攻撃する方向に向かう可能性もあると思っています。僕の立場では、ありとあらゆる方向性を考えないといけません。一部で騒ぎすぎてしまう人がいるものの、節度を守ってプレイされている方のほうがはるかに多いので、現時点ではそういった制限を追加することは考えていません。
プレイステーション4版の最適化のアップデートも予定
――7.0になってもプレイステーション4に対応することを明言されていましたが、プレイステーション4への対応はどれぐらいまで想定されているのでしょうか?
吉田:それは現時点ではわからないです。当然、いろいろなハードウェアで遊べることを目標にしていて、それによって全世界でひとりでも多くの人にプレイしてもらうというのが掲げているコンセプトのひとつではあります。
僕のいまの予想では、半導体不足による供給不足、そして金額面を考慮しても、プレイステーション5が普及しきるまで時間がかかると思っています。そうであれば、プレイステーション4でもしっかりと遊べるようにサポートして、いまプレイされている皆さんが安心できるようにと、先日のPLLで7.0でのプレイステーション4の対応を明言させていただきました。
もちろん、明言するからにはきちんとした計算や処理の選定を行っています。現状では、短期間で対応したこともあり、プレイステーション4というハードのスペックの性能に頼った作りかたになっていて、まだ最適化する余地が残っていると検証しました。
ですので、まずはいま動いているプレイステーション4版の最適化を、6.xシリーズ中に何段階かに分けて実装する予定です。そうして、いまより軽く動作するようにしたうえで、第一次グラフィックスアップデートの機能をプレイステーション4にもすべて盛り込みます。
もちろんグラフィックスオプションも増やす予定です。たとえば、新しいレイヤーが1枚加わったものに関しては、フレームレートを優先する場合は切ってください、とか。影のテクスチャ解像度や影の計算精度に関しても、同様にフレームレートを優先したいのであれば下げるというオプションをつけて、動作を軽くできる予定です。これが『FFXIV』の基本的なグラフィックスエンジンの考えかたになっています。
先日のPLLで皆さんにお見せした画像は1カ月と1週間のテストデータではありますが、あれがまず標準になると思ってください。あれ以上、いくつのシェーダーをかけていけるかは、何百人もその状態で描画をして、バックグラウンド側の追加処理も入れて、それをすべて最適化したうえで検証していきます。ただ、設計思想としては、すべてオプティマイズできるという思想をもとに作られています。
それはプレイステーション4だけでなくPCも同じです。影の精度をさらに上げたいというオプションがあれば、お使いのPCの性能に合わせてやってみてください、という形になるでしょう。これからまさにそれを調整していくことになるので、現時点で詳細までは申し上げられないですが、PLLで見せた画がプレイステーション4で出ないかと言うと、全然そんなことはないです。
――7.0が発売される2年後には、PCの性能も上がっていると思いますが、そこを目指してのグラフィックスアップデートになるわけでしょうか?
吉田:いいえ、それは違います。くり返しになりますが、スタンドアローンのクオリティーのゲームを目指しているわけではないので、ハイスペックのPC性能に合わせた開発はしません。我々はPCプレイヤーのなかで、超ハイスペックのPCを持っている人が何人ぐらいいるのかというデータを知っているので、あれを目指してもあまり意味がない。
とくに、我々の作っているのはMMORPGですし、どこまで比較されたとしても、スタンドアローンのゲームには勝てません。そこにコストを割くぐらいなら、PCの上位種の中間ぐらいで、きれいでなめらかに、というところを目指して、多くの人に楽しんでもらえたほうがはるかにいいなと考えています。
あとは、やはり半導体不足という問題があります。PCの性能は上がるかもしれませんが、「高くて買えない」といった不安要素も多いので、2年後のスペックを予想してそこに合わせるというのは、ビジネス的な観点から見て、ありえないかなと思います。
――グラフィック強化のタイミングで、キャラクタークリエイトの幅は広がるのでしょうか? たとえば、アウラの角と顔パターンを別に選んだりできるようになりませんか?
吉田:それはグラフィックのアップデートとは別問題ですね。通信量の問題というところが非常に大きいので、テストしていくしかなく、現段階ではやるともやらないとも言えません。ただ、正直に言うと、工数の掛け算になってしまうので、デザイナーはあまり乗り気ではないですね。さらに言えば、特定の種族だけ増やすと、別の種族も……という声が増えてしまうので……。
正直、グラフィックのアップデートと同時にやるのは、作業工数的にきびしいです。この部分は、テクニカルアーティストと呼ばれる人たちが慎重にやらないと施せない部分なので、現段階ではイエスともノーとも言えません。
――フィールド配置のオブジェクトも増えるとのことですが、キャラクターの表示人数などに変更はありますか?
吉田:いまよりも減らすことはないと思いますが、いたずらに増やしてしまうと、グラフィックのアップデートのパフォーマンスチューニングとの綱引きになってしまいます。“いまの数は最低限保持する”というのがベースにありますね。
ちなみに、「いま以上にたくさん表示してほしい」という人と、「表示人数はいまのままで十分だから個々をきれいにしてほしい」という声だと、後者のほうが多いんじゃないかなという気がします。おそらく、モブハントや大人数のユーザーイベントをやっているときじゃない限り、そんなに不都合はないのかなと。
――ユーザーイベントの記念撮影で全員が入りきらないこともありますよね。そういった人にとっては、表示人数が増えると喜ぶ人がいるんじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか?
吉田:うーん、難しい綱引きですね……。たとえば、撮影モードのときにキャラクター表示人数の制限を突破するといったオプションを作るほうが現実的かもしれません。でも、撮影の際に周囲の無関係の人も表示されてしまうわけで、それはそれで難しいですね。
ただ先程もお伝えしたとおり、いま以上に表示人数が減ることはないと思っていてください。いまからパフォーマンスを食うことをやろうとしているのに、さらに同時に表示人数を拡大すると言ったら、開発スタッフに「全部やめましょう」と言われちゃうので……(笑)。
――グラフィックエンジン自体の積み替えは検討されていますか?
吉田:エンジンというと、車のエンジンをイメージされやすいと思いますが、ゲームにおいてはあのような形ではなく、ありとあらゆる描画のパイプラインがくっついた“大規模集積回路”のようなイメージなんです。
ですからそれを取り換えるということは、すべてのパイプラインをつなぎ直し、それに合わせたアセットの作り直しをしなければならないということなんです。だから、グラフィックエンジンを取り換えるということ自体、ありえないですね。
どちらかと言えば、いままで作ってきた『FFXIV』のグラフィックエンジンには、使っていない高品質のシェーダーコードもあるんです。今回のアップデートでは、それを改めて最適化して使おうというものもあれば、新しくパイプラインに足すものもある。
ですので、現状のエンジンがパワーアップするとイメージしてもらったほうがわかりやすいと思います。ディファードレンダリングを使った『FFXIV』独特の風合いが変わることはないです。
メインクエストに付随するふたつの8人用IDは大きく改修される
――PLLでは「“ひとり”でも“みんな”でも遊べるRPGへ更なる進化」というテーマを掲げられましたが、改めて、いまプレイしているプレイヤー以外に、どういう方にプレイをしていただきたいと考えているのでしょうか? たとえば、「オフラインゲームの感覚で遊んでもらってもいい」という舵切りなのか、「ひとりでのプレイを入口として入ってきた方にもオンラインのコミュニティに触れてほしい」というような層の広がりを意識したものなのか、そのあたりの考えをお聞かせください。
吉田:MMORPGの世界には、これまで現実世界で体験したことがないようなカルチャーやゲーム体験が、間違いなく存在すると思っています。最終的には、それを皆さんに届けたいという気持ちは、昔から何ひとつ変わっていません。
ただ、ここまで認知を上げてきてもなお、「オンラインゲームだから遊ばない」というのがプレイしない理由の筆頭に挙がるということは、いままでと同じやりかたをしていてもダメなんだろうなと。だから今回の施策は、コミュニティの皆さんが友だちを誘うときに、「シナリオは全部ソロでクリアーできるからおいでよ」というひと言を言ってもらえるためにやろうとしています。
――コミュニティを広げていきたいというところは変わらないのですね。
吉田:そうですね。『FFXIV』のシナリオがよかった、この先も楽しみだという感想を抱くだけでもいいんです。ただ、これはドマ麻雀を実装したときの理屈と同じで、そのうちの何%かの方々が、ふとしたきっかけで友だちができたり、気まぐれにマッチングでコンテンツで行ってみたら思いのほか楽しかったと感じたりとか、そういうところにつながって、さらにそこから新たな広がりを見せてくれればと。
今回の“ひとりで遊べる”という要素は、「ストーリーはソロでいける」「俺でもできたから」と、新しいプレイヤーを誘うときの“武器”にしていただければなと思っています。このメッセージ性は、ゲームのジャンルを超えていけるんじゃないかと思っています。
くり返しになりますけど、『FFXIV』を遊んだプレイヤーの方々には、“人と遊ぶ”、“世界に人がいる”、“世界が共有されている”ことのすごさ、おもしろさに到達してほしいなと思っています。そのためにも、間口をより3倍にも4倍にも広げていきたい。
そもそも、いまのゲームはオンラインでつながっていないタイトルはほぼないですよね。いまは『FFXIV オンライン』という名前ですが、“オンライン”を取ってしまいたいぐらいです。
――全メインクエストの必須IDと、4人用討滅戦がフェイス対応になるとの発表がありましたが、あわせてフェイスシステム自体のアップデートもあるのでしょうか?
吉田:スタッフの多くが汎用的にフェイスのアルゴリズムを書ける準備をしてきたからこそ、今回の対応に踏み切っているので、すでに6.0時点から内部的なアップデートはすごく多いです。当然、フェイスのAIもかなり強化しました。とはいえ、実際にプレイしても、「なんとなく頭がよくなったな」とか、「攻撃をかわすようになったな」とかで、大きな違いは感じられないかもしれません。
――既存IDの難易度調整なども検討されていますか?
吉田:フェイスのAIを強化したとしても対応できないようなギミックがあるので、それらはフェイスでもクリアーできるように、ギミックを調整しているものが結構あります。
――フェイスシステムといえば、NPCの掛け合いも魅力ですよね。それも新たなフェイスシステムで楽しめるようになるのでしょうか?
吉田:あるものもあれば、ないものもあります。“名もなき手伝い冒険者”といっしょに攻略する場合は、そんなにしゃべらないです。逆に、名のあるキャラクターといっしょにダンジョンを進むときは、そういった掛け合いが楽しめるかと思います。
それと、3月4日に実施予定のパッチ6.1特集Part1のPLLでお伝えしますが、“フェイス”という名称の呼びかたをやめることにします。幻体を育成していくことを“フェイス”、メインシナリオの必須IDは“ストーリーサポーター”とか、呼称をそういったイメージで分ける予定です。
――“ストーリーサポーター”は育成対象ではないということですか?
吉田:そうですね。フェイスとは別物で、メインシナリオの進行に必須なダンジョン専用のサポーターという立ち位置です。
――メインクエストも大幅に改修されるようですが、それに付随するふたつのID(“外郭攻略 カストルム・メリディアヌム”と“最終決戦 魔導城プラエトリウム”)も、いわゆる3ボス制の通常のダンジョンの形になって、そこに入らないものはクエストインスタンスバトルという形になるのでしょうか?
吉田:はい。ですので、コンテンツルーレットの種類から“メインクエスト”というカテゴリーがなくなって、通常のレベリングIDと同じ扱いになると思います。
――“アルテマウェポン戦”は、どういった形になるのですか?
吉田:4人用のコンテンツに切り替えるので、イフリートやタイタンと同じ位置づけになりますね。
――ガイウスも同様でしょうか?
吉田:ガイウスをどこに置いているかはネタバレになるので言いません。ガイウスを切り出すとは言っていないので……(笑)。
――“最終決戦 魔導城プラエトリウム”ですと、魔導アーマーに乗りこむギミックなどがありましたが、そういったものはどうなるのでしょう?
吉田:ごっそりと変えています。
――となると既存のプレイヤーにとっても、あのふたつのIDはある意味、新規IDになりますね。
吉田:そうですね。ですから『新生エオルゼア』のときに急ぎ開発した8人用のふたつのIDは遊べなくなります。「シドがやってくるのが遅い」と言いながらみんなでダンスしながら待つといったシーンもなくなりますね(笑)。
――先ほど“ひとりでも遊べる”という部分の強化のほかに、“みんなでも遊べる”の部分の誘導の強化は考えていたりしますか? たとえば、スキル回しの考えかたを学べる“中級者の館”のようなものを用意する予定は?
吉田:それは課題だとは思っています。ただ、メインクエストIDがフェイス対応されて、それでクリアーできるのであれば、それがひとつの練習になるだろうと。たとえば「もっと早くIDをクリアーしたい」という人は、自己練習するんじゃないかと思っているんです。
ただ、ゲーム内でスキル回しなどの正解に近いものを学ぶ機会がないというのは、課題としてあります。そこは、何かしらやりたいなと話し合ってはいますね。
――スコアアタックとかといった形で学ぶのはいかがでしょうか?
吉田:その意見はよくいただくのですが、僕たちはパッチごとにバランス調整を行っていて、拡張パッケージで修得レベルもチューニングしているので、それを踏まえてスコアを調整するのはなかなか難しいですね……。
開発都合と言われたらそれまでではありますが、そう簡単に準備できない理由は、そういうところにあります。僕たちも人間なので、「スコア調整もしなくてはいけないなら、ジョブ調整を見送るか……」となってしまう可能性もあります。
そういった可能性があるものを、おいそれと実装する判断はしづらい、ということはご理解いただけると助かります。もちろん、先ほども述べたように、課題だと思っているので、がんばってはいきたいですね。
――メインIDのフェイス対応に関連して、冒険者小隊の扱いがどうなっていくかもお聞かせください。
吉田:これは以前のPLLでもお伝えしたと思いますが、冒険者小隊の中身は、フェイスシステムとはまったく別の仕組みで作られています。仮にいま、冒険者小隊をさらにアップデートしようとすると、メインクエストIDの改修と作業が被ってしまいます。
さらに、この先も冒険者小隊を発展させていくならば、フェイスと同一のシステムに置き換えてしまったほうがいいとも思っています。ですので、楽しみにしてくださっている方には申し訳ありませんが、それまでは冒険者小隊のアップデートは一時的に止める予定です。もしかしたら報酬の追加はするかもしれませんが。
これ以上冒険者小隊を作り進めてしまうと、フェイスシステムとの落差が激しくなりすぎてしまいます。今後、フェイスや、ストーリーサポート機能に慣れると、ストレスが大きくなると思うので、いずれ合流させるためにも、AIを作る開発コストは、まずメインクエストID対応に割り振らせていただければと思っています。
『FFXIV』をいま以上に大きくするためには、P/Dの交代はできない
――グラフィックスアップデートのお話に戻りますが、PLLで画像を発表した後の視聴者の反応はいかがでしたか?
吉田:最初にフォトリアルな画像を出したときに、もうちょっと批判的な意見が多いかなと思っていたんですよ。でも、「うん……キレイ」「なるほどね」といったコメントが返ってきて。その後に、僕が「こうじゃないよね」って言った直後に、「うん! 違うよね」「これじゃない!」って反応になったのが印象的でした。
開発チームががんばってクオリティーを上げた画に対して「なんか微妙」と思っても、とりあえずそれは言いづらい……という雰囲気を感じて、皆さん本当に優しいなと(笑)。グラフィックのクオリティーを上げるといっても、テクニックや手法、シェーダー、テクスチャの書きかたなど、さまざまな方法があって、どこを目指すかというのは難しいんです。
そこで、各チームのリーダー全員で集まって会議をして、「『FFXIV』のプレイヤーの皆さんが求めるのはこの形だろう」ということを話し合いました。プレイヤーの皆さんが、自分のキャラクターを見て、「これじゃない」となってしまうことはいちばんよくないので、そこはすごく慎重に作っています。
このタイミングでサンプルを出すのは怖かったのですが、実際にプレイヤーの皆さんにお見せして、いい反応が返ってきたので、コミュニティの皆さんと力強く握手できた感覚がありましたね。
――グラフィックスのアップデートは吉田さん主導で始まったものなのですか?
吉田:そうですね。それぞれのスタッフにも「もっとグラフィックをキレイにしたいな」という思いはあったと思いますが、膨大な作業工程が生まれてしまうため、言い出しづらかったと思います。だから、僕から言わないと、誰も声を上げなかったんじゃないかなと。
――熱意は感じていたから、吉田さんが背中を押したと。
吉田:大号令ですね。当然、作業工数が増えて、自分たちの首を絞めることにもなりかねないとわかったうえで提案をしてみたら、「やりましょう」という感じでした。ただ、一方で「全部の装備をコンバートする必要があるのか」「締め切りはいつまでなのか」という心配の声も挙がってきたので、「それは順次やっていこう。プレイヤーの皆さんには僕から説明するから」と伝えました。
これ以上リソースが増えたら、グラフィックのアップデートはますます難しくなります。だからこそ段階的でもいいので、いまがそのタイミングだなと。
――最後に吉田さんからひと言メッセージをお願いします。
吉田:サービス運営型のタイトルとはいえ、ひとりのトップがこれだけの期間、着任したままゲームを作り続けていき、節目を迎えてなお「死ぬまでやる」と発言するのは、めずらしいケースだと思っています。
ただ、今回のグラフィックスアップデートもそうですが、『FFXIV』をいま以上に規模が大きい作品にするなら、交代を考えていてはできないと思うんですよ。技術は引き継げたとしても、この想いを完璧に引き継ぐのは難しい。『暁月のフィナーレ』で1回目のフィナーレを迎えて、次の山がよりたいへんなものになったからこそ、僕自身が続けていく意味があると思います。
何度も「吉田が辞めるんじゃないか」という話題は出ますが、病気や事故などでない限り、それはないと思っていただいてかまいません。僕がプロジェクトを引き継いだときの「すべてのお客様のために」という想いはいまも変わっていません。これからも開発チーム、プレイヤーの皆さんのコミュニティの力を借りながら発展していこうと思っていますので、今後ともよろしくお願いいたします。
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