『ロストジャッジメント』DLC“海藤正治の事件簿”レビュー。海藤らしいプレイ体験&感情移入できるドラマが魅力
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- キャナ☆メン
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セガから発売中のPS5/PS4/Xbox series X|S/Xbox One用ソフト『ロストジャッジメント:裁かれざる記憶』(以下、ロストジャッジメント)について、3月28日に配信開始となる追加ストーリーダウンロードコンテンツ“海藤正治の事件簿”のレビューをお届けします。
『ロストジャッジメント』は、元弁護士の探偵・八神隆之を主人公にしたリーガルサスペンスアクション『ジャッジアイズ』シリーズの最新作です。
その魅力の1つは、法廷の裏で複雑な陰謀が渦巻くシリアスな物語性はそのままに、イジメを正面から描いたドラマ性の深化。さらに、ゲームシステム全般の改善で格段におもしろくなったゲームプレイの進化で、個人的に“理想的な続編”と思えるタイトルでした。
DLC“海藤正治の事件簿”は、その名の通り、八神の相棒である海藤が主人公の短編ストーリー。バトルはもちろんのこと、調査アクションも海藤らしい個性が盛り込まれ、ゲーム本編とはひと味違ったプレイ感を体験できます。
シナリオの面では、八神の出張中に舞い込んだ依頼をきっかけに、海藤がかつて愛した女性の生死を巡り、彼が心に秘めた後悔と再び向き合うドラマが描かれていきます。
ストーリーは公式サイトが詳しいので、物語の雰囲気を含めて楽しめるそちらもご覧いただければ幸いです。ここからは、ゲームプレイの感想を中心に触れていきます。
“海藤らしさ”を感じられるゲームシステムとプレイのおもしろさ
満を持して“海藤正治の事件簿”の登場です。城崎さおりさんを数に入れていいなら、3人目の操作キャラに触れる日が来ます!
昨年2021年に本DLCが発表された際は、ついに龍が如くスタジオもDLCで追加ストーリーを出す時が来たと身震いし、筆者の中ではちょっとした事件でした。これはぜひ調査(プレイ)せねばと待ち続けること約半年。この度、事前にプレイする機会をいただきました。
何せ主人公は海藤ですからね、肩書きは探偵でも中身は……。八神には鋭いカンを評価される時もあれど、やはり彼は八神探偵事務所が誇る“脳筋キャラ”なわけで、筆者からすると、口より先にドロップキックが出るイメージが強いです。バトルに心配はないけれど、調査は大丈夫なのでしょうか。
しかし、本DLCではその不安をむしろ逆手に取って(?)ゲームシステムへ見事落とし込んでおり、主観視点で怪しい場所を調べる際は、海藤だけが使える特別な調査アクションがあるとか。その名も“ワイルドセンス”!
海藤はその野性的な感覚を研ぎ澄まして、常人では気づけないほど微かな匂いや音に反応できる……って、大仰な名前だけども要は嗅覚と聴覚かーい!!(笑) 脳内でツッコミながら笑いましたよね、このシステムを見た時は。
これに視覚を加えた合計3種、海藤アイ(目)、海藤ノーズ(鼻)、海藤イヤー(耳)を任意で切り替え、例えば書類なら海藤アイ、冷蔵庫なら海藤ノーズ、人の声なら海藤イヤーという風に、調べる対象や内容によってアクションを使い分けていきます。
端的に書くと、本編中の探偵ガジェットがワイルドセンスに置き換わったとイメージすればわかりやすいかと。ただワイルドセンスの場合、ストーリーに沿って事件現場などを調査するアクティブサーチモードでは、基本的にすべてのセンスを使って現場を調査します。
例えば、海藤ノーズで不審な物を見つけ、それを元に海藤アイでさらに具体的な情報を探る……といった具合に、使うセンスを切り替えて「このヒントはきっとあそこに関係ある」と考えながら段階的に調査を進める場面もしばしば。
ワイルドセンスの切り替えで多角的に現場を調べるプレイ感は、本編の調査ボタンを主体にした調査よりも、自分で能動的に調査している実感がありました。当然、総合的にはゲーム本編に軍配が上がりますが、アクティブサーチモードに限れば、ゲームの体験性がさらによくなった感じです。
ゲーム本編で前作から大幅なブラッシュアップが行われたこと自体そうなのですが、『ジャッジアイズ』シリーズは新しい作品を出すたび、“いいものを作ろう”という意気込みが実際のゲームプレイから感じられるので、遊んでいてうれしくなりますね。
とはいえ細かな部分なので、あまり大袈裟に書きすぎると過度な期待をさせてしまうでしょうが。けれど本DLCはゲーム本編を遊んだ人がプレイする作品なので、リリースされれば、きっと同じような感想を抱く人もいるのではないかと思います。
“海藤らしさ”はバトルでも全開! パワフルなイメージ通りの戦いを体験できる
バトルについては、操作キャラの交代に伴うアクションの変化に対して、多くの人が想像つきやすいでしょうし、そこに期待もしていると思います。
その想像と期待通り、本編とプレイ感の違いをしっかり楽しめることは請け合い。技の八神に対して力の海藤というイメージそのままに、頑丈さを武器に身体を張って豪快な戦い方をする海藤を“カチコミ”と“テッパン”という2つのバトルスタイルで体験できます。
触った感想をまとめると、前者は先手でも後手でも殴れるアグレッシブな攻めのスタイル、後者は攻撃に耐えて武器攻撃で多人数相手にも押し切れる力押しのスタイルといった印象です。
カチコミは、敵が攻撃する瞬間を狙ったり、ダメージを受けた直後のカウンターだったり、殴るタイミングが重要なスタイルですが、裏を返せば敵の攻撃を受ける前後どちらのタイミングでも技に繋がるので、ガチャプレイを具現化したようなところもあります。その意味で、敷居は低いが奥が深いといった感じでしょうか。
テッパンは、周辺の二輪や看板などを掴んで即座に振り回す隙のない武器攻撃が使いやすく、近くに武器になるモノがある状況ならめっぽう強いです。
また、ガード長押しで全方位からの攻撃に耐えられ、さらにジャストガードに相当するスキルを習得するので防御に優れます。さらに、ガードしながら回避ボタンを押すと突進を行い、敵に囲まれた状況を脱したり、多数の敵の体力を削ったりするのにとても便利。肉体の頑健さを攻防に生かしたアクションが海藤らしく、触っていておもしろいですね。
ちなみに、バトルに関連して1つ留意してほしいのが“スキル習得のし忘れ”。本DLCはゲーム本編と比べてSpがサクサク手に入るので、気がついたら大量のSpが余っていることはざらにあります。
敵が強くなるペースも早いので、自由行動のタイミングが来たらとりあえずスキルを確認するクセを付けたほうがいいでしょう。備えあれば憂いなし。殴り負けする海藤はイメージに合わないですよね!
恋愛の古傷を切り口にした物語は感情移入がしやすい。海藤の新たな一面と人間性を感じるドラマ
海藤正治という人物は、陽気なムードメーカーと言えるキャラクター性が魅力的ですが、彼の内面に迫るエピソードは義侠心を描く極道絡みの出来事が主で、例えば『龍が如く』シリーズの桐生一馬にとっての澤村遥のように、共感しやすいドラマが薄い面もあったように思えます。
“海藤正治の事件簿”は、義侠心に厚い海藤の性格を大事にしながらも、新たな切り口で彼を描いていて、彼の人間性に対して理解を深められる物語になっています。
物語には、組と対照の立場にある海藤の元恋人が登場します。2人は同棲して結婚まで考えながら、松金組の一大事を前に海藤が彼女より組長を選び、その関係は終わりました。しかも海藤は、彼女が自殺したと聞き及んでいた……もし、そんな女性が生きているかもしれなかったら?
公式サイトなどのあらすじを読むだけでも、海藤が彼女に抱く複雑な想いは想像に難くないでしょう。実際にプレイしても、誰しも感情移入しやすい恋愛の古傷を切り口に、海藤の新たな一面を掘り起こし、彼の想いに共感できるドラマが描かれていると思います。
クリア時間に関しては、事前にさほど長くないと聞いていましたが、筆者がプレイした時は、寄り道はわずかに抑え、ボイスはすべて聴いて8時間近くかかりました。ストーリーがフルボイスであるため、おそらくボイスをスキップするか否かで割と違いが出るのでしょう。
難易度やボリュームは人それぞれ感覚が大きく違うので一概に語ることはできませんが、筆者の感覚では、チャプター数を踏まえても、追加DLCとして考えるなら特に短い印象はなかったです。
なお、誤解のないよう明記しておくと、本DLCに八神は登場しません。スマートフォンのメッセージでやり取りする一面はありますが、物語に絡むことはないです。そこは期待せず、最初から海藤が主人公のスピンオフという認識で楽しんでもらえたら。
本DLCは、ゲーム本編を購入した人しかプレイできないですが、『ジャッジアイズ』シリーズに物語のおもしろさを感じて遊んできた人なら、ゲーム内に本作をプレイしない理由は見当たらないと思います。
上で述べた通り、別れた女性との苦い恋愛を切り口に海藤の過去を掘り下げた物語になっていて、描かれるドラマは感情移入しやすいですし、『ジャッジアイズ』シリーズ全体の物語を俯瞰した時にも、欠かせないエピソードだと感じました。きっと海藤により深い人間味を感じて、また1つ抱く印象が変わることでしょう。
■LOST JUDGMENT:裁かれざる記憶
©SEGA
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