続編にも意欲的。『ライズ・オブ・ザ・サード・パワー』開発者が語るオススメキャラやスキルは?【電撃インディー#212】

カワチ
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 電撃オンラインが注目するインディーゲームを紹介する電撃インディー。今回はPS4/Switch/Xbox One/PC向けRPG『Rise of the Third Power(ライズ・オブ・ザ・サード・パワー)』のインタビューをお届けします。

 ローワンという元海賊の主人公が仲間を集め、帝国の野望を打ち砕くために戦う『Rise of the Third Power』。

 “天与”のポイントを使って新しいスキルを覚えたり、クラフトで新しい装備を作ったりしながらパーティを強くしていくRPGです。クオリティの高いドット絵も大きな見どころとなっています。

 本記事では、そんな『Rise of the Third Power』の開発陣であるエヴリン氏とフロスト氏にお話を伺いました。

 なお、電撃オンラインは、尖っていてオリジナリティがあったり、作り手が作りたいゲームを形にしていたりと、インディースピリットを感じるゲームをインディーゲームと呼び、愛を持ってプッシュしていきます!

開発陣の2人にインタビュー!

――『Rise of the Third Power』の注目点を教えてください。

エヴリン:そうですね、ストーリー重視派で政治的背景を持つファンタジーが好きな人であればぴったりだと思います。このゲームのライターとして、そう願っています!

 今回の主な魅力であるストーリーもさることながら(なんせRPGですからね)、戦闘にとても深みがあって満足できるものになっています。ターン制の戦闘が好きな人や、そういったシステムに飽き飽きしている人にも特別な作品になると思います。フロストが素晴らしい仕事をしてくれましたからね。

――開発で苦労していたところを教えてください。

フロスト:今までで最も苦労したところはプロジェクトの進め方ですね。ストーリーの流れについてのはっきりとしたアイデアと、ゲームプレイについてのざっくりとしたアイデアと共にこのプロジェクトに取り掛かったのですが、ゲームプレイのテストをしたのはストーリーがかなり進んでからのことでした。

 今振り返ると、デザインドックを作らなかったのはまずかったなと思います。でも10年以上ゲームを作ってきたとはいえ、私たちはまだ初心者で現場を通して学んでいるのだと思います! そういうわけでストーリー展開とゲームプレイが互いにかみ合わなくなってしまいました。その結果システムを修正し、余分なものを取り除く必要がありました。

 でもこのゲームはストーリーを重視しているのでそれで良かったのだと思います。これによって得られた、プレイヤーが気づくかもしれないぐらいの最大の影響は、最初のヒーラーキャラを手に入れるのにある程度待たないといけないという点です。

 他にプロジェクトの進め方について苦労したところは作品をターゲットのプレイヤー層に合うように作っていくことと、プレイヤーからのフィードバックを生かすことでした。

 まず、私が当初考えていた「プレイヤー層が楽しんでくれそうな事」が実際は当てはまらなかったんです。『エアラフェル』のリリース後に分かったのですが、私たちのゲームを楽しんでくれるプレイヤーの大半は急かされることなく自分のペースでゲームを進めたいという考えを持っていました。

 そこで制限時間のあるパズルゲームや素早く反応しないといけないアクションは除外したのです。予想外の事でしたね、なので『Rise of the Third Power』では目的地への道を邪魔することが無いようにファイアボールトラップを修正しないといけなくなりました。それに加えてすべてのファイアボールを無効にするアクセサリーを追加しました、これはゲームの後半で見つけることができます。

――開発をするうえで、特に気を付けている点などを教えてください。

エヴリン:たくさんありますね。世界の息づかいを感じることができるように作りました、本当に人が住んでいるような家や街を作るようにしましたし、サウンドトラックにも力を注ぎました。

 しかし最も気を配った点は筋の通ったストーリーを描くことと、キャラクターの言葉に重みを持たせることでした。そのために必要なものは、個人的にははキャラクターの動機だと思っています。誰もがこのストーリーに関わっていると感じられるように、パーティに加わるキャラクター全員が尤もな理由を持っていて欲しかったのです。

 敵も敵として描いたのですが、その行動に正当性が感じられるようにしたのです。

フロスト:すべてのキャラクターが生存できること、バランスを取れるようにすることと、様々な戦略を各戦闘に使えるようにすることでした。私は昔から負け犬的キャラクターを使ったり誰も思いつかなかったような戦略を生み出すのが好きなのですが、それをゲームに組み込んだのです。

 まず、MMORPG(大人数でプレイするオンラインRPG)のレベル分けされたクラスのようにキャラクターの生存率とバランスから取り掛かりました。全てのキャラクターが特別だと感じられるように、つまり誰よりも特別な役割を持ち、他のメンバーと同じくパーティに貢献できるようにしました。

 そして他のキャラクターと相乗効果を発動するアビリティを全員に持たせることで、プレイヤーに賢いパーティの組み合わせを積極的に考えてもらうようにしました。最後に、こうしたひらめきをより楽しんでもらうために、天与に広がりを持たせました。プレイヤーは強さや弱点のカバー、新しい特性の取得といった中からキャラクターの育成方針を選べるようにしたのです。

 そうすることで、プレイヤーはクリエイティブなキャラクタービルドを楽しめ、誰も思いつかなかった戦略を生み出すことができるのです。4ラウンドの戦闘を綿密に計画し、ボスを短時間で倒すコンボを揃えたときの快感は格別です。

――ゲームタイトルにこめた想いを教えてください。

エヴリン:『Rise of the Third Power』の事ですね? ゲーム内では15年前に第一次世界大戦が勃発した結果、世界秩序の再構築が起こりました。サーインシーア王国とタリク共和国のみが戦火を免れた大国となりました。

 敗戦国の1つであるアーカーダヤ王国では新たな支配者が誕生し、大国としての再興を目指しています。こうして、第三勢力(Third
Power)となったのです。

フロスト:ストーリーから得られる教訓についてでしたら、私の考える主な教訓は「語られたことをそのまま受け入れるのではなく、常に自分の目で世界を見定めるべきである」、だと思います。

――前作の『エアラフェル(拡張版)』もRPGでしたが、前作から進化させたポイントや差別化したポイントを教えて下さい。

エヴリン:はい、『エアラフェル』はハイ・ファンタジーというジャンルの作品でした(実際そうなんです! 空に浮く島についてのストーリーでしたからね!)、魔法もたくさん出てきますし、『ロード オブ ザ リング』と『バフィー・恋する十字架』を掛け合わせたような感じですね。魔法が出てきて、「選ばれしものが世界を救う」というお決まりを覆すことを意図していました。

 そして『Rise of the Third Power』はというと、より政治的で大人向けの内容になっています。物語の中心は戦争の阻止にあり、「反乱軍対帝国軍」の図式を覆そうとする作品です。ゲームプレイについてですが、『エアラフェル』では泳いだり歩き回ったりでき、オープンワールドの探索が主となっていました。

 『Rise of the Third Power』はより懐かしいJRPGに近しくなっています。ワールドマップと特色ある街やダンジョンが用意されていて、ストーリーを進めながらそのすべてをアンロックしてクリアしていきます。そして戦闘は大きく進化しています。『Rise of the Third Power』ではより深い思考力が求められるのです。

フロスト:ゲームプレイの観点からですと、この二つは大きく異なったゲームだと思います。『エアラフェル』はオープンワールドということもあり、ハーブを採ったり、鉱石を発掘したり、魚を捕りに潜ったり、本来なら入れないような高レベル向けのエリアに入ったりなど、プレイヤーは冒険に出て探索するという感覚を味わえました。気負わない不思議な感覚を覚えたと思います。

 『エアラフェル』ではタンクやヒーラーやDPSといった固定されたクラスの役割があり、クラスを特化してそれぞれのプレイをカスタマイズできるようになってはいますが、スキルのコンボやあまり綿密な計画を立てることはできないようになっています。そういった点が昔ながらのJRPG体験につながるのだと思います。

 一方の『Rise of the Third Power』では物語を追っていく形式になっていて、広い世界に豊富なサイドコンテンツも用意されているのですが、最初から自由に探索できる世界ではなく大きく外れることのできない道が与えられているのです。

 さらに『Rise of the Third Power』の戦闘はプレイヤーに高いレベルの戦略を求めていて、またその戦闘プランに多くの報酬を用意しています。各ボスとの戦闘はまるでパズルのようで、パーティにいる8人のキャラクターを特色あるツールとして使い、解決策を見つけないといけません。

――完成度の高いドット絵に驚かされました。ドット絵に対するこだわりを教えて下さい。

エヴリン:一緒に働いたコントラクターによるものや、私たちのリードアーティストであるメリッサ・サンダースがたくさん制作してくれました。でもほとんどはライセンスによるものです。街や自然を表現するたくさんのタイルや、キャラクターのスプライトを手掛けてくれたのはFirst Seed Materialの才能あるアーティストたちです。とても素晴らしい仕事をしてくれました。

 それ以上に、クリエイティブディレクターとしてかかわっていく上で、このゲームを特別なものにするための取り組みでは(本当にたくさんのことをしました)さまざまなアーティストのスタイルにできる限り一貫性を持たせたのです。そうすることで特定の絵柄だけ浮いていたり、違和感を覚えるようなことはないようにしました。

 新しいスプライトはFirst Seed Materialからライセンス提供を受けたものとマッチさせる必要がありました。新しいタイルもゲームの世界にフィットするようにしましたしUIも背景画も戦闘時のスプライト(小さい画像を高速で合成表示させるための仕組み)やアニメーションについても同様です。

 決して簡単な仕事ではなかったですが、ありがたいことに一緒に働いた方々が自分たちの芸術性を保持しつつこうしたスタイルに合わせるという素晴らしい仕事をしてくれたのです。

――個性的な仲間も見どころですが、お気に入りのキャラクターを教えてください。また、物語で明かされないキャラクターの裏設定があれば教えて下さい。

エヴリン:戦闘時でもそうでないときも私のお気に入りはコリーナです。昔から嫌味な小悪党が好きなんです。物語で明かされない裏設定は特に無いですね。どちらかといえば、あまり出番がないNPCと思いきやストーリーが別の方向へと進み、新しくキャラクターを作らないといけない、という事がよくありました。

――キャラクターが魅力的に描かれる豊富なサイドクエストも魅力です。お気に入りのサイドクエストがあれば教えて下さい。

エヴリン:退役軍人倶楽部とジオですね。このクエストのために第一次世界大戦についてリサーチをしましたし、ストーリー内でPTSDによる影響にも触れました。本当に心を動かされるようでした。エモーショナルであったり、悲しくなったりするクエストではないのですが、私は制作中ずっと涙を流していましたね。この回答を書いている今も息が詰まるような思いです。

――バトルで使いやすいキャラクターや覚えておいたほうがいいスキルがあれば教えて下さい。

フロスト:繰り返しになりますが、私はあまり使われることのない戦略が好きなんです。私のお気に入りはボスと集団の敵に効果のある戦略です。永久DoT(継続ダメージ)機構と名付けました!

 アリエール、ラシム、ナターシャの三人を使います。ラシムにポイズン・ウェポンを使わせて、おとりとカウンターアタックを選択します。アリエールに準備万端を発動させて、りゅう弾を使います。アリエールとコリーナを交代させて、一番強いターゲットにクー・デ・グレースを使います。こうして4つ以上のDoT効果が付与されるはずです。必要に応じてレイナをヒーラーとして加えたり、またはラシムの自己回復でパーティにアイテムを使ってもいいでしょう。

 次に好きなのはレイナ、エイデン、ローワンを使った使い勝手のいい陣形です。レイナは攻撃にも回復にも回ることができ、エイデンのブラインドで敵を弱体化したり、強い敵であっても彼のデーモンで即死させることが出来ます。

 ローワンは我慢を使って憤激でそれなりのダメージを与えることができます。この陣形では2つの強力なチームコンボを使えます。ブラックホールと魂の癒やしです。ブラックホールは私のお気に入りで、フィールドを素早く一掃することができます。

 また魂の癒やしでは敵の弱体化と味方の回復効果で最強の安全策となるでしょう。この戦略をより楽しいものにしたいのなら、レイナにラットバッシングを持たせると良いでしょう。これにより近接攻撃のダメージが300%上昇します。

 私の好きな2つを紹介しましたが、8人のキャラクターで構成できる戦略は本当にたくさんある、という事を強調しておきますね。

――今後、実現したい野望などありますでしょうか?

エヴリン:ぜひ続編の制作に関わりたいです! また、『To The Moon』のようなストーリー重視の小規模なゲームもやってみたいです。それに、ホラー系のロールプレイングゲームも面白そうだし......。

フロスト:Stegosoft Gamesが新ゲームのリリース毎に成長してくれると期待しています。最終的にはフルタイムのアーティストやデザイナーを雇用して、そしてこの業界を学びたいインターン生も受け入れることができるようにしたいですね。私の目標は会社に収益をもたらし、新しい開発者を育成することでこの業界に貢献しつつ、ファンの皆様に質の高いコンテンツを提供することですね。

――ゲームの開発に携わることになったきっかけについて教えてください。

エヴリン:小さいときは文章を書きたかったのですが、散文を書くのは気が進まなかったのです。演劇も私には合いませんでした。そんな中、もしかしたらRPGを書いたら楽しいんじゃないかと思いました。名前を忘れてしまいましたがとあるフォーラムで質問をしたところ、誰かがRPG Makerへと繋げてくれたのです。

 それ以来ゲーム開発に携わるようになりました。人生の半分以上の時間をゲーム開発に注いできました。正直なところ、別の仕事をしている自分を想像できないですね。

フロスト:『Ultima Online』です! 10代の頃はあのMMORPGに夢中になったんですが、デザインに関して開発側が下した判断に納得できなくなり、modを作成しようと思いました。

 そこからC#を学びフリーサーバーに参加して、新人開発者はみんな通った道を通りました、つまり好きなゲームのシステムを自分のゲームにコピーしたのです、全くフィットしてなくても、です! 『ファイナルファンタジー7』のマテリアのシステムを『Ultima Online』に追加したところを想像してみてください。私はとても楽しいと思ったのですが、他のプレイヤーは嫌がってましたね!

――ここ数年でもっとも感銘を受けた、おすすめのインディーゲームについて教えてください。(インディーゲームでなくても構いません)

エヴリン:『聖剣伝説2 Secret of Mana』が私のお気に入りです、その次に『Baldur’s Gate 2』ですね。ホントにホントのことを言うと、リリース以来起きている時間のほとんどを『エルデンリング』に使っているのでここでは『ダークソウル』シリーズに感銘を受けたと言わないといけないですね。

 私の作品にその影響が出ているとは思わないのですが、最も感銘を受けたゲームは『ダークソウル』シリーズと『エルデンリング』ですね、間違いないです。

フロスト:『ファイナルファンタジーXIV』、『Valheim』、『Graveyard Keeper』、『Terraria』、『Ori』です。最近で一番インパクトがありました。『Ori』で没入感のある世界観と物語、『Graveyard Keeper』のエンジニア心をくすぐるアップグレードツリーと心地よい中毒性のある作業、『Valheim』での探索で得られる素晴らしい発見、『Terraria』での洞窟探検にてマルチプレイヤーで楽しむ悪ふざけやゲームの進行、そして『ファイナルファンタジーXIV』でのクオリティの高い物語と歯ごたえのあるレイドコンテンツ、ですね。

――最後にユーザーに一言お願いします。

フロスト:ゲーム業界で働くことを考えていてその機会が回ってきたのなら、ぜひそのチャンスをつかんでください! ずっと考えてきたゲームのアイデアを形にできるよう取り掛かるべきです。やりたいことを後回しにできるほど人生は長くないですからね。


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