『ガンダム 戦場の絆II』リスタートに向けた正路Pインタビュー! バランス調整や今後の方針などを語る
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- あんまさ
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バンダイナムコアミューズメントのアーケード用ゲーム『機動戦士ガンダム 戦場の絆II』の開発者インタビューを実施しました。
本作は、巨大なモビルスーツを操り、プレイヤー同士がチームを組んで対戦するアーケード用タイトル『機動戦士ガンダム 戦場の絆』シリーズの2作目。2021年7月27日に稼働して以降、アップデートで機体や武装の追加、バランス調整がされています。
3月20日の公式生放送vol.5にて、開発チームの体制変更に伴い、同社の正路千暁さんがプロデューサーに就任することが発表されました。インタビューでは正路さんに、今後の『戦場の絆II』の動向について詳しくお聞きしました。
新プロデューサーのビジョンとは?
――まずは自己紹介も兼ねて、正路さんと『戦場の絆』シリーズの関係についてお話いただけますか。
正路千暁と申します。『戦場の絆』シリーズにおいては、REV.2から開発チームに参加し、デザイナーとしてマップ制作を担当しました。制作したマップは“ア・バオア・クー”、“リボー・コロニー”、“キャリフォルニア・ベース”です。
REV.3から企画に転向して、その後にディレクターに就任。REV.4では立ち上げまで参加していましたが、そのタイミングでチームを抜けたというのが、おおよその流れになります。
そしてこの度、『戦場の絆II』のプロデューサーに就くことになりました。
――正路さんは『ジョジョの奇妙な冒険 ラストサバイバー』も担当されています。運営型の2タイトルを同時に見るのはかなりの負担だと思われるのですが、実際のところいかがでしょうか?
現状でどう立ち回るべきなのか、手探りしつつの作業ですが、それぞれのタイトルとしっかり向き合っていきたいと考えています。
――プロデューサーに就任されたのはいつごろですか?
就任の発表は3月の公式生配信でさせていただいたのですが、その3カ月ほど前からプロデューサーとして動いていました。開発体制などを見たところ、チーム内部の連携がうまくいっていない、長期的なスケジュールが立てられていないなどの問題があると感じたので、1~3月は体制変更などのために尽力していました。
――具体的にはどういった作業をされていたのですか?
新要素を足す前に、現状抱えている課題をブラッシュアップする作業に尽力するべきであろうと考えました。前作『戦場の絆』をプレイしていた感覚で本作を見ると、チャットが使いにくいなどの機能的な問題が多く見られました。
同時に、進行不能になる問題の修正に取り組ませていただきました。クレジットを入れていただいたのにもかかわらず、進行不能になるのはモチベーションを損ねるうえに、店舗スタッフに対応していただくことになり、ユーザー、店舗ともに負担があります。
これらを優先して対応しつつ、長期的なスケジュールを立てていきました。まだ解消すべき課題も多いので優先度をつけつつ引き続き対応してまいりたいと思っています。
――作業を引き継いでプロデューサーになることは簡単ではないうえに、課題が多い現状になっていると思うのですが、そのうえで『戦場の絆II』をどのようなタイトルにしたいと考えて作業されたのでしょうか?
本シリーズはチーム戦であり、人が集まらないと楽しめない構造になっています。前作の『戦場の絆』はコミュニティがあって運営できていた節があり、『戦場の絆II』でもコミュニティが重要になると思います。これからはコミュニティが自然発生的に起こるのを待つだけではなく、公式も積極的にコミュニティ形成へのアプローチをすべきだと思っています。
そこに関しては、次回以降の公式配信のところで話せればと思います。
3月29日に行われた大型アップデートについて
――3月下旬の大型アップデートについて、概要を説明してください。
生放送で説明した内容とかぶるため、ある程度まとめさせていただきます。連邦側に“ガンダムピクシー”、ジオン側に“イフリート”の機体を追加し、マップの“ジャブロー”を追加させていただきました。
――“ガンダムピクシー”はどういった機体なのでしょうか?
“ガンダムピクシー”は機動力が高いけれども、耐久力は低い格闘機です。“ビーム・ダガー”の二刀流によって格闘でザクザクと敵機を爽快に倒すコンセプトになります。
これに加えて“ステルス機能”があり、ボタンを長押しすると敵機のミニマップから自分のレーダー表示が消えます。この機能を使って、相手の視覚外から奇襲をするというのがおもしろい点になります。
――ジオン側の“イフリート”の紹介もお願いします。
“イフリート”は近距離型で、“ショットガン”という武装を装備しています。弾が拡散するため、距離が近い敵機に撃つと、弾がいい感じに当たり高いダメージを与えられます。接近してくる敵機に対してカウンターのように使える、扱いやすいものになっています。
格闘の“ヒート・ソード”は火力が高い剣となっており、ショットガンで敵をひるませた後、“ヒート・ソード”で追撃をするように作られたMSです。一方で、中距離になると“ショットガン”の弾がばらけてしまうので、ロングレンジを得意とする敵機との射撃戦は苦手としています。
――新マップとなる“ジャブロー”についてはどうでしょうか?
前作『戦場の絆』にあった“ジャブロー(地上)”をベースに、原作の“ジャブロー降下作戦”の演出などを入れてリニューアルしたマップです。地形は前作と似ていて、地上はジャングルのようになっているのですが、遮蔽物があまりありません。“ニューヤーク”は遮蔽物が多くて格闘に持ち込みやすいマップですが、この“ジャブロー”は誘導兵器やスナイパー系の武装が有効的に働きます。そのため、これまでとは違った編成やデッキが活躍できるのではないかと。
また、地下には川があって、水中から進軍することが可能です。地上は遮蔽物がないので、地下から敵機に接近したり、敵拠点を叩きにいったりするといった裏道のような使い方ができます。
なおBGMには『哀・戦士』が流れます。
――待望のマップ追加となりますが、当初からこのタイミングでマップを追加する予定だったのでしょうか?
後ろ倒しになったというわけではなく、以前からこのタイミングで追加する見込みでした。
――今後のバランス調整の修正方針についてお聞かせください。
バランス調整に関しては、今まで使いにくかった武器の上方修正する、強すぎた武器の下方修正するなどを試みています。また、“ジャブロー”でプレイしてみて、このマップで強すぎると感じた武器に対してのテコ入れも行いました。
他には武装のコストアップといった点で、LV3にしてもあまりコストが上がらなかった点を調整しています。あまり考えなしに高レベルの武装を入れると、デッキのコストオーバーが発生しやすくなるので、「この武装はLV3だけど、こちらの武装はLV1にしよう」といった、MSや兵装の選択を考えさせるような形式を取りました。
――不具合などの修正について、どのようなものを確認して修正されたのでしょうか?
不具合修正については、先ほどもあげたように進行不能バグが確認されていました。こちらの原因を調査したところ、他店舗との通信が途絶された際に、待機状態が継続して進行しなくなっていることが判明しました。マッチング画面やリザルト画面などに移行する時に、それにより不具合が発生していた感じです。
そこを最優先事項として集中的に見直しています。本来はもっと早く修正したかったのですが、原因特定と対応に時間を要したため、3月29日のアップデートまでずれこんでしまいました。
あとは表示の不具合など細かい修正を行いました。詳細は3月29日のアップデートのパッチノートをご覧いただければと思います。
――システム関連の機能改修についてはいかがでしょう。
プレイヤーがもっとも気にされているのは、マッチング関連だと思います。味方が4人集まってから敵チームとマッチする方式になっているのですが、敵チームとマッチングするためにかける時間が短かったので、この待ち時間を2倍にしています。
また、前の修正で初心者と上級者が当たらない仕様にしたのですが、その影響でCPU戦ばかりになるランク帯が発生したいたので、そちらも見直して修正しました。
マッチングはこれからも継続的に改善していきたいと思っています。
――3月29日のアップデートでは、他にどのような改修を行いましたか?
細かいところでは、以下のようなシステムの改修、機能追加をいたしました。
バースト出撃時の待ち時間の延長
同店舗出撃時にターミナルからエントリーしようとすると1人ずつエントリーすることになるのですが、4人でやろうと時間に余裕がない状態になっていましたので、こちらを250秒に延長しています。
チュートリアル関連
プレイを始めた時に、両軍でのチュートリアルを強制させていたのを排除しました。
ボイスシンボルチャット関連
ボイスシンボルチャットの仕様変更で、音声認識で味方とチャットすることができるのですが、バースト中に入力している声が聞こえて、恥ずかしいという意見がありました。こちらをミュートになるように修正しています。
シンボルチャットと入力猶予の見直し
シンボルチャットの連続入力時の時間制限が長すぎたため、間隔を短くしてやりやすくしています。
プレイ時のエントリー表示の修正
タイトル画面の表示がわかりにくくなっていたので、UIの修正が入っています。
筐体ごとのプレイ進捗の表示
筐体が空くまで待機している時、現在プレイしている人が何戦目かわからず、どこの筐体が空くのかわからない状態になっていました。筐体ごとに今何戦目なのか表示するようにしています。
左トリガーによる項目決定機能の追加
モード選択やデッキ選択といった際、左トリガーも決定できるようにボタンを調整しました。
筐体の構造の問題になるのですが、右に荷物置きがあって、左から出入りするといったようになっています。待機時間に飲み物を買いに行ったり、トイレに行ったりとかで席を離れる際に、左に立ちながら右トリガーの決定ボタンを押すのが非常にやりにくかった。そのため、左トリガーも決定できるように機能を変更しています。
モバイルサイトの機能追加
アバターや称号は定期的に追加していきます。これ以外では、プライベートルームやバーストルームといった、他店舗のプレイヤーと同時出撃するためのルーム機能があるのですが、ホストがちゃんと解散しておかないとルームに入ったままとなり、面倒なことが生じていたため、午前2時に自動的に解散する仕組みにしています。
対戦ステージ表示
“ジャブロー”が追加されたので、今日のステージがどこなのかをターミナルやモバイルサイトで表示するようにしました。
所属店舗の変更
所属店舗を変えることが今までできなかったのですが、変えられるようにします。
――プレイヤー視点で不便な部分をいろいろと改善していますが、こちらは正路さんが就任されてからの内容になるのでしょうか?
2月以降のものは自分が就任してから決めた部分になりますね。ただ、元々計画されていたものが後ろ倒しになったものもあります。
あまり例のない施策“フリープレイキャンペーン”の狙いは?
――4月に行われる“フリープレイキャンペーン”について、まずは概要についての説明をお願いします。
『戦場の絆II』を設置している店舗さまの協力のもと実施となるキャンペーンです。
4月15~25日までの11日間、該当店舗に行ってモバイルサイトでの簡単なアンケートを受けていただくと、その期間中は『戦場の絆II』を何度でも無料でプレイできる施策です。
より多くの方に『戦場の絆II』を体験していただきたいということと、その方々にプレイ時の感想や気になったところを教えていただき、製品のクオリティアップに繋げるといった狙いになります。
――アーケード用タイトルでこのような施策はあまり見られないので、思い切った内容になっていると感じました。
そう感じられると思います。当然ながらアミューズメント施設は、通常だとプレイヤーが使ったクレジットは店舗さまに入る仕組みとなっています。
店舗側がキャンペーンとしてフリープレイを行うことがあっても、メーカーが全国一斉でやるというのは仕組み的に難しいため、これまでに実施されてこなかったのかなと思います。
4月25日に“ガンダムパーク福岡”が開業するということに合わせて、全社的にガンダムを盛り上げていく意味も込めて、キャンペーンを実施する音になりました。
『戦場の絆II』が抱える現状の問題点と今後の展開
――新型コロナウィルスの影響も大きいと思われるのですが、そこを含めて現状のプレイヤーのプレイ頻度が想定と違うのか、またそれをどのように分析されていますか?
前作『戦場の絆』から継続してプレイしているプレイヤーはいるものの、離れてしまったプレイヤーが多くいるイメージを持っています。目標とするプレイヤー数や総合戦数には届いていないため、もう1度プレイしてもらうきっかけは必要です。
そういった部分もあり、今一度触ってもらうための“フリープレイキャンペーン”をやってみようとなった次第です。
――その流れでお聞きしたいのですが、就任されてから『戦場の絆II』が抱えている課題や問題点はどこにあると思われましたか?
バトルの面でも課題はあると思うのですが、マッチング関連の問題が1番大きいと思っています。4対4のマッチングが成立することが本ゲームの前提なので、まずはそこを見直しています。
――実際にどのぐらいマッチングしにくい状況なのでしょうか?
コロナウィルスの影響もあってプレイ人口が減り、プレイヤーの皆さんが20分刻みの“時報マッチング”を自発的に行っていただいている状況を把握しています。最優先課題としては、苦労することなく対人戦を成立させることが第一段階だと思っています。その次にバトルのクオリティアップを目指すことです。
――ちなみに、ターミナルでできることをモバイルサイトでできるようにすることは可能なのでしょうか?
リプレイ視聴はリプレイアップロード機能として、プレイ映像をそのままYouTubeにアップできるような機能の実装を予定しています。それによってターミナルでないとリプレイを見直せないといった状況は緩和されるかと。
――フリープレイキャンペーンを機に、今後はじめるであろう新規プレイヤーの方に向けて、キャンペーンや施策は用意されているのでしょうか?
フリープレイに関しては離脱層向けのキャンペーンとなっているため、もう一度遊んでいただくことを想定しています。続いて、ゴールデンウィークをターゲットに新規層向けのキャンペーンを予定しています。
――マップのスタート位置による有利不利のバランス調整を行うことはあるのでしょうか?
実際のところ、ニューヤークはジオン側の方が勝率が高い状態になっています。現在スタートから拠点砲撃までジオン側の方が早く開始できてしまっているため、平等にするためにスタート位置を調整する予定です。
――再出撃時に高コストのMSは自陣の後方からしか降下できないシステムになっていますが、降下時の高度からブーストを噴かせることで移動距離を稼げてしまい、低コストを使う意味が薄れていると感じました。そこに関して、どのように感じていますか?
高コスト偏重になっている問題は認識しています。帰艦に関して修正することを考えています。
低コストが高コストのHPをなんとか削ったところで帰艦されてしまうと体力が回復されてプラスが生まれにくく、帰艦のリスクの調整は必要だろうと感じています。最終的には高コストが低コストに削られてしまうと、状況的にマイナスになる状態を目指すべきかなとは思っています。
――前作は連邦側でマッチングしなかった時に、ジオン側で出撃することができたのですが、こちらは本作では実装されないのでしょうか?
前作でこの機能を使われていたのかを1回データとして出したことがあります。結果的に自分が選んだ軍をもう1度選ぶ人がほとんどでした。
それを踏まえて考えると、結局同じ軍でリトライをしたり、時間を増やしたりするのと同じことなので、そちらの方向で調整しています。
今後のロードマップと6対6の実装に向けた施策について
――6対6について、プレイヤーからも要望がある一方で、ラグや動作不備などについて心配する声があると思われます。こちらに関して現状で抱えている課題と対応策、また実装までのスケジュールについて可能な範囲でお話いただけますか?
ラグが多いのではないかというのは、心配されている通りの状況ではあります。こちらの解消については、通信方式を変更しようとしており現在試験中です。通信を変更してラグがあるかどうかを4対4で試し、次に6対6のテストに移り、あとは描画負荷といった部分を最適化。その後、ゲームバランス調整をやりつつ、リリースできる状態を作るというのが目標となっています。
また、4対4より6対6のほうがマッチングの難易度は高いので、最初に入れるとしたら土曜日だけといったように、集客できるようなタイミング限定で公開し、段階的に運用していくことを想定しています。
実装のタイミングは、ロードマップ内にあったように2022年中を予定しています。
――ロードマップの記載で2カ月に2機体、3カ月に1マップが追加されるようですが、こちらはスケジュール通りに進むと見てよろしいのでしょうか?
現時点では問題なくいけると思います。やってみて課題や不具合が発生することはあるかと思われますが、MS実装は予定が立てやすいところなので、こちらがずれ込むことはないかと。
2021年12月からMS追加がなかったのは、開発チーム内の体制を変更して、アップデートの優先順位を変えるなどの調整があったためです。そのため、MSの追加については今後定期的にしていきたいと思います。
6対6といったマッチングに関わる実装項目は調整部分が多いため、どのパッチで追加されるかはまだ予測が立っていません。
――この春夏秋冬のスケジュールにおいて、どのタイミングで盛り上がりの起点を作りたいと想定していますか?
上期では公式大会を置いているので、コアユーザーに向けた施策を出していく感じになります。大会が終わってひと段落したら、『ガンダム』のファンに向けた施策を行っていこうと思います。
また、次の公式配信では新規プロジェクトを発表する予定なので、続報をお待ちください。
――公式大会を実施しようと思った経緯は?
アーケードで運営されているタイトルであれば、コンシューマタイトルやアプリタイトルにないものを提供しなければなりません。タイトルについて10年前のアップデートは覚えていなくても、10年前の大会は克明に覚えているのが自分にもありまして、そういう印象に残るような思い出を定期的に作れるようにしたいと思いました。
長期で運営されたタイトルなので、「アミューズメント施設であの人と会った」や「大会が楽しかった」といった思い出や昔話ができるよう、アウトゲームの部分を大事にしていきたい次第です。集まる動機はリアルイベントが中心になることが多いので、そこは重要だと思っています。
――最近ではアーケードに活気が戻りつつあると感じています。『戦場の絆II』もそこに乗れるのが理想ですよね。
やはり店舗にユーザーが大勢いて活気が溢れていると、こちらとしても非常にうれしくなります。ここ最近はずっと寂しい状況だったのですが、春になって新しい付き合いが増えるので、交流の場としてアーケードに足を運んでもらえるように、我々も準備していかなければならないと思います。
――現状の問題の把握に加えて、コミュニティを大事にしていくことを聞けたのが安心しました。ありがとうございました。
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