触手を育てる背徳感がたまらない。『触手を売る店』で香港ゴシックの蠱惑的な世界観に浸る【TGS2019】
- 文
- キャナ☆メン
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9月12日~15日に千葉・幕張メッセで開催された“東京ゲームショウ2019”でインディーゲームコーナーに出展されていたスマホ用ゲーム『触手を売る店』のプレイレポートをお届けします。
『触手を売る店』は、“香港ゴシック”という独特な世界観を持ち、“触手育成シミュレーション”というパワーワードをジャンルに冠したiOS/Android向けの作品です。
“RPGアツマール”に投稿されていた同名のゲームが原作となっており、その世界観を引き継ぎながら、メインキャラクターである“店主”の若かりし頃を舞台にした完全新作となっています。
開発者であるAchamoth(アカモート)氏のブースでは、出展用に調整された特別バージョンで、物語のごく一部や本作のゲームサイクルを体験できました。
『触手を売る店』の独特な世界とゲームの目的
ゲームをプレイして最初に目を引くのは、やはりビジュアルと世界観でしょう。歴史絵巻のような独特なタッチと、赤黒白を基本にごく少ない色数で表現された世界は、背徳的で妖しい雰囲気が漂い、その鮮烈さが心を鷲づかみにします。
その世界に生きるキャラクターたちも、これまた個性が強い。触手を売る“店主”は、人を食ったような性格と言動にもかかわらず、香港ゴシックの世界観を象徴するかのように、蠱惑的な魅力にあふれています。
また、プレイヤーのガイド役となってくれる星(シン)は、一見するとただ心優しいだけの人物に見えますが、その優しさのためにプレイヤーを騙す場面があったり、特殊な背景を抱えていたり、店主とは違う意味でひとクセあるのではないかと思わせる人物です。
そうした直接的にストーリーに絡んでくる2人の他に、陰から物語を彩る存在と言えるのが店から逃げ出す10人の罪人たち。罪人たちの物語は、式神を放つことで断片的なエピソードが語られ、すべての物語を見ることで全体像を想像できるような形で話が描かれるとのことです。
そのためプレイの目的は、店主のために“触手”と“御神木様”を育ててゲームを進めること、式神を放って罪人たちの物語を集めることの2つになります。御神木様を最大まで育て、罪人の物語をすべて集めることで、エンディングを迎えられるそうです。
ゲームサイクルと触手の“共食い”
ゲームサイクルを簡単に書くと、“触手を収穫する→店主に売って霊酒に変える→霊酒を注いで御神木様を育てるor霊酒で式神を買う”という感じになります。前述の通り、式神は罪人の物語を集めるのに使います。
出展バージョンは特別調整されていましたが、実際にリリースされる完成版では、触手の育成や使用した式神が戻ってくるまでに一定の時間がかかり、放置的な要素を含むようです。なお、触手の育ちやすさは御神木様の大きさによっても変わってきます。
また、触手の育成はただ待つだけではなく、収穫した触手を成長過程の触手に食べさせる“共食い”を行えます。簡単に書けば触手のかけ合わせで、共食いさせることで本来とは別の触手を収穫できるわけです。
なので触手の種類が非常に多い! Achamoth氏に聞いたところ、リリース時点で70種類ほどの触手を実装することを目指しており、可能であれば、追加のアップデートで触手を増やせないかと検討しているそう。さすが“触手育成シミュレーション”です。
ただ触手に負けず劣らず物語にも力を入れていて、ゲームを開発している内に実は物語のウエイトが非常に大きいことに気づき、「ジャンルを(シミュレーションではなく)アドベンチャーにするべきだったかもしれない」と漏らしていました。そのくらい物語へのこだわりがあるという意味で、これは朗報でしょう。
アクの強さがたまらない期待の1作
なお、出展バージョンでは式神によって4つの物語を集めることができました。
ある場面を切り取った断片的なエピソードであるため、1つ1つの話は謎めいていつつも、そこで描かれる罪人の心情はどこか切なく、何か共感を持てる不思議な味わいを体験できます。それでいて文章で表現される妖しさが、香港ゴシックの世界観にマッチする。
式神で集められる物語は30以上を目標にしているとのことで、非常に楽しみなところです。店主たちが活躍する本編(という書き方は適切でないかもしれませんが)も期待が持てる印象で、総じてクリエイターの作家性を感じられる物語とゲーム内容を楽しめるのではないかと思います。
それと同時に、ゲームプレイとしては触手を育てるという背徳感がたまらない……!
リリースは2020年初頭の予定で、基本無料かつ広告型の収益モデルが計画されているとのこと。ゲーム全体から放たれる“アクの強さ”は、好みが合う人には深々と刺さるはずで、リリースが非常に楽しみな1作です。
(C)Achamoth
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