あなたは知ってた? 徐庶と劉備のドラマチックな出会い【三国志 英傑群像出張版#5-1】

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 三国志に造詣の深い“KOBE鉄人三国志ギャラリー”館長・岡本伸也氏による、三国志コラム。数多くの書籍が存在するなか、“民間伝承”にスポットを当てて紹介しています。



 三国志だけを仕事にしはじめて20数年。三国志(※)の魅力とはなにか? ってのを常に自問自答してきました。

 以前何かのインタビューを受けた時、「三国志(※)とは?」と聞かれて、「三国志は少年漫画そのものだ」と答えたことがあります。

※ここでは三国志演義(三国志物語について)

 強い個性的な主人公たちが出てきて、強い敵と一騎討ちバトルをしたりしながら仲間を増やし、なんとか生き抜いていく。

 更に人知を超えた能力を発揮するもの、神獣に幽霊、怪異現象、仙人や魔法じみたことをするものなど
ファンタジー要素が組み込まれているのも共通するところ。

 “友情、努力、勝利”って要素もある。人気がずっと続くものは、やはり同様の共通要素があるモノだと確信します。

 最近、遊びにきてくれた高校生の男子(彼は三国志演義も正史三国志も知っている感じ)と雑談するうちに「三国志の誰も知らないような秘話とかないんですか?」って聞かれました。

 「うーん、そういう人にはこの民間伝承コラムがぴったりなので見てね」と伝えました。

 三国志演義は一応完結している物語。そういうものに付加要素がないのかなと探したくなる気持ち凄くわかります。最近ではスピンオフものがよく登場しますから、余計そういうものを欲します。

 さて今回のお話の主役は【徐庶(じょしょ)】。

 徐庶って颯爽と登場して劉備の参謀として活躍し、早々に去っていく。彼がいてくれたら蜀は……って思う人多いのではないでしょうか?

 シュミレーションゲームをやっていても彼は非常に使える参謀でした。そんな彼のスピンオフ的な逸話をいくつかご紹介しましょう。

徐庶、主君を見つける

 徐庶は著名な賢者・水鏡(すいきょう)の弟子で、長年「水鏡荘(すいきょうそう)」で学んでいた。長年彼に師事していた水鏡は彼の才能を見抜き、早く良い主君を見つけ活躍できるようにと彼を送り出した。

 徐庶が出発する前、水鏡は「覚えておけ。雨が降らないのに軒先から水が垂れているような場所に行き、故郷を追われ四方を周り世界中に徳を広めている人に出会ったなら、それがあなたの探している主となる人物だ」と特別な指示をした。

 徐庶は水鏡荘を出て、色んな場所を放浪し回ったが、雨は降っていないのに軒先から水が滴り落ちているような場所を見つけることができない。ある夜、徐庶が新野の郊外に着くと、突然大雨が降ってきたため、しかたなく壊れた寺に避難せざるを得なくなった。

 寝てしまって目が覚めて見上げると、空は晴れ渡り、寺の門の上に太陽が高く輝いていた。壊れた寺の軒先からはまだ水が滴り落ちていた。

 水鏡先生の言われた場所はまさにここだ! と思ったが、お寺には誰もいなかった。徐庶は何日か滞在してみることにした。二日経っても誰にも会わず、不安と空腹で体力が残っておらず、寺の扉に寄りかかって眠ってしまった。

 突然、風が吹き込みガチャンと扉が動いた。徐庶がはっと目を覚ますと自分の体を覆う衣があった。周りを見渡しても誰もいない。夢かと思いまた眠りについた。

 朝になり太陽の暑さで目が覚めると、喉が乾き水が飲みたくなった。立ち上がろうとすると、傍らに水の入った瓶が見えた。

 徐庶は驚き周囲を見回したが誰もいない。そこで徐庶は目を閉じて寝たふりをした。そして、ある人物が彼のところまで来ると、籠から米を取り出し彼の横に置くと何も言わずに去っていこうとした。

 徐庶は突然その人物を掴んだ。その人物、両手は膝の上まであり、耳は肩から垂れ下がり、眉も豊かであった。

 男は微笑みながら、「私は賢者を訪ねて寺の前を通りかかりました。あなたが寺の扉に寄りかかって眠っているのを見て、寒くないかと心配になり衣を掛けてあげました」と言う。

 その後、彼と天文、地理、世界情勢から軍事戦略まで、さまざまな話をした。徐庶は彼が博識で向上心があり、気さくで礼儀正しい人物であるのを見て、名前を尋ねた。

 彼は姓を「劉備(りゅうび)」と言い、名を「玄徳(げんとく)」と言った。これを聞いた徐庶は、「郷里を離れて、四方を回り、天下にその徳を広める人物を見つけよ」とうい師の教えを思い浮かんだ。

 この3つの文章の「流」「旋」「徳」は、この人の名前である劉玄徳にぴったりだ!(※中国語の読みが似ている。おそらく水鏡は謎解きで劉備の存在を伝えていたのだ)

 徐庶は驚いて自分の名を名乗り、劉備に仕えることとなった。劉備は徐庶が非常に優秀な人物であることをすでに見抜いており、彼が水鏡の生徒であることを知っていた。徐庶を軍事顧問(軍師)として新野に招聘することを喜んだ。

 三国志演義では徐庶の登場と劉備との出会いは各地を回って主君を探しており、水鏡に「劉表はいまいちな人物でした。」と伝え、水鏡はもっと近くにいい人物がいるではないかと告げる。

 そして、新野で詩を歌って劉備の気をひき劉備と知り合いになり仕官する。とあっさりしていますが、今回の話はロマンチックではありませんか?

 次回も徐庶のお話を続けます。

三国志交流会「桃園の智会」報告

 5月7日に新規で立ち上げた三国志交流会「桃園の智会」を開催しました。基本的に”三国志についてドストレートに語り合う”という事をテーマにした会です。

 参加者さんにこちらからさまざまな質問を投げかけていき、一人一言ずつ語っていくという手法。結果、今回1時間オーバーするほど盛り上がりました。ご参加の皆様ありがとうございました。

 20数年ファン交流会をどうやってやるか試行錯誤してきました。数々の名前と内容で交流会をしてきましたが、今回テーマを設けて三国志を”参加者みんなが万遍なく語る”というのがすごく上手くいった気がします。今後も続けていきたい!

 私は三国志飲み会みたいなのは苦手です。話上手な人がひたすらしゃべるみたいになり、口下手で恥ずかしがり屋の私みたいな人間はなにも話せず隅で食べて帰るだけになりがち。聴きたくない話をだらだら聞かされるもの辛いし。

 また主催者側だけが話すのを聞くだけのものは交流とは思えない。

 三国志の好きなジャンルや知識もあまりとわず、話が苦手な人でも満遍なく発言できる、質問以上の答えはないので簡潔にいえるという工夫をしました。

 同感してくれる人にこそ来てほしい会です。GWは今後必ずやるとして不定期でもやっていきたいと思います!

 私にはまだ誰にもいってない「長年の三国志の夢」があります!

 それは県外全国を行脚して三国志ファンと交流していくこと。

 単発では関西、中国、関東を中心にいろいろさせてもらってますが、もっと離れたところを県ごとに回って語りあうというものがしたいのです。神戸に来れない人もいるでしょうし。

 昔はイベントとして色んな催し物を立てて実施! とか大きなことを思ってましたがなかなか実現ハードルが高い。

 いまは車一台に少しの三国志グッズを持ち込んで公民館でも、誰かのお家でも、お店でもいいので場所を用意して出かけていって、地元三国志ファンたちと語りあって回りたいなと。

 方法については今回うまくいった「桃園の智会」のパッケージを持ち込みたい!

 ただ、一応趣味ではなく仕事にしているので交通費など、損のでないようにはしたいところ。そうでないと継続できないので。受け入れてくれる所があれば少しずつやっていきたいです!


岡本伸也:英傑群像代表。「KOBE鉄人三国志ギャラリー」館長。元「KOBE三国志ガーデン」館長。三国志や古代中華系のお仕事で20年以上活動中。三国志雑誌・コラム等執筆。三国志エンタメサイトや三国志グッズを取り扱うサイトを運営。「三国志祭」などイベント企画。漫画家「横山光輝」氏の故郷&関帝廟(関羽を祀る)のある神戸で町おこし活動中!



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