名探偵徐庶の事件簿。蛙神殺人事件!【三国志 英傑群像出張版#5-2】

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 三国志に造詣の深い“KOBE鉄人三国志ギャラリー”館長・岡本伸也氏による、三国志コラム。数多くの書籍が存在するなか、“民間伝承”にスポットを当てて紹介しています。



 今回は、推理小説のような徐庶のお話です。

 正史三国志に徐庶は若いころ人を殺し逃げる生活をします。曹操もそんな話がある。三国志演義では、関羽にもそういう話がある。

 三人とも若いころは殺気立っていたわけですね。時代も価値観も違う時代でしたから、今の縮尺では測れないですが、なにか三人がひかれあう理由がそこにある気もしています。

名探偵・徐庶の事件簿 「蛙神殺人事件」

 こちらは、既に曹操配下になってからのお話です。

 ある時、徐庶は赴任地から母を訪ねて帰る途中、安徽省を通りかかった。ふと友人がそこの役人であることを思い出し、寄り道をしたことがある。 その道すがら、犯人の手配書をたくさん目にした。

 半月前に宝石商が殺され、その死体が石に縛られて川底に沈んでいたことが分かったのだ。その死体の上にカエルが集まってきたので、注目をあびて発見されたのだ。

 あまりに奇怪な話だったので、カエルの神が警告を発して代弁させたのだという噂が広がっていた。宝石商はある村の外で死体で発見され、その村の出身者であった。

 その村の役人は、徐庶の親友である陳璋(ちんしょう)といった。徐庶の訪問を聞いた彼は大喜びで、「この事件は解決できた!」と喜んだ。

 早速、事件解決を依頼された徐庶は、翌日、手配書を全て破り捨てるように命じた。何日も調査を続けても結果が出ず、故人を引き取る親族もいないと役所は故人を埋葬するしかない。

 そして半月が過ぎたが、徐庶は毎日囲碁をしたり、陳璋と酒を飲んだりして、殺人事件のことを忘れたかのように過ごしていた。

 陳璋は少し焦った。「徐庶、人の命がかかっているのに、本当にこのまま放っておくつもりなのか?」と言うと、徐庶はかすかに微笑んで、陳璋に耳打ちした。

 それを聞いた陳璋は笑って部下を呼ぶと「至急、沈没死体事件を審理して、今日中に犯人を逮捕する」と伝令した。

 そして、【大小2つの木箱を用意させ、小さい方に黒い漆(うるし)を塗り、大きい箱の中に入れた。】

 彼と徐庶は部下を率いて、村人すべて川岸に集めた。半月以上も経ってから、再び審理が行われると聞いて、みんな様子を見にやってきた。

 奇妙な裁判が始まった。陳璋は香炉を立て、音楽を奏で、カエルの神を招く儀式を行った。儀式が終わると、川で捕まえたカエルを用意した小さな木箱に入れて蓋を閉める。

 「昨夜、カエルの神が私に神託をくれた。悪人を見逃さず、犯人を探し出して死者に報いを与えるのだ。さあ皆、手を洗い大きな箱の穴から手を入れて、中にある小さな箱の上に手を置くのだ。もしカエルが鳴き続ければその人間が犯人だ。」と陳璋が言う。

 一斉に観客が静まり返り、一人一人並んで箱の中に手を入れた。不思議なことに全員が手を置いたがカエルはまったく鳴かなかった。

 その中に殺人犯はいなかったのか?! カエルは神ではなかったのか?!

 みんな好き勝手なことを言っていたが、突然、陳璋が叫んだ「犯人を捕まえろ!」いきなり兵士達が人ごみの中から30代くらいの男性を引っ張り出した。彼は自分は無実だと叫ぶ。

 その後、短時間のうちに、兵士はこの男の家から宝石箱を数個押収した。完全に犯行がバレたのを見て、男は観念して地面に倒れこんだ。ついに犯人が見つかったのだ。

 しかし、それはカエルの神の力によるものではない。徐庶の陳璋にした助言が解決につながったのだ。

 徐庶の推理はこうだ。
・この村が周辺の村から遠く離れている
・死んだ宝石商がこの村の人間だった
・死んだ宝石商がこの村の外で発見された
これらのことから、犯人はこの村の人間に違いないと考えた。

 犯人を麻痺させるために、わざと手配書を破り捨て、油断させて急遽事件を解決させる罠を仕掛けたのだ。

 箱のトリックはこうだ! 犯人は怖がってあえて小箱に触れないようにするので、犯人だけは黒い漆が手につかない。その為、犯人を簡単に捕まえられると徐庶は考えたのだ。

 これをのちに聞いた曹操も、「徐庶は本当に奇跡の人だ!」といったのだとか。

 徐庶探偵すごいですね!

 そういえば数年前に日清食品が漫画にした「名探偵 呂布」ってのがありました。「名探偵 徐庶」として漫画が思わず見たくなるストーリーではありませんか?

 私は続編がみたい! と思ってしまいました。もう民間伝承にはないので、作り足していくしかないですが……。

 誰か一緒に漫画つくりましょう!

 さて、次回も徐庶のお話。今月は徐庶祭りです。


岡本伸也:英傑群像代表。「KOBE鉄人三国志ギャラリー」館長。元「KOBE三国志ガーデン」館長。三国志や古代中華系のお仕事で20年以上活動中。三国志雑誌・コラム等執筆。三国志エンタメサイトや三国志グッズを取り扱うサイトを運営。「三国志祭」などイベント企画。漫画家「横山光輝」氏の故郷&関帝廟(関羽を祀る)のある神戸で町おこし活動中!



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