バトルアニメ熱すぎ。『東方』+精神コマンドありのSRPG『幻想少女大戦』レビュー【電撃インディー#215】

ophion
公開日時

 電撃オンラインが注目するインディーゲームを紹介する電撃インディー。今回は3月31日にNintendo Switchで発売された『東方Project』ファンゲームのシミュレーションRPG『幻想少女大戦 - DREAM OF THE STRAY DREAMER』のレビューをお届けします。

 なお、電撃オンラインは、尖っていてオリジナリティがあったり、作り手が作りたいゲームを形にしていたりと、インディースピリットを感じるゲームをインディーゲームと呼び、愛を持ってプッシュしていきます!

クセがないシステムをていねいに解説してくれる遊びやすさ

 本作は、『東方Project』のキャラクターが登場するシミュレーションRPG。味方陣営のユニットすべての移動や攻撃を行うと、敵陣営のユニットすべてが行動する、陣営ごとのターン制を採用しています。

 そして、キャラクターには各地形に対する適正があり、各キャラクターには一時的な強化効果などをもたらす“精神コマンド”があり……と、わかる人にはスムーズに遊べるシステムです。

 と言っても、わかる人を前提にしたゲームにはなっておらず、システムの解説はかなりていねいです。

 シナリオ中で各システムの解説が入るだけでなく、会話イベントで“精神コマンド”の活用例にも触れられており、新しいキャラクターが加入した際に、何をチェックすると特徴が理解できるのかという導線もしっかりしています。

 そして、“弾幕”という特性を持つ敵の近くでは味方の回避率や防御力が下がるというのもおもしろいところ。弾幕が激しい敵からは被弾しやすい、『東方Project』原作をはじめとしたシューティングゲームでは当たり前の話ですよね。

 そんな弾幕の激しさを弾が多い状況=回避がしにくいと解釈して取り込んでいるのは、ゲームとしてストレスになりにくくも“弾幕”を持つキャラクターの強敵感を出せるよい落とし込み方だと感じます。

 さらに、“弾幕”の効果は味方を“低速”という状態にすると移動できるマスが減る代わりに無効化されるという対処方法が用意。

 ある程度の脳内補完も入りますが、弾幕の激しさに応じて高速と低速を切り替えながら立ち回り、最後にボスと戦うという作りはシューティングである『東方Project』をていねいにシミュレーションRPGに置き換えているという印象を受けました。

二次創作でありながら、自然に感じられる物語

 そんな本作の物語の序盤は『東方紅魔郷』から始まる、いわゆる“Win版”のストーリーをアレンジした展開。

 幻想郷に正体不明の紅い霧が発生して……と、原作ファンなら原因も黒幕もわかりきっている話から始まるのですが、原作と大きく違うのがさまざまなキャラクターが最初から幻想郷や地底、旧地獄など『東方Project』の世界にいることです。

 ここでちょっと考えてほしいところが、魂魄妖夢をはじめとした多くのキャラクターがいつ幻想郷に現れたか、ということ。

 メタ的に見ると魂魄妖夢は『東方妖々夢』で、上白沢慧音なら『東方永夜抄』で登場したという答えになるでしょう。

 ただ、一連の『東方Project』の設定を考えると妖夢も慧音も『東方紅魔郷』の時点で幻想郷にはいたものの、霊夢や異変を中心とした物語にはかかわっていなかったと考えられます。

 例えば慧音は『紅魔郷』や『妖々夢』の時点では(メタ的には)登場していないキャラクター。ですが、慧音の人間とのかかわり合い方を考えると霧の影響を受けない地域を探したり、暖を取る手段を用意したりと、なにかしらの形で人間のために動いたと考えるのが自然です。

 また、稗田阿求や本居小鈴がこれらの異変で直接被害を受けていたとしてもおかしくはないでしょう。

 そういった時間軸は『紅魔郷』から始まりつつも、後の作品のキャラクターまで最初から登場しているのが本作の世界。二次創作である以上ifであり新鮮ではあるのですが、その一方で自然なものに受け取れます。

 そして、この自然なifストーリーがifらしく原作とは離れていくのも、また『紅魔郷』時点からキャラクターがいるという点がキーになってきます。

 例えば慧音が『紅魔郷』時点で霊夢と出会っていたら『永夜抄』時点では旧知の仲。人間の里を“なかったことにする”必要はなくなりますよね。

 ほかのキャラクターも異変にかかわる以前に霊夢や魔理沙と出会っていれば、異変に対するスタンスも変わってきます。もちろんシミュレーションRPGですから会話イベントもしっかり用意されているので、原作とは異なるスタンスに心変わりする尺も十分。

 “『紅魔郷』時点からいる”という自然でありながら大胆な違いを土台にオリジナルストーリーになっていくという展開は、原作を知っているといつどんな形で裏切ってくれるのかとワクワクしました。

 原作をなぞるところからスタートする自然なifストーリーとクセの少ないシステムを持つ本作は、『東方Project』でシミュレーションRPGという要素に魅かれた人ならきっと満足できるタイトルでしょう。

『幻想少女大戦 - DREAM OF THE STRAY DREAMER -』PV


©︎上海アリス幻樂団 ©︎さんぼん堂
Published by Phoenixx Inc.

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

関連する記事一覧はこちら