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『夜廻三』レビュー。絵本のような夜の街を廻る、切なくて郷愁的、懐かしいのに新しいシリーズ最新作

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 4月21日に日本一ソフトウェアから発売予定の夜道探索アクション『夜廻三』のレビュー記事をお届けします。

 最初に、これまでに『夜廻』『深夜廻』を遊んでいて、本シリーズのことが好きな人に向けてお伝えします。買ってソンはありません。これ以降はストーリーのネタバレには触れませんが、システム面の変更点がどうプレイ体験に変化をもたらしたかなどには触れることになりますので、読まなくても大丈夫です(笑)。

 次に、キービジュアルなどの各種イラストや、ゲームの雰囲気に惹かれて気になっている方にお伝えします。本作のジャンルは夜道探索アクションということもあり、一部のシーンにおいて、少し厳しめのアクション操作が求められる箇所がありますが、基本的には知識があればそこまでシビアな場面はありません。

 どちらかというと、和風ホラーな雰囲気を出すための演出としてアクション要素が盛り込まれていますので、アクションが苦手な方も、頑張ればクリアまで到達できるかと思います。ぜひ遊んでみてください。

  • ▲絵や雰囲気が好きなら、遊んでみる価値あり。

 …と書くだけでは、ちょっとライターとして職務を果たせていないと思いますので、以降はクリアまで触ってみたプレイインプレッションをお届けします。繰り返しになりますが、ストーリー的なネタバレはお伝えしませんが、システムの解説を含む以上、体験面で少々のネタバレを含んでしまうことはご了承いただけますと幸いです。

これこそまさに『夜廻』。私はまたこの街に帰ってきてしまった

 誤解なきよう改めてお伝えしますが、もちろん本作は『夜廻』とも『深夜廻』とも違う街が舞台で、新要素も盛り込まれています。しかし夜道を歩く心細さ、子どもの足ならではの街の広さ、自分の思い出と紐付いてふと思い起こしてしまう夏の湿っぽさや匂い……そういった感覚を味わえるのはまさに『夜廻』ならではの魅力。プレイを始めてすぐに「そうそう、『夜廻』といえばコレですよね」と感じました。

 本作では思い出を探しに夜の街を探索していくのですが、はじめから探索できる範囲がかなり広くなっています。オープンワールドのゲームでは、あっちにフラフラこっちにフラフラ……とマップを埋めていくのが好きな自分としては、この作りは大歓迎! “夜道探索”感が増したように思いますし、ボリュームも過去最高にあったように感じました。

  • ▲ロケーションやそれに関連するエピソード、ギミックも多彩でワンパターンにならないように工夫されている印象。

 また、昨今のオープンワールドと言えば、イベント後に目的地が地図上に表示されていてどこに行けばいいか一目瞭然、というパターンも多いですが、本作は探索に主が置かれているため、そんなことはありません。街のあちこちで見られる近所の地図や、自分が歩いて埋めた地図を頼りに「次はここに行ってみようか」などと自分で考えて探索する、ゲームらしい楽しみは損なわれておらず、この点もうれしい。

 では「次はどこに行けばいいのかわかりにくいのでは……」と思われるかもしれませんが、本作はアイテムの入手によって探索できるようになる場所も多いです。また、街の各地にあるお地蔵さんは一度発見するとファストトラベルできるようになるので、そこまで大変だとも感じませんでした。

  • ▲お地蔵さんはセーブポイントの役割を果たす大事な存在。夜道を歩くときは常にお地蔵さんがないか探してしまいます。

 強いて言うなら、探索エリアが開放されるたびに、見落としがないかキッチリ埋めていくのが重要……といったところでしょうか。自分の場合は若干迷いましたが、地図を見直して空いている部分に行ったら思い出に関連するアイテムが残っていた……というパターンで、最終的に街の地図が全部埋まりました。

 道に落ちているものも多いので収集物コンプリートを目指す楽しみもあり、探索がはかどらなくてモヤモヤした、という印象はあまり受けませんでしたね。もちろん、夜の街にあるのは落とし物だけではないのですが……。

  • ▲落とし物の数も今回はかなり多いです。

お化けのこわさは、過去作を遊んだ人こそ改めて感じるかも?

 夜の街にはお化けがいます。お化けに捕まってしまうと……まぁ大変なことになってしまうのですが、主人公にはお化けと戦って勝つ、みたいなことはできません。逃げる、あしらう、やり過ごす、というのが基本です。

  • ▲逃げる際は画面下部に表示されているスタミナに注意しつつ走り回ることに。

 本作には目をつぶるという特徴的なアクションがあり、基本的には目をつぶるとお化けがこちらを見失い、逃げるチャンスが生まれます。これは過去作における茂みや看板に隠れる、という行為に相当するアクションなのですが、これまでは隠れている間じっとドキドキお化けが去るのを待っていたところが、今回はドキドキしながら横をすり抜ける、という形になっています。

 つまりお化けは目を閉じても消えるわけではないので、うっかりぶつかると……また大変なことになってしまうのです。「あ~、ヤバいな~」と思わずにはいられない、ホラーらしい背中にイヤな汗をかく場面は過去作よりも多かったように思います。

 ちなみに、本作では茂みや看板に隠れることはできません。過去作を通じて「もうお化けの対処なんて知ってるし、怖くないよ」と思っている方も、意外と戸惑うかもしれません(自分は過去作ではお化けから走って逃げるタイプでしたが、慣れるまで少し戸惑う場面もありました)。ぜひ本作でお化けの怖さを味わい直してください。

 また、これは過去作でもそうだったのですが、お化けの行動ロジックは意外とシンプルで、「お化けの世界でも無秩序に暴れまわるタイプのヤツは意外といなくて、一定のルールに従ってるんだな」と思わせる作りになっているのは、ゲームらしくもあり現実に聞くお化けの話とも重なるようで、おもしろかったですね。

 慣れてくるとお化けをじっくり眺める余裕もできて「コイツ変わってて愛嬌あるな~」なんて思ったり。こうなると本作をホラーゲームとしては既に楽しめていない領域に突入している気もしますが、捕まってしまうと大変なことになるのは変わらないので(笑)。

物語も…『夜廻』最新作だ!

 ストーリーについては何を言ってもネタバレになり、しかもホラーゲームということもあって余計にあまり書けないので……PVを見て受けた印象でご判断ください、というのがギリギリでしょうか。個人的にはストーリーも概ね『夜廻』らしかったと思います。

  • ▲主人公が飼っているペットがどのように物語に絡んでくるのか、シリーズ経験者の方は気が気でないと思います。ぜひゲームを遊んで確かめてください。

 内容に触れない部分で言うと、本作では主人公の外見を変えられるほかにもカスタム要素があるので、より感情移入はしやすくなっているかもしれません。そのぶん、前作『深夜廻』の主人公のユイとハルのような明確なキャラクター性は薄めで、プレイヤーが補完する作りなので、物語を追うというよりは体験に近い、ゲームらしいストーリーテリングに方向性が変わっている、と言えるでしょう。

  • ▲主人公の隣にいるおねえさんは物語上重要なキャラクター。

 最後に1つ不満点になるのですが……冒頭にも書きましたが、本作のアクション要素は基本的にわかってしまうと簡単です。が、少し厳しめのアクション操作をノーミスで行わねばならない箇所がいくつかあります。

 これは過去作にもあった不満点でもあるのですが、要するに「どうすればいいかわかったけど、ここから再開か……!」という場面がある、ということ。正直、この点は今までで一番キツかったかもしれないです(笑)。このあたりのさじ加減はホラー的な恐怖とも連動していると思うので、調整も難しかったんだろうなぁとは思うのですが。

 とはいえ、本作のPVやイラストを見て雰囲気に惹かれた方は、その点だけを見て敬遠するにはもったいないと言える、それぐらい独自の世界ができあがっているゲームです。現在PS Storeやニンテンドーeショップで、無料で体験版が配信されているので、まずはそれを遊んでみるのもいいでしょう。この体験版は製品版とは内容が異なるので、製品版を買うつもりの方もぜひ遊んでみてください。

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