『Ghostwire: Tokyo』レビュー&感想。ホラー要素+ヒーローバディ物!? 異界の渋谷探索が楽し過ぎる
- 文
- まさん
- 公開日時
ベセスダ・ソフトワークスより発売中の、PS5/PC(Steam)向け箱庭型アクションアドベンチャー『ゴーストワイヤー トウキョウ(Ghostwire: Tokyo)』のレビューをお届けします。
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本作は、『サイコブレイク』などのホラーアドベンチャーを手がけた三上真司氏が率いるTango Gameworksの最新作。人々が一瞬にして消失してしまった渋谷を舞台に、異能の力を手にした主人公がゴーストハントを行うJホラーのような展開と、緻密に作り込まれた渋谷の探索が合わさった次世代機ならではの体験が楽しめます。
印を結んで炎や水の力を飛ばす異能バトルが印象に残りがちですが、実は静かで熱い物語も魅力的。緻密に作り込まれた都会の風景は息をのむほどに美しく、人が消えた大都会・東京という本作ならではのシチュエーションによって、それがことさら強調されています。
ゲームでしか見られない異界と化した東京を彷徨いながら、妖怪や幽霊と色々なやり取りをしたり、悪霊や怪異を退治したりしていく――。それが本筋ではありますが、細かく作り込まれた渋谷を歩くだけでも、ほかにない感覚を味わえる作品です。
また、大きな見どころとしてはメインストーリーを彩る演出も挙げられます。ホラーゲームとしても恐怖感を煽るシーンの表現も巧み。プレイヤーの移動に合わせてオカルトチックに切り替わっていく背景は表現として素晴らしく、恐ろしさよりも演出としての驚きが勝るかもしれません。今回はそんな本作の魅力的なポイントについて、ネタバレは極力避けながら語っていきたいと思います。
夜の渋谷でゴーストハント! ホラーかと思いきや、遊んでみると退魔師になりきれるヒーローバディ物だった!?
物語の舞台は、現代の東京・渋谷。般若の面をつけた謎の人物によって、人々が衣服だけを残して消失してしまう事件に巻き込まれた主人公・伊月暁人(いづきあきと)は、KKと名乗る謎の男に憑依されて一命をとりとめます。般若に攫われてしまった妹・麻里を助けるため、暁人はKKと協力。KKが持つ異能力を使って妖怪や幽霊と色々なやり取りをしたり、悪霊や怪異を退治しながら、手がかりを求めて渋谷中を駆け回ることに……。
本作は、事前の情報や見た目の雰囲気から人を選ぶ恐ろしいホラーゲームのように思っている人もいそうですが、じつはそれだけではありませんでした。ベースはホラーなので、苦手な人には怖い表現もあるのですが、実際に遊んでみると少年漫画のように前向きで熱く、怖さよりもカッコ良さが際立っています。……そう、これはまるで怪異と戦う特撮ヒーローのようなバディ物です。
悪霊や怪異のおどろおどろしい描写やホラー感のある演出はあるものの、相棒とともに事件を解決していくサブミッションはストレートで王道。何よりも、主人公とKKの関係がまぶしいです。2人とも不快感のない人物で、正義感と良識を持った存在。だからこそ、身勝手な敵との対比が光っています。
倫理観もしっかりしていて、家族のために奔走する真っ直ぐな主人公・暁人は好感度が高め。遊ぶ前は、プレイヤーに行動がゆだねられるタイプで、そんなに個性はないのかな? と思っていたので、自分にとってはうれしい不意打ちでした。そして、発言は捻くれているものの、その根底には確かな正義感と信念があり、暁人との相棒的な関係を築いていく様子が熱いKKも好きなキャラクター。この2人(※KKは憑依しているので実質は暁人1人)を操作しながら、雨の渋谷を駆け回って悪霊退治していくというシチュエーションだけでワクワクします。
さまざまな要素やシステムがありますが、このゲームの魅力は端的に言っても“ゴーストハンターなりきりゲーム”。戦闘はFPS(一人称視点のシューター)ですが、銃を撃ちまくってシビアなバランスのバトルを強制するものではありません。あくまでも、我々が気持ち良く“退魔師ごっこ”をするためのフレーバー。印を結んで風や水の力を飛ばしたり、弓を撃って敵を仕留めたり、お札で痺れさせたり……。自分のなかから語りかけてくる相棒と一緒に、怪異をバシバシ退治していく。このカッコ良さを体験したい人にこそオススメです。私は、こうした和製ヒーロー感のあるなりきりが大好きなので最高でした。
バトル部分を見てみると、ノーマルの難易度でもバランス自体は優しめ。力押しでどうにか進められる印象です。コンビニや自販機で買った回復アイテム(食べ物)をモリモリ食べつつ、そこら中に出現している異界のオブジェクトを破壊して異能力のエネルギー(弾数のリロード)を補給。多勢に無勢な状況をアイテムと補給でゴリゴリ覆していけます。ヘッドショットなどもとくに意識する必要はありません。弓矢じゃ、困ったら弓矢を撃つのじゃ! 弓矢がものすごく強いので優先的に買い込んでおくのがオススメ。普通の敵なら1、2発で成仏しちゃいます。
手ごたえのあるFPS的なバトルを求める人は難易度を上げて遊ぶのもアリですが、個人的にはあくまでも幽霊退治のなり切りを楽しむくらいでいいかもな~と思っています。緻密な渋谷を探索しながら“退魔師ヒーロー遊び”ができる難易度NORMALで十分。苦手な人はEASYでも良いかもしれません。能力を駆使してカッコよく魔を祓う。筆者としてはそのシチュエーションがぶっ刺さりまくりですから。
メインストーリーでは強大な敵との対決もありますが、サブイベントではほぼボス戦はありません。妖怪の木霊を敵の集団から防衛するミッションがあったり、印を結んで悪霊を祓ったりと、強敵との戦いだけではないのも好きなところ。悪霊や怪異に対して印を結んで祓う。これですよ、これ! 悪霊や怪異以外にも封印されたドアを開けたり、苦しんでいる霊に印を結んで助けてあげたり、バリエーション豊富です。
印とは言っても、アナログスティックを使って一筆書きをなぞるだけなので簡単。ですが、自分でやることに意義があるのです。自分の手で印を結ぶ。この動作が大事なんですよ! 面倒になってきたらKKに任せるコマンドもありますが、やはり自分の手で1つ1つ印を結び、悪霊や怪異を成仏させる過程を楽しんでほしいですね。退魔師ロールプレイを楽しめるのが本作の良さですし、こうした大作で日本の妖怪や悪霊退治をテーマにした作品は珍しいもの。せっかくなので、気持ち良くなりきっちゃいましょう!
小物の配置からビルまでこだわった大都会と異界の風景
悪霊退治のなりきりも本作の魅力ですが、やはりゲームとして推していきたいのは渋谷というロケーション。人が衣服だけを残して消えた非日常と日常が入り混ざった光景は、歩いているだけでもゾクゾクしちゃいます。知っている場所なのに知らない、現実では決して見られない光景。猫又がコンビニや屋台を運営し、狸や犬の気持ちを聞いて回りながら、人のいない都会を歩く。作り込みがリアルなのでウォーキングシミュレータのような側面もあり、東京を見慣れている人はもちろん、地方在住の人は観光気分で遊べるはず。
美しい異界をただただ渡り歩くのが楽しいですし、現実ではできないビルの屋上から違うビルへの飛び移りも快感。空を飛んでいる天狗に照準を合わせてグラップルすれば、高層ビルの上までひとっ飛び! レベルを上げてスキルポイントをためていけば、最終的にはいつでも天狗を呼び出せるようになり、探索がより楽しくなります。
探索することでサブミッションをこなせますし、街中にいる妖怪から勾玉を吸収すれば、より便利なスキルを解禁できます。渋谷のロケーションを歩き回ることが損にならないのもうれしい。メインストーリーを駆け抜けるとサクッと10時間程度で終わるゲームですが、じっくり街を歩き回ることに意味があるので探索しながら遊ぶことをオススメします。
サブミッションで手に入る報酬に、コスチュームやカメラフィルターと言った攻略には無関係なものが多いのも特徴。やはり、慌てて攻略する作品ではなく、異界の風景を撮影しながら巡る疑似旅行的な作品としても作られているのでしょう。
ほかには、都市伝説で有名な場所なども登場します。きさらぎ駅を撮影できるような作品も本作くらいではないでしょうか。もちろん、きさらぎ駅でも自撮りできちゃいます。主人公たちの度胸がスゴイ。新しいシチュエーションを訪れたら、思う存分撮影しましょう。
サブミッションや寄り道の魅力が大きな作品ではありますが、メインストーリー自体もしっかりしています。何度も言っていますが、脚本はもちろん演出が素晴らしい。ゲームというインタラクティブ性と映像ならではの表現が合わさって、ホラー演出が出ると逆にうれしくなっちゃうんですよ。スゴイ! カッコイイ! コワイ(ハイテンション)!! 歩きながら切り替わっていく背景から、天地がひっくり返る部屋に至るまで、空間を自在に使った演出には感嘆の声が上がるほどです。
アイテムや妖怪の細かい解説もあり、本作は細部をきっちり作り込んでいるところにこそ良さがあります。細かいコダワリなのですが、あえてそこをサラッと流しているのもにくい。だからこそ、リアリティが感じられますし、探索し始めるとじっくり遊びたくなってしまうのです。ボリュームとしては、すべて遊んでも20~30時間程度で終わる程度でちょうどよい長さですが、体験としては非常に濃密。今のハードならではの表現で描かれるリアルがあり、リアリティがあり、それでいて絶対に現実ではない異界の渋谷。ゴールデンウィークは、家で異界に出かけてみるのも楽しいですよ。
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