本日発売『春ゆきてレトロチカ』名探偵プレイか、総当たりか。あらゆる“ミステリ要素”が楽しめる良作【ADVレビュー】
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古今東西のミステリ・サスペンス・ホラー系コンテンツを幅広く紹介するコーナー“まり蔵探偵事務所(まり探)”。
本コーナーで、スクウェア・エニックスから本日5月12日に発売される(※Steam版は5月13日発売)PS5/PS4/Nintedo Switch/PC(Steam)用ソフト『春ゆきてレトロチカ』の先行レビューを前後編の2回に分けて掲載。今回は、その後編をお届けします!(→前編はこちら)
『春ゆきてレトロチカ』は、実写で描かれる新本格ミステリアドベンチャーゲームです。
100年にわたって不可解な死が続く四十間(しじま)一族。この一族の元を訪れたミステリ作家の河々見(かがみ)はるかは、“不老の果実”をめぐり時を越えて起きた4つの殺人事件に挑むことになります。
プレイヤーは、河々見はるかの“思考空間”の中で、[謎]と集めた[手がかり]をパズルのように組み合わせ、[仮説]を導き出して推理を展開します。
レビューの前編では、まり蔵探偵事務所の所長・まり蔵と電撃オンラインの編集・kbjが、本作の序盤のストーリー(プロローグ+第一章)と推理に関するシステムについて紹介しました。
後編の今回は、まり蔵と電撃オンラインの編集・そみんが、第二章から第四章までのストーリーについて言及します。極力ネタバレに配慮していますが、一部ストーリーやトリックについて触れる部分がありますので、ご注意ください。
『春ゆきてレトロチカ』ストーリー
令和4年(2022年)、春。ミステリ小説家の河々見(かがみ)はるかは、科学者の四十間(しじま)永司の依頼を受け、編集者の山瀬明里とともに、富士山麓にある永司の実家、四十間邸を訪れる。
永司の依頼は、桜の下で見つかった白骨死体の正体究明と、四十間邸に眠ると言われる“不老の果実”の捜索。大真面目に語る永司と、半信半疑のはるか。そんなはるかに明里が一冊の古書を差し出す。
そこに掲載されていたのは永司の先祖、四十間佳乃が書いた”不老の果実”をめぐる、百年前のある物語。それは小説の体裁をとった、実際に起こった殺人事件だという。
古書を読み終え、事件の謎を解き明かしたのも束の間。はるかの目の前で四十間家を揺るがす殺人事件が起きた……。
第一章「うろつく木乃伊」(1922年春)
デモクラシー。人が生きるための自由と平等と権利。今を生きる命の花は、死者の骸の上に咲いている──。そんな時代の東京市内某所で、不老にまつわる品を持ち寄った”個人売買会”が開催されようとしていた。
「ミステリと言う勿れ」「元彼の遺言状」と、最近若い頃よりも月9ドラマを見ているまり蔵探偵事務所の所長のまり蔵です!
「マイファミリー」や「探偵が早すぎる 春のトリック返し祭り」などおもしろいミステリドラマが多くて見るのが大変。電撃オンラインの編集・そみんです!
ミステリ系ドラマの豊作を喜びつつ、個人的にアニメ「虚構推理」2期が楽しみなんですよね。公開延期しちゃいましたが……。
まあ中止じゃなくてよかったですよね。僕も2期楽しみにしてます。雪女が出てくるし。
「虚構推理」はアニメやマンガもおもしろいけど、原作小説もおもしろいんですよね。すべてのメディアミックスがよい出来という。
「虚構推理」の原作を執筆している城平京さんは「月刊少年ガンガン」で連載されていた漫画「スパイラル~推理の絆~」の原作者として知っている人も多いんじゃないかと。
城平京さんは「名探偵に薔薇を(創元推理文庫)」が好きだったなあ。
「虚構推理」2期は短編の構成になりそうなので、テンポよく各エピソードが楽しめそうで、そこも期待しているんですよね。
今回紹介する実写の本格ミステリADV『春ゆきてレトロチカ』も、各話のエピソードがかなりテンポよく進みましたよね。
確かに。1話1話が2時間サスペンスドラマみたいで。いや、いうほど短くないか。3時間ドラマ×数本のボリュームですかね。
そうですな、個人的にシリーズものの映画を何本か見ている気分になりました。
確かに。ドラマだと、もうちょっと恋愛とかのエピソードに重きが置かれるけど……浮いた話はほぼなかったですね(笑)。
そこ潔かったですよね。物語というか、推理に比重を置いているんだなーって。
では、各話について感想を語りますか。ネタバレに気を付けつつ!
そうですね、ネタバレに気を付けつつ!
探偵役・梶裕貴さんのインパクトがとにかくすごい第二章
第二章「論理の路はつながらない」(2022年)
2022年の春。代替わりの行事“桜参り”のため、富士山の麓にある四十間邸に集う四十間一家。100年にわたり不可解な死が続くこの一族の元に、新たな悲劇が訪れようとしていた──。
第二章はとにかく梶裕貴さんのインパクトが強すぎましたね。
梶さん、最初はPVのナレーションをやられていましたよね。
そうそう、「ナレーションだけでなく、実写でも出てくるんかーい!」って。しかも探偵役。
あの探偵、いい意味でキザな名探偵、悪い意味でうさんくさくてよかったですよね(笑)。
本作の世界観って横溝正史作品っぽいなって思ってるんですけど、梶さんの探偵は明智小五郎っぽいなって。江戸川乱歩作品に出てきそう。
スタイリッシュな感じでしたな。話的には、赤椿が現れるところに死者が出る――という部分がなんというか印象的で。
赤椿みたいな姿の見えないナニカってワクワクしますよね。
1人なのか複数なのか。そもそも存在するのかしないのか。
暗い背景に鮮やかな赤がまた印象的で。本作はこういう視覚に訴える演出も随所にあって、目でも楽しめました。
第三章は桜庭ななみさんのまた違った雰囲気の演技に注目!
第三章「巡情エレジー」(1972年)
日本の高度経済成長期、あらゆる街が栄えて未来への希望が溢れる時代。いつまでも変わらない美貌と華麗な歌声を持ち、ナイトクラブ赤椿で人々を魅了する“不老の歌姫”。彼女が日夜スポットライトを浴びるステージで、ある事件が起きる──。
このゲーム、現代と過去の四十間邸だけの話だと思っていたら、第三章でナイトクラブが舞台になってビックリしました。昭和レトロ感がすごい。
第三章はちょっと異色でしたね。この時代の雰囲気大好きだけど。
桜庭ななみさんがまた違った雰囲気の演技で、その点でもビックリしました。
桜庭ななみさん、基本的に謎を解く役回りですけど、第三章は普通にナイトクラブの従業員って役でしたもんね。
自分の中で、桜庭ななみさんのキュートな演技が『春ゆきてレトロチカ』の『春ゆきてレトロチ』くらいまで占めていると言っても過言ではないと思っているんですが。
突然どうしました? むしろ残りの「カ」がなんなのか気になるぞ。
解決編で間違った仮説を選んだ時のちょっとコミカルな言動はどれもご褒美でしたね。
急に性癖を暴露しましたね。確かに桜庭さんの焦った演技はかわいかったけど。
特にちょっとすねた感じの時の破壊力がやばい。
間違った仮説を選んだとき、他のキャストのツッコミも結構激しいんですよね。バッドエンドルート特有のリアクション、楽しかった。
それが見たくて、「本作にはオカルト要素はないよ」と明言されているのに、あえてオカルトっぽい仮説を選んじゃうという(笑)。
私もつい変な選択肢選んだりしてました。そんなことやってるから、いつまでもクリアできないんですけど……。
『春ゆきてレトロチカ』はあらゆるミステリが楽しめる良作です
第四章「亡失の川」(1922年冬)
個人売買会から半年後──。佳乃は叔父の永山より、四十間一族の伝統行事である灯篭流しに出席せよとの報せを受け取る。それは死者を弔う催しであると同時に、四十間一族の”代替わり”の行事でもあった。
第四章は個人的に大好きな物理トリックが登場したので、かなりテンションが上がりましたよ。
トリック用の小道具がたくさん出てきましたね。タヌキの置物がでてきて、なんか和みました。
仮説もタヌキに関するものはちょっとおちゃらけてておもしろかった。絶対この仮説違うだろうって思ったけど、うっかり選んじゃった……。
そしてバッドエンドへ(笑)。
さっきも話が出ましたけど、オカルト系の仮説もおもしろいの多くてつい選びたくなるんですよね。そもそも不老の実「トキジクノカクノコノミ」っていう存在自体がオカルト臭ぷんぷんだし~。
不老については、単なるオカルトとして切り捨てられず……。
そうなんですよ。永司さんがトキジクについて研究したり、「人間のDNAに~」とか言い出すから!
科学的な論拠も示しながら話が進むから、いろいろと惑われました。
ちなみに、思考空間で[謎]と[手がかり]を組み合わせて[仮説]を作るとき、全部埋めました?
全部埋めてから進めました(笑)。
やっぱりそうですよねー。全部は埋める必要ないって言われても、私も全部埋めましたわ。
本当にパズルを楽しむなら、自分の推理を裏付けるピースだけを埋めて先に進むのがよいんでしょうな。めっちゃ名探偵プレイだけど!
私は総当たり大好き侍なので、ひたすら埋めてましたね。ミステリは総当たりしてなんぼ!
自分はバッドエンド探しを楽しんじゃった部分があって……。もっと真剣勝負をしてバッドエンド=恥くらいの心持で挑むべきだったかなと。
まあ、ミステリゲームにおけるバッドエンド探しは、それはそれで正しいというか(笑)。
本作にはそういう“ミステリゲームならではの楽しみ方”が満載でした。
個人的にこのゲーム、推理部分の難易度の幅広さがすごいなと。それこそ自分の考える仮説だけ立てての名探偵プレイもできれば、総当たりもできるし。
あと本当にわからないときは「ひらめき」というヒントも見ることができるし。
そう、どの[謎]とどの[手がかり]を組み合わせていいのかわからないときは、同じ“模様”を合わせてみるとかね。
各所に抜け道じゃないですけど、救済措置が用意されている。
閉鎖的な思考空間にあの模様じゃないですか……なんか“万華鏡”っぽいなって思ったんですよねー
なるほど。万華鏡か、確かに。
そういう細かい演出も含めて、エモいというか、良作だなあって。良質なミステリ作品に触れてる~って感じが。まあ、第四章以降もまだまだ物語は続くんですけど。
僕は“デンキブラン”を飲みながら最後までプレイしたいなと思いました。
あーいいですね、エモい。『春ゆきてレトロチカ』、あらゆる“ミステリ”が堪能できるいい作品ですな。
※画面はすべて開発中のものです。
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