『仁王2』に込めた想いをプロデューサーに聞く!! “戦国死にゲー”の進化とは?【電撃PS】
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繊細な高難度アクションと、爽快なハクスラ要素の融合で、大きな話題となったダーク戦国アクションRPG『仁王』。発売後も長期にわたるDLCで新たな遊びを提供し続け、今もなお多くのファンを持つ本シリーズに、待望の最新作『仁王2』が登場します。
前作から約3年、さまざまな要素をパワーアップし帰ってくる『仁王2』に込めた想いを、プロデューサー兼ディレクターの安田文彦氏が語ってくれました。ここでは、電撃PlayStation Vol.680に掲載されているインタビューの全文をお届けします。
安田文彦氏
バランスは踏襲しながら、妖怪要素をさらに強く!
――本作の素早い立ち上げは、前作の好評を受けてのことだと思いますが、いつ頃から続編について動き始めていたのでしょうか?
安田文彦氏(以下、敬称略):前作『仁王』では発売まで時間をかけてしまったので、今回はベースがあるぶん、できるだけ早くお届けしたいという思いがありました。なので、2017年の発売後には、もうコンセプトなどは立ち上げていました。
――そのコンセプトとは、どのようなものになるのでしょうか?
安田:前作は“戦国×死にゲー”でしたが、今回はそこに“妖怪”という要素を足し、“戦国×妖怪×死にゲー”というコンセプトで進めています。
――妖怪の要素は前作でもありましたが、今回はアクションにも関わってくるのでしょうか?
安田:前作では基本的に敵として戦うだけでした。でも、せっかく日本独自の要素ですし、海外でも好評だったので、「今回はそこに注目しましょう」というところから始まりました。
――前作では最初は難易度の高い死にゲーでありながらハクスラ的なゲームの一面もありましたが、このバランスは踏襲されるのでしょうか?
安田:はい、ハクスラ要素は『仁王』の特性だと思いますし、周回要素とも相性がいいので、そこはしっかり継承されています。
――今回、大きな変更点として、主人公のキャラクタークリエイトがありますが、どのような理由から導入されたのですか?
安田:まず前作で多くの要望をいただいていたことがあります。今回は、主人公が妖怪の血を引いており、特定の歴史上の人物ではなくても成立するので、男女も含めて好きなキャラクターで遊んでもらえればと思い、導入しました。それに加えて、今回は妖怪の姿でプレイする時間がありますので、妖怪化した状態のカスタマイズも、ある程度はできるようにしたいと思っています。
――それは具体的にはどのようなシステムになるのでしょうか?
安田:妖怪化は基本の姿が3種類あるのですが、そのなかでも角の形とかをカスタマイズできるシステムです。妖怪をコンセプトにしているので、妖怪に関するカスタマイズはぜひやりたいなと思っていました。
――そうなると、キャラクタークリエイトは初期から考えていたということですか?
安田:はい、最初のコンセプトの時点で、今回はキャラクタークリエイトでいこうとは決めていました。
――見た感じ、かなり幅広くカスタマイズできそうですね。外国人風にもできますし。
安田:そもそも前作は主人公のウィリアム(按針)が外国人ですから(笑)。今回は妖怪ということで、見た目の幅はかなり広くなっています。
――ちなみにキャラクタークリエイトを実装すると、前作にあった“姿写し”は今回はなくなるのですか?
安田:姿写しに関しては、ストーリーキャラクターで遊べるという、別の魅力もありますし、今回も実装する予定ではあります。
――前作からの要望で、ほかに大きかったものはありますか?
安田:キャラクタークリエイト以外では、ずっとオンライン協力プレイで遊びたいという要望も多かったです。本来は一度クリアしたミッションでしか遊べなかったのですが、そこは今回、最初からリアルタイムの協力プレイができるようになっているので、最初から挑戦できるように調整しています。
藤吉郎に注力したストーリーと主人公との関係性
――今回、若き信長や藤吉郎が登場ということで前作(1600年前後)よりも以前の時代背景となるようですが、この時代を選んだことには何か理由はあるのでしょうか?
安田:時代設定についてはいろいろ考えました。義経の時代、源頼光の時代、あとは人気のある幕末などですね。そのあたりでも“妖怪と戦う侍”という設定で描けるなと思って検討したのですが、やはり前作で描き切れなかった部分も結構ありましたので、この時代を選びました。それに前作は家康をメインにしたので、今回は信長や秀吉をしっかり描きたいと思ったのも理由の1つです。
――前作とのつながりもあるのでしょうか?
安田:今回は、1550年頃から始まって、少し長めの期間が描かれます。するとどうしても時代はつながってしまうので、そこは『仁王』をプレイした人には、ニヤリとできる仕掛けは用意しています。もちろん、『仁王2』からプレイする人にもわかる範囲にはなりますけど。
――ストーリー分岐はあるのでしょうか?
安田:マルチエンディングではありませんが、男女で武将のリアクションが違うとかはあります。また、主人公の行動で、ミッション内容が変化したりもするので、プレイの仕方によって、ゲーム体験はかなり変わってくると思います。
――今回オリジナルキャラクターになったことで物語はどういう視点から展開するのでしょう。
安田:今回は、藤吉郎というキャラクターに注力しようかなと思っています。その理由はいくつかあるのですが、大きいところでは、やはりロマンですね(笑)。
前作の三浦按針のエピソードも、「どうして欧米の人間が日本にきて家康に仕えて侍になったのか?」と、そこにロマンを感じたのです。そのレベルの“ロマン”と考えたとき、藤吉郎の半生に惹かれたことが大きいです。
――名前的には有名ですが、前半生は謎に包まれていると言われてますね。
安田:謎の多い前半生もそうですし、侍でもない立場から天下人まで成り上がった、下剋上を地でいく成り上がり人生にもロマンがあります。そこで秀吉という人物が、「藤吉郎と主人公の2人で“秀吉”という名前だったとしたら?」という着想から膨らませて、藤吉郎と主人公を通じて戦国時代を追体験していくという物語になっています。
――そうすると、主人公の名前は秀吉なのですか?
安田:本名ではないですが、“秀”という文字が出自の謎として登場します。キャラクタークリエイトはあくまで見た目のカスタマイズなので、ゲーム中の名前は、通称“秀”で通しています。
――前作では主人公のモデルがウィリアム・アダムスだったので、ロンドンも舞台となりましたが、今回も外国がステージになることはあるのでしょうか?
安田:今のところは考えていませんが、やはり海外のファンも多いので、日本以外のエッセンスは入れていきたいなと思っています。それに前作は史実にある三浦按針の行動に沿って進んでいたので全国行脚していますが、今回はどうしても、尾張が中心になると思います。ただ、本作では描かれる期間が長いので、時代の遷移みたいなものも表現できればと思っています。
――時代が戦国となると、本能寺の変など、史実の事件の再現についても気になります。
安田:当然、このキャラクターが出るならこの合戦、このシチュエーションというものは、しっかり押さえています。本能寺も、前作では設定上凍っていたのですが、今回はリアルタイムで燃えています(笑)。
ただ、史実をなぞっているのですが、『仁王』ならではの解釈で再定義しているといいますか、オリジナルの描き方になっているとは思います。
“妖怪化”から“魂代”まで、新システムで遊びの幅も広く!
――新しい要素として、魂代という要素が追加されていますが、これはどれくらいの種類が用意されているのでしょう。
安田:魂代は、最初はボス妖怪だけだったんです。ただそれだと種類が少ないし、ビルドの幅も出せないと思ったので、すべての妖怪が落とすようにしました。さらにオプションで、ランダム要素も付けたので、ハクスラ要素としても楽しんでもらえると思います。ボリュームが多すぎて、開発現場からはすごく嫌がられましたけど(笑)。
――武器や防具のような感じのハクスラ要素になるのでしょうか?
安田:はい、武器や防具のようにオプションが付いてくんです。そこはやり込みにもなるし、攻略としても重要になってきます。
――前作にもあった守護霊も増えていますか?
安田:今回も武将と妖怪はセットと考えていますので、有名武将には用意されています。倒して入手するのか、協力して入手するのかはそれぞれですが、守護霊を集めて付け替えることができる要素は踏襲しています。
――となると、前作の守護霊も登場しそうですね。
安田:前作に出てくる武将も、何人か登場していますから(笑)。ただ、まったく一緒ではなく少しアレンジをして、性能を見直しているので、そこは期待していてください。
前作の反省点として、性能の良し悪しがハッキリしており、使う守護霊がほぼ決まってしまっていたことがあるんです。ビルドの種類や攻略方法を増やして、いろいろな方法でクリアできるという方向を目指して調整していきたいとは思います。
――前作では、比較的みんな同じ格好をしている部分もありましたね。
安田:ある程度最適化されるのは仕方ない部分でもありますけど、「これ一択!」になると幅が狭まるので、「複数の正解がある」というところに落とし込めるといいかなと思います。
――体験版でも楽しめましたが、新武器の“手斧”について教えてください。
安田:手斧は両手武器で、特性としては投げられるということです。手数が多くて、中距離に強いという立ち位置になってまいす。取り回しはいいので、どちらかというと初心者向けになります。
――ほかにも新武器は登場するのですか?
安田:はい、総数は今後発表していきます。ただ前作ではDLCでの追加も含めて7種類あって、ちょっと多過ぎた感じはあります。若干使いわけていただけなかった部分もあったので、さすがに前作から大幅アップにはならないです(笑)。
――そんな新武器を選ぶ基準って何ですか?
安田:アクションや駆け引きで、使ったときの手触りを変えられるものを中心に選定しています。前作で登場した武器も、それぞれ一長一短あったので、スキルも含め全体調整をしています。その調整も、前作でやり込んでいただいた遊び方を否定しない範囲で、長所を伸ばす方向で検討しています。
――同様に東京ゲームショウ2019(以下、TGS2019)の体験版で新スキルが確認されましたが、スキルのカスタマイズ性も増えてるのですか?
安田:前作でも多少はカスタマイズ性があったのですが、そこは強化していこうと思っています。選択肢も増えますし、スキル自体をさらにカスタマイズできたりといった要素を考えています。
――次に妖怪化についてなのですが、こちらを導入した意図はどのようなものですか?
安田:魂代だったり特技だったり、妖怪的なアクションをゲーム全体に織り込んでいるのですが、これもその1つですね。前作の九十九(つくも)武器が、ウィリアム固有の能力だったので、それに変わるものとして導入しました。基本的には九十九武器と同じでゲージをためて、プレイヤーのタイミングで発動できるようになっています。
――妖怪のタイプに“猛”“迅”“幻”という種類がありましたが、この違いはなんでしょうか?
安田:基本的なアクションの違いですね。全体で猛、迅、幻の3種類あって、それぞれで動きが変わってきますので、バトルでの駆け引きも違ってくると思います。もちろん、前作のように炎、雷といった属性も別に持っているので、バリエーションとしてはかなり幅が広がっています。
――TGS2019の体験版で触れることができたシステムに“義刃塚”がありますが、これを導入した理由とはどのようなものでしょうか?
安田:今回はオンライン要素の拡充もしていきたいと思っているのですが、やはりまだ抵抗がある人も多いんです。それに、あまりチャットでコミュニケーションを取るようなゲームにもしたくないので、そこを埋めるバランスはないかなと思って実装しました。
――基本的には前作にあった“血刀塚”の味方バージョンと考えていいのでしょうか?
安田:そうですね、もちろん、敵として登場する血刀塚も継続しています。血刀塚は倒れた場所に置かれるのですが、義刃塚は、アイテムを使って任意の場所に置けるようになっています。たとえば「この先ボス戦で厳しいよ」って場所に、メッセージとして置くこともできます。
もちろん、リアルタイムの協力要素もあるのですが、なかなかクリアできないときの、攻略の糸口の1つとして遊んでいただければと思います。
――ちなみにそれで難易度がかわったりするのですか?
安田:当然、呼べば難易度が上がることはないんですけど、前作では簡単すぎるという意見も多かったので、プレイヤーが複数いる場合は、若干敵の思考が変わり、あまりにも楽になり過ぎないようにはしたいです。とはいえ、楽にならないなら誰も呼ばないと思うので(笑)。そこのうまくバランスはとっていきたいです。
――全体的な難易度も、前作を踏襲している感じでしょうか?
安田:「歯ごたえがいい」という面は評価いただいているので、そこは変えたくないです。ただ前作は、いろいろな意味で、コツをつかめた人と、そうでない人の差が大きかったのではないかと思います。今回はもう少しユーザーフレンドリーにしつつ、かといって親切になり過ぎず、しっかり歯ごたえのあるものというバランスを狙って作っています。
――オンライン要素といえば、前作で“隠世の茶室”という勢力戦もありましたが、そのあたりも継続しているのですか?
安田:もちろんあります。勢力戦があって、どの武家に参加してとかは好評だったので、入れたいと思ってます。前作では死人でしたが、松永久秀もまだ生きていますし(笑)。
――そのほかに、何かオンライン要素を考えていますか?
安田:リアルタイムの協力プレイが3人になるので、好きな人は3人で集まって楽しんでもらえればと思います。その辺のシステムは基本的に引き継ぐ形になります。
――変則的な楽しみ方ですが、前作ではネットを使って、血刀塚を利用したアイテムの受け渡しも行われていましたが、こちらは想定していたものだったのですか?
安田:それはもちろん、楽しみ方の1つなので全然やっていただいて構いません。それも一応コミュニケーションですし、我々も想定して作っているので、現状は装備の受け渡しはできるという形で考えています。
新たな体験版からDLCまで、今後の展開に注目!
――α体験版で得られた反響はどうでしたか?
安田:基本的には非常に好評だったと思っています。ただ前作との違いが少ないという意見は多くいただきました。正直なところ、当時はまだ使い回している部分が多かったので、そこは今後、しっかり『仁王2』らしさを出していこうかと思います。
――前作では海外の評価も高かったですが、今回も海外ユーザーさんを意識していますか?
安田:もちろん、お客さんが多いということは認識していますけど、元々『仁王』のときも海外メインのつもりはなくて、Team NINJAとして得意なことをしっかりやっていこうという想いで作ってきましたので、そこは変えずにやっていきたいです。
――日本と海外の評価の差はありましたか?
安田:そこまで大きくはなかった気がします。新要素の妖怪化や魂代は好評でした。
――DLCの展開は考えていますでしょうか?
安田:考えています。前作はかなりのボリュームでしたが、あれは『仁王』が好評で、現場のテンションが上がってやったことなのですが、本当に辛かったです(笑)。ボリューム的には前作のDLCと同じ程度のものを提供したいのですが、スケジュールはもう少しゆったりするかもしれません。
――次の体験版の予定はありますか?
安田:11月1日から10日まで、β体験版の配信を考えています。今回はオープンですし、ステージや敵も新しいので、ぜひ楽しんでもらえればと思います。クリアしたら、製品版で何かしらもらえるといった仕掛けも用意したいと思っています。
――前作のデータなどがあったとき、引き継ぎ要素などは考えていますか?
安田:確かにあった方がいいなとは思うので、……何か考えます(笑)。ただあまり有利になるといけないので、ちょっとだけ嬉しいものを考えてみます。
――余談ですが、2020年は明智光秀が注目されている可能性がありそうです。そのあたりは意識してますか?
安田:来年の大河ドラマですね。ものすごく意識しています(笑)。本作でも時代的に明智光秀は避けては通れないですし、正直、時代も同じような時代になると思います。何かできればなと思いますけど、うーん、ちょっとまだわからないです。
――それでは、最後に期待している読者に対してメッセージをお願いします。
安田:おかげさまで、前作『仁王』は275万本を越え、非常に多くの人にプレイしていただけた状況で、今回『仁王2』を発表させていただけることになりました。また前作のように、気持ちいい死に方をしていただければと思います。
今回は攻略法も増えていますし、歯ごたえのある、楽しいゲームに仕上げていますので、楽しみにしていてください。11月にはβ体験版の配信も行いますので、そちらもあわせて、よろしくお願いします。
電撃PlayStation Vol.680では『仁王2』の新要素とインタビューに要注目!
9月26発売の電撃PlayStation Vol.680では、2020年発売予定の『仁王2』を6ページにわたって紹介! 先日開催されたTGS2019でも注目を集めた本作の世界観や新要素とともに、プロデューサーである安田文彦氏へのインタビュー記事も掲載しています。
最新情報に触れながらインタビュー記事を読めば、『仁王2』への理解も深まるはずなので、こちらをぜひともチェックしてみてください。
ダークな世界観と高い難易度で、“戦国死にゲー”と呼ばれた『仁王』の最新作が、さらなるパワーアップをとげて登場。戦国時代末期が舞台となる本作に登場するのは、織田信長や藤吉郎といった有名な戦国武将たち。
さらには、オリジナルのキャラクターまで! また、自由にキャラクターメイクが可能となった主人公にも注目です。
『仁王2』からは新要素が豊富に搭載されているのも特徴。妖怪の力を持った主人公が強大な力を行使する“妖怪化”や手斧をはじめとした新武器、敵である妖怪たちから入手できる“魂代”などについてもフィーチャーしています。
なお、このページでは、東京ゲームショウ2019で試遊できた体験版をもとに、担当ライターが新要素についてのインプレッションを語っています。
本作のプロデューサー・安田文彦氏へのインタビュー記事も掲載。こちらのインタビュー記事で掲載した凝縮版ですが、『仁王』シリーズの独自システムにも迫っています。
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仁王2
- メーカー: コーエーテクモゲームス
- 対応機種: PS4
- ジャンル: ARPG
- 発売日: 2020年3月12日
- 希望小売価格: 7,800円+税