『FF14』オフィシャルバンド“THE PRIMALS”のライブが6/4、5に公演。その熱気をレポート!!
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サウンドディレクターの祖堅正慶氏を中心とした『ファイナルファンタジーXIV(以下FFXIV)』オフィシャルバンド“THE PRIMALS”のワンマンライブ“THE PRIMALS Live in Japan - Beyond the Shadow”が、6月4日、5日に幕張メッセイベントホールで開催された。
初日の6月4日の公演は有料ストリーミング放送も行われ、現地に行けなかった全世界のプレイヤー(光の戦士)たちも含め、ひさしぶりに開催された“THE PRIMALS”のライブに酔いしれていた。
今回はそんな1日目に続いて熱気に包まれた2日目のライブの模様をレポート。後半ではライブ後にメディア合同で行われた“THE PRIMALS”、祖堅氏&植松伸夫氏のインタビューの模様もお届けする。
軽快なMCトークを挟みいくつかのブロックに分けて演奏
今回演奏された楽曲はアンコールを含めた24曲。『新生エオルゼア』から最新拡張パッケージの『暁月のフィナーレ』まで、冒険を彩った名曲がセットリストに組み込まれ、会場を埋め尽くした
光の戦士たちの心を揺さぶった。なお、セットリストについては両日で共通。
【“THE PRIMALS Live in Japan - Beyond the Shadow”セットリスト】
1.ENDWALKER
2.輝ける蒼 ~希望の園エデン:覚醒編~
3.究極幻想
-MC-
4.メタル ~機工城アレキサンダー:起動編~
5.忘却の彼方 ~蛮神シヴァ討滅戦~
-MC-
6.目覚めの御使い ~ティターニア討滅戦~
7.女神 ~女神ソフィア討滅戦~
8.悠久の風
9.メイン・テーマ~マトーヤの洞窟メドレー
10. ビッグブリッヂの死闘
-MC-
11.貪欲
12.To the Edge
13.Shadowbringers
14.知恵の巻貝 ~オールド・シャーレアン:夜~ (Acoustic Version)
15.Close in the Distance
16.Flow Together
17.此処に獅子あり ~万魔殿パンデモニウム:辺獄編~
18.ロングフォール ~異界遺構 シルクス・ツイニング~
-MC-
19.魔神 ~魔神セフィロト討滅戦~
20.過重圧殺! ~蛮神タイタン討滅戦~
21.エスケープ ~次元の狭間オメガ:アルファ編~
-アンコール-
22.メタル:ブルートジャスティスモード ~機工城アレキサンダー:律動編~
23.ライズ ~機工城アレキサンダー:天動編~
24.ローカス ~機工城アレキサンダー:起動編~
ここからはライブ中でとくに印象的なシーンや注目ポイントをピックアップする。
①3曲目後のMCでは会場にいた吉田直樹プロデューサー兼ディレクターに無茶ぶり
4曲目の「メタル ~機工城アレキサンダー:起動編~」の振りとして、MCの祖堅氏が当時のコンテンツに対して寄せられたファンの声について触れたのだが、そこで「あまり語ると会場に来ているプロデューサーに怒られちゃうな」と告げると、会場2階にいた吉田氏にスポットライトが当たるという、1日目にはなかった展開に拍手が沸き起こった。
その後祖堅氏からひと言を求められると、吉田氏は「最後までお楽しみくださいー!」とマイクなしに呼びかけるという展開に。そのよく通る声に対して、祖堅氏は「すごいよね。あの声でバトルコンテンツ班は怒鳴られているんだから」と語ると、会場は大きな笑いに包まれていた。
②古代人に扮した『FF』サウンドのレジェンド、植松伸夫氏がシークレットゲストとして登場
8曲目から10曲目の楽曲は、過去の『FF』シリーズの名曲で『FFXIV』でも重要なシーンで流れて光の戦士たちにもなじみ深い楽曲だが、なんとその楽曲を演奏したのは作曲者であり、祖堅氏の師匠でもある植松伸夫氏。
最初の「悠久の風」演奏時は古代人のフードとローブに身を包み、その後はフードをはずして演奏するという演出に、会場にいたファンは釘付けに。その後祖堅氏から直接紹介されて植松氏が登壇すると、心憎いサプライズに大きな拍手が送られていた。
トークではスクウェア時代の思い出や関係性がわかるエピソードが披露され、おふたりの“絆”を感じさせた。また、植松氏からは今回演奏を披露した楽曲誕生の経緯などが語られ、アレンジアルバム「Modulation - FINAL FANTASY Arrangement Album」として11月9日に発売が予定されることがあらためて告知された。
③光の戦士から募集したプレイ動画と合わせて「貪欲」「To the Edge」を演奏
プレイヤーと一緒にライブを作りあげる新たな試みとして、光の戦士たちのプレイ動画を投影しながら一部楽曲を演奏する試みが行われた本ライブ。対象の楽曲は11曲目の「貪欲」と12曲目の「To the Edge」で、楽曲と見事にマッチした迫力満点の映像がバックスクリーンに映し出され、サウンドに耳を傾けながら強敵との戦いに想いを馳せることができ、試みは大成功に終わった。
④パーカッションで楽しむ「知恵の巻貝 ~オールド・シャーレアン:夜~」(Acoustic Version)
全体的に激しいテンションの楽曲が多い“THE PRIMALS”だが、14曲目の「知恵の巻貝 ~オールド・シャーレアン:夜~」は一転して、しっとり耳を傾けたくなるような演出にチェンジ。演奏スタイルも奏者たちが焚火を囲むように集まるスタイルで、パーカッション(打楽器)を軸にした演奏を披露。心地よい時間が流れていた。
⑤炎が演奏中噴き上げ続ける“熱い”演出で会場のボルテージはMAXへ!
ライブの終盤に向けてより激しくノリのいい楽曲が続くなか、満を持して20曲目に登場したのは
「過重圧殺! ~蛮神タイタン討滅戦~」。観客との一体感が熱い楽曲でライブの定番となっているが、今回はステージ上から炎が吹き上がるという演出を取り入れ、物理的な“熱さ”も感じられる仕掛けに、光の戦士たちのボルテージは最高潮へ。
⑥アンコールは3曲続けて「機工城アレキサンダー」祭り!
大きな拍手で求められたアンコールに応え、ライブの締めを飾った3曲は実装当時に多くの光の戦士たちを虜にしたコンテンツ「機工城アレキサンダー」。なかでも23曲目の「ライズ ~機工城アレキサンダー:天動編~」では、ゲーム中の“時間停止”シーンで皆が動きを止め、会場が一体になって楽しむなど、ゲーム体験とつながる演出で大いに盛り上がった。
⑦ライブの要所で流れたエメトセルクの語りと場内アナウンス
最後の注目点はライブの合間にエメトセルク(CV:高橋広樹さん)が語る曲振りの演出。とくに『漆黒のヴィランズ』『暁月のフィナーレ』関連の楽曲については、彼に想いを馳せながら聞くことでよりエモく感じられた光の戦士たちも多かったはず。なお、開演前と開演後の場内アナウンスもエメトセルクが語る内容で、こちらにも歓声が上がっていた。
インタビー①:ひさしぶりのライブに感無量な“THE PRIMALS”
――まずは、ライブを終えてのご感想を教えてください。
祖堅正慶氏(以下、祖堅):ここしばらくはパンデミックや自分の病気もあって、しばらくライブの最前線から離れていました。一方でゲームはずっとアップデートを続けてたなか、やっとパンデミックが明けてきて、自分の体調もよくなってきたので、ライブを開催させていただきました。
こんなに大きい会場にたくさんのプレイヤーが集まって、感無量ですね。ライブを通じて、ゲームというエンターテインメントのパワーのすごさと、そのサウンドを手掛けさせていただいているのはとても光栄ということを、あらためて感じました。
マイケル・クリストファー・コージ・フォックス氏(以下、コージ):昨日、初日のライブを終えてから、SNSで光の戦士たちの感想を見させていただいて、「“THE PRIMALS”からパワーをもらった」という意見を拝見しました。もちろんうれしかったと同時に、私も同じように皆さんからパワーをもらったと感じました。
パンデミックもあって、ずっと自宅で作業していたりして、開発者として辛い状況が続いていて……。そんなときに皆さんの前でライブができ、ファンの方々からパワーをいただけて本当に感謝しています。
イワイエイキチ氏(以下、イワイ):数年ぶりの有観客ライブということで、最初は緊張しましたけれど、いざステージに立ったら昔の感覚を思い出せました。2日目となる今日で、いい感じにいろいろなことを思い出して……と、エンジンがかかってきたところなのですが、もうライブが終わっちゃって、ちょっと残念ですね(笑)。
たちばなテツヤ氏(以下、たちばな):ひとまず、2日間のライブが無事に終わってよかったなと。スタッフを含めて、いろいろな人に支えてもらって、ありがたいと思っています。あとは、光の戦士の皆さんが変わらずに元気そうで、そこがいちばんよかったですね。ここ最近、いろいろとあったかと思いますが、“THE PRIMALS”のライブで少しでも解消していただけたのならうれしいです。
GUNN氏(以下、GUNN):ライブに来てくれる皆さんのことを考えながら、演出などをメンバーのみんなで揉んで考えたので、それがいい形でに伝わっているといいなと思いながら演奏させていただきました。昨日のライブの感想を見た感じ、喜んでもらえているようだったので、今日も無事にそこが伝わっていたらいいかな。僕個人としても、楽しく、皆さんの顔を見ながらライブができてよかったです。
――最新拡張パッケージとなる『暁月のフィナーレ』が実装されてから初めてのライブでした。ライブ中も『暁月のフィナーレ』で登場した曲を何曲か披露されていましたが、『暁月のフィナーレ』でこれがお気に入りという曲を教えてください。
祖堅:僕にとって思い入れがあるのは、『知恵の巻貝 ~オールド・シャーレアン:夜~(Acoustic Version)』ですね。
コージ:私は『ENDWALKER』ですね。私が歌っているわけではありませんが、歌詞を手掛けさせていただいて、「え!? この人(Architectsのボーカリスト、Sam Carter氏)が歌うんですか?」とビックリした記憶もあるので。
祖堅:『此処に獅子あり ~万魔殿パンデモニウム:辺獄編~』じゃないんだ?
コージ:それも好きですよ!
イワイ:じゃあ僕は『パンデモニウム』で。
たちばな:『Flow Together』ですね。“THE PRIMALS”としては新しい感じですよね。
GUNN:この流れで来ると難しい……(笑)。
祖堅:(ミニアルバムに入っている楽曲は)あと1曲しかないね。
GUNN:全曲に思い入れはあるから……『オールド・シャーレアン』と『Close in the Distance』で。
祖堅:1曲じゃないのかい!(笑)
――今回のライブでは、『新生のエオルゼア』から『暁月のフィナーレ』までの楽曲が演奏されています。ゲーム内の物語は『暁月のフィナーレ』でひとまずのフィナーレを迎えましたが、今回のライブもそういったことを狙ってこのセットリストを組み立てたのでしょうか?
祖堅:ゲームをプレイすればその場面が思い浮かぶのがゲームサウンドですが、ライブはセットリストの流れというものがあります。たとえば、ゲームでは最後に泣かせるような曲を持ってきたほうがいいのですが、ライブでそれをするとシュンとした気持ちで終わってしまうんです。
ライブでは、「最後はみんなで盛り上がろうぜ」といったような組みかたをしているので、今回のようなセットリストになっています。だから一概に『暁月のフィナーレ』としての締めくくりを見せるというよりは、“THE PRIMALS”として、いままでどうやってきたかという集大成を作った感じが強いですね。演出もプレイヤーの皆さんがゲーム体験を思い出せるように、すごくこだわっています。
――アンコール後の3曲は、これでテンションを上げてくれという思いがすごく伝わりました。
祖堅:いままで何度もライブを演ってきて、お祭り感を持ったまま終わるというのがいちばんいいという結果を得ているので、この形になりました。
――「貪欲」「To the Edge」では、プレイヤーからプレイ動画を募集するという新たな施策を実施されました。実際にやってみていかがでしたか?
祖堅:すごくかっこいいプレイ動画を送ってきた方がたくさんいらっしゃったので、どの動画を使ったらいいかはすごく悩みましたね。どれもクオリティめちゃくちゃ高くて、うれしい限りです(笑)。
僕たちのライブは、どうしても限られた地区、限られた時間でしか演れることができないので、全世界の『FFXIV』プレイヤーが参加できるように策を練ったつもりでしたが、思いのほかプレイヤーの皆さんの動画のクオリティが高くてビックリしました。
僕たちもリハーサルのときからあの画を見てすごくテンションが上がったので、プレイヤーといっしょに2曲を演奏したという感じが出て、すごく楽しかったです。
――またライブがあれば、今回のような企画を実施される予定はありますか?
祖堅:またやりたいですね。すでに次の企画も思いついているので、もしライブを演るときがあればお披露目したいなと。
――“THE PRIMALS”では1時間30分ほどのライブが多かったと思いますが、今回は2時間30分と一気に尺が長くなっています。この長さにしようと思った理由などありましたら教えてください。
祖堅:1時間30分尺でやっていたのはファンフェスティバルの“THE PRIMALS”、だからですね。ファンフェスティバルでは、僕らのライブはたくさんあるうちのひとつの演目であり、メインというわけではない。だから、コンパクトにやっています。
今回のライブは、僕らが主導で動かしているライブなので、そもそもファンフェスティバルとは座組みが違います。ファンフェスティバルでは限られた時間、予算でどうやるかを練って、今回のライブでは、僕らがやりたいことを徹底的に追及しているので、まったく違う考え方をしているんです。
――会場も一気に大きくなりましたけど、変わったところや、やりたかった演出ができたということはありますか?
祖堅:今回は光と画に力を入れました。そこに特殊効果が入ったらいいなと思っていて、今回はさらに演奏中に火をつけるという演出をやってみたんですよ。でも、実際にやってみたら思いのほか熱くて……(笑)。
いろいろなアーティストさんに聞いたのですが、サビ中だけ火を出すことはあるけど、1曲の間、最初から最後まで火を出すなんて聞いたことがないと言われました。そういった意味でもすごいライブになったんじゃないかなと思います。僕もビックリしましたけど(笑)。
――今回のライブタイトルの“Beyond the Shadow”に込められた意味を教えてください。
コージ:いままでの単独ライブのタイトルにも“Shadow”という言葉が入っていますけど、これは『ShadowBringers』から取ってきています。あとは、“THE PRIMALS”はゲームの中では悪役で、闇のイメージがあるということで、ライブタイトルに“Shadow”という文字を使っていました。
今回は、次の『ENDWALKER』に進むということで、Shadowを越えるという意味がある“Beyond The Shadow”という言葉を使っています。あと、英語に「beyond the shadow of a doubt」という熟語があって、「絶対に」という意味があるんですよ。この熟語の意味も合わせて、“THE PRIMALSは絶対的だ”と、二重の意味を込めています。
――最新アルバムにも収録されているオールド・シャーレアンの夜の楽曲ですが、ライブでアコースティックをやりたいという話があってアルバム収録曲に選ばれたのでしょうか?
GUNN:もともと「この曲をやってみたい」という話を祖堅としていたんです。それで、やるだけやってみようと。レコーディングでは、原曲の世界観も大事にしつつ、バンドの一発録りにこだわりましたね。昨日のライブ中では(テイクが)十数回という話をしましたが、僕の記憶では24回ぐらいやっているんだよね(笑)。
たちばな:レコーディングが終わるまで1日半ぐらいかかったもんね(笑)。
GUNN:オールド・シャーレアンの夜の楽曲は、そんな風に作業が進んでいった曲ですね。
――次にこういったライブがしたい、こういったフェスに出たいという思いがあればぜひお聞かせください。
祖堅:僕は野外のフェスに早く出てみたいですね。
コージ:同じく外でやってみたいですね。涼しいだろうなぁ(笑)。
イワイ:もっと大きい、アリーナクラスでやってみたいですね。
たちばな:いろいろなところでもやってみたいですが、ゲームと違う音楽フェスティバルにも出られたらおもしろそうだなと思いますね。
GUNN:僕も同じで、国内外でいろいろなフェスに出てみたいなと思っています。(祖堅氏に対して)行きたいな!(笑)
祖堅:ロンドン、パリ、ドイツ、韓国、中国、ラスベガスと海外でもライブを演らせていただいているので、海外のフェスでもぜひやってみたいですね。こんな感じで、メンバー間でも日ごろからこんな話をしていますので、いいお話しがあれば喜んで行きます!(笑)
インタビュー②:祖堅氏の成長がうれしくもありうらやましくも感じた植松氏
――まずは本日のライブの感想をお聞かせください。
祖堅:今回、スペシャルゲストとして植松さんにご協力いただきましたが、じつは、植松さんが最初は「俺は前座がいい」って言われていたんですよ。僕としはそんなことは全然考えていなくて、その意思が固かったので、何度か植松さんを説得しに足を運んだんです。「前座よりも絶対にライブの途中で植松さんが現れたほうが、お客さんが喜びますから」と説得して。
植松伸夫氏(以下、植松):実際にやってみて、それが正解だったよね。
祖堅:そうですね。演目の中のひとつとして、『FFXIV』の世界観の中にいる古代人、レジェンドというキャラクターに植松さんに投影させて演出できたというのは、ゲームとの親和性を持たせられてすごくよかったなと。
僕はゲーム体験というものを大事にしているので、今回、ライブに足を運んでくれたお客さんたちにとってゲーム体験と植松さんがオーバーラップして「ゲームってすごいな」と思ってくれたらすごくうれしいですね。今回、多分それができたのではないかなと思っています。
植松:僕が「前座で出してくれ」と言っていたのは本当で、“THE PRIMALS”のライブですし、そこに先輩面をして出ていくのはすごく恥ずかしい。さらに、やろうとしていた音楽が、ひとりでシンセサイザーを使ってというような、いままでやっていなかったものだから、イチからやり直させてほしいなという思いがあって、前座として1、2曲やらせてもらおうかなと、本気で思っていました。
でも、昨日、今日とライブに出演してみて、祖堅はこういうことを考えていたんだなということがわかって、彼に従ってよかったなと思いました。最初から最後まで遊園地にいるような、考えられているライブだなと。ゲーム音楽をやっているロックバンドだからできる、このエンターテインメントはすばらしいなと、正直、驚きましたね。
僕自身もすごく気持ちよく演らせていただきました。お客さんが僕のことを覚えてくれていたのがうれしかったし、ステージの上から見ていて、自分がいまやっているシンセサイザーの音楽をおもしろそうに聴いてくれている、興味を持ってくれているという手応えを感じられて、2日間やらせてもらえてうれしかったですね。
――今回のライブでは演出面にこだわられたということですが、祖堅さんと植松さんのあいだでどんなご相談があったのでしょうか?
祖堅:まずは、(古代人の)服を着てくれって言いましたよね。
植松:そうだね。でも、いつもの恰好で演ったほうが気楽だし、そういうのは嫌だったんだよ(笑)。じつはあの服はすごく動きにくくて、ローブが長いから歩いていても引っかかるし、階段を上るときに裾をまくらないといけない。
あと、僕は何かをやるときにいつも腕まくりをするんだけど、丈が長くてすごく演奏しづらくかった。なおかつ、1曲目は「フードをかぶってくれ」と言われて、譜面がよく見えなくて……(笑)。
でも、SNSで感想を見ていて、「植松が古代人の恰好に!」と喜んでくれていたので、祖堅が最初から思い描いていたことができて、それに協力できたのだろうなと。
祖堅:見てくださっている方々は『FFXIV』のプレイヤーで、ゲームを遊んだ体験があるからこそ、植松さんがローブを着ることに意味があるし、そこに『悠久の風』が流れてくるという演出がゲーム体験と密接にリンクして。これはゲーム音楽ならではなのかなと思っています。
植松さんが築いてきたゲームサウンドというジャンルは、僕が生まれたときには存在していて、それがすごいという体験が心にありました。それをいまのプレイヤーたちに、ゲーム体験とともに「ゲームサウンドってすごいんだよ」と伝えるのが僕の使命だと思っているので、そこに植松さんが応えてくださって、いっしょにできたのは感無量ですね。
――植松さんが手掛けられるアレンジアルバム「Modulation」について、コンセプトや、どういったものになるのかを教えてください。
植松:基本的に、全曲とも『FF』シリーズのゲーム中で流れている音楽を土台にしています。じつはステージでも言いましたけれど、これまで昔の自分が作ったものは二度とと言っていいほど聴かなくて、「恥ずかしい曲を作っちゃったな」という思いがずっとあったのです。
でも、そうは言っても当時作った曲は自分の歴史にとって事実なわけで、「それをずっと見ないようにしていく人生は嘘っぽいな」と思って。じゃあ実際に自分が昔に作った曲を聴いてみて、これをどうやったらおもしろく発表できるかなと考えたんです。
たとえるなら、若いころに撮った変顔の写真。なんでこんな顔をして写真を撮っちゃったんだろうという気持ちがあると思いますが、フォトショップを使えば、おもしろいものに加工できちゃうわけですよ。そんな感覚で、昔作った曲を変調(Modulation)してみたら、おもしろいんじゃないかなと。それが『FF』の1作目を作って、35年経って、ようやくおもしろがれるようになったという感じですね。
――ライブを終えて、植松さんに何かメッセージはありますか?
祖堅:僕が若いときに植松さんに多大な迷惑をかけまくっていたので、今回のライブで植松さんがちょっとでも楽しい気持ちになっていただいたなら、ちょっとした恩返しになったのかなと。もちろん、これくらいじゃ全然足りてないと思いますが……(笑)。そんなことを考えつつ、またお願いにいきますので!(笑)
――植松さんから祖堅さんへのメッセージはありますか?
植松:こんな素敵なコンサートの中で、15分間という短い時間でしたけど、参加させていただけてすごくうれしかったですね。あまりこういう言いかたはしたくないけど、祖堅も大きくなったなという感じがしますね。
祖堅:僕は、植松さんと飲みに行っていたときはマジでクソガキでしたもんね(笑)。
植松:本当にクソガキだったよね(笑)。そんな冗談はおいておいて、祖堅がこんなに場を仕切っているというのが、うれしくもあり、うらやましくもあったんです。うらやましいと思った瞬間に、「僕はまだいけるな」って思ったんです(笑)。祖堅にまだライバル心を持っているかもと思ったときに、「Modiration」の制作をもっとかんばろうと思いました。
祖堅:これはアルバムが楽しみですね!
――では最後に、ファンの皆様へのメッセージをお願いします。
祖堅:植松さんの元気な姿を見せられて僕は満足です。みんなも満足だったと思います。ユーザーの皆さんと同じ気持ちです!
植松:こんなにたくさんの人間を見たのはひさびさでした。また人間を見に行きたいと思います(笑)。
なお、4日に行われたライブストリーミング放送は6月13日(月)23:59まで、アーカイブでの視聴が可能となっている。チケットも6月12日(日)23:59まで購入可能(\3,500/税込)なので、本レポートを見て興味を持った方はぜひ鑑賞してみてほしい。
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撮影:西槇太一、MASANORI FUJIKAWA
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