sakoさんが語る対戦格闘ゲームコミュニティの変化とは!? FAV gamingやHORIとの関係性も質問
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FAV gamingに所属しているプロゲーマー・sakoさんに、インタビューを実施しました。
sakoさんには、2021年を振り返っての感想に加えて、『ストリートファイターV チャンピオンエディション(以下、『ストV』)』や対戦格闘ゲームのコミュニティの変化などについて質問。インタビューにはsakoさんのマネージャーである奥さんのakikiさんが同席されていたため、あわせてコメントいただきました。
なお、収録は4月18日に実施し、インタビュー中は敬称略。
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43歳 vs 14歳でも全力で戦える。格闘ゲームのコミュニティの変化を語る
――対戦格闘ゲームに長く触れてこられて、コミュニティが変化についてどのように感じられていますか?
sako:対戦格闘ゲームの対戦では、自分が43歳で、対戦相手が14歳くらいということもあります。自分の子どもくらいの歳の子と真剣勝負で戦っているのは、すごく変な感じですよね。自分が子どものころはあまり意識していませんでしたが、自分が上の立場になるとおもしろいなと。
これが身体を使うスポーツだったら、本気を出せないじゃないですか。でも、ゲームだったら痛いわけじゃないので本気を出していい。歳の差があっても真剣勝負が成り立つところに、「対戦格闘ゲームってええな」って思いましたね。
――変な質問になりますが、「対戦してください」という人に対して本気で勝負するタイプになりますか?
sako:相手次第ですね。「教えてください」だったら、対戦というよりはトレモの延長線というか、部分的に教える指導プレイになります。何も指定がなかったら、手加減はできないので普通に対戦します(笑)。
――プロの方のもとには、教えてほしいと来られる方も多そうです。
sako:多いですね。ただ、初心者の方は、ザックリとした質問が多く、どう説明するのかは難しいです。特に対戦格闘ゲームは自分で選べる選択が多いのでかなり悩みます。
例えば「どうやったらダメージ取れますか?」と聞かれても、答えることは難しい。その人が一番疑問に思ったところであることは理解していますが、質問してきた人のレベルによっても違うし、答える人によっても返答が違う。いろいろな答えがあると、質問した人が「どれを選んだらいいんだ」と困ってしまうかもしれません。
正解がないのが対戦格闘ゲームのおもしろいところですが、皆が知りたいのは正解なんですよね。人に聞きたい気持ちもわかるけど、「それを探すのがおもしろいから考えてほしいな」という気持ちが少しだけあって、モヤモヤすることもあります。
――完全に初心者だと、なにを考えればいいかもわからないのかもしれませんね。
sako:そうですね、考える力がまだ育っていないと思うので。そこを考えられるようになるには、いろいろな行動をしてみたり、いろいろとゲームをやったりするしかないので、難しいですよね。
――プロとして活動されていて、転機になったタイミングはありますか?
sako:『ストリートファイターIV』のころにプロになりましたが、転機になったのは『ストV』です。当時は大阪に住んでいましたが、オンライン対戦の環境が悪く、練習にならなかった。そこで関東に出てくることになったのが、プロとして大きな転機でしたね。生活や練習が変わったし、海外も回るようになりました。
――結果が出たから転機になったというよりは、ご自身の行動が転機になったわけですね。
akiki:関東では強い人同士がオフラインで研究を進めていくのに、当時は関西にオフライン対戦をする環境がそこまで整っていなかったのが厳しかった。sakoがオフラインでできる練習がトレモだけという状況でした。
sako:この状況が続くと、強い人が集まる地域はどんどん強くなっていき、地方にいてはついて行けないと感じましたね。このままだと差を付けられてしまうと考えて、東京に引っ越すことを決めました。
僕は当時、関西で普通の会社員をやっていたので、会社を辞めるしかありませんでした。家族と相談して、それを機に専業プロになることも決めたわけです。言うなれば、『ストV』がきっかけで専業プロになったということになります。
最近のお気に入りはあのタイトル!?
――最近遊ばれたゲームで、おもしろかったタイトルはありますか?
sako:まだクリアしていませんが、『エルデンリング』はおもしろいですね。テンポがいいし、リプレイ性があるというか、何回もチャレンジしたくなる。もちろん格闘ゲームもそうですが、ちょっとずつ自分がうまくなっていく過程が楽しいので、その手のゲームはよく遊びます。
他にも『Factorio』のような、工場系のゲームも大好き。効率を考えて、どうやったらうまく物事を運べるのかを考えるゲームが楽しいですね。
ちなみに、Steamのゲームはだいたいチェックしています。マイナーなゲームから有名なゲームまで、ひと通り目は通しています。
――ゲームを遊ぶ際に、重要視していることはなんでしょう。
sako:テンポを重要視します。画面が切り替わるたびにローディングが入るものはあまり好きではありません。ローディングにストレスを感じないことは最低限で、RPGであればレベル上げの絶妙なテンポとかも気になります。
1レベル上げるためにかなり時間がかかるものは、さすがにつらくなってきます。やり込んだ時に、絶妙なテンポを感じられる瞬間がツボですね。
あと、ストレスの部分と気持ちよさの部分を、絶妙なバランスで感じられるものがハマる要因だと思います。『エルデンリング』や『Vampire Survivors』などは、そのどちらも与えてくる、いいバランスのゲームですよね。
――ストレスがあるからこそ、気持ちよさを得られますからね。
sako:そうですよね。そういうゲームって、ついやってしまう不思議な魅力があって、気づいたら10時間、20時間やってしまいます。
――以前に『ディスガイア』シリーズが好きと聞いたことがあります。
sako:あれもいいですね。何も考えずに作業するゲームも実は好きです。
オフラインでファンとの交流も。充実していくFAV gaming
――先日、ところざわサクラタウンでオフラインイベントが開かれました。いかがでしたか?
sako:ファンイベントをやるのが、おおよそ3年ぶりくらい。久々にファンの方と顔を合わせて交流できたのが、楽しかったですね。
ここしばらくはオンラインイベントが多かったので、直接声を掛け合うことはなかった。実際に会ってお話すると、こっちもうれしくなります。ファンの人は大事だなとつくづく思いました。
こういうイベントは、ぜひ増えてほしいですね。
――新しくできた施設“FAV ZONE”はいかがでしたか?
sako:サクラタウンの一角にゲームコーナーというか、練習施設ができていてすごいですよね! ガラス張りになっていて、中で練習している様子を外からも見られる。新しい形でいいなと思いました。
akiki:“FAV CUP”は3月19日、20日の2日間開催されたのですが、格闘ゲームは2日目だったので、1日目に4Fの“FAV ZONE”でファンミーティングを開催していました。多くの方に来ていただきました。
――個人的には、所沢にああいう施設ができるのが想像できませんでした。
sako:建物の存在がまず異質ですよね。「のどかな住宅地にこんな建物立てるの!?」と驚きました。でも、漫画やアニメが好きな人にはたまらないでしょうし、今後もあそこでイベントができたらいいなと思います。
――FAV gamingの雰囲気はいかがですか?
sako:他の部門の選手と会う機会がそこまでなくて、3、4カ月に1回あるかないかくらいです。素直で、いい子が多いですよ。歳が離れているから、気を使ってしゃべってくれているんだろうとは感じています。
akiki:今はご時世的にできていませんが、対戦格闘ゲームはゲーセンや練習でプレイヤー同士で顔を合わせる機会は多いんです。ただ、対戦格闘ゲーム以外のタイトルは、オンラインの文化しかないんですよね。FPSは同じチームでも会ったことがなくて、撮影などがあって初めて会ったなどのエピソードを聞きました。
――プロゲーマーを続けている中で、変わってきたと感じることはありますか?
sako:プロゲーマーの地位が上がったと感じます。何より認知されるようになったのは大きいです。今までは「プロゲーマーって何?」という人が大多数でしたが、メディアで取り上げられるようになって、以前と比べたら認知度が上がっています。
akiki:プロゲーマーが出演するTV-CMもやっていますしね。FAV gamingが起用されているアコムさんのTV-CMは、秋葉原の街頭ビジョンや駅構内でも流れました。以前であれば考えられなかったことだと思います。
アコムTV-CM
――確かにいろいろと変わっていますね。
akiki:何より大きく違うと感じている部分は、「プロゲーマー」と言いやすくなりましたね。
sako:それは確かに! 以前は「職業はプロゲーマー」と伝えても、「何それ?」と返されていましたが、今では普通に通じます。
akiki:それどころか、「すごい!」というニュアンスのこもった返事が来ることもあります。子どもの小学校の先生に話す際でも、以前は言いにくいうえに、言ってもわかってもらえませんでしたが、今は職業がプロゲーマーと伝えるといい意味で驚かれますね。
あとはsakoの場合だと、兼業でやっていたのが、専業でしっかり生活させていただけるようになったのは、昔では考えられなかったこと。ウメハラさんにしろ、ときどさんにしろ、同時期にプロになった人も、おそらく最初はいまのような環境じゃなかったと思います。
プロを続けていくうちにしっかり仕事として認められるようになりました。スポンサーにゲームの周辺機器だけでなく、ゲームと関係ない企業がついることも昔では考えられなかったですね。
sako:それこそ、アコムさんとかがそうですね。
――では、変化のない部分は?
sako:自分のなかで、ゲームが好きなことは変わっていないですね。子どものまま大きくなったというか……。それでも毎年バージョンアップはしていますけど!
前までは配信でしゃべれずに置物のようだったのですが、続けていくうちに自分を出せたり、会話できるようになったりしたので、成長していると思います。
――ゲームを楽しむために心掛けていることはありますか?
sako:自分がやったことないシステムのゲームを積極的に遊ぶようにしています。「こういう新しいシステムのゲームが出たんだよ」と言われると、「じゃあやってみよか」と興味を惹かれます。
新作が出るたびにワクワクするし、おもしろそうなPVを見るとやりたくなるのも一緒です。自分の中で楽しそうな部分を勝手に見つけていることもありますが。
――『ウルトラストリートファイターIV』のエレナもそうですが、“発見力”みたいなものが高いのではないでしょうか。
sako:初めて使ったキャラって、どういう動きをするのかイメージしにくいじゃないですか。そもそも自分の場合は、このキャラを1年やり込んだらどういう動きになるんだろうと、1年後のキャラをシミュレーションしてみるのです。
akiki:エレナの話だけではなく、少し触っただけで、このキャラはこうなっていくという展望というか、先のことを考えてシミュレーションするのが得意だと感じます。
他の人と意見がずれているのは、キャラの攻略度ではなく、理論値で変わっていくはずという、他の人と違う目線でとらえているからだと思いますね。
sako:ちなみにあまり外したことはないです。
akiki:なんにせよ、楽しみ上手ですよね。同じプロのときどさんやボンちゃんのような取り組み方を見ていると、もはやアスリートらしいストイックな部分を感じます。でも、そういう取り組み方をしていると、つらくなってしまうことがあると思うのです。
プロゲーマーは、配信で楽しいところを見せているので、はたから見たら「楽しい仕事でお金をもらえていいね」と思われることがあります。ですが、私のようなゲームをしない、普通に働いている人から見ても、普段の取り組み方から、れっきとした仕事であるとわかります。これだけいろいろなことに取り組んでいたら、それは仕事として成り立つと感じています。
ゲームが仕事になることで、嫌になったり、楽しめなくなったりするのではないかと、長らく心配していました。ところが、一向にその気配がありません(笑)。特技というか、楽しめることも才能なのかなと思うようになりました。
sako:天職やな!
大好きなHORIさんとの関係や今後について質問
――HORIさんとの契約も10年を超えて、良好な関係を築けていますね。
sako:そうですね。自分がプロになるきっかけを与えてくれた会社であるのですが、そもそも自分はHORI信者なんですよ。
一般ゲーマーのころから好きだったHORIさんと一緒にお仕事をできるようになって、しかもそれが今年で11年になる。本当にうれしくて、いまだにニヤニヤしてしまいます。
――HORIさんとのお仕事で、印象的だったものはどれでしょうか?
sako:やはりアケコンシリーズですね。10周年モデルを作ってくれたことはうれしかったです。でも一番は『ファイティングエッジ刃』かな。はじめて開発に携わったというか、自分の好みを出させていただいたこともあって、印象深いですね。開発期間は2年くらいで、かなり時間がかかりましたね。
akiki:それまでは三和電子製のレバーとボタンを使っていたのですが、HORIさんが自社製のレバーとボタンで発売するということで、時間をかけて開発しました。毎回sakoのもとにレバーとボタンが届くんです。それをsakoの好みに調整していきました。
sako:レポート用紙にいっぱい字を書いて戻しましたね。「0.01mm薄い」とか書くんですが、やりすぎて、どれがどれだかわからなくなっていました(笑)。
レバーで重要視したのは、“ニュートラルに戻るのが早い方がいい”という要望です。格闘ゲームは、ニュートラルに入れることが多いゲームです。レバーを離した瞬間に反動で違う方向に入ったら、すごいストレスじゃないですか。そういうことを極力なくしてほしいという要望は、初期段階から出していました。
akiki:アンケートの書き方がひどいんですよ! 忖度なしで、ダメってハッキリ言う。一瞬触って、「もうあかん、終わり」と言って、アンケートに「触ったらわかるから」と書いたこともありました。
HORIさんに「こんなにはっきりと言って大丈夫ですか?」と伺ったところ、「発売後に文句が出るより、今のうちに出た方がいいです」と言ってくださいました。ご理解をいただきつつ、進んでいきました。
――デザインの部分のこだわりは?
sako:『ファイティングエッジ刃』の形はHORIさんが考えてくれたもので、カッコよくてすごく満足しています。
あと、発光ライトを付けてくれと要望を出したことがありましたね。当時は海外大会が多かったのですが、海外大会は会場がかなり暗いので光ったらカッコいいかなと。
HORIさんに言ってみたら、2つ返事でつけてくれました。あくまでイメージとして言ってみただけなんですけど(笑)。
――『ストV』界隈では、レバーレスのコントローラを使うプレイヤーが増えていますが、sakoさんは使用しないのでしょうか? HORIさんが出されていないことに関係するのですか?
sako:それは全然関係ないですね。周りがレバーレスに変わった今でも、僕自身の好みでレバーをチョイスしています。むしろ、レバーレスを使うならばHORIさんが作るとまで言っていただいています。
akiki:配信でも「HORIさんは関係ないよ」と、本当のことを言っているのですが、誰も信じてくれないのです。皆さんが優しくて、発言の奥を察してくださっているのかもしれません(笑)。そもそもになるのですが、sakoはやりたくないことに対して、嘘をついてまでやることができないタイプです。
sako:レバーレスが選ばれているのは、『ストV』との相性がいいためで、別のタイトルではそれは発揮されない。もし『ストリートファイター6』になった時、レバーレスだと断然有利になるのであれば、ちょっと考えるかもしれません。
ただ、おそらく最後の最後までレバーを握っているプロは自分だと思いますね。
――最後に、2022年度の目標をお願いします。
sako:今年もSFLがあって自分は今、2連覇中です。今年も勝てば、気持ちよく『ストリートファイター6』に移行できると思うので、3連覇を狙いつつ、1年を楽しんでいこうと思います。応援よろしくお願いします!
――今日はありがとうございました。
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