不死に絶望する少女を描く新作ラノベ『君は死ねない灰かぶりの魔女』作者インタビュー

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 “スレ発ラノベ4”の第2弾として10月10日に発売されるカドカワBOOKSの小説『君は死ねない灰かぶりの魔女』の作者・ハイヌミさんのメールインタビューをお届けします

 “スレ発ラノベ4”は、Web掲示板のスレッドで人気を博した物語を書籍化する企画です。この企画で書籍化される4作品は、やる夫と呼ばれるアスキーアートのキャラクターを主人公にしたり、既存の作品のキャラクターを登場させたりして物語を展開していく、いわゆる“やる夫スレ”で生まれた作品です。

  • ▲本作の表紙イラスト(イラスト:武田ほたる)。

 ハイヌミさんが執筆した『君は死ねない灰かぶりの魔女』は、タイトルにあるように、不死の命を持ち、それに絶望する女の子と、彼女の“死なない理由”になると決めた少年の物語。やる夫スレでは、『白頭と灰かぶりの魔女』のタイトルで発表されていたものです。

『君は死ねない灰かぶりの魔女』あらすじ

 僕は魔法使いの弟子。ボロ屋で一緒に暮らす“お師匠さま”は、世界有数の魔法使い、を自称している。どう見てもただの引きこもり女子だけど――。

 僕なんかと背中合わせで本を読み、料理中の僕を眺めるのが好きな変わり者だが、授業では鮮やかな魔法を見せてくれる。穏やかな生活は幸せで――。

 だが、ある日、不老不死の呪いに悩む別の魔女に告げられた。

 師匠は、世界を救い呪いを受けた13人の最高位の魔女の1人で、呪いを癒す能力を持つのは、世界で僕だけ!?

誰が最終的に幸せをつかむのか、見届けていただければ

――この作品を書いたきっかけを教えてください。

 現在もAAという媒体でWEB上に公開させていただいているお話が元になるのですが、嬉しい反響をいただきつつも、それなりにネガティブなご意見もあり、そういうご意見も踏まえていつか完成版として再構築して文章化したいとは考えておりました。そんな時に編集さまに声をかけていただいたというのが、発端になります。

――作品の特徴やセールスポイントを教えてください。

 主人公に依存せざるを得ない状況に追い込まれた女の子たちが織り成す物語と、彼らの各々の選択によってたどり着く結末です。登場する女の子たちはその1人1人が持つ経歴とか性格から、なんらかの強い感情を持って主人公と対峙します。とても長い尺をいただいて、そんな彼女たちに相応しい結末を描きました。誰が最終的に幸せをつかむのか、見届けていただければ嬉しいです。

――作品を書くうえで悩んだところはどの部分ですか?

 これは読み手に受け入れられるのか、という点ですね。かなり攻めた内容ではあるので。編集さまから客観的なご意見をいただきつつ、悩みながら、展開の転がし方を吟味しました。

――執筆にかかった期間はどれくらいですか?

 実際のAAから文章に落とし込むのに2カ月半、そこからAAのおもしろい部分を残して、調整を繰り返して計7カ月ほど掛かりました。余暇の大半を費やしてもこのペースでしたので、次があればもう少し上手くやりたいですね……。

――キャラクターの名前はどのように考えていったのでしょうか。例えばリナリアという名前には、何か理由や狙いが込められているのでしょうか。

 思い入れの強い魔女の名前はすべて花言葉を持つ植物からとっています。全ての魔女がヒロインたる魅力を持ってるという想いを込めて。

 リナリアには「私の恋に気づいて」という花言葉があるそうです。彼女は最初、そういう恋心に無頓着で、お話を書いている私自身が彼女に自分の恋心に気づいてほしい、という願望が込めたかったという意味合いが強かったです。

 本を読んでいただいた方に、他の魔女の花言葉を知ったとき、何か関係性のようなものが伝われば幸いです。

――特にお気に入りのキャラクターは誰ですか?

 魔女はみんな好きですが、分裂の魔女カルミアが特にお気に入りです。残忍な彼女にも苦悩があり、人間らしい悩みがあります。本当は可愛らしい彼女の一面もいつかじっくり描きたいなって思ってます。

――作品を通じて表現されている部分もあるかと思いますが、ハイヌミさん自身は“不死”に憧れますか?

 不死は苦痛だと思っています。不死によって得られるものよりも、その代償はあまりにも大きすぎるとも。

――今後はどんなものを執筆したいか、もしも決まっていたら教えてください。

 読んだ方が幸せな気持ちになれるようなラブコメっぽいものを書いてみたいとは漠然と思ってます。今のお話を完結させたいという願いも強いですが。

――小説を書く時に特にこだわっているところはどこですか?

 登場人物はすべて私のなんらかの経験だとか、価値観に由来しているという部分でしょうか。1人1人がその時何を考えているのかを自分がそこにいるかのように意識しながら書いています。それがポジティブにもネガティブにも働くことはありますが……。

――アイデアや集中力を高めるためにやっていることはありますか?

 進行に詰まったとき、無音の空間で、キャラクターについて考えます。そもそもこの子にはどんな過去があるんだ? なんでこんな性格なんだ? 私は彼女のどこが好きなんだろう? とか自問自答していると、はっと急に書くべきものが浮かんでくる。今回の執筆作業では度々そんな機会に恵まれていた気がします。

――これまでに影響を受けた作品を教えてください。

 『5億年ボタン』とか『沙耶の唄』とか、諸所でヒントを得ている作品はございますが、やはり重松清作品全般ですね。登場人物に感情移入して胸が熱くなるような、泣いてしまいそうになるような、そんなお話を自分も書いてみたいと思うようになったのも、重松清作品との出会いがきっかけでした。

――現在注目しているコンテンツを教えてください。

 コンテンツ……。ぱっと思いついたのがVTuber界隈ですかね。今一番追ってるのは卯月コウくんです。ビジュアルというより界隈の人たちが自由に自分らしさを晒して世に褒められたり貶されたりしていてもキャラクターを曲げずに等身大のままでい続ける姿には、色んな勇気とか、インスピレーションを貰ってます。もっと見る人が増えればいいなって思います。

――読者の皆さんに一言メッセージを!

 いつもお世話になってます。あるいはお初お目にかかる方も。読んでいただいた方になんらかの感情の高まりを残したい、そんな想いを込めて書きました。楽しんでいただけたら幸いです。どうか、よろしくお願いいたします。

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イラスト:武田ほたる