『オクトラ大陸の覇者』破格と言える“追憶の旅人“の性能はシナリオ再現を重視した結果?【開発者インタビュー:旅人編】

タダツグ
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 スクウェア・エニックスのiOS/Android用RPG『OCTOPATH TRAVELER(オクトパストラベラー) 大陸の覇者』が、サービス開始から1.5周年を迎えました。

 これを記念して、プロデューサーの鈴木裕人さんと、ディレクターの細川晋太郎さんにインタビューを実施!

 前編となる今回は、生放送で発表されてファンの話題をさらった“追憶の覇者”や、キャラクターのバトル面での再現へのこだわりなどを伺いました。

トラベラーストーリーは3ボスならぬ“3没”? ボスキャラをあえて実装した理由とは

――1.5周年おめでとうございました。今の率直なお気持ちを教えてください。

ディレクター・細川晋太郎さん(以下、細川さん):たくさんのタイトルが世に出ているなかで、ここまで来られたことを素直に嬉しく思います。

 ただプレイヤーの皆さんの反応を見ても100%満足していただいている状態ではないので、これからどう良くしていくか……。嬉しさもありつつ、身が引き締まる気持ちです。

プロデューサー・鈴木裕人さん(以下、鈴木さん):僕も同じですね。至らぬ点もありますが、プレイヤーの方々が支えてくれているおかげで1.5周年を迎えることができました、本当にありがとうございます。

 次の節目の2周年に向けても、まだまだ改善していきたいと思います。

――1.5周年のアップデートで、“追憶の覇者”という形で三極ボスであるヘルミニア、タイタス、アーギュストが追加されました。彼らを旅団に加えるという選択はかなりの冒険だと感じましたが、実装の意図をお聞きしてもいいですか?

鈴木さん:1.5周年企画の大きな目玉としての施策となります。ただ、ボスとして1度プレイヤーの前に立ちはだかっているキャラたちなので、整合性を気にされる方がいることは間違いないな、と。

 ですので、今回は“追憶の覇者“と、他の旅人たちとは一線を画す形で実装する運びとなりました。

――様々な運営型のアプリゲームを遊んできた自分としては、ボスキャラが仲間になることは珍しくもないですし、ほとんど抵抗もないんですけど(苦笑)。『オクトラ大陸の覇者』は何より世界観を大事にされていますし、遊び方もこれまでのアプリとは少し違うというか、感触としてはコンシューマに近い。そのぶん、安易にボスキャラを仲間にしたくないという意見が出るのは納得です。

鈴木さん:正直なところ、開発チームとしてもかなりの葛藤がありましたし、そもそも立ち位置からしてかなり特殊になりましたが、同じく特別枠扱いといえる“追憶の旅人”としてリシャールを登場させたときに、「一緒に旅したかった」と喜んでくださった方が多かったことで、実装に踏み切りました。

 僕らも生放送で発表したときにドキドキしたのですが、おかげさまでかなり好意的な反応をいただけて、不安もありつつ喜んでもらえたかなと思っています。僕もバトルでは「マーヴェラス!」を楽しんでいます。

――今回の追加は、すでに遊んでくれているファンに喜んでもらえるようにという意図だったのでしょうか? それとも、1.5周年を機に始めるプレイヤーさんをにらんでのものになりますか?

鈴木さん:既存のプレイヤーの皆さん、新しく始めた方の両方に向けてですね。初期に戦うことになる3人なので、最近始めた方でもなじみのあるキャラクターだと思っています。

 それだけに皆さんいろいろな想いがあると思うので、トラベラーストーリーは苦労しました。僕は基本的にメインストーリーの監修をしていて、トラベラーストーリーはお任せしているのですが、今回は3人分チェックして……。

 それで3回も直してもらって、3ボスならぬ3没ですね(笑)。開発スタッフには頭が上がりません。しかし彼らもボスに関連するシナリオだからと気合いを入れて作ってくれて、お陰で皆さんの期待やイメージを裏切らないような仕上がりになったと思います。

細川さん:設定についてはポジティブとは言えない意見もありましたので、それはしっかりと受け止めつつ。「これは行けるだろう」と開発が自信を持っていたバトルの性能面については、好意的に受け入れてもらえたように思います。

 3人ともキャラが濃く、またアクの強いボスだったので、個性を能力に落とし込むのはとてもスムーズでした。誰が1番強いかはプレイヤーの皆さんのなかでも意見が分かれていて、「これだ」と断言できない塩梅に着地できたのもよかったと思っています。

“追憶”系の旅人たちの性能はシナリオ再現にこだわっている

――今回の3人を筆頭に、設定的にも能力的にも魅力的なキャラクターが多いですよね。追憶の覇者”も含め、“追憶”系の旅人たちの性能は、どのようなコンセプトで決めていったのでしょうか?

細川さん:“追憶”系のキャラクターはメインストーリーですでに活躍しているので、その他の旅人たちとは違い、実装前から人物像を理解していただけているというのは大きいです。

 そのため、バトルでどんな動きをしたらその人物らしいかを意識しています。

――シナリオの再現を重視しているということですね。アラウネなんかは、メインストーリーを見ていたら学者でありながら回復を使えるのもたしかに納得です。

細川さん:バトルで新しい行動をさせようとすると開発コストが発生するので、毎回新要素を盛り込むことは現実的ではないのですが、“追憶”系はキャラらしさを再現するためなら、コストが多めにかかっても実現させようと言う感じです。

――すでにキャラが確立されているぶん、バトル性能にもそのキャラクターらしさが感じられると、ファンとしては嬉しいです。

細川さん:そうですよね。先ほどはアラウネをたとえに出していただきましたが、リシャールについていえば、王でありながらも単独行動が出来る実力派をイメージしました。上に立つ者として兵士を鼓舞しつつ、力押し以外の策も使えるキャラクター性を、能力に落とし込んでいます。

――自分は彼の性能を生かすため、普段は後衛に配置して肝心な時だけ前衛に出すようにしています。

 後ろでドンと構えているのも、いかにも王様っぽくていいなと思っていました。川豆で回復ができるところもリシャールっぽくて好きです(笑)。

細川さん:僕も普段は後衛にいて、ここぞと言うときに出すようにしていますね。

――キャラを再現するうえで、武器の選定も難しかったのではないでしょうか? ヘルミニアはイラストで扇を持っていたので踊子で来ると予想していましたが、まさかの狩人で驚きました。これは彼女が所持していた“狩女王の指輪”由来なんだなと納得もしましたが。

鈴木さん:そこはやはり指輪とのつながりを重視しました。ヘルミニアだけによらず、武器というかジョブの選定には毎度悩んでいる部分もありまして。物語の世界観的にどうしても剣士が多くなっちゃうんですよね……(汗)。

細川さん:運営的には剣士が多すぎて、扇を使う踊り子と斧を使う薬師が足りないなと思っているのですが、世界観を重視するとどうしても剣士が多くなってしまい、正直ちょっと困っています(苦笑)。

――確かに剣士はかなり充実していますから、他のジョブにも厚みが欲しいところ……。ただ、世界観を重視するならある程度は仕方ないですね。ある意味、スクウェア・エニックスが作り上げてきた伝統のせいともいえるかも(笑)。

 スクウェア・エニックスの伝統といえば、先日は『NieR:Automata』コラボも実現しましたね。2BやA2が剣士や盗賊でありながら斧が使えたりと、かなり便利な性能でした。無料10連で入手できる9Sも強くて助かりました。

細川さん:自分もよく使っています。9Sはコラボ期間中に皆さん入手できるキャラなのですが、ちゃんと使える性能になるよう注意しました。

――誰でも入手できるキャラということで、他の2人と比べたら少し控えめに感じる部分はありますが、使いどころはしっかりありますよね。そもそも9Sはスキャナータイプということで、前線に出てバリバリ戦う2BやA2とはスペックが異なりますし。原作再現という意味でも、いい落としどころだったと思います。

既存キャラの性能と比較しながら気をつけて実装している

――先ほど扇や斧の使い手が少ないと言うお話が出ましたが、今後の想定としてはいかがでしょう。それこそ2Bたちのように複数の物理攻撃属性を持つキャラが増えたりしますか?

細川さん:複数の攻撃属性を持つキャラクターは確かに便利なのですが、たとえばクラウザーみたいに性能を尖らせるなどしないと、ただ便利なだけでキャラとしては無個性になってしまうと考えています。

 単純に増やしていくだけではなく、どのような個性を持たせるかを重視したいですね。

――物語が進み、敵も味方も強くなって能力が高くなっていくほど、調整が難しくなっていきそうですね。

 このインタビューの段階では未実装ですが、2022年5月26日のアップデートで追加されるロンドは、スペックを見た限りでは破格の性能だと感じました。

鈴木さん:ロンドは“全てを授けし者“の4章で活躍する主役格の人物なので、その特徴が出るようなキャラクターにしてもらいました。

 シナリオをご覧いただければ、あの性能にも納得していただけるとは思っているのですが……。

細川さん:あの能力設定も、リシャールたちと同様にシナリオ描写の再現の意味が強いです。性能的にインフレしている印象を受ける方が多いのも承知してはいるのですが、我々としては魅力的なキャラを提供していきたいので、調整には苦労しています。

――運営さんが自らインフレについて言及してくれるというのは、中々勇気があるというか、インタビューしているこちらとしても斬新ですね。普通は否定したいところだと思うのですが(笑)。

鈴木さん:ただ単純に強いキャラを出すのではなく、出来るだけプレイヤーの皆さんが便利に使えるなど、様々なシチュエーションで活躍できるキャラを増やす方向にしていきたいとは思っています。

 今回のロンドでいえば、剣と光の両方の弱点を1人で突くことができるので、今まで2人必要だったところが1人でよくなるというメリットがあります。

――強いキャラクターが登場すると既存キャラの立場が……というプレイヤーの声もあるのでは?

細川さん:おっしゃるとおりです。我々としてもそこを考慮しないわけにはいきませんし、今回のロンドでいえば、同じ聖火騎士団の剣士であり光属性を得意とするエリザと個性の方向性が似通ってしまうことは最後まで懸念していました。

 ただ、エリザは剣士でありながら回復アビリティの聖火の癒しが使えますし、後衛時属攻アップのアビリティもあるので前に出さなくても強い。剣士の試煉や特定のバトルではちゃんと活躍できるようになっています。

 すべてのキャラに、バトルで刺さる場面があるようにしたいというのは、我々にとって揺るがぬコンセプトです。

――運営型のゲームである以上、ずっと同じキャラが最前線に居続けることはなかなか現実的じゃないですよね。そのうえで、使いどころがある調整にしてもらえるのは嬉しいところですよ。

 お話のとおり、エリザは剣士の試煉で回復役として輝きますし、先日は辺獄のレベル100NPCとのバトルで、ギルデロイが久しぶりに大活躍してくれました。ソウル武器の実装で、キャラの性能をより尖らせることができるようになったのが大きいのかな、と。

細川さん:僕らとしてもキャラの活躍の場を完全になくすことはしたくないんです。性能の向上は構造的な宿命といえるかもしれませんが、既存キャラの性能と比較しながら調整をしていきたいと思っています。

――そのコンセプトをずっと貫いていただけたら嬉しいです。

好きな旅人の違う姿・EXジョブの実装はどうなる?

――旅人関連で是が非でもお聞きしたいのがEXジョブについてです。こちらは先日のユーザーアンケートで話題になりましたが、候補にあがったきっかけなど、現状で話せる範囲で教えていただけますか?

鈴木さん:まず、EXジョブ以外の、コンテンツ満足度アンケートについてお答えしますね。

 メインストーリーに関しては「物語が重く、苦しい」というご意見もやはりありながら、全体的な満足度は高かったです。僕らも一番力を入れているコンテンツなので、その期待を裏切らないよう、今後もクオリティアップに努めたいと考えています。

 その反面、遊技盤やソウル武器は改善点が多く見えてきています。v2.6.0では遊技盤についてのテンポの側面で大きな改良が入ります。もう少しの間、お待ちいただければと思います。今後も皆さんのご意見を頂戴してシステムやコンテンツの中身を改善していくつもりです。

――自分としては、バトルコンテンツを充実させてほしいですね。それこそ、せっかくEXジョブが実装されて、新しい姿の旅人たちをお導きできたはいいものの、連れていくところがない……ってなるのは寂しいですから。

鈴木さん:バトルコンテンツの充実化は、開発チームとしても大きな課題として認識しています。その1つの方向性として“天運の遊技盤”を実装したのですが、その狙いなどはこのインタビューの後編でお話しさせてください。

 EXジョブについてお答えしますと、こちらは純粋に「旅人の別バージョンも見たくありませんか?」という提案をしたく、スタートした施策となります。キャラクターの制作コストは非常に高いため、全キャラにEXジョブを実装することは難しい状況なのですが、より望まれ、多くの人に届くキャラをお聞きしたいなと思い、アンケートを実施させていただきました。

 ただ、あまりにも突然のお知らせだったため、驚かれたプレイヤーの方が多かったことは大いに反省しております。お伝えする方法や内容をもっと精査するべきでした。本当に申し訳ありません。

――初期から実装されている旅人も未だに人気が高いので、望まれている部分もあるとは思います。彼らが新しい姿でまた最前線に立てるようになるなら、個人的には歓迎です。

鈴木さん:キャラクターたちを愛してくれるプレイヤーの方が本当にたくさんいることは、僕たちも認識しております。本当にありがたく思っていますし、開発者冥利に尽きますね。

細川さん:基本的には皆さんに望まれ、喜ばれるキャラを実現させていきたいです。おそらく完全に満足いただくのは難しい部分だとは思いますが、その都度、試行錯誤していきます。

鈴木さん:★4の旅人への“覚醒”の実装も順次進めていきますので、そちらも楽しみにしてください。


 “天運の遊戯場”や“ソウル武器”などについて伺ったインタビュー後半は、近日お届け予定です。


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OCTOPATH TRAVELER 大陸の覇者

  • メーカー: スクウェア・エニックス
  • 対応端末: iOS
  • ジャンル: RPG
  • 配信日: 2020年10月28日
  • 価格: 基本無料/アイテム課金

OCTOPATH TRAVELER 大陸の覇者

  • メーカー: スクウェア・エニックス
  • 対応端末: Android
  • ジャンル: RPG
  • 配信日: 2020年10月28日
  • 価格: 基本無料/アイテム課金

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