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『オクトラ大陸の覇者』“絶頂”ボスやバトルの神演出が生まれたきっかけは?【授けし者編インタビュー:富・権力編】

タダツグ
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 スクウェア・エニックスのiOS/Android用RPG『OCTOPATH TRAVELER(オクトパストラベラー) 大陸の覇者』
が、“全てを授けし者”編の第2部に突入し、大きな話題を呼んでいます。

 ますます加速していくストーリー、その魅力の根源をお聞きするべく、プロデューサーの鈴木裕人さんと、シナリオを執筆されている普津澤画乃新さんにインタビューを実施!

 前編となる今回は、“全てを授けし者”編に至る3つの道筋から“富を授けし者”編と“権力を授けし者”編についてお聞きしました。

 まだメインストーリーを進めていない方でもお読みいただけるよう、ネタバレ要素はできるだけ排してお話をお聞きしていますが、微細なネタバレですら気になるという方はご注意ください。

  • ▲プロデューサーの鈴木裕人氏。
  • ▲メインシナリオを担当した普津澤画乃新氏。

物語は最新章で大きな転機を迎える──遊んだプレイヤーの反応は?

──5月末に“全てを授けし者”編の第2部がスタートし、全授編の4章が公開されました。プレイされたプレイヤーさんたちのリアクションをSNSなどでご覧になられたりはしていますか?

プロデューサー・鈴木裕人さん(以下、鈴木):私個人はTwitterなどで皆さんの感想を拝見していますね。ネタバレに配慮して感想を投稿してくださっており、たいへんありがたく思ってます。

 最新章に関しては、聖火騎士のロンドにスポットを当てつつ、これまで劣勢だった灯火の守り手たちにようやく光明が見えてきたこともあり、明るく受け止めてもらえているのが印象的でした。

  • ▲“全てを授けし者”第4章で公開された灯火の守り手のキービジュアル。聖火騎士であるロンドが中心に描かれている。

──第一部までのストーリーが重かったぶん、反撃の糸口をつかんだ感触があったのは大きいですよね。

鈴木:プレイヤーの皆さんも、反撃に転ずる展開を心待ちにされていたのかなと。

──普津澤さんとしてはいかがですか? シナリオを書きあげてから大分時間が経過しているとは思いますが、あらためてプレイヤーさんのリアクションをご覧になって。

メインシナリオ担当・普津澤画乃新さん(以下、普津澤):おかげさまで、プレイヤーの皆さんからのリアクションにはたくさんのエネルギーをいただいています。創作の糧になるというか、元気をいただけるので、たいへんありがたいです。

──素敵な相乗効果ですね。ご自身でゲームをプレイなさったりもするのでしょうか?

普津澤:もちろんプレイしていますが、メインストーリーは少し寝かせているところです。ゲームに限らず書籍やマンガなどもそうだったりするのですが、ある程度まとめて一気に楽しみたいもので。今はあえてブーストゲージをタメているってところでしょうか。

──僕が言うのもなんですけど、普津澤さんのシナリオに、ドット絵のキャラクターたちの演技や西木康智さんのサウンドが彩りを添えていて、演出のクオリティはものすごいことになっていると思います。それを一気にまとめてプレイするというのも、楽しみ方としては贅沢でいいですね。

普津澤:僕自身『オクトパストラベラー』が大好きなので、1人のプレイヤーとして楽しみです!

鈴木:ハードルが上がりますね……(汗)。

“富を授けし者”編:バルジェロファミリーに更なる活躍の場を。ボスの正体がバレないかヒヤヒヤだった?

──それではここからは“授けし者”編のシナリオについて、ネタバレを出来るだけ避けながらお話をお聞きしていきたいと思います。まずは“富を授けし者”編についてですが、こちらではバルジェロファミリーを中心に、ヘルミニア亡きあとのヴァローレで“持たざる者”との戦いが描かれました。この章で普津澤さんが描きたかったテーマはなんだったのでしょうか。

普津澤:“極めし者”編では富を持つ者を描きましたが、その対比として、“授けし者”編では持たざる者の物語を描かせてもらっています。持つ者と持たざる者の両面から“富”というものが何かを真剣に考えてみようというのが、マジメ寄りなテーマですね。

──それは確かにマジメ寄りなテーマだと思うのですが。つまりはマジメじゃないテーマもあったということですか?(笑)

普津澤:マジメじゃないというか……個人的なテーマのようなものですね。“富を授けし者”編はそもそも、お気に入りのバルジェロたちをもっと描きたいという気持ちが動機でした。なので「バルジェロたちのアツいストーリー」というのが、僕が最も描きたかったことです。

 これはオクトラジオでもお話ししたのですが、バルジェロと彼の物語が思い浮かんだとき僕はスクエニの社食で1人で泣いていました(笑)。

──本当にアツくて心が燃えるストーリーでした。クライマックスのバトル演出も相当なこだわりが盛り込まれていて、感動の嵐でしたよ。

普津澤:ありがとうございます!そろそろ僕もバルジェロファミリーに戻らねば……。

──ここでストーリーの構成方法についてお聞きしておきたいのですが。物語は“極めし者”編を書き上げたうえで、その続きとして“授けし者”編が考えられることになったのでしょうか? それとも、最初から“授けし者”編までやることを想定したうえで物語を構築されているのでしょうか?

鈴木:まずは“極めし者”編をまとめ終えたうえで、あらためて“授けし者”編に取り掛かってもらった形なので、シナリオ制作のアプローチとしては前者になります。

 以前のインタビューでもお話しさせていただいたかもしれませんが、最初は“富、権力、名声を極めし者”の物語を、それぞれ8章形式で書きあげてもらおうとしていたんですよ。

 そこで、まずは“権力を極めし者”編として、普津澤さんにパーディスとの戦いを書いてもらったわけですが、これはアプリゲームのシナリオボリュームとしては明らかに長いよね、ということになりまして。

──クオリティが高いぶん、ものすごいボリュームになったわけですね。

鈴木:はい。クオリティとしても申しぶんなく、権力だけでなくあらゆる者を極めた王の話でしたので、こちらは“全てを極めし者”編として昇華してもらいました。そのうえで、パーディスに挑む前に“富”、“権力”、“名声”に特化してキャラ立てされたボスを登場させる構成に見直したという経緯です。

──なるほど。そうしてヘルミニア、タイタス、アーギュストの物語が固まったあとで、あらためて“授けし者”編に取り組むことになったわけですね。

鈴木:はい。じつは“授けし者”編にも一足飛びで辿り着いたわけではなく、紆余曲折はあったんですけどね。最初は“富と権力を極めし者”みたいな、異なる属性を極めたキャラクターがボスに立つ構想もありました。

──そのお話ははじめておうかがいしました。

鈴木:発想としてはパズルのようで面白いと思ったものの、そのパズル的な構造を物語として描くのは難しいという側面もあり……。現代社会で考えると、それぞれを同時に手に入れてしまうことが多いじゃないですか。富を手に入れれば、権力や名声もついてくることなど。

 だったら発想を変え、“極めし者”のさらに上を行く存在として、それらの価値自体を定義し、授けた者がいるとしたらどうだろうというアイデアを出しあい、今の形に仕上げてもらうことになりました。

──ちなみに“富を授けし者”編でいえば、ボスとして立ちはだかる存在に衝撃を受けたというか。あの人物の正体について、予想できていたプレイヤーさんははたして居たのでしょうか?

鈴木:僕の把握している範囲では、ほとんどいませんでしたね。ただ、新章配信のキービジュアルにはさりげなく載せていましたので、バレないかどうかヒヤヒヤしていました。

──僕なんか完全に騙されたタイプですよ。伏線なんてほとんどなかったですよね?

鈴木:しいていえば、燃え盛るヘルミニアの屋敷から脱出するときに……って、これを言ってしまうとネタバレが過ぎますかね(苦笑)。

──読者さんのなかには、これから“授けし者”編をプレイされる方もおられるでしょうし、今回は控えますか……。いずれ近いうちに“ネタバレあり”でストーリーの謎を掘り下げる企画をご提案させていただきますので、そのときにこってりお聞かせいただければ嬉しいです。

鈴木:承知しました(笑)。

──なんにせよ“富を授けし者”編のラストバトルは、作中屈指のお気に入りです。クライマックスで挿入される“あの演出”には思わずこぶしを握ってしまったというか、感動して涙が……。

鈴木:あの演出はイベントチームとバトルチームが協力して仕上げてくれたんですよ。僕からも演出の方向性は指示したのですが、現場の熱量のおかげで想像以上のクオリティになりました。

 普津澤さんにもセリフを監修してもらいつつ、ラストバトルに相応しい出来になったと思います。自分としてもお気に入りのシーンです。

──大苦戦を繰り広げたうえでの神演出に、涙腺崩壊待ったなしでした。ちなみにボスの難易度については後日調整が入ったんですよね? 確かに表記レベルよりは手ごたえがあるように思えましたが(笑)。

鈴木:“富を授けし者”のラストを飾るバトルということで気合いを入れ過ぎたところもあり。プレイヤーの皆さんの感想や進捗データを参考に、後日調整させていただきました。ただ、大幅に弱体化したわけではありません。

普津澤:僕も調整される前に倒したかったです……(笑)。

──個人的には、ストーリーに登場する中ボスや大ボスにも相応の手ごたえはあってほしかったりします。極論、コンティニューを使えば想定レベル以下でもクリア自体は出来るわけですし。

鈴木:想定レベルという表現の仕方だと、仕様上、なかなか強さが伝わらなくなってきています。レベルに加えて、想定装備のGradeも表記したほうが、より直感的に伝わりやすいのかもしれません。

──レベルを上げて挑んでも勝てないという方には、その段階で集められる最新装備を揃えることでだいぶ楽になりますよ、ということはアドバイスしておきたいですね。

“権力を授けし者”編:わかりやすさを重視した王道ストーリー。ボスが生まれたきっかけは“絶頂”というキーワード

──それでは、次は“権力を授けし者”編についてお聞きします。ここでは“全てを極めし者”編の主要人物たちが西方からの脅威に立ち向かうことになりますが、こちらに盛り込まれたテーマはいったいなんだったのでしょうか?

普津澤:“権力を授けし者”に関しては、物語的なテーマはほぼないんですよ。あえて言うなら“シンプルでわかりやすい物語”でしょうか。個人的には、スナック菓子みたいなお話にしたいと思っていました。

──スナック菓子……というと?

普津澤:スナック菓子を頬張るようにアレコレ考えなくても楽しめる……そういうものにしたかったんです。“極めし者”編で人間の欲というものをこってり描いてきたこともあり、ちょっと空気を変えたものを書いてみたかったんですよね。

 なので、「オルステラの外からかつてない強敵がやって来るから、みんなでやっつけよう」というシンプルなお話を考えました。

──西方の国の圧倒的な軍事力には肝を冷やしたわけですが、かの国はオルステラよりも文明が優れていたりするのでしょうか?

鈴木:文明のレベルに関していえば、オルステラと大きく隔たりがあるわけではないです。ただ文化的な背景は全然違いまして。西方では武力抗争が日常なんですよ。実りを得られる地域は多くなく、その所有権を複数の部族で争い合って勝ち残ったところが総取りする……そんな文化圏です。オルステラと比べたら、ずいぶんと原始的なイメージですね。

──弱肉強食の世界なんですね。そして、そんな武力抗争を勝ち残ったガ・ロハの軍勢が、今度はオルステラに狙いを定めて攻め込んできた、と。たしかに構造としてはものすごくシンプルでわかりやすい。

鈴木:部族のなかには呪術師のような存在もいて。その人間が強い力を持つ土地としてオルステラに目を付けたことから、今回の侵略準備が始まりました。ちなみに、タトゥロック自身もその呪術師の血脈だからこそ、あのような不思議な力が使えるという設定です。

──合点がいきました。彼女が使うあの能力は、指輪の力ではなく呪術師としてのものだったわけですね。道理で……いやいや、これ以上書くとネタバレになりそうだから自重します(汗)。

鈴木:軍が攻め寄せる前に密偵も放たれていて、その土地の文化や戦力についてもかなりの精度で情報収集されていると思います。指輪に関する知識も、その情報収集のなかで蓄積されたものですね。

──そのへんぜひ掘り下げてお聞きしたいですけど、まだ時期尚早ですよね。これもネタバレ回のときあらためておうかがいするとして……。タトゥロックの人物像に関しては、どなたかモデルにした人物などはいるのでしょうか?

普津澤:とくにモデルはいないですね。ただ“極めし者”編に登場するボスキャラたちはいずれも濃ゆいというか、アクが強めの人間ばかりだったので。彼らに負けないキャラを生み出さなければいけないというプレッシャーのようなものはありました。

──かなりの難産だったのでしょうか?

普津澤:いろいろ考えていましたが、ある日、帰りに車を運転していると急に、「絶頂」というキーワードが天啓として降ってきまして。目を合わせただけで相手を絶頂に導いてしまう女帝……これならいける!という閃きから生まれたキャラクターがタトゥロックです。

鈴木:車内でアイデアが生まれたとき、事故にあわなくてよかったです(苦笑)。

──絶頂を超えて昇天というのはシャレになりませんからね(汗)。“権力を授けし者”編というか、タトゥロックとの決着はこれまでとは少し違った展開でしたので、このあとのお話が非常に気になっております。

普津澤:そこはもう、今のところは「お楽しみに」としか言えません(笑)。


 “名声を授けし者”や“全てを授けし者”についてお話をお聞きしていくインタビュー後半は、近日お届け予定です。


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OCTOPATH TRAVELER 大陸の覇者

  • メーカー: スクウェア・エニックス
  • 対応端末: iOS
  • ジャンル: RPG
  • 配信日: 2020年10月28日
  • 価格: 基本無料/アイテム課金

OCTOPATH TRAVELER 大陸の覇者

  • メーカー: スクウェア・エニックス
  • 対応端末: Android
  • ジャンル: RPG
  • 配信日: 2020年10月28日
  • 価格: 基本無料/アイテム課金

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