アドベンチャーゲームの魅力に立ち返った名作『AI:ソムニウム ファイル』レビュー。夢と現実から謎を追う

カワチ
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※『AI:ソムニウム ファイル』は、CERO Z(18歳以上のみ対象)のソフトです。
※18歳未満の方は購入できません。

 スパイク・チュンソフトから発売中のPS4/Nintendo Switch/PC(Steam)用ソフト『AI:ソムニウム ファイル(アイ:ソムニウム ファイル)』のレビューをお届けします。

夢と現実を行き来しつつ殺人事件の謎を追う

 『AI:ソムニウム ファイル』は現代の東京を舞台に、夢と現実を行き来しながら連続殺人事件の謎を追うアドベンチャーゲームです。プレイヤーは警視庁の先進式人脳捜査部隊“ABIS”に所属する警察官の伊達と、彼の相棒であり超高性能AIを搭載したアイボゥの視点で物語を進めていきます。

  • ▲主人公の伊達鍵。6年前に記憶を失い、それ以前のことは覚えていません。
▲AIを搭載した義眼のアイボゥ。現実世界では小動物のような姿をしていますが、夢の世界では女の子の姿に。

 現実世界では伊達が関係者に聞き込みをして情報を集め、夢であるソムニウムの世界ではアイボゥが重要参考人の心の壁を紐解きながら手がかりを探すことになります。

 現実世界で情報を集めていく際には、背景や人物を調べます。視点を好きに動かして好きな場所を調べたり、同じ場所でも何度も調べることで新しい発見をしたりと、自由に捜査を進めていくことに。

 おもしろいのは事件と関係ないところをたくさん調べることができること! クスッと笑える小ネタが満載でおもしろいです。スパイク・チュンソフトの過去作が元ネタになっているものもあるので、アドベンチャーゲームが好きならニヤリとすること間違いなしです。

  • ▲小ネタが満載なので、事件と関係ないところを調べるのも楽しいです。

 重要参考人の夢のなかで手がかりを探ることになるソムニウムパートは、障害となる“メンタルロック”を解除して深層心理の奥へと進んでいく必要があります。ただし、夢の世界に入れるのは6分間だけなので、その間に謎を解かなければいけないので緊張感がすごいです。

  • ▲6分間というのが絶妙で、クリアできるのかできないのか、絶妙な緊張感を味わえます。

 夢の中は物理法則を無視した不思議な仕掛けがたくさんありますが、入り込んでいる人物の心を表していることが多いため、対象者の持つトラウマのことなどを考えれば謎が解けることが多いです。そのため、仕掛けのなかから法則性を見抜いて事件の手がかりを得るのが楽しいです。

  • ▲入り込む人物によって、ステージの雰囲気や仕掛けが大きく異なるのも魅力のひとつです。

アドベンチャーゲームを知らない人にこそプレイしてもらいたい本作の魅力

 ここからは筆者の主観的な感想を多めに語っていきます。

 本作はアドベンチャーゲームということで、まずはアドベンチャーゲームの魅力について語っていきます。やはり、物語がゲームの主体になっていることがあげられると思います。アクションのような複雑な操作を必要としない一方でアニメやコミックよりもインタラクティブ性があり、自分自身で体験できるところがおもしろいです。

 事実、スパイク・チュンソフトは『弟切草』や『かまいたちの夜』からはじまり、『街』、『ダンガンロンパ』シリーズ、『極限脱出』シリーズなどプレイヤーを引き込むストーリーと、そのストーリーを楽しませるように工夫されたシステムのゲームをたくさん発表してきました。

 一方でアクションのように派手なシーンがなかったり、長い文章を読む必要があったりするため、ファン以外が手を付けづらいジャンルになっている現状もあります。個人的には「なぜこんなにおもしろいアドベンチャーゲームが売れないんだろう」と思うことが多いです。

 そんな中、本作はアドベンチャーゲームの魅力を掘り下げるものになっています。

 文章はビジュアルノベルが流行する前のコマンド式アドベンチャーのように短いセンテンスの文が続くため、文章の量に圧倒されることはありません。普段から小説などを読まない人でも楽しみやすいテイストになっています。

  • ▲ひとつひとつの文章は短いので読みやすいです。また、話題にしている人物が画面に表示されるなど、視覚的にプレイヤーを飽きさせない工夫も。

 その一方でキャラクターに振ることができる話題や調べられる背景は豊富に用意されており、やり込みがいがあります。ちなみに、調べてもテキストが変わらない部分は色が変わっており、場所移動できるようになった時は文字が点滅して教えてくれるため、ストレスなくゲームを進行させられます。

 また、本作のおもしろいポイントは“ルート分岐”。本作の“ソムニウムパート”は謎の解き方が複数用意されており、その解きかたによってその後の物語が変わってきます。あるルートでは重要だったキャラクターが、他のルートではあっさり死んでしまうことがあり、驚かされました。また、ルートによってはキャラクターの意外な一面を知ることもできるので、プレイしたルートの順番によってそれぞれのキャラクターに対する印象も変わってくると思います。

  • ▲大きく2つのルートに分かれる本作ですが、どちらのルートに進むかで物語がかなり変わってきます。

 そして、最大の注目要素はストーリーです。まだプレイしていない人もいると思うのでネタバレはしませんが、怒涛の展開の連続! 本作は警察官の伊達とAIを搭載した義眼のアイボゥが、左眼をくり抜かれるという凄惨な事件の謎を追っていくというものですが、次々に事件が起きてメインのキャラクターであっても容赦なく犠牲になるため、目が離せません。

 また、キャラクターの過去をはじめとする、意外なつながりが次々に明かされるような仕組みになっているのも特徴です。

 こちらは謎に包まれたまま物語が進んでいくというよりは「もしかして、こういうことなのだろうか?」と予想しながら物語を進めることができるぐらいの情報の明かしかたになっています。そのため、自分自身でも事件を推理しながら物語を楽しめるような仕組みになっています。

  • ▲序盤こそゆったりとした物語ですが、中盤から一気に加速していきます。

 また、ストーリーを進めていくと、手に入れた情報で重要参考人を問い詰める“取り調べ”があり、ここで事件の内容について整理することが可能。

 ソムニウムパートは、普段のカエルのような姿から女の子の姿になったアイボゥを操作することになりますが、選んだ選択肢によって多彩な反応を見せてくれるので、彼女のリアクションを見るのが楽しいです。 

  • ▲アイボゥのいろいろなリアクションを見ることができるのが楽しいです。

 凄惨な事件の謎を追うストーリーのため、ダークな雰囲気のある本作ですが、上記のアイボゥのリアクションをはじめ、女子高生のネットアイドル・左岸イリスが伊達を騙して自分を一緒に連れていくように交渉したり、ネットアイドルオタクの青年・真津下応太が自分でいくつもSNSのアカウントを作ってイリスに気にいられようと画策したりと、コミカルでおもしろいシーンが満載です。ぜひ日常と事件のギャップを体験してみてもらいたいですね。


 先が気になる展開や個性的なキャラクター、ルートによって変わるストーリーなどアドベンチャーゲームの魅力が詰まった作品になっています。アドベンチャーゲーム好きはもちろん、アドベンチャーゲームをプレイしたことがないという人もプレイしてください。

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AI: ソムニウム ファイル

  • メーカー: スパイク・チュンソフト
  • 対応機種: PS4
  • ジャンル: ADV
  • 発売日: 2019年9月19日
  • 希望小売価格: 6,800円+税

AI: ソムニウム ファイル

  • メーカー: スパイク・チュンソフト
  • 対応機種: Switch
  • ジャンル: ADV
  • 発売日: 2019年9月19日
  • 希望小売価格: 6,800円+税

AI:ソムニウム ファイル(アイ:ソムニウム ファイル)(ダウンロード版)

  • メーカー: スパイク・チュンソフト
  • 対応機種: PS4
  • ジャンル: ADV
  • 配信日: 2019年9月19日
  • 価格: 6,800円+税

AI:ソムニウム ファイル(アイ:ソムニウム ファイル)(ダウンロード版)

  • メーカー: スパイク・チュンソフト
  • 対応機種: Switch
  • ジャンル: ADV
  • 配信日: 2019年9月19日
  • 価格: 6,800円+税

AI:ソムニウム ファイル(アイ:ソムニウム ファイル)

  • メーカー: スパイク・チュンソフト
  • 対応端末: PC(Steam)
  • ジャンル: ADV
  • 発売日: 2019年9月18日
  • 価格:6,800円+税

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