収録不可なら『メガドラミニ2』は作られなかったかもしれないタイトルとは? 第3弾タイトルの経緯や版権秘話も

豊臣和孝
公開日時

 セガから、10月27日に発売予定のゲーム機『メガドライブミニ2』。その開発者インタビューを掲載します。

 『メガドライブミニ2』は、令和初のゲーム機として話題を呼んだミニハード『メガドライブミニ』から、内容を一新し、大きくパワーアップした新ハード。収録タイトルは、50タイトル以上が予定されています。

 収録予定のタイトル第3弾発表にあわせて、プロデューサーである奥成洋輔さんへのインタビューを実施。製品開発の経緯に加えて、第3弾タイトルの魅力について語っていただきました。


成功を収めた『メガドライブミニ』をもう一度!

――改めてになるのですが、本プロジェクト発足の経緯などを簡単にご説明いただけますでしょうか。

 2019年9月に『メガドライブミニ』を発売させていただきました。その発売直後に『ゲームギアミクロ』の企画がスタートしました。ただこれの立ち上げは私ではなく、営業部にある物販チームというところからです。普段は東京ゲームショウやセガストアなど向けのグッズを作っている部署で、翌年がセガ60周年でいろいろなイベントを企画していたので、もともとは会場限定の記念グッズだったんです。この企画を進めるにあたり、協力してほしいという依頼が私に来ました。

 いざ翌年の2020年になって、『ゲームギアミクロ』を始めるという時に異動の辞令があり、この物販チームに僕が加入したのです。この時点では、まだ『メガドライブミニ2』の話はなかったのですが、異動はミクロだけでなく、「今後も『メガドライブミニ』のようなものを中期に渡って考えていくように」という、将来を見据えたものだったんです。

 ミクロを進めつつ、「これから何をやっていこうか?」というのを考える必要があったんですね。例えば『セガサターン』、『ドリームキャスト』、『SG-1000』、『セガ・マークIII』などのミニを作る可能性や、「アーケードタイトルのミニ」など。ただ、それはすでにグループ会社のセガトイズに許諾していて、『アストロシティミニ』として発表されたりもしたので、「先を越されたか」と思ったりとか(笑)。

 そういった最中、新型コロナウイルスの影響で世の中が一変し、世界的な半導体不足などが起こってしまい、より高性能な半導体が必要な『セガサターン』や『ドリームキャスト』のミニを作るには難しい環境になってしまいました。

 最終的に「今やれる最善は何か?」を考えた時、リスタートという意味も含めて、一度成功を収めた『メガドライブミニ』をもう一度チャレンジするのがもっとも確実だろうと判断しました。そこで初めて『メガドライブミニ2』のプロジェクトが生まれたわけです。

 ただ、本体はそのまま、データの中身を変えただけでは商品としておもしろくないので、さらに楽しめるものを作ろうと考えた結果が、本体デザインの変更や『メガCD』タイトルの収録になります。

――部署はどのような規模でやっているのでしょうか?

 部署といってもですね、実際に作業をしているのは僕を含めて2人です。

――2人ですか!? 中期的にやるならもっと大勢かと思っていました。

 中心になっているのは2人ですが、『メガドライブミニ』は元々“特別プロジェクト”という形でいろいろな部署から腕利きに協力いただいていました。そのため、うちの部署以外のメンバーにも、引き続き協力してもらっています。

――M2(エムツー)さんも同様に、という感じですか。

 そうですね。変な話そこは“絶対”というわけではないんですが、今のところ「エムツーさんを使わない理由がない」のです。15年以上一緒に仕事しているので話がツーカーで通じますし、1の要求に対して10返ってくるところがあり、そこはうまくやっています。

 僕がプロデューサーをやっている時は、最初にやることを全部ひとりで決めちゃうんですが、そこもエムツーさんはわかっていて、私のオーダー範囲のなかで創意工夫を駆使してくださっています。今回もいい仕事をしてくれましたね。

ターゲットを絞って濃度が増した『メガドライブミニ2』

――第2弾までタイトルを発表した時点でのユーザーの反応はいかがでしたか?

 毎回楽しませていただいています。ちなみに発表するタイトルの順番は僕が決めています。毎回やきもきさせてすみません(笑)。

 ここまでのコンセプトを伝えると、まず第1弾の発表は、『メガドライブミニ』という夢の続きですよということをわかりやすく理解いただけるように、『メガドライブミニ』の発表で一番盛り上がった、第4回の“びっくり話”をそのまま踏襲するかたちで構成にしました。その一方で、番組のオープニングのためだけに、殆ど死んでいる先生に『異世界おじさん』の新作を描き下ろしていただいたり、新日本プロレスの協力による謎のプロモーションビデオを流してみたり、メガドラ好きなファンの方の思い浮かべる“セガらしさ”も増していたかと思います。

 第2弾は“周辺機器”ですね。商品紹介コーナーみたいな感じになりました。今回の『メガドライブミニ2』では、電波新聞社さんのご協力により、本体より高い周辺機器『サイバースティック』の発売が実現しましたので、これの発表を中心に据えました。

 さらに前回同様バッファローさんにも全面的にご協力いただいていて、今回はHub以外にマウスにも対応となったので、そういう話をまとめてさせていただきました。

 特に『サイバースティック』は全5回の発表会の最後に出してもいいくらいのインパクトある商品だと思いますが、いきなり「19,800円の周辺機器を買ってください!」と言われても困惑される人も多かろうということで、なるべく早めに告知しておこうと、このタイミングで発表させていただきました。

――これまでの発表で一番反響があったのは、『サイバースティック』ですか?

 第1弾は『メガCD』で、第2弾は『サイバースティック』と対応ソフトですね。実は『メガドライブミニ』に比べて『メガドライブミニ2』では想定しているファン層を広げていないんです。

 前回の『メガドライブミニ』は、『メガドライブ』というゲーム機を知らない人にも触ってもらいたかったので、ゲームファンなら誰でも楽しめるものを目指しました。変な言い方をすると、“キレイな『メガドライブ』”にすることを心掛けたというか(笑)。つまりは、「『メガドライブ』自体を知らなくても収録されているゲームは知っている」というようなタイトルを積極的に選んでいます。

 セガであればメジャーな『ぷよぷよ通』や『テトリス』、『ファンタシースター ~千年紀の終りに~』など、シリーズとして今でも続いているものになります。そのへんを“つかみ”にしつつ、購入後にせっかくだから他の見知らぬゲームもやってみるかと『ダイナブラザーズ2』などディープなところを遊んでもらって、メガドライブの魅力を知っていただく、というようなタイトルを集めたのが『メガドライブミニ』です。

 ただ、私のように当時から『メガドライブ』にどっぷりハマっていた人には、「もっと濃いゲームが欲しい」というご意見もあったと思います。今回の『メガドライブミニ2』は、『メガドライブミニ』でメガドライブのファンになった方と、昔からのメガドライブファンに、より喜んでもらえるタイトルになっています。

 通常2作目を作る時は1作目よりももっと多くの人に買っていただこうと考えるものなのですが、先述のように半導体不足のため、前回ほど商品の数を用意できない問題があり、どんなに頑張っても前作以上には売れないんですね。そのため、普通とは異なり、前回のお客様からターゲットの範囲を広げずに狭めたわけです。

 そのため、反響の大きかったタイトルの続編は積極的に選んでいます。『サンダーフォースIV』や『イチダントアール』なんかがそうですね。

――ターゲットを限定したとおっしゃられましたが、それでもバランスがとれているように感じられました。尖っているタイトルはトコトン尖っているのですが……。

 『メガドライブ』を扱う限りはどうやっても尖ってしまうので(笑)。

 第1弾のラインナップは『メガCD』のアピールの他は、前回の雰囲気が残るラインナップを加えて発表しました。「もし『メガドライブミニ2』を作るならこういうものが欲しい」という皆さんの声に応えるようなラインナップですね。

 ですから、前回反響のあった、キャラクターもののゲームや、メガドライブ版『ダライアス』を作られた小西秀樹さんが手がけた『ファンタジーゾーン』の移植など、皆さんが想像したであろうタイトルを最初から見せました。

 お客さんの想像を越えたものを発表したのが第2弾です。『サイバースティック』の話をいきなり第1回にされても、頭が追いつかないですよね(笑)。

 そして、今回発表した第3弾で、ようやく皆さんが長年待ち続けていた「『メガCD』といえばコレ!」というあのタイトルがようやく発表できたんです。

第3弾発表タイトルをそれぞれ解説

『エイリアンソルジャー』
『タツジン』
『ファイナルファイトCD』
『スーパーストリートファイターII ザ ニューチャレンジャーズ』
『餓狼伝説2 新たなる闘い』
『ああ播磨灘』
『ぎゅわんぶらあ自己中心派 片山まさゆきの麻雀道場』
『ルナ ザ・シルバースター』
『ルナ エターナルブルー』
『ワンダーメガコレクション』
『三輪サンちゃん』

『エイリアンソルジャー』

 実は本作は、前回アジア版の『メガドライブミニ』にも収録されていまして、日本でも『エイリアンソルジャー』発売25周年として極少数販売したことがあるのですが……今年は開発元のトレジャーさんが創立30周年、さらにはこのタイトルと縁の深い漫画『異世界おじさん』のアニメも放送されるというタイミングでしたので再び選びました!

 「『メガドライブ』といえばトレジャー、トレジャーといえば『メガドライブ』」ということで、前回トレジャー開発のタイトルをかなりフィーチャーしました。日本では『ガンスターヒーローズ』、『ダイナマイトヘッディー』、『幽☆遊☆白書 魔強統一戦』の3本を選んだんですけど、北米のスタッフからは「『ライトクルセイダー』をぜひ入れてほしい」という話がありました。そこでそれは欧米向けに収録しました。

 『エイリアンソルジャー』も確かにメガドライブの名作ですが、『メガドライブミニ』の40本中、トレジャー作品が4本入るのはちょっとバランスが偏りすぎると思いまして、外したんですね。内容が『ガンスターヒーローズ』の発展形なので似たところがあるのと、最初にプレイした人はもれなく瞬殺されるという、前回目指した「きれいな『メガドライブ』」らしくないハードルの高さの問題もありました。

 それでもどこかには忍び込ませたいと思って、アジア版『メガドライブミニ』に、国外で入れられない『幽☆遊☆白書』の代わりとして収録したんですが、「どうして日本版に入れてくれなかったんだ!?」という声もたくさんいただきました。その声に応える形にもなりますね。

 ちなみにアジア版『メガドライブミニ』の出荷台数は、全世界の出荷数全体の1/20程度と、4種類あるメガドライブミニの中で一番少ないんです。持っている方は大事にしてください!

『タツジン』

 これも前回収録候補でしたが、選に漏れたタイトルです。東亜プランさんのタイトルは前回『スラップファイト』、『スノーブラザーズ』を収録したのですが、これにはそれぞれ理由がありました。

 『スラップファイト』は『メガドライブ』でしか遊べないアレンジモードが入っていることも含め非常によくできたゲームですが、なかなか触れられる機会がなかったので、この機会を利用して多くの人に遊んでもらいたかったんです。

 東亜プランさんのタイトルは長らく復刻が実現できなかった時代があり、さらにこのメガドライブ版『スラップファイト』は発売はテンゲンさん、移植開発はマインドウェアさん、音楽は古代祐三さんが担当されている……ということで権利が複雑で、復刻するには特別難易度が高そうなゲームだったのです。ですが、たまたま東亜プランの権利を管理されているTATSUJINさん、音楽の古代さん、開発を担当したマインドウェアさん、どこも僕が連絡を取れそうな方々だったんですね。「もうこれを復刻できるのはこの機会しかない!」と思って、『メガドライブミニ』収録のために皆さんにお願いをして回って、収録できたのです。

 一方で『スノーブラザーズ』は、固定画面アクションゲームが『メガドライブミニ』にひとつくらい欲しかった中で、最適だったので選びました。

 結果、東亜プランの王道タイトルを『メガドライブミニ』に入れることができませんでした。決して変わり種だから入れたかったわけではないんです。

 『タツジン』は、メガドライブで出ている東亜プランタイトルの中でもっともメジャーなタイトルだと思います。ジャンル的にも頂点に位置した時の作品で、『メガドライブ』のゲームの中でも知名度も高いので、選ばせていただきました。

 一方でこのゲーム、メガドライブ版はBGMのテンポが速いという、アーケードゲームファンには有名な話題があります。実はBGMがアーケード版よりアップテンポになっているんですよね。

 個人的にはアレはアレでよかったと思っているんですけど、あまりにもよく話題にされるので「アーケード版と同じテンポにすることもできるだろうか?」とエムツーさんに相談したところ、これは比較的簡単に対応できるということで、今回はアーケード準拠のテンポでも遊べるようにしました。当時遊んだ方は新鮮に感じられるかもしれませんね。

――ショットなどの違いや差はメガドライブ版のままですか?

 はい、違うのは曲の再生速度だけで、ゲーム自体はメガドライブ版です。『メガドライブミニ』はあくまでも『メガドライブ』を追体験するためのゲーム機であって、アーケード版をやりたい人は今ならタイトー様の『EGRETII mini』やセガトイズの『アストロシティミニV』が選択肢としてありますので、そちらを選んでいただければと。

 17年前にエムツーさんと初めて組んで、PS2『SEGA AGES2500シリーズ VOL.20 スペースハリアーII〜スペースハリアーコンプリートコレクション〜』を作った時にもどこかで話していることなのですが、人によって“オリジナル”は違うんです。

 多くの人は初めて登場したアーケード版がオリジナルですが、『セガ・マークIII』で初めてハリアーをプレイした人は『セガ・マークIII』版が、『メガドライブ』から入った人は『スペースハリアーII』が、その人にとってのオリジナルになります。そこで、あなたの“オリジナル”が、このソフトの中のどれか入っているので体験してくださいというのが、後期『SEGA AGES2500シリーズ』のコンセプトだったんですね。

 『メガドライブミニ2』においては、逆にメガドライブというハードに絞った追体験になるので、アーケード版と挙動の違いがあっても「それは『メガドライブ』だからです」ということです。『タツジン』のBGMについてはそのコンセプトを逸脱しない範囲で対応しましたが、他タイトルに関しても基本的に当時のままであることが大事なんです。

『ファイナルファイトCD』

――メガCD版『ファイナルファイト』が好きな人は、「アーケード版に少しでも近づけよう」という開発者の努力の痕跡に惹かれているのではないかと感じています。

 『メガCD』という、いろいろ制約の多いプラットフォームの中で、アーケード版を再現したい当時の最適解ではないでしょうか。これもメガCD版を遊んでもらうための収録なので、よく言われるガイのパンチ速度も含めてそのままです。今はカプコンさんからアーケード版『ファイナルファイト』を遊ぶ手段はいろいろと提供されていますので、『メガドライブミニ2』ではアレンジ音楽やタイムアタックモードなど、オリジナルとは一味違う『ファイナルファイト』を体験していただければと思います。

 『メガドライブミニ』では、『ベア・ナックルII 死闘への鎮魂歌』を遊んでくださった方も多かったと思いますが、当時も『ファイナルファイトCD』は『ベア・ナックルII』の後発だったんですよね。『ベア・ナックル』は『ファイナルファイト』フォロワーですが、ジャンルを確立させた元祖の魅力というのは、このメガCD版でも存分に味わえると思うので、ぜひチャレンジしてみてください。

『スーパーストリートファイターII ザ ニューチャレンジャーズ』

 『メガドライブ』の『ストII』シリーズは、前回の『ストリートファイターII ダッシュプラス』とこの2本が発売されていて、これは2作目です。前回の『ダッシュプラス』収録は「カプコンさん、『ストII』さん、『メガドライブ』へようこそ!」という当時のインパクトの強さもあってメガドライブの歴史を語るうえで選びました。

 一方で『ストII』 シリーズは、今ではアーケード版を簡単に遊べる環境があるじゃないですか。先日も『カプコンアーケードスタジアム』でプレイできる『ストリートファイターII』が無料で配信されましたよね。僕も買ってなかった機種のものをダウンロードしました。

 このように長年愛され続ける『ストII』は、いつでもどこでも気軽に遊びたいんですよね。『メガドライブミニ』も、プレイされた率でいうとかなり高かったのではないかと思われます。そんなシリーズは、ぜひ『メガドライブミニ2』にも存在してほしいというのがあって、2作目の『スーパーストリートファイターII ザ ニューチャレンジャーズ』の収録をカプコンさんにお願いしました。当時スーパーファミコン版とメガドライブ版は同時発売されており、北米を中心に相当売れたんじゃないかと思っています。

――当時購入しましたが、メガドライブ版のほうが手触りや音がよかった印象です。

 『スーパーファミコン』版が32Mbitで、メガドライブ版は40Mbit。容量の差でメガドライブ版のほうが細かい点でよかったところもあったのかもしれませんね。アーケード版にあったトーナメントモードも収録されていたのがうれしかったですね。

『餓狼伝説2 新たなる闘い』

――これまた、数ある『餓狼伝説2』移植の中でもクセが強いという印象があります。

 『メガドライブ』時代の格闘ゲームといえば、『ストII』シリーズと『餓狼伝説』シリーズが2大ブランド。「1つのゲーム機で両方遊べたら最高じゃない!?」という気持ちがあって「『メガドライブミニ2』なら両方遊べます」と言ってみたかったのが1つの理由にあります(笑)。

 あとはメガドライブ版『餓狼伝説2』にはディープなファンがいるんです。わからない人はピンとこないでしょうから補足すると……アーケード版『餓狼伝説2』の後に『餓狼伝説スペシャル』というアレンジ版が出ていて、追加キャラの他、ゲームバランスがかなり変わって完成度が高められているのです。

 でもメガドライブ版『餓狼伝説2』が発売されたのは、アーケードに『餓狼伝説スペシャル』が出たあとなんですよ。おそらくメガドライブ版の移植チームは「『餓狼伝説スペシャル』がすでにあるのに『餓狼伝説2』をそのまま移植するのは勿体ない」と思ったのではないかと。そこであえてゲームバランスの忠実再現ではなく、『餓狼伝説スペシャル』を横目に、『餓狼伝説2』という素材で新たに新しいゲームバランスを構築しようとしたのではないでしょうか。開発メンバーにインタビューしたわけじゃないので真相はわかりませんが……。

――当時遊んだ人の受け止め方も、おおよそそのような感じだと思います。タカラ(現タカラトミー)さんは当時いろいろなハードで、SNK作品を発売されていますね。

 はい。タカラさんはいろいろなハードに移植されていたのに、復刻される気配がない。『メガドライブミニ』なら復刻ができるだろうと思って、まずSNKさんに連絡をとりました。実は、現在のSNKの代表取締役社長CEOである松原健二さんは、僕が『メガドライブミニ』を出す時にセガの社長だった方なんです。

 おかげで「『メガドライブミニ2』を作るのでぜひ許諾を」とご相談しても、細かい説明は不要でした。まあ、実際に連絡したのは宮崎(※)なんですけど。

宮崎浩幸さん。『メガドライブミニ』を奥成さんと手がけられた。現在、グループ会社であるアトラスに所属。

――縁があったわけですね。

 ただ、メガドライブ版『餓狼伝説2』の発売はタカラトミーさんなので、そちらの許可も取る必要があるという話でした。タカラトミーさんには、長年お世話になっているので、改めてお願いしたところ、無事許諾をいただけて、メガドライブ版『餓狼伝説2』が28年ぶりに復活できることとなりました。

――先ほど「『メガドライブ』で2大格闘ゲームが遊べたら最高だ!」ということでしたが、『メガドライブミニ』の時点でそういう考えはあったのですか?

 前回の『メガドライブミニ』は『幽☆遊☆白書』を収録したかったんです。格闘ゲームを何本入れるかというところで、カプコンさんから『ストII』の許諾をいただいたあとに『幽☆遊☆白書』の許諾がとれたので、格闘ゲーム関連はそれ以上進めませんでした。もちろん『餓狼伝説2』は候補に入れていたんですけど……。

――裏技関連はそのまま入っているのでしょうか?

 もちろん使えます。ファンの方はお楽しみに。

『ああ播磨灘』

――版権タイトルですが、これはセガがアニメのスポンサーだったから取得できたのでしょうか?

 そうだったんですか、初めて知りました。そういったことは特にないですね(笑)。今回は50本もあるなら、ひとつ変わり種を入れてみようかと考えました。そこでやってきたのが『ああ播磨灘』です。

――確かにゲーム内容はほぼ格闘ゲームですが……。

 メガドライブにはジャンルマークがあるんですが、『ああ播磨灘』はスポーツではなくアクションのマークがついていました。当時は“対戦格闘ゲーム”というジャンルがなかったのですが、内容は相撲ではなく格闘ゲームなんですよね。なお今回『メガドライブミニ2』に収録する際には、ジャンルを細分化するために前作同様対戦格闘マークに変えています。

 ちょっと話が前後しますが『ぎゅわんぶらあ自己中心派 片山まさゆきの麻雀道場』を収録しようという話が先にあって、講談社さんにお話を持ち込んだところ、非常にスムーズにお話を進めることができました。「せっかく講談社さんと話ができるなら、もう1本お願いしよう!」と『ああ播磨灘』を収録する運びとなりました。

 インパクトがあって、非常にメガドライブらしさもあるタイトル。50本ゲームが入っている中で、『ストII』、『餓狼伝説2』という王道のあとに「もう少し他の格闘ゲームも遊んでみたい」と思った時に、『メガドライブ』らしい異色作があってもいいかなと。

――原作を含めて、クセが強いタイトルですね。

 実はWiiのバーチャルコンソールの時にも『ああ播磨灘』を出したかったのですが、その時は諸事情で許諾が降りなかった。今回、リベンジでご相談したところ、無事収録できました。

 プランナーが『バトルゴルファー唯』の方、というのは後になって知りましたが、さらに音楽が『スーパー忍II』と同じスタッフで、ほぼ同じ時期に作られているため、音楽的に相通じるところがあります。ゲームカートリッジ容量の24Mbitは『ベア・ナックルII』や『餓狼伝説2』と同じで、とても豪華な作り。画面いっぱいのビジュアルシーンもあります。

 『メガドライブ』が90年代のハードなので『まじかる☆タルるートくん』や『ふしぎの海のナディア』を含め、あの時代の懐かしいイメージを感じてもらえるのではないかと思っています。

『ぎゅわんぶらあ自己中心派 片山まさゆきの麻雀道場』

 作品自体は『メガドライブ』よりも以前から有名なんですが、『ぎゅわんぶらあ自己中心派』はゲームアーツさんの麻雀ゲームの定番で、ありとあらゆるPCやコンシューマに移植され、長く親しまれています。

 実は、メガCD版『ぎゅわんぶらあ自己中心派2 激闘!東京マージャンランド編』が本当に傑作でよくできているんですが、残念ながら今のご時世では復刻しづらい内容です。しかしメガドライブ版の『1』ならばいけるだろうと再度お願いしました。

 50本あるなら麻雀ゲームが1本あってもいいかなと。昔ドリームキャストの『あつまれ!ぐるぐる温泉』で、ずっと麻雀だけを続けている方が沢山いて印象に残っているうえに、その後『龍が如く』でも麻雀だけをずっとやっている人がいらっしゃるという話を聞きましたので、『メガドライブミニ2』を長く遊んでもらううえではいいのではないかと。

 ゲームアーツさん、講談社さんに許諾をいただいて、一番の定番タイトルが収録できることになりました。

『LUNAR(ルナ) ザ・シルバースター』、『LUNAR(ルナ) エターナルブルー』

――3弾の目玉はやはりコレでしょうか。『メガCD』のRPGといえば『ルナ』シリーズを上げる人は多いと思います。

 会社からプロジェクトの承認をもらう前の準備段階の時期にさかのぼるのですが……まずエムツーさんに「『メガドライブミニ2』で『メガCD』をやろう」という合意がとれた後、すぐにゲームアーツさんに連絡をとってテレビ会議で相談しました。「これから『メガドライブミニ2』の企画を進めようと思っているのですが、今回の目玉は『メガCD』です。その時にゲームアーツさんのタイトル許諾をいただくことはできますか?」と。

 なぜなら『メガCD』を復刻するのにゲームアーツタイトルが1本も入らないなんてありえないじゃないですか。「もしゲームアーツさんに断られたら、このプロジェクトの成功は無理だろう」と考えていました。でもおかげさまでゲームアーツさんからは「許可をいただく方々が沢山いらっしゃるので、必ずできるとは言えませんが、できる限りご協力します」という、素晴らしいお返事をいただけました。

 そのあと実際にプロジェクトが立ち上がるまで半年以上かかりましたが、このプロジェクトの始まりはあの時にゲームアーツさんの許可をいただいたことでしたね。

――ユーザーの認識としても、ゲームアーツさん抜きに『メガCD』は考えられないと思います。

 ただ、最終的に『ルナ ザ・シルバースター』の許諾がとれたのは、本当に最後の最後でした。50タイトル以上あるなかでほぼ最後です。『ルナ ザ・シルバースター』と『ルナ エターナルブルー』の許諾の対応は、ゲームアーツさんにすべてやっていただきまして、本当に感謝しかありません。ありがとうございました。

 『ルナ』シリーズはメガCDでの発売の後も、他ハードに移植されたり、派生やリメイクがリリースされたりと展開していたのですが、メガCD版をそのまま遊べるチャンスは一度もありませんでした。リメイク版はアニメーションムービーが入るなど、当時のファンとしては夢のように豪華なタイトルだったと思うんですけど、最初にメガCD版を遊ばれたお客様にとっては、豪華なものより「最初に遊んだものを遊びたい」という想いがあると考えました。先ほど話した「オリジナルを遊びたい」という話ですね。

 第1弾で発表した『シルフィード』もそうなんですけれども、とにかく職人が作ってる!と感じるすごさなんですよね。操作感やボイスキャストの演技、ドット絵の妙、圧巻のイベントシーンを重ねたムービーシーンなど、『メガCD』で動いていたすごさをそのまま『メガドライブミニ2』でお楽しみいただけます。


 まず『ルナ ザ・シルバースター』は、RPG不足と言われていた『メガドライブ』において大作らしいインパクトがありましたし、『メガCD』の贅沢なつくりを最初に経験させてくれたことも人気の1つだと思います。復刻の機会がこれまでなかったことも含めて2作品を収録することを最初から考えていました。

――続編『ルナ エターナルブルー』は“『メガCD』最後の超大作”というキャッチフレーズで、気合いが入っていたという印象です。


 発売が94年12月で、すでに『セガサターン』が出ていましたからね。

――細かいところになりますが、『2』にはシングルCDが入っていましたがこのあたりは?

 そういう部分のフォローは今回していないですね。当時の商品を残している方は大事にしていてください(笑)。

 ゲームのメニューに使っているパッケージ画像には“初回限定CDつき”と書いてあるのですが、これはそのままスキャンしたもの。消すとバランスが崩れるのでそのまま残しましたが、聴くことはできません。

『ワンダーメガコレクション』

――コレも相当に貴重なタイトルではないかと。

 これは発表第3弾のエピローグみたいな感じで入れてみました。『メガCD』の話題をする中で「『ワンダーメガ』のことも思い出してね!」という意味で収録を決めました。

 ビクター版の『ワンダーメガ』にのみ同梱されていたセガのゲーム集なんですが、ソフト自体の存在を知らない方が多そうなことに加えて、個人的な理由として、『ピラミッドマジック総集編』というゲームを収録したかったということが理由にあります。

 『メガドライブミニ』で、当時のオンライン配信サービス“ゲーム図書館”にて配信されたゲームの詰め合わせソフト『ゲームのかんづめ お徳用』を収録しました。その中に『ピラミッドマジック』があるのですが、実はたくさんあるシリーズのうち1作目しか入っていなくて、クリアすると“つづく”と出て終わるわけです。

 SNSを見ていると、「『ピラミッドマジック』がおもしろい! これは何面あるんだろう!?」と喜んでいた方が「最終面をクリアしたら“つづく”って出たけど、どういうこと!?」と悲しい感想を挙げていただいていました。そんな方が何人もいて、思った以上に反響があって「ああ、どうしよう」と。

 僕も実は、『ピラミッドマジック』は総集編が入っているだろうと勝手に思っていたんですね。後から『1』しか入っていないことが発覚して、『メガドライブミニ2』をやるチャンスがあるなら『ピラミッドマジック総集編』を収録したいと考えていたのです。

 『総集編』は単体で入れるか、『ワンダーメガコレクション』、あとはメガCDの『ゲームのかんづめ Vol.1』があります。しかしここで前作と同じような『ゲームのかんづめ』を入れて、「同じミニゲームがたくさん入っている!」というのは苦労のわりに芸がないじゃないですか。

 『ワンダーメガ』の思い出を入れたかったこと、『ピラミッドマジック』総集編を遊ぶ環境が欲しかったこととあわせて収録を決めました。

 結果的に『フリッキー』と『パドルファイター』の2本は2度収録になってしまうのですが、この2タイトルはBGMや音声演出が追加されていたりと豪華になっており、そういう部分をちょっと楽しむくらいならいいかなと。

 さらに、単体でも発売されていた『クイズスクランブル』が入っているのもポイントです。おそらく本作が、セガ初の社内開発のメガCDタイトルです。

 なおクイズの問題は、今年51の僕でも思い出せないような60年代、70年代の時事ネタが続々出てきます。完全に昭和です。「当時としても話題が古すぎるだろう!」という問題が続々出てくるので、その点は逆に注目かもしれません。中断セーブでズルをしないと、40代以下の方はまったく先に進めないと思います。

 そういうなかなかハードなゲームなのですが、演出のシュールさがまた不思議な魅力で、幕間の演出見たさに頑張っていただくのもよろしいのではないかと思います。しかしクイズゲームを作ると考えた時に、どうしてこういう演出になったのか。当時のセガのセンスは恐ろしいなと改めて感じました。

 ちなみに本作はCDカラオケとして再生すると歌を歌うこともできたのですが、『メガドライブミニ2』では全カットしてます。あくまでゲームソフトとして遊んでください。

『三輪サンちゃん』

――一番ビックリしたのがこの『三輪サンちゃん』です。以前に、エムツーさんが勝手に移植を考えていたという、セガタイトルですね。

 これは前回の一部のインタビューを読んでいた皆さまのご期待通り、オマケとして収録させていただきました(笑)。

 『ニンテンドークラシックミニスーパーファミコン』に『スターフォックス2』が入っていたことを受けて、前回『メガドライブミニ』のサプライズタイトルで『テトリス』、『ダライアス』を用意させていただきました。

 『メガドライブミニ』でボーナスタイトルを考えていく中で「『スターフォックス2』みたいなお蔵入りのゲームってメガドライブで何かあったっけ?」と考えた際に、エムツーさんが「そういえば『三輪サンちゃん』、ほぼ完成するところまでやっていたよね」という話題が一瞬だけありました。でも、ほぼ完成しているけど、それを完成させる労力があったら、もっと他のことに割こうというのが、前回の結論でした。

 『メガドライブミニ2』の個人的な裏テーマに、“これまでかなえられなかったことを実現する”というのがあって、そのひとつが『サイバースティック』です。

 それならば、『三輪サンちゃん』もそうだろうと。今回なら完成まで持っていってもいいんじゃないかと。『ダライアス』や『テトリス』と比較することはできないけれども、オマケならば許されるかなと考えました。

 とにかく当時のゲームを50本復刻して、その他はオマケというスタンスです。これまでに紹介した『ファンタジーゾーン』や『スターモビール』も発売されてなかったゲームはすべてオマケにすぎません。

――メインをしっかりやっているので、余力で好きなことをしてもいいだろうというのは、昔のセガっぽいノリを感じます。

 余力というには、力を滅茶苦茶割いていますけどね(笑)。昔でいうと移植集団“ゲームのるつぼ”さんとか90年代前半くらいまでのPCなんかもそうだったと思うんですけど、とりあえず評価とか権利とか関係なく自分の好きなゲームがあって、それをまず自分のために移植するっていうモチベーションがありまして、なぜか2000年を過ぎた後もエムツーさんのところにはまだそういう空気があります。

 90年代以前の濃いマニア気質……ああいう時代の空気がエムツーさんの中には永久凍土のマンモスのように残っていたわけです。そのマンモスが今回復活したわけです(笑)。

 そこで選ばれたのがどうも『三輪サンちゃん』だったようなんですね。このゲームは実は一度も移植実績がないタイトル。時代的に言えばSG-1000に移植されていてもおかしくなかったんですけど、当時はアーケードでもそんなにヒットしていなかったので断念されたのかなと思うんです。

――確かに当時『三輪サンちゃん』は、あまり見かけないタイトルでした。

 ゲーム内容は『ヘッドオン』から連なるドットイートタイプで、迷路の中でアイテムを拾っていくタイプですし、『ペンゴ』のようなブロックがあったり、グラフィックが『フリッキー』と同じ川崎吉喜さんが担当で、おそらく企画のアイデアも川崎さんっぽいんですよね。『フリッキー』のメンバーは『テディーボーイ・ブルース』とかを作るんですけど、川崎さんは『三輪サンちゃん』を作っていたんです。

 『三輪サンちゃん』は個性的なゲームではあるんですが、セガの系譜、『フリッキー』のようなカワイらしいキャラクターゲームを作っていた時代の1本として再評価してもいいと感じました。

 こういったファンシーさは、『ハングオン』以降のセガの垢ぬけた感じとは違う、幻のゲームタイトル。おそらくそういう部分でエムツーさんが気に入っていたのかなと思います。なお、めちゃくちゃアーケードに忠実で、アーケード版にあったバグまで再現しているようです。

 『フリッキー』が好きだった人にもオススメですね。今回は『フリッキー』も入っているので、『フリッキー』とセットで遊んでいただきたいですね。

 ちなみに川崎さんは少し前にセガを定年退職されていたのですが、今回『三輪サンちゃん』復刻にあたり、せっかく『三輪サンちゃん』を収録するならとパッケージイラストを入れたいと考えて、川崎さんに連絡を取ってお願いしました。

――令和最新の『三輪サンちゃん』公式パッケージイラストですね。

 当時はメインビジュアルとかなく、インストカード(インストラクションカード、ゲーム説明カードのこと)くらいしかなかったので、初のメインイラストですね。

 エムツーさんの気持ちがこれで成仏できたらいいなと思っています。おそらく『メガドライブミニ2』がなかったら、一生世に出る機会がなかったと思います。わざわざ『三輪サンちゃん』をメガドライブに移植したものを、さらに移植するという二度手間になるので、もし出すならアーケード版をそのままの移植したほうが早いかもしれません。

北米では『SEGA Genesis mini2』の発売が決定! 第4弾、第5弾の発表もお楽しみに!

――海外でも『メガドライブミニ2』は発売されるんですね。今回は北米向けに『SEGA Genesis mini2』が発売されるということですが、収録タイトルに違いはあるんですか?

 あります。基本はできる限り同じにしたいのですが、ライセンスが日本に限られていたり英語版の権利が別の会社にあったり、さらには商標の問題など複雑な原因もあって、まったく同じものを出すことは絶対にできないんです。日本語でしか遊ぶことのできないアドベンチャーゲームなども海外向けに収録するのは避けています。

 北米版では、そういったゲームを収録できなかった分、代わりのタイトルを入れています。

 ただ、一方で内容が違うということならと、日本国内でも『SEGA Genesis mini2』を欲しいという声があるのは認識しています。前回は若干数を日本国内で出すことができたので、同じことができないか調整中です。実現できそうならまたご案内できればと思います。

――最後に第3弾について、総括の意味を込めてコメントをいただけますか?

 お待たせしました。ようやく『ルナ』の発表をすることができて私もほっとしています。収録タイトル数としては30本と、ようやく半分以上をアナウンスできたのですが、まだあと20本あります。今後もメガドライブらしいタイトルを中心に選んでいるつもりなので、期待してください。

 なおここまで3Dシューティング、パーティーゲーム、パズルゲーム、格闘ゲームなど、一部のジャンルは集中させて発表してきました。まだ触れられていないジャンルについては、次回以降を楽しみにしてくださいね。


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