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『SPY×FAMILY』からロイドだけが参戦になった理由とは? 『キャプテン・ベルベット・メテオ』開発者インタビュー【電撃インディー#306】

カワチ
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 電撃オンラインが注目するインディーゲームを紹介する電撃インディー。今回は集英社ゲームズのタクティカルアドベンチャー『キャプテン・ベルベット・メテオ ジャンプ+異世界の“小”冒険』のインタビュー後編をお届けします。

 本記事はインタビュー後編ということで、『キャプテン・ベルベット・メテオ ジャンプ+異世界の“小”冒険』に登場する『少年ジャンプ+』の参戦作品についてなど、ゲームに関するさまざまなお話を伺っています。

 なお、前編はすでに掲載中なので、ぜひそちらもチェックしてみてくださいね。

 電撃オンラインは、尖っていてオリジナリティがあったり、作り手が作りたいゲームを形にしていたりと、インディースピリットを感じるゲームをインディーゲームと呼び、愛を持ってプッシュしていきます!

原作者も監修に参加! リナルド氏が一番大事にしていたこととは?

――ゲームをプレイさせてもらったのですが、『ジャンプ+』のキャラクターがかなりメインでしゃべっていたり、ストーリーに絡んだりすることに驚きました。原作者も監修されているのでしょうか?

細野:もちろんです。とても大変でした(苦笑)。

リナルド:そうですね(苦笑)。

細野:ストーリーラインとセリフの基本はリナルドさんに考えてもらったのですが、そちらを作家さんチェックに出したり、語尾を漫画らしい表現にしたりといったことやりました。正直、1番大変な部分はそこでしたね。

林:ボツになってしまったシナリオもありましたね。

リナルド:『SPY×FAMILY』は家族の話にしようと思いましたが、複雑になるのでロイドだけになりました。

 本作のストーリーは京都に引っ越すことになったダミアンが、空想のなかで宇宙船に乗っているのですが、壊れてしまって戻れなくなるというものです。

 彼は宇宙船を元に戻すためにいろいろなキャラクターと出会って冒険することになるのですが、これが『ジャンプ+』のキャラクターたちになります。

 まずは私がすべてのストーリーを英語で書いたあと、原作の漫画も読んでいる翻訳家に翻訳してもらいました。

 そのあと、集英社の担当の人にチェックしてもらい、「こういうセリフは多分言わない」「このキャラクターだったら、多分もっとこういうふうに言う」と修正してもらいました。

 その後、最後に漫画家さんに送ってチェックしてもらうという流れですが、それが登場作品の数だけありました。とても長いプロセスでしたが、いろいろ勉強になりました。

細野:ダミアンという少年が日本に来てトラブルに遭遇して、空想の中で、漫画のヒーローと一緒に解決するというコンセプトはしっかりしているんですが、各漫画のブロック部分は大変だったのかなと思います。

林:細野さんの下に内田さんという担当編集がついて、内田さんのほうできちっとシナリオを確認したあと、『怪獣8号』なら『怪獣8号』の担当編集者にチェックしてもらうということもこまかくやっていました。

 もちろん、シナリオだけでなく画像もチェックしてもらったりととても大変でしたが、やりがいはありましたね。

――プレイして、最初の『怪獣8号』をプレイすれば、「あ、これはしっかり監修されているんだ」と気付くことができますね。

リナルド:ありがとうございます。それは一番大事にしたことでした。ファンの方たちが納得してくれるようなキャラクターの扱いを考えるのはすごく難しかったですし、今でも不安ではありますが、とてもありがたい体験でした。

――今回参戦している作品の中で、特に注目してほしい作品はなんですか?

細野:『怪獣8号』や『SPY×FAMILY』は皆さんによく知られていると思いますが、『スライムライフ』なども良作なのでこの機会に読んでみてほしいですね。

林:僕自身も、もともと『ジャンプ+』を読者としてずっと読んでいましたが、個人的には『姫様“拷問”の時間です』の姫様のやり取りがすごく好きです。マンガのなかでは囚われている姫様ですが、今回は戦っているところも見れたりするのでおもしろかったですね。

リナルド:姫様のコメディシーンは自分たちで作っているのに笑ってしまいました。

 あと、『スライムライフ』は参加している作品の中ではちょっと変わっているからおもしろいと思います。そのほか、最初に出てくる『怪獣8号』もパワフルで気持ちいいですよ。

 『SPY×FAMILY』の部分は自分で感動してしまいました。自分の話も入ってるからかもしれませんが、ちょっと泣いてしまいました。やはり、こまかい修正のやり取りをすることは大事なのだなと思いましたね。

――ゲームの開発期間はどのくらいだったのでしょうか。

リナルド:プロジェクトがはじまったのは2020年の8月です。ただ、その6カ月前ぐらいからストーリーの準備などはしていました。

――『怪獣8号』は、連載が始まったばかりのころで『SPY×FAMILY』もまだ連載して1年ぐらいだったと思うのですが、今後はこれらの作品を売り出していきたいという気持ちもあって、選出されたのでしょうか?

細野:『怪獣8号』『SPY×FAMILY』は始まった瞬間に人気が出たので、入れたいなと思っていました。

――林さんは立ち上げ当時は、まだいらっしゃらなかったと。

林:そうですね。集英社ゲームズが立ち上がる前は集英社にいました。そのあとに合流したのですが、細野さんやリナルドさんが制作している内容を見て、Nintendo Switchで出すことを提案しました。

――途中で操作性などが変わるということで、リナルドさんなどは、結構苦労されましたか?

リナルド:はい。ただコンシューマで出したいという気持ちが強かったです。

 スマートフォンで開発していたときはいくつかのストーリーをDLCで発売しなければならなかったのですが、Nintendo Switchならその心配がなかったです。

 開発に関してはそのまま進める部分も多かったものの、UIなど修正する部分もあって大変でした。ただ、バイブレーション機能を使って気持ちよくするなど、改善できたことも多いのでモチベーションは上がりました。

――リナルドさんとしてはスマホ向けアプリで出すよりも8本のストーリーをまとめて、ちゃんと皆さんにお届けできるほうが望ましいと思われたわけですね。

リナルド:そうですね。そのほうが全体的なスト―リーが伝わると思いました。

 たとえば、映画などでは監督は1つの作品の中に感動のポイントなどを作って観客に共有させると思うのですが、DLC形式にするとエピドードによってプレイする人としない人が分かれるので難しいと思いました。

――細野さんはコンシューマに方向転換することはどう思われましたか?

細野:集英社ゲームズさんのアドバイスでしたが、技術的なことはまったく分かってないので、そんな簡単にいくものなのかなと思っていました(笑)。ただ、思った以上に全年齢に刺されるゲームになってきたかなと思いました。

――ちなみに『ジャンプ+』のユーザー層はどのぐらいなのでしょうか?

細野:平均年齢は大体27歳ぐらいで、男女比は65対35ぐらいです。

 女性は増えていて作品によっては50%を超えるものもあります。年齢は2つの大きな山があって、10代後半ぐらいと20代後半から30代前半ぐらいが多いです。若い読者と、旧来のジャンプ・ファンの2種類がいるイメージです。

――若い人が多いということはNintendo Switchを持っているユーザーも多そうですね。

細野:そうですね。

『DRAGON BALL』に勇気をもらったリナルド氏。細野編集長も大絶賛のストーリー!

――次はゲーム部分についても、聞かせてください。難易度的には難しくない、いいバランスだと感じました。

林:ここは僕がリナルドさんを尊敬してるところでもあるのですが、リナルドさんはアーティストだけど、すごくゲーマーだなとも思っています。手触り感を良くするための組み込み方が上手だなと思っています。

 正直、ゲームの部分はそんなに僕のほうでなにかを言う必要性は無かったです。

 今回のゲームは広い幅の層の人たちがプレイできるように難易度を調整しているなと思います。

 何ターンも使えば、そんなにゲームがうまくない人でもクリアできるし、ここが山場だいうところはちょっと難しくなっていて、リナルドさんの設計がしっかりできていると思います。

 キャラを動かしたりボタンを押して発動させる技だったりも、振動も含めてしっかり気持ちいいですし、小姑のようにあれが足りない、これが足りないと言う必要性もないです。すごい優秀なクリエイターだと思いましたね。

――ミッションをクリアしようと思うと少し難しいぐらいの難易度になっていて、ゲームとしてすごくおもしろいですね。

林:そうですね。リナルドさんのちょうどいいバランス感覚が出ているなと思っています。

 ゲームをすごい好きな人たちがやっても簡単すぎて面白くないみたいなことはないし、かと言ってゲームがすごい苦手な人でも十分遊べるような内容になってるなと思います。

 また、じつは高難度モードも用意されており、難易度が低いなと思った人も楽しめるようになっています。

――リナルドさんはいかがですか。マップの数も多いので大変だったのではないでしょうか。

リナルド:頭を使って攻略するところと、気持ちよくクリアできるところのバランスは気を使いました。

 バトルがメインのステージが続いたら次はパズルがメインのステージにするといったことを考えましたが、そういった部分は『ペルセポネ』を作っていたときと似ていますね。

 自分がプレイヤーだったらなにをやりそうかということをシミュレーションしながら作っていきましたが、こまかい部分を修正して調整していく作業は楽しかったです。

――キャラクターに成長要素がないのはパズルのようにゲーム部分を楽しんでほしいからでしょうか。

リナルド:パズルというほど難しくないと思っています。ジャンルとしてはタクティクスですね。

 ただ、考えて進まないとクリアできないような難易度にはなっています。キャラクターがレベルアップするというよりは遊んでいる人がレベルアップすることが醍醐味だと思いました。

――ストーリーについてもお聞かせください。ダミアンが漫画のキャラクターに勇気をもらうというストーリーが漫画好きとしてすごく共感しました。このストーリーはリナルドさん自身の子どものころの思い出が反映されているのでしょうか?

リナルド:そうですね、自分がエモーショナル系だからキャラクターに入り込むようなことは多かったです。

 影響されたものは『ネバーエンディング・ストーリー』などの本や映画のほうが多かったけど、『DRAGON BALL』に勇気をもらうこともありました。

 本作は自分の思い出も入っているけど、スマートフォンが登場するなど現代のストーリーにしています。今は『ジャンプ+』のように漫画もスマートフォンで読めるから映画よりも漫画に影響を受けている人も多いのかなと思います。

――細野さんは編集者として、この『キャプテン・ベルベット・メテオ』のストーリーを見ていかがでしたか?

細野:最初のコンセプト部分の発想がおもしろいなと思いました。キャラクターゲームはプレイヤーがキャラクターになりきるということが大体の大筋だと思いますが、ダミアンが小さいトラブルを解決するために、ちょっと勇気をもらうというコンセプトはすごくいいなと思いました。

――大人にとっては小さくても、子どもにとっては大きな問題であることが子どもの目線でしっかり描かれているなと思いました。

林:リナルドさんが日本に来たときのショックだったことなども反映されているんじゃないですか?

リナルド:そうですね。たとえば、近所のおばあちゃんが私の前に来て、めっちゃ日本語でしゃべってきて頭がフリーズしたことがあります。

 私は発音がよかったので日本語ができると勘違いされたのですが、だったら、外見が日本人に近いダミアンも同じエピソードがあるかなと思いました。

 あとは、日本は虫が大きいので、突然でてきたら子どもだったら絶対にビックリするなと思ってエピソードに組み込みました。

 続編があるなら絶対に入れたいのは、トイレのウォシュレットのエピソードです。ものすごい勢いでビックリしたし、止め方が分からなくて焦りました(笑)。

――ここからは集英社ゲーム全体についてもお聞かせください。山本正美さんが合流されたこともゲームユーザーにとって大きなニュースで、これから集英社はゲームに本気であることを感じました。今後のビジョンはどのようにお考えでしょうか?

林:集英社ゲームズを立ち上げたとき、大手のゲーム会社が作っているような集英社IPのゲームを集英社ゲームズで作ると思われたりもしたのですが、集英社IPで作ることを目的にしている組織ではないです。

 僕らが今一番やりたいことは、ゲーム初の新しいコンテンツが生まれてくることを望みにしています。そのため、漫画IPをゲームにするということではなく、ゲーム初で生まれてくる新しいIPを作るのが望みです。今作で言えば、『キャプテン・ベルベット・メテオ』がそれにあたります。

 日本はクリエイティブな環境としては、すごく恵まれた環境だと思っています。情報もたくさん入ってくるし、表現する場所もたくさんあります。

 これからはそういった作品を世界に出していきたいなと思います。マンガやアニメと同じようにゲームももっと出ていってほしいなと思っているのですが、そんななかで作家性のあるゲームが規模に限らず世界に出ていくのもありなんじゃないかなと思ったのが集英社ゲームズの根幹にあります。

 そのため、できればパブリッシングも日本だけじゃなくて、海外も自分たちでやっていきたいなと感じています。育てるところと売っていくところという2つの組織を作って、クリエイターを育てながら、クリエーターとともに世界に出ていくことを目指しています。

――個人的には既存のIPを使った『BLEACH』のカルタなども気になっているのが、こちらはどういった立ち位置でしょうか?

林:ボードゲームも集英社ゲームズで作っているのですが、こちらは既存IPのファンの人からの要望も多いので、そういった人たちに向けて作っている感じです。『BLEACH』のカルタも最初はファンクラブ限定ショップで売っていたグッズですが、ものすごい反響があって需要があることがわかりました。

 インディーズのゲームクリエイターにはデジタルとアナログ関係なく作っている方もたくさんいるので、デジタルでいっしょに作っているなかで、IPのファンに向けてアナログゲームの企画をお願いすることも今後はあるかもしれません。

――細野さんは『ジャンプ+』作品のゲーム化についてはいかがですか。可能性としては今回みたいなゲスト参戦とオリジナルゲームのふたつのパターンが考えられますが。

細野:じつは『ジャンプ+』は漫画以外にもサービスをいくつか作っていて、最近でも『ドドドJUMP』というボタンひとつでマンガ風動画をつくれるアプリとかもやったりしています。

 ゲームにも昔からかかわっていて、今も3つぐらいのゲームを走らせています。ゲームはマンガにとって大事だと思っていて、とくに世界展開を考えたときにすごく重要だなと感じています。

 今はアニメが世界で火がついて、そこから漫画という流れもあるのですが、海外だと漫画が必ず売っているわけでもないんです。

 そういうときに接触できるものとして、ゲームが一番優れているのかなと思っています。今回は英語とフランス語でも出ますし、こういった形で、海外のファンが楽しめるゲームは、今後もどんどん作れるといいなと思います。

リナルド:先日、『キャプテン・ベルベット・メテオ』が紹介された任天堂ダイレクトは日本だけでなく海外でも配信されていて、とくに海外のダイレクトは視聴者人数が多いので、細野さんが言ったようにゲームからコミック、コミックからゲームに興味を持ってくれるようれしいです。

――完全に余談ですが、『キャプテン・ベルベット・メテオ』を最初に知ったとき、『ファミコンジャンプ』を思い浮かんだのですが、意識していたのでしょうか?

細野:『ファミコンジャンプ』は意識していないですね(笑)。ただ、あれはあれで面白いなと思うので、あのようなゲームもやってみたいです。

リナルド:任天堂ダイレクトのときは『ファミコンジャンプ』への反応がたくさんありました。「これは『スイッチジャンプ+』ですか?」みたいなことも聞かれましたね(笑)。

――リナルドさんはクリエイターの視点からみて集英社ゲームクリエイターズCAMPはどんな魅力があると思いますか? どういう支援をしてもらえたらうれしいですか?

リナルド:いろいろなクリエイターが集まるのでエネルギーをもらえると思いました。ただ、自分は目の前の自分のゲームを一生懸命作っている感覚のほうが強いですね。

林:コロナ禍だったので、横のつながりを作れなかったのは悩みでもありました。

 今は少しずつ改善しており、いちどいろいろなクリエイターを呼んでオンラインのイベントを開催しました。各家庭に食べ物を贈らせてもらい、飲食をしながら「このひとは今こんなことやっています」、「このチームはこういう支援を受けています」というような報告会をしました。

 Discordのチャンネルも作ってお話できるようにはしていますが、やっぱりリアルでキャンプのクリエイターたちとの横のつながりをもっと深く作れるといいなとは思っています。

――リナルドさんは『キャプテン・ベルベット・メテオ』の次に作りたいゲームのアイディアはありますか?

リナルド:はい。『キャプテン・ベルベット・メテオ』の続編を作りたいですし、プロトタイプだった『Spirit』も完成させたいです。ほかにもいろいろなアイディアがあります。

――最後に『キャプテン・ベルベット・メテオ』を楽しみにしているユーザーにひとことお願いします。

細野:『ジャンプ+』のキャラクターがゲームに本格的に登場して、他のキャラとしゃべったりするのは初めてです。ぜひ、マンガで読んだキャラと一緒に冒険する体験を味わってください。読んだことがないマンガもこの機会にぜひ読んでもらえると、ゲームをより深く楽しんでいただけると思います。

林:ダミアンという少年の小さな冒険ですが、すごくユーモアに溢れつつもゲームとしてはすごくやり応えがあります。インディーズゲームということは関係なく、すごく面白いゲームだと思います。

 IPをお借りしているので企画物っぽい感じのイメージに取られてしまうかもしれませんが、このゲームはリナルドさんが作ったダミアンというキャラクターのゲームなので、彼がどのような冒険をするのか楽しみにしてほしいですね。

リナルド:ストーリーも注目してほしいですが、ゲーム部分もぜひ楽しんでほしいと思います。最初の『怪獣8号』の部分をクリアすればゲームのシステムが分かるので気持ちよくなってくると思います。ゲームのなかにはステッカーなどの隠し要素なども用意しているので、そういったものも楽しんでいただけるとうれしいです。


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